Paul Stanley's Soul Station - Now And Then

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Paul Stanley's Soul Station - Now And Then (2021)
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 ロック好きなリスナーで且つソウルも好きだと言う人は今は割と多い気もするが、ロックがリアルだった時期にはほとんどいなかったか、いても表面では言えなかったような気がする。特に差別があったワケでもないが、どこかロックとソウルは相容れない、その後の時代で言えばメタルとラップは相容れない、なんて思われていた事もあっただろうか。時代を経てみればどれもこれも融合を果たして更にそこから分裂していく始末で音楽には全く境目が不要だと証明されつつあるが、古い時代ではそうでもなかった。だからこそソウルは黒人のものだったし、ロックは白人のものだった。そんな人種差別が強かったからこそそういう流れもあったとは思うが時代の産物。ただ、その境目の無さを気にしないで聴き込んでいた若者たちも多く、ブルースの世界で言えばマイク・ブルームフィールド達がそうだし、英国の連中はそもそも音から入ってるから境目を気にしなかったし、ビートルズにしてもストーンズにしてもフーにしても黒人コーラスグループのカバー曲は山のようにあるし、JBからの影響もそうだ。だから聴いている側は区別しているがミュージシャン側は貪欲に吸収していったのが正解。まったくロックファンとは狭義な世界だ、とは自分の事だけか。

 今でもKISSのフロントマンとして世界に名を知られているポール・スタンレーが、まさかこんな素敵なプロジェクトでアルバムをリリースしてくるとは思わなかったPaul Stanley's Soul Stationの「Now And Then」。ど真ん中に座っているポール・スタンレーのデカさと目立ちぶりは主役だから当然ながら、実はバックを固めるメンバー達の来歴キャリアもその筋ではとんでもない面々が集まっているらしく、さすがプロ中のプロ。それでいて今始まった話でもなく、何年も前からポール・スタンレーが大好きなソウル曲を歌いたいという事からライブハウスクラスでしょっちゅうライブを繰り広げていたようだ。その集大成としての第一弾がこのアルバムのリリースとなったようで、その意味では下積みも長くじっくりと熟成させた味わい深い作品に仕上がっている。どの曲もどの曲も確かにロックやポップスとはまるで雰囲気の異なるソウルなカバー曲ばかりかと思えば、実はポール・スタンレー作曲作品が5曲ほど収録されている。それがまた面白い事に、全くカバーとの差が分からないようなしっかりとソウル作品的ナンバーに染められており、普段キッスで出てくる曲作りとも根本的に違うアプローチだろうし、狙って作れるのもさすがプロ。ただ、ポール・スタンレーらしさをどうやって出していくかという点は音楽的に現時点ではなかなか難しそうにも思う。やはりそれらしい雰囲気を出した曲、と言うレベル感でもちろんハイレベルながらも個性的かとなると、という意味だが。ただ、ボーカルスタイルは凄い。素晴らしい。こんな歌い方出来るのか、と言わんばかりに甘いソウル声、そしてファルセットも使い、柔らかにエロティックに歌っているのも流石に素晴らしい。

 自分的にはほとんどソウルナンバーは通っていなかったので曲を知って、比べてと言うような聽き方は出来ないが、収録されている曲はスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズやテンプテーションズ、アル・グリーンやデルフォニックス、スタイリスティックス、フォー・トップスと知ったグループばかりなので、聴いているだろうとは思う。それもこれもポール・スタンレー風味の作品に仕上げてしまっているから違和感なくポール・スタンレーの歌もの作品として聴いている。すると随分と心地良い円やかさに雰囲気を持ってこられて心落ち着く時間を過ごす事が出来る。キッス聴いてたらそうはならないのに、このアルバムはまるで別のシンガーの作品を聴いているかのようなものだ。自分が知らなかっただけだが、2018年には来日公演までも行っていたらしいからその本気ぶりも伺える。そういえばバックのドラマーはエリック・シンガーが参加しているのも興味深く、キッスの頃から二人はソウルミュージックの話で盛り上がっていたとかいないとかあるのだろう。ここでまた一緒に仕事をしている関係性も微笑ましい。そもそもがスーパーエンターティナーのポール・スタンレーがソウルミュージックの歌は当然ながら、パフォーマンスで観客を魅了する事は何の問題もないだろうからこの来日公演含むライブでは相当に楽しめた事だろう。YouTubeでいくつもライブ映像が見られるし、そのスタンスも堪能出来るのでオススメ。さすがエンタメの国、アメリカの雄なだけあって完璧なバンドと完璧な歌、そして完璧な楽曲によるアルバムは普通に流していて心地良く楽しめるし、オシャレさも半端ない。





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フレ
Posted byフレ

Comments 4

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akakad  

豪州式パブロックに少し雰囲気が似てますね
https://www.youtube.com/watch?v=9jiu9eV5XXk
上の曲のようなメロディは結構好きです

2021/04/03 (Sat) 23:51 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>akakadさん

豪州式とは初耳で…。
へぇ…

2021/04/04 (Sun) 18:23 | EDIT | REPLY |   
akakad  

https://en.wikipedia.org/wiki/Pub_rock_(Australia)
パブロックのオーストラリア専門記事がWikipediaにできていて
AC/DCやRose Tattooもその系統に入れられちゃうくらいハードロック寄りなんですよ
地元密着型もCold ChiselにThe Angelsとほとんどハードロックです
かといえばINXSがあってかなりおおざっぱ基準みたいですけど

2021/04/06 (Tue) 00:34 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>akakadさん

もうジャンルってどうなってるのか分からないですなぁ…

2021/04/11 (Sun) 22:06 | EDIT | REPLY |   

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