The Crazy World of Arthur Brown - The Crazy World of Arthur Brown (Super Deluxe Edition)

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The Crazy World of Arthur Brown - The Crazy World of Arthur Brown (Super Deluxe Edition) (1968)
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 古いバンドを聴く時にレコードやCDを引っ張り出して聴く事も今ではまずなくなってしまった。目の前のMacのiTunesに入れてあるライブラリを眺めながらこれを聴こう、アレを聴こうと言う事も少なくなってしまった。それではどうしているかとなると、iTunesやSpotifyにあるかどうかと普通に検索窓に入れて探してあればそれで聴くが、それも実は面倒になってしまって次なる手段のひとつにしかなっていない。一番手軽に聴いているのがYouTubeにあるかな、と言うパターンで、それがオフィシャルであってもなくても聴いている事が多いが、ただ、古いアルバムは大抵がリマスタリングされているので、果たしてその音源がいつのリマスターバージョンなのか、その辺の情報が分かるものでしか聴けないのは悩ましく、これはサブスクで聴いてても同じ事を思うが、まだサブスクは分かりやすい。それでもライナーノーツは無いのでアルバムクレジット情報を見たい場合には別途Discogあたりで探してフムフムと唸っていくが、随分と時代も変わったものだ。それで大抵のソースの中身も分かるし、ボーナス・トラックですら簡単に聴けてしまう時代。ホントにこれで良いのか、と思う時も多いが一向に無くならないのだからもう50年も経過していれば同じ事かとも思う。自分のように昔に散々買っている輩は既に貢献しているだろう、だから許される、のような甘えかもしれないが。

 The Crazy World of Arthur Brownとの出会いは自分が随分と若い頃、まだ二十歳前頃だったからその衝撃たるや凄まじかった。MTVではなかったので、多分ビートクラブのビデオか何かのオムニバス映像集で見たと思うが、もちろんあの「Fire」のぶっ飛びとんでもない映像が最初だ。元を正せばオジー・オズボーンも然りだが、偶然の事故でアタマに火が点いた事があって、そのアイディアに着想して「Fire」と言う曲を書き、しかもあのパフォーマンスで見世物として成立させた商魂深いアーサー・ブラウンの根性が実って当時大成功したヒットメイカーとなり、割と早い時期から好き勝手に出来たとも言えるし、その奇抜なインパクトが求められるアーティストになってしまって苦労したかもしれない。それでも結局ポリドール傘下のトラックレコード、即ちThe Whoと同じレーベル、ジミヘンとも同じレーベルに所属したからこそ最初のアルバムのプロデューサーに早々とThe Whoのピート・タウンゼントが就任して1968年にアルバム「The Crazy World of Arthur Brown」をリリース。「Fire」でのヒットの期待を全く裏切る事なくジャケットの強烈なインパクトも去る事ながら中に記録されているサウンドのインパクトも凄かった、そして今聴いても凄い。どうしても一発ヒットが大きいので奇人変人的イメージしかないが、アルバムに収録されているサウンドは、基本ヴィンセント・クレインのハモンドが狂乱のプレイを聴かせるオルガンハード、オルガンプログレッシブ路線にアーサー・ブラウンの奇抜な演劇的歌唱が絡み合う未だに誰も成し得ていないような喜劇アルバムに仕上がっている。あるとしたらこの音楽性だけを抜き取ってのAtomic Rooster、それはもちろんヴィンセント・クレインのオルガンの音色とドライブ感が引き継がれているが、アーサー・ブラウンの方はヴィンセント・クレイン達が抜けた後はこの音楽性からは離れていったので奇跡の邂逅の一枚とも呼べる。それをピート・タウンゼントがプロデュースしているのだから凄い。

 何が凄い、ってその迫力と演劇性。マグマ的と言うかブーズ的と言うか、もっともアーサー・ブラウンが元祖なので逆だが、演劇性とロックオルガンの融合、しかも狂気を見せているかのようなパフォーマンスがアルバムに収録されているから飽きない。これこそロック、と頷いてしまうくらいにロック。よく言われるが、このアルバム自体にはあのカール・パーマーはまだ参加しておらず、この後のメンバーチェンジの際に加入しただけで、ほんの一瞬でそれこそアトミック・ルースターに行ってしまっているので、ここでのドラムはドレイチェン・シーカーが叩いているらしいが、ジョン・マーシャルも居たらしい。ベースはニコラス・グリーンウッドでそもそもバンドと言うよりもセッションメンバーの集まりで成り立っていたバンドとの見方の方が正しいかもしれないが、メンバーの流動性についてアーサー・ブラウンのせいとも聞かないし、どういう理由が多かったのだろうか。これだけ好きに暴れまくれれば能力あれば楽しかったとは思うが、あまりにもそれに付いていくのも大変だったのかもしれない。一曲スクリーミング・ジェイ・ホーキンス作曲作品もあるが、聴いてて違和感もないし特に曲を作ってもらう必要性もなかったとも思うが、それくらいにアーサー・ブラウンのパフォーマンス能力が高かったからだろう。英国オルガンロック好きなら既に聴いていると思うが、どうしてもアーサー・ブラウンその人のパフォーマンスに耳奪われてしまい、バンドの音や「Fire」以外の曲の質の高さが疎かになっていくので改めて聴き直していた。

 凄いのが2018年に50周年記念盤としてリリースされた「The Crazy World of Arthur Brown (Super Deluxe Edition)」で、LPはステレオ盤そのままとしても3CDとは何ぞやと気にしてみれば、オリジナルのステレオ盤、それにいくつかの当時のシングル曲が加えられて、2枚目のディスクでは当時からリリースされていたのだろうとは思われるがCD化された事のなかったモノラル盤が丸ごと収録されている。これに加えてのボーナス・トラックがいくつも収録されているが、以前のボーナス・トラックバージョンにも収録されていたモノラルミックスバージョンとオリジナルモノラル盤のミックスは異なっていたようで、モノラルバージョンだけで同じ曲が複数存在、更に「Fire」でもファーストバージョンと最初期のテイクもあり、好きな人にはとんでもなく研究し甲斐のある収録が嬉しいだろう。更に3枚目のディスクにはBBCセッションやラジオ出演時の演奏が加えられ、デモと言うかアルバム録音前の楽曲まで収録しているフルフル収録のこれ以上何も出ません的なリリースに拍手喝采。自分もそこまですべて聴けていないし、聴いて比較出来ていないが、同じ曲がいくつも比べて聴けるのも楽しくなるだろう、いや、それこそ病気かもしれない。





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フレ
Posted byフレ

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