Rod Stewart ‎– Every Picture Tells A Story (Remastered)

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Rod Stewart ‎– Every Picture Tells A Story (Remastered) (1971)
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 ライブラリの整理をする時はアルバムジャケットを見直したりアーティスト名やバンド名を見て整理するから、ついつい手が止まる場合が多くなる。かなりの枚数を持っていると何年も聴いていない、見ていないアルバムも多数あるし、それに加えて新しい作品が追加されるから余計に埋もれるアルバムが増える。だから整理するが、手が止まるのはやはり自分がよく聴いた、聴きたいと思っていた作品ばかりで、自分の場合はほとんどが古いアーティストやバンドばかり。そういえば他の作品もじっくりと聴きたいと思ってたのに聴けてない、久々に聴いて良かったからまたたっぷりと楽しんでみたい、そう思ったアルバムの多い事。整理ついでにそんなアルバムを幾つか聴き直して、またハマってみたりするのも楽しい。一体いつまでこんな古い趣味を大切にして聴いているのだろうか。それでも良いモノは良いから染み入ってしまうのは好みだけではなく、作品の持つ良さだと思う。

 Rod Stewartの1971年リリースソロ名義3枚目の作品「Every Picture Tells A Story」。初期の名盤として名高い一枚で、自分も聴いた時にこれは面白い、と思いつつたっぷりと聴き込むまでは至らず、他のロッド作品に幅を広げてしまったのでやや名残惜しい感のあったアルバム。折角見つけたのでまた聴いてみようと全8曲しかないアルバムに取り組む。驚く事に、今の時点までリマスタリングされて音は良くなっているが、ボーナストラックや未発表曲付きでのディスクは再発されておらず、オリジナルナンバーのみで存在している作品。コレクター的には寂しい部分もあるが、単なるリスナー的にはこうしたオリジナル曲だけの音質アップ盤が一番聴きやすく聴き応えあるような気がする。

 さて、本作はまず、時代を考えても参加しているメンバーがユニークなので記しておこう。まず、プロデューサーはロッド本人なのでやりたいように好きに作っていると考えて良いだろう。その同胞としては当然ながらのロン・ウッド。所々で聴かれるエレキギターのソロプレイは概ねロン・ウッドだろう。曲作りもこの時期なので普通に一緒にやっているが、Facesとの切り分けはどうしてたのかは知りたい。ギタリストではややこしい事に、Steamhammerに二人いるマーティン・ピューとマーティン・クイッテントンの内、マーティン・クイッテントンの方が参加している。ちなみにマーティン・ピューは後にキース・レルフとアルマゲドンを組む人で、マーティン・クイッテントンはロッドとそのままタッグを組んでいく人。ただ、マーティン・ピューもその関係からロッドのアルバムにも参加しているらしいのでややこしくなる。もうひとつ混乱するのがゲストボーカルのマギー・ベルとマンデリン・ベルの混同。アルバム・タイトル曲「Every Picture Tells A Story」のバックコーラスを担っているのはマギー・ベル、即ちStone The Crowsからアトランティック・レコードでソロアルバムを出す英国人の女性。但し、同じ曲で黒人ソウルボーカリストのマンデリン・ベルもコーラスで参加し、次の曲でも参加しているので、混同しやすくなっている。いずれもソウルフルな歌声なので、間違ってもおかしくないし、あちこちのクレジット記載もミスが目立つので混乱しやすい。そしてバンドメンバーではドラムにミック・ウォーラー、鍵盤にイアン・マクレガン、ベースにはアンディ・パイルとダニー・トンプソン、曲によってはロン・ウッドも弾いている。アンディ・パイルは元Savoy Brownでこの後The Kinksにも参加する人、ダニー・トンプソンはペンタングルのメンバーで、これも混乱しやすいがリチャード・トンプソンのアルバムに参加しているので名前を混同しやすい。ロン・ウッドのベースは恐らくタイトル曲「Every Picture Tells A Story」だろう。他にはマンドリンでリンディスファーンのレイ・ジャクソン、Steamhammer繋がりで後にJefferson Starshipにまで出世するピート・シアーズがピアノを弾いているので、英国ロックの錚々たる面々が若かりし頃にロッドの周辺に集まり、こんな名作を作り上げていた。

 冷静に聴けば「Every Picture Tells A Story」の冒頭からベースもドラムも歌もハズれて入ってくるし、他の曲でもズレて演奏される箇所も多く、とてもバンドが上手い演奏とは言えない作品だが、着眼したサウンドと楽曲の魅力、それに加えてロッドの素晴らしき歌声がアルバムを名盤に仕立てている。12弦アコースティックギターやマンドリンを中心に作り上げ、エレキギターはソロプレイで聴かせる程度のFacesとは大きく異なるプレイスタイル。カッコ良さの筆頭はエルヴィスのR&Rで知られている「That's All Right」をスライド・ギターをメインにブルース調のスタイルに仕立て直し、更に曲の後半からはロン・ウッドのスライドプレイをギター一本だけで鳴らしている渋さ。そこにロッドの歌が絡む誰が聴いても感動する美しく素晴らしい仕上がり。続くディランの「Tomorrow Is A Long Time」もリールとアコギを鳴らしながらのディラン風なスタイルながら、あちらが枯れた味わいならこちらは奥に秘めた力強さを漂わせる素晴らしき歌声で聴かせる。B面に入るとここからのパートナーシップが強固なものとなったマーティン・クイッテントンとの共作、そして名曲となった「Maggie May」が奏でられる。冷静に聴けばここまでアコースティックな楽曲かと驚くほどの作品で、ロン・ウッドのギターソロがチープな音色ながらも味が出て、そこに続くマンドリンの美しさもまたこれまで聴いた事のないアレンジとスタイルで驚かせてくれる繊細な曲。そのマンドリンをクローズアップした「Mandolin Wind」はロッド自身のマンドリンプレイにロン・ウッドのギターも絡み、終盤はレイ・ジャクソンのプロフェッショナルなマンドリンプレイも満喫できる。ロック界でマンドリンをここまで中心に持ってきた作品を知らしめたのはロッドの功績で、心に響く歌声に楽曲、そしてマンドリンの音色とコーラスワークを見事に飛翔させている。テンプテーションズのヒットで知られている「(I Know) I'm Losing You」はFacesのライブバージョンを先に知ってしまったが、本作が先の収録で、そのままFacesに持ち込んだようだ。モロにFacesのメンバーによる疑いのない演奏が聴けるR&R。アルバム最後はTim Hardinのカバー曲「Reason to Believe」でイアン・マクレガンのオルガンとディック・パウエルのバイオリンソロが印象的な歌モノ傑作曲で、最後の最後までロッドがあの歌声を聴かせて締めてくれる。

 ロッド・スチュワートと言えば最早偉大なるボーカリストとして認識されているが、最初期は歌もともかくながらオリジナリティ溢れる楽曲を作り上げてアルバムに収録しており、マンドリンの持ち込みだけでなくその組み合わせの妙技も自身で指揮して生み出していた。FacesでR&Rを歌いながらロン・ウッドの得意芸を持ち込んで音楽性の幅を広げて個性を作り上げたのかもしれない。改めて初期の意欲的なロッド・スチュワートの作品の凄さを知った一枚、そして名作として語られるに相応しい一枚。





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フレ
Posted byフレ

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