Them - Them Again

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Them - Them Again (1966)
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 ロックの歴史も長くなったが、その途中から自分もリアルタイムで参加し、更に歴史の遺物を漁るかのようにレコードを集めて聴いて、なるべく今の時代に繋がる、また広がる血脈血流を把握できるようにしておきたいと日々様々な情報を掴んでは洗い、自分なりに整理してまた次に駒を進めるような事を普通に行っていた。それでもロックの歴史は深すぎるし世界も広すぎるので、そもそも全てを制覇しようとは思わず、自分が好きな英国ロックの世界くらいは知っておきたいとの考えからそのコレクター趣味が始まったと、今なら自分なりに納得出来るが、そういう方向に進みたくて進んでいたとは言えない。それでも結果的に今では癖になっている節もあり、今更そういう聴き方漁り方を辞めますともならないので、変わらずにそうやってロックを聴くだろう。その中には英国とアイルランドも一部入ってくるのはロックの歴史からしても英国の歴史からしても必然で、ロックでいえばゲイリー・ムーアやU2が挙げられる。ところが60年代の英国ロック史を漁って出てくるのはThemだ。ご存知ヴァン・モリソンの名が後には知られていくが、だからと言って60年代のThemも含めて自分はさほどじっくりと聴いた事がなく、思い出すのはどうしても「Gloria」程度で、それでは勿体無いだろうと改めて聴いてみた。

 Themのセカンドアルバム「Them Again」はデッカから1966年に英国とアメリカでリリースされている。アルバムジャケットも如何にも60年代風で、どこか爽やかさすら漂ってくるが、全面に立つヴァン・モリソンの姿が風格漂わせる渋さを出しているのは自信の現れだろうか。そんな事を想いながらアルバムを聴き始めると、冒頭から強烈なヴァン・モリソンの歌声がモノラルなのでど真ん中に突き刺さってくるカッコ良さ。ストーンズやビートルズとはまるで異なる、それでもストーンズ的な面の方がまだ近いが、かと言ってフーヤキンクスとも異なる歌声の迫力はスペンサー・デイヴィス・グループのスティーブ・ウィンウッドの方が近いかもしれない。それでもブルー・アイド・ソウルな歌声とはこれまた異なる独特の歌声が圧巻。更に、1966年でヴァン・モリソンのオリジナル曲が5曲を占めているのは当時としては、また、アイルランドから出てきたバンドにしては実に珍しいパターンで、それだけレーベルやレコード会社から売れるに相応しい楽曲を作り出すソングライターとして早くから認められた人物だ。アルバムを聴いていると、ヴァン・モリソン作の曲に加えて妙にアフロな曲とこのアルバムのプロデューサー、トミー・スコットの作った曲が入り混じっているので作風のバラバラ感はあるが、ヴァン・モリソンを含むバンドの出す音のストレートさ加減は一本の筋が通っているので、ややモッズバンド的な風味を漂わせるサウンドとして聴ける。

 ギターが目立つアレンジやミックスなのはストーンズ風味が漂うが、ヴァン・モリソンの歌がクローズアップされるのもあり、しかもバックの演奏よりも明らかに太くて迫力のある歌声で聴いている側を圧倒するのはこの頃から溢れ出ていた才能。メロウな曲でもロックな楽曲でもアフロな曲でも一貫しての歌いっぷりは、まだ最初期のヴァン・モリソンの歌い方で、以降のキャリアを形成する歌唱方法が確立されていない時代だからこそとも思える。一巡りして今の時代にこの時代のヴァン・モリソンを聴いて、この歌い方と声の凄さを実感出来るのは有り難い。あまり耳にする機会もなく、取りこぼしていた部分もあったが、改めて凄さを認識した。この後はThemと決別して早々にソロ活動を始めていくので、バンドとのアルバムは初期2枚となるが、60年代のヴァン・モリソンの作品もまた手を出してみよう。





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フレ
Posted byフレ

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