Spiders From Mars - Spiders from Mars +2

0 Comments
Spiders From Mars - Spiders from Mars +2 (1978)
B079PDLDB4

 デヴィッド・ボウイは時代と共に音楽性を大きく変化させていき、だからこそシーンで生き残り最後まで第一線のアーティストとして活躍していたが、最も野心的に活動して光り輝いていた時代は誰が見ても頷くであろうジギー時代。その時のバックを務めていたバンドは実際そう名付けていたかどうかはさておき、一般的にはSpiders From Marsとして語られていた。単にアルバムのタイトルとして付随していたから、そちらが先にありきでバンド名を表すにはそうしていたとの見方が強いように思うが、その中でもミック・ロンソンはアタマ一つ抜けて目立っていた。ルックスの綺羅びやかさもともかくながら音楽的センスの高さもグラムロック時代にマッチし、ステージアクションでも目立ち、そのせいかイアン・ハンターやボブ・ディランからも可愛がられてボウイの元を去ってからもソロ活動と合わせてシーンでも活躍していた方だ。ところがそのボウイの黄金時代を支えた他のメンバーはボウイとロンソンに去られた後に大した仕事にも恵まれなかったか、この面々でやれる事をやろうと合意したかは定かでないし、たまたまそこに新たなメンツの知り合いもいたから出来上がったかもしれないが、マイク・ガーソンとトレバー・ボルダー、ウッディー・ウッドマンジーはバンド、Spiders From Marsとしてアルバム制作を行っている。

 1976年に英国はパイレーベルからリリースされた「Spiders from Mars」はボウイのジギー時代の残党メンバー3名に加えて花形であるギタリストにはKestrelのギタリスト兼ソングライターとして知られていたデイブ・ブラックを迎え、ボーカルには無名のピート・マクドナルドを配して軽快なR&Rバンドサウンドを出している。そもそも残党メンバーと言えども音楽センスの高さはその後の活動を知っていれば、きちんと評価されるべき面々とは思われるが、この時点ではそれ以上のバンドの方向性や売り方のような取り組みが出来ていなかったか、時代性を考えてもさほど目立つようなスタイルのアルバムには仕上がっていない。ただ、ケストレルでその才能の片鱗をたっぷりと魅せてくれたデイブ・ブラックの作り上げる楽曲をThe Spiders From Marsの名前を使ったサウンドに変換するとこうなるのか、的にポップでキャッチーで聴きやすいR&Rが奏でられるのは面白い。元々の才能の高さは知られていたデイブ・ブラックもここで名前を借りてシーンに君臨する夢を追いかけたとは思うが、そうは甘くなかったと見るべきか、シーンの流行を読む目に欠けていたと見るべきか、音楽だけを聴いていると流石だな、と感じるメロディセンスやアレンジセンスはアチコチで聴ける。それに加えて「Prisoner」でも聴けるようにマイク・ガーソンの流れ落ちるようなピアノが振りかけられている楽曲ではかなりセンスの良いハイレベルで叙情的な作品が聴けるのもこのバンドの実験の成果。ボーカルのピート・マクドナルドは可もなく不可もなくと言った歌でもあるので、特徴的ではないが、その分プロフェッショナルなメンバーが活躍している部分は大きい。

 冒頭の「Red Eye」で聴けるように基本的に軽快なR&Rサウンドが中心となった、もっと言えばジギー時代のボウイサウンドが基本となったかのようなアレンジスタイルが中心となるが、元々はデイブ・ブラックの楽曲センスなのでポップ要素が大きい。だから売れておかしくないサウンドではあるが、どれも上手く作られている、と言えるものの突き抜けたカッコ良さ、曲の良さが出てこないから悩ましかったか、それともバンドの時代遅れ感が人気不調の要因だったか。デイブ・ブラックからすれば今となっては実に人気の高くなっているケストレルが当時さほど売れなかった事もあり、Spiders From Marsで再起を掛けただろうが、そうは上手く進まなかった残念感もある。ピート・マクドナルドの歌も悪くなかったが、やはりこういうバンドの残り方は成功には程遠くなってしまうのだろう。マイク・ガーソンのピアノを中心としてデイブ・ブラックのセンスを活かした作りだったらちょいと変わった方向性のスタイルで出来上がったかもしれないが、そうするとボウイのジギー時代のバックバンドの色からはかなり離れてしまうか。難しい。「Good Day America」あたりを聴いているとこのままパワーポップの路線に振っても良かったとも思うくらいの出来映えで、やはりセンスの高さは素晴らしい。

 2001年頃にはリマスタリングCDが再発され、ボーナス・トラックとしてシングルバージョンの「(I Don't Wanna Do No) Limbo」は無視されて、「White Man, Black Man」のB面曲「National Poll 」と未発表アウトテイクの「Roller」の2曲が収録されている。それでもボウイのバンドとの知名度がこの時代でも生きていて宣伝文句に使われるのだからやはりその路線から外れるワケにも行かなかった理由も分かる。悪くないサウンドながら、さらに個人的にはマイク・ガーソンのピアノが大好きなのでここでも聴けるのは嬉しいが、どうにも勿体無いアルバム。





関連記事
フレ
Posted byフレ

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply