The Kinks - Soap Opera +4
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The Kinks - Soap Opera +4 (1975)

ロックに興味を持って最初はとっついたバンドを聴きまくり、そこから派生した程度をまた聴きまくるが、大抵は子供の頃なのでさほど小遣いもなく買えるレコードも聴ける範囲もタカが知れてる。ただ、その一枚をとことんひたすらに聴くので想い入れは強くなるが、いずれそのバンドなり似たようなジャンルを制覇し始める。その辺りの取り組み方法を間違えるとヘンにマニアになってしまい、戻れない道のりを歩むので気を付けたかった。今更反省してもしょうがなく、その道を真っ直ぐに進んでいる人生にもなっているが、そのうちに聴きたいバンドやレコードが手に入らない状況に陥った。単にレコード屋に売っていないアルバムを探し始めるので、輸入盤や中古盤屋に通い始めるが、それでもチャンスはタイミングでしかないので狙って手に入るとは限らないし、おかげで見た事のない欲しかったアルバム一覧も相当量連ねていく。CD時代が到来したので、時間はかかったが大抵の作品は再発されて音を聴けるようにはなったのは実に有益だった。今やそれらも含めてボーナストラックやリマスタリングで再々度入手出来る状況、更にはメディアに依存しないからいつでもどこでも聴ける環境にもなりつつあり、全く時代の進化には驚く。
The KinksのRCA時代もなかなか簡単には手に入らず、見かける事すら稀だった。あってもボロボロのレコードだったり高価なプレミアが付いてて悩まされたが、何件も何件も長い間探しながら周っているとポツポツと適度の価格で見る時もあり、見た時は買い時、の鉄則に従って徐々にアナログで買い揃えていった。思えばCD時代に突入しながらもキンクスのRCA時代はそこまで早い時期にCD化されなかったので、益々聴いてみたい欲も募り、自分の中の買って良い金額が上がっていたかもしれない。今回は1975年にリリースされたキンクスの名盤物語アルバム「Soap Opera」。そもそもが前年にグラナダテレビからソープオペラ=昼メロの音楽を依頼されて制作しており、アルバムに先駆ける事1年弱の時点でほぼ出来上がっていた楽曲群に加えて物語に手を入れながら曲も増やしての実にくだらない、と言ってはいけないが、如何にも昼メロの現実離れした作品、それでいながらありそうな発想がさすがレイ・デイヴィスの手にかかるだけある。物語は平凡なサラリーマンが毎日普通に仕事して暮らしているが、憂さ晴らしにバーに飲みに行っては妄想に取り憑かれて、自分はスターだと思い始める話で、テレビではその主役のノーマン役をレイ・デイヴィス自らが演じていたから余計に普通さが出ててユニークなドラマだった。このドラマも以前はどうやったら見れるか、どこを探しても手に入らずに諦めていたが、蛇の道は蛇とばかりに見た時は感動すらしたドラマ映像で、今ではYouTubeで見られるからその不変な昼メロ感を楽しめる。
一方収められた曲のクォリティの高さは他に類を見ない。この時期レイ・デイヴィスも全盛期なので駄作がなく、それどころかどの曲も演劇的、喜劇的、正にドラマの物語をそのまま音楽で表しているプロフェッショナルな音楽形態とアレンジで話を知らなくてもこの物語を曲で味わえるくらいの起伏に富んだ出来映え。ところどころのセリフもあり、演劇的にコーラスが加わったりするのは前作群からの延長とは言え、こちらでは目の前で物語が繰り広げられるのでナマナマしく聴こえてくる素晴らしさ。オーケストラアレンジも取り込み、最早ロックバンドの作品として聴くレベルを超えている演劇作品。それでも基本はロックなので、明るい曲も染み入る曲もロックがベースにあるのは当然で、アルバム冒頭から聴いててもざっと物語を知っているだけで、そのヘンを演奏して歌っているのだろうと想像するだけで分かる気がするくらい単純に曲が進行していく。それも駄作なしでどれもこれも一癖二癖あるハイレベルサウンド、バンドは正にその音楽を表現する手段でしかないが、それでも力量が高いしバンドなのでグルーブにしてもドラマ性にしても素晴らしい充実度。
