Taylor Swift - Fearless (Taylor's Version)
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Taylor Swift - Fearless (Taylor's Version) (2021)

テイラー・スウィフトほどの大物ミュージシャンでもこのような目に遭うとは思わなかった。詳しく調べていないが彼女の過去6枚のアルバムの著作権を持った会社が移譲された理由から、彼女のコントロールが届かない所で楽曲が管理されてしまい、その所業に苛立ちを覚えたか、その6枚のアルバムを再度録音して新しい所有権を発生させて自分でコントロールしよう。単純に過去の録音物は自分のものでないままなので、その権利を取り戻すよりも再録音して、より深い、今のテイラー・スウィフトの熟成した技術や歌唱力、そして音質の良さも含めてやり直してしまおうと。更に凄いのは、普通のミュージシャンだと、過去作の再録音のチャンスを手に入れたら、色々とやり直したりしたくなるだろうが、彼女の場合は徹底的に過去の作品を研究して、全く同じになるように、そして自身の歌や表現力が増した部分だけ深みを持たせた、より向上したアルバムに仕上げようと試みている。それに加えて当時の演奏メンバーに同じ演奏を依頼し、そこに今のゲスト陣も加えながらアルバムの完成度をもっと高みに持ち上げた作品を仕上げた。しかも2020年から既に彼女はオリジナルアルバム、しかもとんでもなくシンプルで素晴らしい新作を2枚も届けた後、このプロジェクトの第一弾となる「Fearless (Taylor's Version) 」の再録音盤を届けている。つまり1年に3枚もの録音を行ってチャートトップに送り込んでいるので、英国ではビートルズ以来の1年間に3枚のトップアルバムとして新記録を更新したらしい。
そこに拘る意地もテイラー・スウィフトらしいが、この調子だと初期6枚のアルバムの再録音盤を聴ける日々はそう遠くなさそうで、しかも途中に通常の新作も織り込んで来るだろうから、ここ数年の彼女の動向からは目が離せない。コロナ禍によってここまでポジティブに創作活動に思考回路を持っていくスタンスは誰から見てもお手本にすべき素晴らしき発想。しかも着実に前に進ませ、想像してもほとんど直接他人と接触しないまま、コンセプトを描き、楽曲を練り上げて自分で録音して、そのまま協力者達にデータを送信して音を重ね、また修正を重ねて音楽そのものは出来上がる。パッケージは別のチームが仕上げて売る準備を整えていく効率的な作成プロセスが素人にも分かるが、テレビやくだらないトークショウ、雑誌のインタビューなどに直接時間を割かないでコントロールしながら進めるとここまで効率的に、生産性を向上出来る証明ともなり、現時点では先の見えないミュージシャンの活動スタイルのひとつとしても良い指標になるだろう。全てのミュージシャンがこのような作り方が出来るものではないが、似たようなアプローチでアルバムを届けてくれたらリスナーも嬉しいし期待もしたい。
その期待のプロジェクトの最初は2008年にリリースされた、テイラー・スウィフトの名を一躍有名にしたアルバム「フィアレス」の再録音盤だった。正に本作から彼女の快進撃は始まっているし、自分のようなロック好きな人間にも大いなる刺激を与えてくれ、アイドルとは異なる実は本格的なミュージシャンの姿を示しながら全米のポップシーンを駆け上っていく姿は痛快ですらあった。ルックスの美しさは恵まれた女性だったので、一般的にそちらが取り上げられる傾向にあるが、彼女の凄さはその才能だ。そもそもカントリー出自でギターを弾いて歌って地道に活動して芽を出したのが発端なので地力が違う。その姿はライブを見てても分かるし、アルバムのクレジット、例えば本作を見ても全て当然ながらテイラー・スウィフト自身が歌詞も楽曲も書いた作品が収められている事で分かるだろう。そもそもこのメロディラインもティーンエイジャーにウケていた歌詞も彼女自身そのままだ。だからウケたとも言われるが、まずはその才能に感服。それに加えてヒット曲の連発もあるが、今回の再録音盤を最初から聴くと、全く驚く。