British Lions - British Lions (Remastered)

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British Lions - British Lions (Remastered) (1978)
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 バンドの成り立ち、生き様にはホント色々なパターンがあり、先日はオリジナルメンバーが不在となったバンドの悲哀を感じたが、今度はオリジナルメンバーはいるものの、バンドのフロントを担うメンバーが消え、更にバンドのソングライターも消えてしまい、残党で作り上げて活動していたバンドもある。そもそもそういう才能があってやってたかどうかはともかく、同じバンド名ではありながら作風が大きく異なるのは当然で、更に次に入れたメンバーが今度はメインソングライティングを行ってしまうという、普通に考えたら乗っ取られている状況とも言えるが、それではとばかりにバンドも鞍替えをした珍しいパターン。しかもそれがMott The Hoopleなる有名なバンドの末期に行われていたのだから畏れ入る。Mott The Hoopleからミック・ラルフスが抜け、代わりにミック・ロンソンが加入したのもつかの間、今度はメインの顔役だったイアン・ハンターがミック・ロンソンと一緒にバンドを離脱してしまい、残されたメンバーは悩んだ末に新たなシンガーを加入させ、バンド名をMottとしてアルバム2枚をリリース。その時のメンバーはオヴァランド・ワッツ、モーガン・フィッシャー、デイル・グリフィンにレイ・メジャーとシンガーのナイジェル・ベンジャミンだったが、どうにも先行き定まらないままナイジェル・ベンジャミンが脱退。

 そこで時代はまた面白い巡り合わせを実現してくれて、この頃既にバンド放浪者となっていた元Medicine Headのジョン・フィドラーをMottに加入させるも、セッションしている内にどうもジョン・フィドラーが主役となり始め、楽曲や歌詞の提供も行い、バンドが元来求めていたソングライターが出来上がってしまった事から、バンドのメンバーはジョン・フィドラー以外はMottと同じながらもバンド名をBritish Lionsと改めて1978年にファーストアルバム「British Lions」をリリースした。カッコ良く書けば、Mott The HoopleのメンバーとMedicine Headが合体したバンド、となるが、その合間にMottの流れが入るので決して派手な宣伝文句通りの流れではなかったようだ。それでも歴史的に見れば期待させる面々によるバンドだと思う。メインソングライターがジョン・フィドラーである以上、Mott The Hoopleの流れを期待する方がおかしくて、どちらかと言えばMedicine Headの音を期待する方が良いだろうが、出てきたアルバムは割とジョン・フィドラーだけでもなく、オヴァランド・ワッツやモーガン・フィッシャーの曲も占めていた事からひとつの新しいバンドの音として捉えるが賢明。

 そういう意味合いでアルバムを聴き始めると冒頭からMott時代のナンバーのフレーズが出てきたりもして、ユーモアとして捉えて聴いておくべきか、やはり何かを引き摺っているバンドと見るか悩ましい。普通に聴けばかなりキャッチーな色合いが強いロックバンド形態のサウンドで、ジョン・フィドラーがギターも弾く事からレイ・メジャーと二人のギターに鍵盤奏者も在籍しているメロディ楽器の豊富なバンドとなり、そのカラフルさを活かした曲もいくつか聴ける。ただ残念ながらアルバムのジャケットのカッコ良さとは裏腹に1978年という時代にこのスタンダードなロックナンバー、どちらかと言えばやや古さを感じるロックナンバーばかりは受けなかった。今聴いてても何の新鮮さも刺激も感じられず、どことなくMott The Hoopleの名残を惜しんでいるかのような曲のアレンジに引っ張られている感じが強く、バンド自体はパワフルに演奏しているものの、完全に時代に取り残されている。時代に合わせてパンキッシュなスタイルを持ち込むなりすれば過去の来歴から繋がっただろうとは思うが、そうもならずオールドタイプなサウンドに始終している感触。どこを目指した、と言うのがないままに出来上がっているアルバムな感じもあるので、そもそも出せばある程度は売れるだろうという判断から出来たかもしれない。

 好意的に聴いてみてもジョン・フィドラーの才能のおかげでB級バンドにはならず、第一線にあるバンドのレベルは維持されているが、曲そのもののフックの足りなさが大きいか。これだけカラフルな楽器隊が揃っているのに勿体無い。ひとつづつの曲はドラマティックなものもあればR&Rなだけなのもあり、作曲陣が多いことからバラバラになっているとも言えるが、あと少し何かを捻り出せればもう一歩進めたような気もするだけに残念。中でもモーガン・フィッシャーのピアノを筆頭とした鍵盤が突出したプレイを聴かせてくれるのは聴きどころ。

 2006年にリマスター盤がリリースされているが、ここでボーナス・トラックも追加され、BBCライブバージョンが3曲と1978年デヴォンでのライブから「Wild One」を、そして1979年だから次のアルバム用のジョン・フィドラーのデモテープから4曲が収録されている。それにしてもこんなバンドまでがここまでの発掘ソースをリリースしてくるのだから末恐ろしい。また、それでもニッチなリスナーがきちんと買って聴いてアレコレと思いを巡らすのだから更に畏れ多い。しかしデモテープ聴いてるとかなり良い感じに聴こえるのでやはりバンドセッションでのアレンジ具合がマズかったのかもしれないと思い直しているところ。









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フレ
Posted byフレ

Comments 2

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おっさん  

モットの頃からリアルタイムで追っかけたので、
2009年の再結成時にロンドンのTroubadour Galleryで
ジョン・フィドラーとモーガン・フィッシャーが
演奏しているのをyoutubeで見て感動しましたです。

2021/04/12 (Mon) 05:21 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>おっさん

リアルで追い掛けてましたか…、感慨深かったでしょうねぇ…。

2021/04/18 (Sun) 23:31 | EDIT | REPLY |   

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