Foghat - Stone Blue

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Foghat - Stone Blue (1978)
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 英国のバンドがアメリカを制覇する時のパターンとして、普通にそのままの音を奏でていたらアメリカで何故か受けた、と言うものと、アメリカなら受けるだろうスッキリさ加減、スカンとヌケの良いサウンド作りを目指して売っていく、と分かれる。Led ZeppelinやRolling Stones、Beatles時代ではアメリカ受けを意識しないままバンドの出しているサウンドそのものがアメリカで受け入れられてバンドがデカくなったパターンだが、Humble PieやFoghatは明らかにアメリカ制覇を視野に入れたバンドサウンドを心掛けて作っていったからこそウケた実例。今の時代となってはあまりその差も明確でなくなってきているし、だからアメリカでウケると言うような法則もあるにはあるだろうが、世界レベルで向上しているから何がどこでどうウケて行ってもおかしくない状況になっている。だからRammsteinやBabymetalはそのままアメリカでも受け入れられているし、一方ではアメリカンミックスと称して異なるミックスを施して売りにかかるアルバム、バンドもある。狙い通りには何事も上手くいかないが、それでもアメリカンドリームは今でも生きている伝説には違いない。

 英国のバンドながらアメリカを目指し、アメリカで活動を行い、そしてアメリカで成功の証を掴み取ったバンド、Foghatの1978年リリースアルバム「Stone Blue」は、大傑作ライブアルバム「ライヴ」の次に放たれた快活なフォガットサウンドそのままのアルバムながら、後の時代になればなるほどさほど注目されなくなった不思議なアルバム。自分も後追い世代だったので、フォガットを漁る時はまずは「ライヴ」、そしてその前の「Fool for the City」辺りを先に聴く事になり、そこから更に遡っていく方が多かったので、本作は割と後から聴いていた気がするが、後で聴いていても、そして当時も恐らく同じだったと思われるが、1978年にしてこの古臭いブルースとブギスタイルのアルバムはさすがに時代遅れ感が強かったのではないだろうか。その古臭さを抜きにして今また改めて聴いていると、かなりカッコ良く快活でブルースを見事なまでに昇華してハードロック、ブギの中に溶け込ませた本格派のバンドスタイルとして聴けるのは面白い。エディ・クレイマーのプロデュース作品で仕上げている事からかなりスッキリとしたバンドサウンド、他の装飾音が入らない、バンドそのものの音を見事に迫力ある音で仕上げているアルバムで、その意味では古さを感じる事のない、ストレートなパンチある音が聴ける。

 冒頭のアルバムタイトル曲「Stone Blue」からして俺たちはブルースブギバンドだ、とばかりにノリノリのブギサウンドでまだまだイケるぜとばかりのカッコ良いリフを聴かせてくれるのが嬉しい。そしてこの頃のフォガットの生々しい演奏がばっちりと収められた「Sweet Home Chicago」はロッド・プライスの超絶カッコ良いスライドプレイがこれでもかと言うくらいに炸裂したアルバム中のハイライト演奏。もちろんロバジョンのアレだが、基本原曲のままでブルースブギに仕上げてのスライドプレイだから畏れ入る。そしてこれが1978年のアルバムに収録されているのは明らかに時代錯誤的スタイル、とも言えるが、流行り物に囚われないバンドスタイルで傑作を生み出したとも言える。その勢いのままの「Easy Money」は更にヒートアップしたブギを刻んでアメリカらしいと言いつつもアメリカではこんなサウンド絶対に出てこないだろうと言う、実は英国らしいビートの利いたブギ。ただ、このノリはアメリカ人が大好きなのは間違いない。アナログ時代のA面最後はややおとなしめのカントリータッチ風味すら感じられる「Midnight Madness」で歌を聴かせながらのギターフレーズを楽しませてくれる快作を味わえる。こちらも音色風味はアメリカ的ながら曲構成とリフなどはどこから斬っても英国ロックバンド的。この時点でのフォガットのメンバーはベーシストのみアメリカ人なので、基本英国メンバーそのままだからだろうか、展開されるギターソロとバンド演奏が絡む展開もカッコ良く魅力的。

 そしてアルバムの次のハイライト曲はエルモア・ジェイムズの「It Hurt Me Too」で、こちらも歌を聴かせるかの如くギターがソウルフルに、ブルージーに弾かれて展開されつつ、またしてもロッド・プライスの素晴らしいスライドソロが楽曲を宙に舞わせる美しきスタイルが味わえる。ここまでのプレイを聴かせてくれるのもそうそう無いだろうし、この時代の全盛期のフォガットだからこそ出来た奇跡のひとつとも言えるだろうか、光り輝く一曲に仕上がっている。更にギターリフがやたらとカッコ良く、ギターの音色もザクッとした耳に付くサウンドでの「High On Love」もまた二人のギターサウンドの絡みが自然に耳に入ってくるカッコ良さを持つ作品。キャッチーなコーラスワークとサビにこのギターリフにヌケの良い歌声と至って定番通りに展開される楽曲構成にギターソロと普通に普通過ぎるが、それがやたらカッコ良く聴こえるのはバンドの充実ぶりか。「Chevrolet」はややヘヴィサウンドでのブギスタイルに挑戦したか、それでもソウルフルなノリを意識してのスタイルでこの頃メジャーシーンで流行していたディスコサウンドを意識したかのようなリズムを持ち込んでいる。そしてアルバム最後は「Stay With Me」とギターアルペジオが鳴り響くバラード的楽曲でアコースティックに歌を聴かせ、アルバムを終えてくれる。

 2007年頃にリマスター盤が再発されているが、元々音の分離の良いアルバムだったからか、より一層クッキリとした印象はあるし、音の立ち具合もしっかりとしててかなり聴きやすく現代的な音色に仕上がっていると思う。ましてやギターの音がダイレクトに突き刺さってくる音なのは聴いててかなり盛り上がる。アルバムの中身がここまでしっかり出来ていたとは自分も意識していなかったので結構じっくりとハマり直して聴いていたが、なるほどアメリカ受けさせる、と言いつつも英国バンド的側面が強く、上手い事作り上げていたのだと感嘆した面も大きかったナイスなアルバム。





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フレ
Posted byフレ

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