2008年バージョンと何が違うのか、と問いたくなるほどの完成度は当然彼女が狙った姿そのままだが、その再現性に感心しながら聴いていると、確かに歌唱力や感情表現、大人になってプロのボーカリストとしての歌い方で過去の多少甘酸っぱいスタイルを一蹴して力強い作品に作り直している。そのリメイクによって、ただでさえ名盤だったアルバムが、今度は名演奏、名歌唱アルバムにもなった。ミュージシャンのほとんどが、こういう贅沢が出来るならばやってみたい事を成し遂げてみれば、それは想像よりも素晴らしい作品に仕上がっている。懐かしさを味わいながらアルバムを聴いていたが、いつしかデジャブも交えて聴き応えのあるアルバムに出会えていると喜べた作品。
当時リリースされた楽曲に加え、未発表曲もきちんと録音しての収録とゲスト陣も自分は知らないが、豪華に揃えて参加してもらい、間違いなくアップデートしたアルバムに仕上がっているのは、この世界ではほとんど見当たらなかったアップデート作品。過去にはマイク・オールドフィールドがあの有名な「Tublar Bells」をそのまま再録音した作品が知られているが、テイラー・スウィフトの場合もそれと同様以上の素晴らしさが詰め込まれ直されている。以降に彼女の作品を聴く場合は、このふたつのバージョンを聴き比べながら楽しめるし、特にふたつを比べなくてもこちらの作品を聴けば「Fearless (Taylor's Version) 」の素晴らしさは分かるだろう。しかし、2008年盤を聴いていた時は最後の最後までじっくりと聴き込むほどの魅力は自分には続かなかったが、今回は2時間収録されているのに、飽きさせる事なく、とは言い過ぎだが最後まで力強さやメロディの起伏と感情の豊かさが響くからか、きちんと聴いていられた。その意味ではやはり今の彼女はさすがに全米トップを走るアーティストと唸らされるプロフェッショナル。ポップシーンを走っていた彼女がコロナ禍で自分と向き合い、「folklore」「evermore」とアーティスティックな作品を生み出し、また「Fearless (Taylor's Version) 」のようなパターンでもその創作センスを出してきたのはホントに素晴らしい。

テイラー・スウィフトほどの大物ミュージシャンでもこのような目に遭うとは思わなかった。詳しく調べていないが彼女の過去6枚のアルバムの著作権を持った会社が移譲された理由から、彼女のコントロールが届かない所で楽曲が管理されてしまい、その所業に苛立ちを覚えたか、その6枚のアルバムを再度録音して新しい所有権を発生させて自分でコントロールしよう。単純に過去の録音物は自分のものでないままなので、その権利を取り戻すよりも再録音して、より深い、今のテイラー・スウィフトの熟成した技術や歌唱力、そして音質の良さも含めてやり直してしまおうと。更に凄いのは、普通のミュージシャンだと、過去作の再録音のチャンスを手に入れたら、色々とやり直したりしたくなるだろうが、彼女の場合は徹底的に過去の作品を研究して、全く同じになるように、そして自身の歌や表現力が増した部分だけ深みを持たせた、より向上したアルバムに仕上げようと試みている。それに加えて当時の演奏メンバーに同じ演奏を依頼し、そこに今のゲスト陣も加えながらアルバムの完成度をもっと高みに持ち上げた作品を仕上げた。しかも2020年から既に彼女はオリジナルアルバム、しかもとんでもなくシンプルで素晴らしい新作を2枚も届けた後、このプロジェクトの第一弾となる「Fearless (Taylor's Version) 」の再録音盤を届けている。つまり1年に3枚もの録音を行ってチャートトップに送り込んでいるので、英国ではビートルズ以来の1年間に3枚のトップアルバムとして新記録を更新したらしい。