1990年にようやくRhinoからCDがリリースされ、1998年に待望のボーナストラック付きリマスター盤が登場し、その時には「Everybody's A Star (Starmaker)」の1974年に先行シングルリリースされた際のモノラルバージョンが収録され、驚いたのはその次からのライブバージョンの姿。「Ordinary People」のデイブ・デイヴィスの素晴らしきブルースプレイから始まるバージョンのカッコ良さに耳を奪われる事間違いなしの、キンクスの意外性を堪能できる傑作。曲も本編に収録されている同じ曲とは到底思えないヘヴィブルースバージョンになっており、言われてみればスタジオバージョンはセリフと歌メロが半々になっているので、ライブではそれを踏襲しつつもデイブ・デイヴィスの歌とギターをクローズアップするのを半分、レイ・デイヴィスの歌が半分弱となり、明らかにメンバーのクローズアップを狙ったアレンジ。この曲が聴けるだけでボーナストラックの価値が大幅にアップ、出来ればこのライブのフルバージョンを加えてDX盤を作り上げてほしいと願うが実現するだろうか。続いての「You Make It All Worthwhile」の演劇ライブでもデイブ・デイヴィスのギターがギャラギャラと鳴っているので、かなりヘヴィにプレイしていた節が聴けるのもロック的で魅力がある。もう一曲はアルバム内でも屈指の名曲らしく君臨していた「Underneath The Neon Sign」の同じ会場でのライブバージョンだが、こちらもデイブ・デイヴィスのギターが目立ち、益々この時期のライブ丸ごとを聴いてみたくなる。1975年6月14日ロンドンでのショウで、YouTubeを覗くとその時のモノクロのライブ映像も上がっているので聴けてしまうのもこの時代の良さか。
キンクスの良さを知ってる人なら何の抵抗もなく本作を楽しめるが、不慣れな方は最初に本作を聴くのはやめておいた方が良い。決してこういう一面だけのバンドではなく、もっとカッコ良い面もアグレッシブな面もあるので、その姿を知りつつ本作もしくはRCA時代の演劇性の高い時代を味わう方が楽しめる気がする。もっとも「Village Green」から入れば同じ事とも言えるか。

ロックに興味を持って最初はとっついたバンドを聴きまくり、そこから派生した程度をまた聴きまくるが、大抵は子供の頃なのでさほど小遣いもなく買えるレコードも聴ける範囲もタカが知れてる。ただ、その一枚をとことんひたすらに聴くので想い入れは強くなるが、いずれそのバンドなり似たようなジャンルを制覇し始める。その辺りの取り組み方法を間違えるとヘンにマニアになってしまい、戻れない道のりを歩むので気を付けたかった。今更反省してもしょうがなく、その道を真っ直ぐに進んでいる人生にもなっているが、そのうちに聴きたいバンドやレコードが手に入らない状況に陥った。単にレコード屋に売っていないアルバムを探し始めるので、輸入盤や中古盤屋に通い始めるが、それでもチャンスはタイミングでしかないので狙って手に入るとは限らないし、おかげで見た事のない欲しかったアルバム一覧も相当量連ねていく。CD時代が到来したので、時間はかかったが大抵の作品は再発されて音を聴けるようにはなったのは実に有益だった。今やそれらも含めてボーナストラックやリマスタリングで再々度入手出来る状況、更にはメディアに依存しないからいつでもどこでも聴ける環境にもなりつつあり、全く時代の進化には驚く。
The KinksのRCA時代もなかなか簡単には手に入らず、見かける事すら稀だった。あってもボロボロのレコードだったり高価なプレミアが付いてて悩まされたが、何件も何件も長い間探しながら周っているとポツポツと適度の価格で見る時もあり、見た時は買い時、の鉄則に従って徐々にアナログで買い揃えていった。思えばCD時代に突入しながらもキンクスのRCA時代はそこまで早い時期にCD化されなかったので、益々聴いてみたい欲も募り、自分の中の買って良い金額が上がっていたかもしれない。今回は1975年にリリースされたキンクスの名盤物語アルバム「Soap Opera」。