Blackmore's Night - Nature's Light

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Blackmore's Night - Nature's Light (2021)
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 ハードロックギタリスト、そしてクラシカルなギタープレイスタイルをロックに持ち込んだ歴史的アイコンとも言われるリッチー・ブラックモアがDeep PurpleとRainbowのふたつのバンドを交互に活動させながらたどり着いた終着駅がBlackmore's Night、即ち夫婦でのルネッサンス音楽とは誰も想像しなかっただろうし、それでもまだどこかであのギタープレイが戻ってくるに違いないと思っていたリスナーも多かったと思う。1997年にデビューアルバム「シャドウ・オブ・ザ・ムーン」をリリースしてから、ほんの一瞬だけRainbow名義でプレイはしたものの、基本的には全てBlackmore's Nightでの活動、それも無理のない範囲で出来るスケジュールと余力で二人のペースで進めている様子だからか、かつてないほどの長い期間解散しないで活動している。当然と言えば当然だし、これだけ年の差もあればリッチー・ブラックモアがワガママ言って困らせる事もなく、キャンディス・ナイトの可愛さぶりに目を瞑りながら一緒にやる親心的側面も大きいのではないだろうか、などと下衆な勘ぐりもしつつ、結果的に出てくる音のセンスの良さ、素晴らしさ、そして古き良き新しき音楽の魅力そのものが何よりも頼もしく聴けるユニットとして根強いファンは多いはず。ハードロック好きからすると物足りないだろうが、音楽好き、英国音楽好きからすると実に魅力的なサウンドを出してくれて楽しめる。

 2021年にこの状況だからこそ楽曲作りも進んだと思われるが、アルバム「Nature's Light」をリリースし、相変わらずの、そしてまた新たな息吹を持ち込んだ作品を聴かせてくれたBlackmore's Night。無理のない音楽だから以前からその意味では歌声も楽器の音色も変わる事なく一貫して中世音楽への望郷と融合が繰り広げられ、その世界観は古楽であるものの多々使われる楽器も異なっていき、今作ではやや楽器の音色が少なめながらに出されている作風な気がする。一方最初期にはあまり聴かれなかったギターでの旋律は数曲でモロにバンドサウンドと言わんばかりにプレイされているのもリッチー・ブラックモアならではのスタイルで違和感なく、そしてしっとりと聴かせる流石の逸品。キャンディス・ナイトの歌声はやや粘り気のある面が強く、好みで言えばそこまででも無いが、それでも女性ボーカルの美しさレベルは当然あるので聴きやすい音楽が奏でられている。

 冒頭の「Once Upon December」からして牧歌的ですらあるリズムに軽やかなメロディが紡がれる、ついほのぼのしてしまう旋律が可愛らしいので確かにアルバムのオープニングにはぴったりの曲、そしてアルバムをイメージさせるに相応しい楽曲で鷲掴みにされる。そして中世のムードたっぷりで始まる「Four Winds」はその実アコースティックバンド形式で演奏されたかなりポップ調なメロディを孕む曲で、これだけでシーンに出てきたら人気が出そうなナンバーだからか、シングルカットされている。続いての「Feather In The Wind」は舞踏曲と言わんばかりのリズムとメロディで旋律が奏でられ、目の前で皆で踊ってくれているかのようなアラビアチックなノリが素晴らしい。こういうリズムや旋律はどこから持ち込まれるのか、何に影響されると出てくるのか、そういう来歴が気になる魅力的なサウンド。そこにリッチーのロック感覚も混ぜ合わされているから不思議な質感を味わえるナイスな傑作。どの曲もなかなか楽器の音色が素敵ながら、あの楽器の音色がコレ、と言えない知らないので書けないのが残念だが、自然な音だからか馴染みやすく好みの音色が複数登場してくるのでその内解明したいとも探究心が疼く。「Darker Shade of Black」はタイトル通りに雰囲気作りの荘厳なる始まりで歌ものではないアクセントには持ってこいの意外な一曲で、途中の展開部分からリッチーのエレキギターがメロディを奏でてくれる聞き所満載の作品。続いてはアコースティックギターの調べから美しさを披露してくれる「The Twisted Oak」で三拍子とコーラスワークを心地良く味わせてくれてソフトで和みやすく聴ける。アルバム・タイトルチューンとなった「Nature's Light」はまったく大袈裟に太鼓も鳴り響く大地の姿が思い浮かべられる雄大な雰囲気を持った曲ながら、終盤の凝り具合の細やかさ、細部まで手を抜かないアレンジの紡ぎ方は素晴らしい。そして驚く事に「Der Letzte Musketier」ではリッチーのブルース調でのリズムによるプレイが当然エレクトリックのフロントピックアップ中心に聴ける曲で、こちらもファンを楽しませるかのようなインストナンバーに仕上がっている。そしてファーストアルバムにも収録されながらここでまた再録された「Wish You Were Here (2021)」はキャンディス・ナイトの歌声をフューチャーした聴かせどころ満載の熟した歌唱が味わえ、今が良いタイミングとばかりに収められている。ここまでの洗練されたメロディとはやや異なる湿っぽい雰囲気は時代の差か勘違いか、ここでもリッチーがオブリのギターをキメてくれている。更にキャンディス・ナイトの歌声を中心に据えた「Going to the Faire」も随分とポップ調にメロディが歌われる軽やかなるナンバーでリッチーと二人のみで録音しているのがよく分かる曲。最後はアルバムの終焉を飾るに相応しいオーケストレーションまで入れた「Second Element」で、加えてリッチーのギタープレイが宙を舞うかのようにプレイされた見事な一曲。

 聴いていれば結局キャンディス・ナイトの歌声とメロディ、そして使われている楽器の音色感とリッチーのギタープレイばかりを気にしている始末と、音楽的な面もありながらそれでもこうして飛翔していくギタープレイはやはり凄い。センスの話だから当然だが、やりたい音楽を奏でていて、その中で更に鳴らされる音の美しさを探求している雰囲気で、それはキャンディス・ナイトのセンスも多分に反映されているだろうし、いやはや素晴らしきアルバムだ。ロックの概念からではなく、普通に聴いてて良いアルバム、良い音楽だと感じる。それでいて恐らく唯一無二の独自サウンドを奏でるユニットなのはさすがリッチー・ブラックモア。このアルバム、何度でもリピートして楽しめます。






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フレ
Posted byフレ

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