そこに拘る意地もテイラー・スウィフトらしいが、この調子だと初期6枚のアルバムの再録音盤を聴ける日々はそう遠くなさそうで、しかも途中に通常の新作も織り込んで来るだろうから、ここ数年の彼女の動向からは目が離せない。コロナ禍によってここまでポジティブに創作活動に思考回路を持っていくスタンスは誰から見てもお手本にすべき素晴らしき発想。しかも着実に前に進ませ、想像してもほとんど直接他人と接触しないまま、コンセプトを描き、楽曲を練り上げて自分で録音して、そのまま協力者達にデータを送信して音を重ね、また修正を重ねて音楽そのものは出来上がる。パッケージは別のチームが仕上げて売る準備を整えていく効率的な作成プロセスが素人にも分かるが、テレビやくだらないトークショウ、雑誌のインタビューなどに直接時間を割かないでコントロールしながら進めるとここまで効率的に、生産性を向上出来る証明ともなり、現時点では先の見えないミュージシャンの活動スタイルのひとつとしても良い指標になるだろう。全てのミュージシャンがこのような作り方が出来るものではないが、似たようなアプローチでアルバムを届けてくれたらリスナーも嬉しいし期待もしたい。
その期待のプロジェクトの最初は2008年にリリースされた、テイラー・スウィフトの名を一躍有名にしたアルバム「フィアレス」の再録音盤だった。正に本作から彼女の快進撃は始まっているし、自分のようなロック好きな人間にも大いなる刺激を与えてくれ、アイドルとは異なる実は本格的なミュージシャンの姿を示しながら全米のポップシーンを駆け上っていく姿は痛快ですらあった。ルックスの美しさは恵まれた女性だったので、一般的にそちらが取り上げられる傾向にあるが、彼女の凄さはその才能だ。そもそもカントリー出自でギターを弾いて歌って地道に活動して芽を出したのが発端なので地力が違う。その姿はライブを見てても分かるし、アルバムのクレジット、例えば本作を見ても全て当然ながらテイラー・スウィフト自身が歌詞も楽曲も書いた作品が収められている事で分かるだろう。そもそもこのメロディラインもティーンエイジャーにウケていた歌詞も彼女自身そのままだ。だからウケたとも言われるが、まずはその才能に感服。それに加えてヒット曲の連発もあるが、今回の再録音盤を最初から聴くと、全く驚く。2008年バージョンと何が違うのか、と問いたくなるほどの完成度は当然彼女が狙った姿そのままだが、その再現性に感心しながら聴いていると、確かに歌唱力や感情表現、大人になってプロのボーカリストとしての歌い方で過去の多少甘酸っぱいスタイルを一蹴して力強い作品に作り直している。そのリメイクによって、ただでさえ名盤だったアルバムが、今度は名演奏、名歌唱アルバムにもなった。ミュージシャンのほとんどが、こういう贅沢が出来るならばやってみたい事を成し遂げてみれば、それは想像よりも素晴らしい作品に仕上がっている。懐かしさを味わいながらアルバムを聴いていたが、いつしかデジャブも交えて聴き応えのあるアルバムに出会えていると喜べた作品。
当時リリースされた楽曲に加え、未発表曲もきちんと録音しての収録とゲスト陣も自分は知らないが、豪華に揃えて参加してもらい、間違いなくアップデートしたアルバムに仕上がっているのは、この世界ではほとんど見当たらなかったアップデート作品。過去にはマイク・オールドフィールドがあの有名な「Tublar Bells」をそのまま再録音した作品が知られているが、テイラー・スウィフトの場合もそれと同様以上の素晴らしさが詰め込まれ直されている。以降に彼女の作品を聴く場合は、このふたつのバージョンを聴き比べながら楽しめるし、特にふたつを比べなくてもこちらの作品を聴けば「Fearless (Taylor's Version) 」の素晴らしさは分かるだろう。しかし、2008年盤を聴いていた時は最後の最後までじっくりと聴き込むほどの魅力は自分には続かなかったが、今回は2時間収録されているのに、飽きさせる事なく、とは言い過ぎだが最後まで力強さやメロディの起伏と感情の豊かさが響くからか、きちんと聴いていられた。その意味ではやはり今の彼女はさすがに全米トップを走るアーティストと唸らされるプロフェッショナル。ポップシーンを走っていた彼女がコロナ禍で自分と向き合い、「folklore」「evermore」とアーティスティックな作品を生み出し、また「Fearless (Taylor's Version) 」のようなパターンでもその創作センスを出してきたのはホントに素晴らしい。
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