Rainbow - Rising (Deluxe Edition)

0 Comments
Rainbow - Rising (Deluxe Edition) (1976)
B004DN3VEM

 熱狂的なリスナーやマニアは制作側からすると有り難い存在でもある反面、厄介なファンでもあると思う。常に制作側がマニアと同等の、もしくはマニアだから同じ目線で情報を得ていたりするなら有り難い存在になるだろうが、制作側もそれは仕事だから人が替わる事もあるし、全てを網羅しているとも限らないし、どちらかと言えばコンテンツの内容よりもコンテンツの品質に重点を置く方が主の仕事になるのだから当然と言えば当然。それでもリリースされたアイテムのコンテンツであれこれ評価されてしまうし、無視できない情報量が必要になるのは必然で、やはりマニア達の最高峰という存在であるべきだろうとは思う。実際そこまでコレクター気質を持った人間が制作側に入っている場合はどれくらいあるのだろう。それともまた異なるデータベース管理によってシステム的に纏め上げられたマル秘対策があるとでも言うならば話は別だが当然そんなはずもなく、せいぜいレコーディングシートがあるのかもしれない、という感じだが実際どうなのだろう。

 Rainbowの1976年リリースのリッチー支配下の実質的ファーストアルバム「Rising」はこの時点ではまだ三頭政治とまでは呼ばれていなかったとは思うが、リッチーにディオ、コージーが揃ったハードロック史に残る傑作、名作として名高い作品。不思議な事にヘヴィメタルの始祖、ブラック・サバスは1970年にシーンに登場してあのスタイルを熟成させていったが、ハードロックのスタイルはツェッペリンを始めとして多数過去から存在していたものの、それぞれのバンドによる個性も大きく、これぞハードロックのパターンという定義は確立されていなかったようにも思う。その意味で、この時代以降のハードロックの、もしかしたら様式美の初期ハードロックもしくはヘヴィメタルとも言われるパターンを整えたのは本作だと自分では定義している。このアルバム以降の例えば日本のメタルバンド群、80年代に入ってからのメタルと呼ばれるシーンを含めても本作、もしくはレインボウのスタイルがもっとも複製されモノマネされ、アレンジされ個性群と融合されつつも基軸として残されているスタイルだろうと。コージー信者が多かったから、リッチー信者も多かったから、ボーカルスタイルはディオのそれではないものの、無理のない範囲で聴かせる歌い方と言う意味ではディオも良い手本となったのは間違いなく、楽曲のハードさとその実持ち得ているキャッチーさ、ポップさ加減にギターソロのフューチャー度も手頃でパターン的、しかもそれが教科書とばかりにお手本的なスタイルも踏襲しているから飛びつきやすいという面もあったか、狙ってはいなかったにしても結果的に本アルバムで少なくとも日本のハードロック・ヘヴィメタルシーンは活性化したはず。80年代にシーンを賑わせた日本のメタルシーンはほぼ全てレインボウの影響下にあった、と言っても良いとすら思っている。

 そのレインボウの傑作「Rising」は1976年のリリース以来、やや軽めな音の塊のようなミックスで録音されており、それでも誰も何ら不満を持たずに聴かれ続けていたが、CD時代が到来し、始めはアナログマスターをのままをCD化していたから何の問題もなく、そのままのミックスで聴かれていたが、とある時にアメリカ盤がCDでリリースされた際にアナログマスターからではなく、その前のマスターからのリミックスか、もしくは当初のミックス違いのマスターテープからCD化された事によってどうもアメリカ盤はミックスが異なるようだとの話になった。その頃はまだそれでもそこまで話が普及するものではなく、それこそマニアックな世界でしか知られない話で、普通にCDを入手しているリスナーは、ある時誰かとこのアルバムはベースがデカくて、と話してみれば、一方はどこがだ?低音部が小さめだからアルバムが軽く聴こえるのでは、などと食い違う話になったのが想像される。もっともその頃にはアンダーグラウンドでコージーテープが流通してきて、今度はこのアルバムのラフミックスバージョンまでもが聴けるようになったので、そこでようやくオリジナルミックスとUSCDミックス、そしてラフミックスの違いが表立ってくる事になったようだ。

 そしてこの「Rising (Deluxe Edition)」デラックス・エディション盤が2011年にリリースされ、その全貌を一気に聴き比べる事が出来るようになり、この論争も一段落を迎えたが、そういう意味ではマニアが気づき、騒ぎ立てる、アンダーグラウンドソースがそこに拍車を掛けて事実を突き付けてくる、そんな論争に制作側も加わっていなければ当然こういうリリースは出来得なかっただろうから、やはりマニアックな目線は制作側には常に必要とされるのも当たり前で、恐らく実践しているはず。よくあるのはファンクラブの誰かと繋がっていて、そこからマニアの世界を垣間見させてヒアリングする、などの手法らしいが、なるほどよく出来ている。そうでなければ到底オフィシャルが知り得ないだろう音源や映像の存在は出てこないだろうし、ミュージシャン側は記録には割と無頓着な場合も多いし、特にスタジオ録音素材の場合はミュージシャン側はあまり管理していないだろうし、なかなか奥深く頼もしい世界。

 長々と書き連ねたが、この「Rising (Deluxe Edition)」はそんな3種類のミックスが楽しめるリリースになっており、驚くことに多数のブログなどで取り上げられているので割と情報収集しやすい、即ちリスナーやファンが多く、様々な意見があるのも分かったが、皆ものすごくレインボウ好きなのも分かった。自分はオリジナルバージョンは迫力あるものの軽さもあると思って聴いていたので、今回初めて聴いたLAミックスバージョン、即ち低音パート重要視ミックスは結構ブリブリと痺れたバランスだとは感じたが、これが初めからリリースされていたらあそこまでシーンに受け入れられなかったかもしれないとは想像する。良くも悪くもオリジナルミックスのバージョンがレインボウのバンド的音色を決定付けている面は大きいと思っているから。そしてコージーテープからオフィシャル化されたラフミックスが実は自分的には一番気に入っている。楽器のバランスがどうの、の前にこの頃のバンドのバンドらしいライブ感が詰め込まれており、自然体な音色がそのまま聴けるからだろうと思うが、オフィシャル音源は通常ここからかなり整えられて音のバランスが取られていると知っているからこそ楽しめる面もあり、同じアルバムで3種類ものミックスがリマスタリングで聴けるなど何と贅沢な環境とすら感じる。そしてどれを聴いててもやはりレインボウのカッコ良さ、凄さがビシビシと伝わってくるので結局アルバム3回3種類聴いているようなものだが、飽きない人は飽きないだろう。70年代にこれ聴いてギター弾き始める人、ドラム叩き始める人の気持ちがとってもよく分かる名盤。





関連記事
フレ
Posted byフレ

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply