Be Bop Deluxe - Futurama (Expanded & Remastered Edition)

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Be Bop Deluxe - Futurama (Expanded & Remastered Edition) (1975)
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 斬新な音でシーンに登場した時に受け入れられるバンドだと、革命者として祭り上げられ歴史に残るパターンもあるが、概ねそこまで残らずに聴く人が聴くと素晴らしいと褒め称えられるアルバムを残して消えていく場合が多い。70年代は革新的なサウンドでシーンに登場したバンドやミュージシャンも多く、個性的だったが聴く側も全てを網羅できないので、結果的にそれなりにコマーシャルに乗ったバンドを耳にする方が増え、真のミュージシャンやバンドに耳を傾けるには情報不足だった。残酷なのはその瞬間を過ぎるとシーンの流れが移り変わり、すぐに古臭い音になってしまい忘れ去られてしまう場合もあり埋もれた名盤が増える時。後の時代になればその手のアルバムはどことなく救済され、マニアの発掘やきちんとした評価が下されていくので、浮上する作品も多く、自分もそうやって知ったアルバムが数多くある。

 Be Bop Deluxeの1975年リリース2枚目のアルバム「Futurama」はそれまでのBe Bop Deluxeの印象を大きく変える衝撃的な作品だった。ビル・ネルソンのワンマンバンドと知られているが、事実ファーストからはメンバーを一新してトリオ編成で出した本作は、メンバーの力量がビル・ネルソンと少なくとも対等の器量を持ち、バンドの演奏を聴いても渡り合っているように聴こえるので、ビル・ネルソンも満足なメンバーだったと思われる。その意味では念願のプレイヤーとバンドが組めて勢い込んでの新作を作り上げてのアルバムの機運だろう。プロデュースにはあのクイーンを作り上げたロイ・トーマス・ベイカーを配して万全の体制で挑んだ入魂の力作。アルバムは新しいバンドメンバーとのぶつかり合い、ジャムセッションを繰り広げる姿を見せつけてメンバーの力量を存分に聴かせ、同時に自身の本来のギタープレイやアプローチを知らしめ、ギターテクニック的にもかなり革新的な取り組みや音色をぶつけている野心作。同時にこれまでシーンでは聴かれる事のなかった楽曲を作り上げてアレンジを施してレコーディングした実験的側面も強く、その意味ではロイ・トーマス・ベイカーは正に適任、クイーンで野心的な作品を共に作り上げた経験が本作でも明らかに影響を及ぼしており、推測でしかないがBe Bop Deluxeやビル・ネルソンだけでは生み出せなかっただろう曲のアレンジや音のチョイス、もしかしたら編曲も含めてかなりの度合いで貢献している気がする。その意味では逆にクイーンのこの時期の名作アルバム群と似たような音の作りやコーラスワーク、音の処理やアレンジが出てしまい、妙な気分になるのはあるが、それだけにヒットしてもおかしくない出来映えの素晴らしいアルバム。

 冒頭の「Stage Whispers」から一体何が始まったのか、脳内処理が追いつかなくなる程にジェフ・ベックを超えるレベルでの派手なギターが宙を舞い、ドタバタとしたドラミングが派手に入るが、このハイハットの音色は見事なまでにクイーンの音と同じ処理。また、ベースはそのドタバタ感を向こうに回して独自のラインを駆け巡り、この頃出てきたフュージョン連中をぶっ飛ばすほどのランニングスタイルを聴かせてくれるテクニシャン。そこまでうるさいサウンドを出しながらも歌の入ったポップ面を持たせた曲として完成させている器用さが素晴らしいが、とにかく本作のオープニングは新メンバーとのバンドが嬉しくてしょうがないと言わんばかりの音の洪水をぶつけてくるハチャメチャなスタイルが凄い。ビル・ネルソンのギタープレイは一体どこまでロックの世界で羽ばたいて行くのか、当時リアルタイムで聴いていたら期待満点でアルバムに取り組み、ギターばかりを聴いていた一枚になっただろう。アルバムでは歪んだギターのヘヴィさと同様にビル・ネルソンのピアノや鍵盤類もほとんどの曲で流れているので、バンド一発の演奏ではなくそのテンションの高さを録音している点も素晴らしい。曲の良さ、ポップ的解釈での良い曲、覚えやすい曲は見当たらないし、ロック的側面でのリフ一発やロックスタイルでのガツンと来るパターンの曲も見当たらない。言い換えるとどれもが独特の新たなる解釈の斬新で革新的なアプローチが施されたロックスタイルなので、聴いているリスナーを試してくるサウンドとも言える傑作。ギター小僧達からの本作の評価がどのようなものか興味深い。この頃のジェフ・ベックのグループにセンスの良い作曲者とボーカルがいたらこういう方向性になったような気もする面白そうな解釈。

 2019年にBe Bop Deluxe作品がリマスタリングとボーナストラックの大量追加及びDVDの5.1chサウンドも加えて大々的に再発されているので手に入れるならその拡大盤がもっとも良いが、本作「Futurama: 2cd Expanded & Remastered Edition」では1枚目がオリジナルミックスのリマスターバージョンにシングル曲を加えたディスクで、2枚目は新たにミックスされたリミックス・リマスターバージョンで、こちらもまたボーナストラックが付けられている。3枚目のディスクには案外出演していたBBCセッションとラジオショウをほぼ全て加えたボーナスディスクでいわゆるライブバージョンを楽しめる。DVDはサラウンドミックスに加えてBBC TVからとプロモビデオが追加されている。オリジナルバージョンのリマスターもクリアな音で、ギターサウンドの研究には面白そうだと聴いていたが、それよりもリミックス・リマスターバージョンの音の安定感と聴きやすさが生まれ変わっていて驚いた。とても70年代の音とは思えない程に磨かれていて、ドタバタ感のあったミックスが整理されて迫力あるサウンドになっているのでまた素晴らしい作品と実感。なかなか分かりにくいバンドの音と楽曲だが、何度か整理して聴いていくと唯一無二のスタイルをテンション高く貫いていた人がビル・ネルソンだった。ここまでギターが素晴らしく、ドラマティックな楽曲を生み出してバンドの白熱感も収録した作品も他には聴かない素晴らしきアルバム。





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フレ
Posted byフレ

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おっさん  

当時の記憶ではクイーンの後に出てきた
バンドだったような感じですかね。
渋谷洋一のラジオだったかな、
BBCの音源を聞いたのが最初で
ギターがめちゃ上手いなと思いました。

2021/05/14 (Fri) 05:13 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>おっさん

ギター上手いですねぇ、ホント。知られざる革命的ギタリストなくらい。
なかなか発掘し切れず聴き込み不足なのでチマチマと進めようかと。

2021/05/16 (Sun) 11:44 | EDIT | REPLY |   

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