Atomic Rooster - Atomic Rooster (2004 Remastered UK version)

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Atomic Rooster - Atomic Rooster (2004 Remastered UK version) (1970)
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 中高生頃から普通にロックらしいものを好きになって、巷で聴けるアルバムをひたすら聴き込んでいき、またギターにも魅了されたのでギターを手に入れるべく算段を考えたり、それまではひたすらパンフレットを集めたり楽器屋に入り浸ってみたり、はたまたレコード屋にも通い詰めたりしてなけなしの小遣いをどう使うか悩んでいたものだ。そうやって買ったレコードはやはり大事に何度も何度も聴き直して、それが実際好きだったかどうかよりもせっかく買ったのだから聴いて好きにならなきゃ勿体無い、好きなハズなんだ、理解しなきゃと聴いていた部分もあったかもしれない。それでも何枚もないから今ならサラリと聴いてオシマイなアルバムでもひたすら聴いていた。そういう経験を経ていつしかアルバムも何枚も買い揃え、概ねそれらしいロックバンドの作品なら聴いたかなと思えた頃に、一皮剥けたらこんな凄いハードロックバンドがあったのか、と気付かされたのが大英帝国70年代B級、と言うかメジャー路線に乗り切れなかったロックバンド群。ひたすらにごった煮ロックと呼ばれたりして、プログレなのかハードロックなのかサイケなのかジャズなのかとにかく何でもありのサウンドに混乱させられながらひたすら漁り集め聴いていた日々。そこでもとっても目立っていたのがAtomic Rooster。

 1970年にリリースされたAtomic Roosterの最初のアルバム「Atomic Rooster」は英国はB&Cレーベルからリリースされているが、その時のメンツはヴィンセント・クレインとカール・パーマー、ニック・グラハムと強烈な布陣で、鍵盤とドラム、そしてボーカルとベースとフルートを兼任していたニック・グラハムがバンドのフロントマンとしては大活躍していたが、このファーストアルバムの初っ端から最後までとにかくぶっ飛びまくりのハードロック、ハードロックと括れないサウンドでもあるが、オルガンハードに加えてカール・パーマーのハチャメチャなドラミングもクローズアップされ、一方ではニック・グラハムのソウルフルなボーカルと繊細なフルートも前面に出されての傑作アルバム、傑出したバンドの存在感をアピールしまくっている。楽曲がとにかくカッコ良い最高の「Friday The 13th」を耳にしてみればそのショッキングなハードロックのパワフルなスタイルも理解してもらえるだろうし、続いての「And So To Bed」は同系統の曲ながらややメロディアスにバンド感を打ち出した曲で、早くもニック・グラハムの歌声の力強さに驚く。そして「Winter」でのフルートから始まる軽やかで美しきサウンドとメロディこそ大英帝国サウンド。当然のアレンジが施されての楽曲展開に加えて優しげなフルートから一転しての攻撃的なフルートサウンドはこれぞロック的フルートサウンドと唸らされると同時に、ヴィンセント・クレインのピアノの美しさにも耳を惹かれる素晴らしさ。これほどまでのクォリティの高いサウンドを奏でられるバンドもそう多くはない。そこにカール・パーマーまでもがドタバタとドラムをパワフルに決めてくれるカッコ良い作品で、その勢いは続いての「Decline And Fall」にも持ち込まれ、卓越した楽器テクニックを持ったメンバーのそれぞれのパートでのソロプレイを存分に堪能できるナンバーが炸裂してくれる。そこにはなぜかコンガパーカッションまで加えられて、また変わった側面を聴かせてくれるオルガンハードの洪水。

 B面はニック・グラハムのメロウなセンスとヘヴィな歌声が印象的な「Banstead」から始まるが、これもまたオルガンハードのクサい楽曲でこの頃のロックリスナーは割とヤラれる気がする。そしてまたヘヴィなオルガンと熱唱の歌声が耳に付きながらもバンド全員で派手に演奏しまくるバックが強烈なナンバーとなっている「S.L.Y」。そして本作でこのカバー曲を何故に持ち込んだのか良く分からないが、不思議な事にジョン・メイオールの「Broken Wings」がヘヴィなオルガンハード曲となって収録されているが、知らなければ普通にオリジナル楽曲だと思うかのようなプレイはさすが。それでも聴いているとこんなハードなオルガンナンバーでブルース進行とブルース風味がたっぷりな不思議な質感に興味を覚える。そして蓋を開けてみればジョン・メイオール楽曲と分かった次第だが、ニック・グラハムの歌声はこういった曲でも問題なくマッチする実力派のボーカリストと証明されたようなものだ。そして最後はこれぞアトミック・ルースターとばかりにオルガンハードとベースブリブリにハチャメチャドラムの「Before Tommorow」が強烈にカッコ良く疾走感溢れて決めてくれる。どの曲もどの曲も聴きどころ満載の英国ハードロック・オルガンハードだけに留まらない名盤。

 それでも面白い事にバンドはこの頃も常に進化しており、英国でアルバムをリリースするかしないかの頃には既にオルガンハード路線に留まらず、ギターをメインにしたハードロックテイストも導入していこうとの意図もあり、アンドロメダからジョン・デュ・カンを入れているが、もっともその前にニック・グラハムもカール・パーマーも脱退してしまった事も手伝っている。そのあたりの流動的なメンバー変移もあり、アメリカでリリースされる時には「Friday The 13th」「S.L.Y」「Before Tommorow」はジョン・デュ・カンのボーカルに差し替えて、ギターも加えての別バージョンで録音されて収録している。今ではそれは「USバージョン」として認識されているが、1991年にレパートワーからこの辺りがCDでリリースされた際には何とこのアメリカリリースバージョンが再発されたから話はややこしくなり、曲によってギターがいたりいなかったり、歌声も異なったりするチグハグなアルバムは、英国盤のカッコ良さから少々離れた散漫な印象すら抱く作品になってしまっていた。その後2004年になりようやくサンクチュアリレーベルからリマスタリングされたCDがリリースされ、この時には英国バージョンが中心となり、ボーナス・トラックとしてUSバージョンの3曲が加えられてすっきりとしている。ついでにジョン・デュ・カン達が加わってからのBBCセッションも入っているのでお得な一枚。もっとも今では更にすべてが収録されたボックスセット「Sleeping for Years: the Studio」もリリースされているので、Atomic Roosterの歴史そのものも丸ごと聴けるが、このファーストアルバムのヘヴィでカッコ良いオルガンハードロックは英国バージョンで存分に楽しんでほしい一枚。





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フレ
Posted byフレ

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