Moody Blues - On the Threshold of a Dream (2006 Remastered)

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Moody Blues - On the Threshold of a Dream (2006 Remastered) (1969)
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 時代がシングルヒット中心からアルバム単位でアートを音楽で奏でられるひとつの物語まで表現できるようになり、ロックは一気に開花してアート作品へと昇華していった。60年代はその過度期でもあり、その扉を開いたのはビートルズかもしれないし他のバンドかもしれないが、表現する側のミュージシャン達はアルバム単位での芸術性に惹かれていく方が多く、そこから更にコンセプトアルバム的発想が生まれ出てくるのも至極流れ的には理解しやすい話。ただ、その芸術性の高さを飽きさせずに聴かせるという次元まで持ち上げていくにはどのバンドのどのアルバムでも結構なハードルの高さもあったと思う。出来ても偶然の一発だったり、奇跡の一枚だったり、同じ事は続けないスタンスだったり、あまりにも集中する仕事のためバンドが崩壊したりとなかなか難しかったのかもしれないが、その中でも何枚もコンセプトアルバムをひたすら作り続けたバンドがMoody Blues。

 1965年のデビュー時にはシングルヒットを狙うビートバンドでもあった彼らが、1967年頃には既にガラリとバンドのスタイルを一変させた音楽に進んでいき、それはクラシックとの融合、それも時代性を物語るメロトロンを用いてのオーケストラの融合のようなスタンスで、かなり早い時期に革新性と叙情性を武器にした曲を作り、更に凄いのはその代表作ともなった「サテンの夜」がヒットした、ヒットさせた事でバンドの知名度も上げ、続けとばかりに出てくるアルバムも期待を裏切る事なくハイレベルな作品を続出していった点。1969年にリリースされた「On the Threshold of a Dream」は3枚目のアルバムだが、既に見事なまでの完成度を誇るアルバムに仕上がっており、今聴いてもこれが1969年のアルバムとは思えない。それほどの洗練されていて楽曲のレベルも高く、しかも近年のリマスタリング技術も駆使されると素晴らしく美しい音質で蘇っているので、またそこで聴き直してしまうほどの美しさを持つ。何が美しいかとなると、音色で書けばアコースティックギターやメロトロンも然る事ながら彼らのコーラスワークの美しさや楽曲そのものの展開やメロディだ。ムーディ・ブルースはプログレッシブ・ロックの云々との肩書や説明もよく見られるが、もちろんウソではないしそういう面も大いにあるが、基本的に英国フォークを基調としたバンドだと聴けるし、その骨格にロックとは少々異なるアプローチでのメロトロンやフルートなどのクラシック的楽器を組み合わせていき、それでも軽やかに優しく、そして荘厳に奏でられる色合いで仕上げられていると思ってもらう方が賢明と思っている。ビートルズのメロディと何ら大差ないレベルで紡がれているのは知られている話だろうが、リスナーの数が違いすぎるか。

 本作も何度かリマスタリングされているが2006年のリマスター時にはボーナス・トラックがかなり追加されており、長尺バージョンや別ボーカルミックス、有名な「Have You Heard」の分割される前のオリジナルバージョンやその合間に入れられている「The Voyage」のオリジナル・バージョンと魅力的なトラックが聴ける。更に別立てでアルバムがリリースされているのでそこまでの価値は見い出せないかもしれないが、BBCセッションから4曲も追加された豪華な作品に仕上げられている。もちろん音質のクリアさはかなり群を抜いた透明感が味わえるのも魅力的で、自分自身久々に聴いたのもあるが、ここまで美しい音だったかと驚くばかりの感動を味わっている。多分時代が時代だからだと思うが、エコーやリバーブも含めてアナログ的自然さが作り上げた音色だから聴きやすいのだろう。ムーディ・ブルースの全アルバムの中では随分と地味な印象の作品として評価されているようで、確かに派手さや叙情性、ドラマ性には欠けるが、そういう作品を狙ったアルバムではなさそうだ。もっと身近にふとした聴きやすさや手に取りやすさ的な優しさに溢れた作品として聴ける。そもそもムーディ・ブルースの凄い所はメンバーそれぞれが曲を書いて持ち寄っているのでそれぞれの個性がきちんと出ているにも関わらず、アルバムとして曲を並べてしまうとトータルコンセプトアルバムとして聴けてしまうあたりが不思議。バンドとして一体となっているから、という理由にしても素晴らしく、メンバー達の音楽的背景や生い立ちが似ている部分が大きいのかもしれない。そのあたりはグレアム・エッジやジャスティン・ヘイワードのソロアルバムを聴いてても近しい部分を感じるので、さすがムーディ・ブルースと唸らされるが、本来そういった事を考えなくても良いアルバムとして制作されているひとつのストーリーが素晴らしい。

 邦題の「夢幻」も美しいし、後のレーベル名にも用いられた「Threshold」という単語がタイトルに用いられた彼ら的には記念すべき作品で、特にB面の流れの素晴らしさには感動する一枚。アナログ時代はよく聴いてたな、と思い出しながら久々にじっくりと聴いていた美しき作品。





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フレ
Posted byフレ

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