そもそもが前年にグラナダテレビからソープオペラ=昼メロの音楽を依頼されて制作しており、アルバムに先駆ける事1年弱の時点でほぼ出来上がっていた楽曲群に加えて物語に手を入れながら曲も増やしての実にくだらない、と言ってはいけないが、如何にも昼メロの現実離れした作品、それでいながらありそうな発想がさすがレイ・デイヴィスの手にかかるだけある。物語は平凡なサラリーマンが毎日普通に仕事して暮らしているが、憂さ晴らしにバーに飲みに行っては妄想に取り憑かれて、自分はスターだと思い始める話で、テレビではその主役のノーマン役をレイ・デイヴィス自らが演じていたから余計に普通さが出ててユニークなドラマだった。このドラマも以前はどうやったら見れるか、どこを探しても手に入らずに諦めていたが、蛇の道は蛇とばかりに見た時は感動すらしたドラマ映像で、今ではYouTubeで見られるからその不変な昼メロ感を楽しめる。
一方収められた曲のクォリティの高さは他に類を見ない。この時期レイ・デイヴィスも全盛期なので駄作がなく、それどころかどの曲も演劇的、喜劇的、正にドラマの物語をそのまま音楽で表しているプロフェッショナルな音楽形態とアレンジで話を知らなくてもこの物語を曲で味わえるくらいの起伏に富んだ出来映え。ところどころのセリフもあり、演劇的にコーラスが加わったりするのは前作群からの延長とは言え、こちらでは目の前で物語が繰り広げられるのでナマナマしく聴こえてくる素晴らしさ。オーケストラアレンジも取り込み、最早ロックバンドの作品として聴くレベルを超えている演劇作品。それでも基本はロックなので、明るい曲も染み入る曲もロックがベースにあるのは当然で、アルバム冒頭から聴いててもざっと物語を知っているだけで、そのヘンを演奏して歌っているのだろうと想像するだけで分かる気がするくらい単純に曲が進行していく。それも駄作なしでどれもこれも一癖二癖あるハイレベルサウンド、バンドは正にその音楽を表現する手段でしかないが、それでも力量が高いしバンドなのでグルーブにしてもドラマ性にしても素晴らしい充実度。
1990年にようやくRhinoからCDがリリースされ、1998年に待望のボーナストラック付きリマスター盤が登場し、その時には「Everybody's A Star (Starmaker)」の1974年に先行シングルリリースされた際のモノラルバージョンが収録され、驚いたのはその次からのライブバージョンの姿。「Ordinary People」のデイブ・デイヴィスの素晴らしきブルースプレイから始まるバージョンのカッコ良さに耳を奪われる事間違いなしの、キンクスの意外性を堪能できる傑作。曲も本編に収録されている同じ曲とは到底思えないヘヴィブルースバージョンになっており、言われてみればスタジオバージョンはセリフと歌メロが半々になっているので、ライブではそれを踏襲しつつもデイブ・デイヴィスの歌とギターをクローズアップするのを半分、レイ・デイヴィスの歌が半分弱となり、明らかにメンバーのクローズアップを狙ったアレンジ。この曲が聴けるだけでボーナストラックの価値が大幅にアップ、出来ればこのライブのフルバージョンを加えてDX盤を作り上げてほしいと願うが実現するだろうか。続いての「You Make It All Worthwhile」の演劇ライブでもデイブ・デイヴィスのギターがギャラギャラと鳴っているので、かなりヘヴィにプレイしていた節が聴けるのもロック的で魅力がある。もう一曲はアルバム内でも屈指の名曲らしく君臨していた「Underneath The Neon Sign」の同じ会場でのライブバージョンだが、こちらもデイブ・デイヴィスのギターが目立ち、益々この時期のライブ丸ごとを聴いてみたくなる。1975年6月14日ロンドンでのショウで、YouTubeを覗くとその時のモノクロのライブ映像も上がっているので聴けてしまうのもこの時代の良さか。
キンクスの良さを知ってる人なら何の抵抗もなく本作を楽しめるが、不慣れな方は最初に本作を聴くのはやめておいた方が良い。決してこういう一面だけのバンドではなく、もっとカッコ良い面もアグレッシブな面もあるので、その姿を知りつつ本作もしくはRCA時代の演劇性の高い時代を味わう方が楽しめる気がする。もっとも「Village Green」から入れば同じ事とも言えるか。