Black Sabbath - Paranoid (2009 Deluxe Edition)

2 Comments
Black Sabbath - Paranoid (2009 Deluxe Edition) (1970)
B001D2AYCI

 ブラック・サバスは今となってはヘヴィメタルの始祖的に取り上げられて祭り上げられるようにもなったが、当時からずっとかなりの異端児、異質なバンドとして捉えられていたのだろうと思う。もっともその頃の英国ロックシーンはもっと個性的で際立ったバンドも多数出て来たし、何もブラック・サバスだけがああいうイメージを持ち込んだバンドと言うワケでもなかったからそこまで目立った存在でもなかったかもしれない。それでもやはりそれを超えた存在感、アルバムのクォリティの高さなど見ていけば明らかにアタマ飛び抜けたメジャーな存在として頭角を表すようになっていった。デビューは1970年2月13日の金曜日、とは知られた話だが、その年の9月には本作をリリースしているのだからそのペースの速さはバンドへの期待感、もしくはバンドの充実度を証明しているようだ。その仕事ぶりの結果が早期の段階でハードロックシーンの一端を担うバンドとして位置付けられ、それはどうもハードロックとは異なる世界にもなっていったと判明していったあたり、随分と後になってからだが、そこでヘヴィメタルの始祖として位置付けられるようにもなった。ヘヴィサウンドだけで言えばもう少し前からそんな轟音バンドも存在したが、悪魔的イメージ、重低音に金属音、ハイトーンボーカルなどと明らかにその世界を作り上げている姿をメタルの始祖として崇めることに何ら異論もなかろう。

 Black Sabbathの1970年9月リリースのセカンドアルバム「Paranoid」も既に何度もリマスタリングされ、デラックス・エディションもリリースされ、更にはスーパー・デラックス・エディション盤の4枚組CDまでリリースされているので、当然ながらかなりの需要が見込まれているのだろうし実際そこそこ売れていくのだろう。後から追いかけていく際にはそれぞれ収録内容が異なる部分もあるので、マニア的にはどれも揃えていく必要も生じているし、リマスタリングについては今の所2012年マスターが最新らしく、スーパー・デラックス・エディションでもそのマスターが流用されている。収録曲についてはオリジナルアルバム楽曲群は当然ながら、ユニークなものとして当時からリリースされていたのをここで改めて収録しているようだが、4チャンネルミックスバージョンがDVD-Audioになっている。自分は環境がないので4チャンネルバージョンをそのまま聴いた事がなく、何とも言えないが、当たり前ながらこれを2chで聴いてみると位相や低位が異なるので別ミックスとして捉えられる面はある。大音量で四方から楽器が流れてくるのはなかなか圧巻で心地良さそうだとは思うが。そして2009年にリリースされたデラックス・エディション盤では3枚目のディスクとしてオリジナルアルバムの曲順に準拠したインストバージョンの楽曲が立ち並び、「Padranoid」と「Planet Caravan」では歌詞違いの貴重なテイク、「Rat Salad」は別ミックスバージョンにもなっている。ところがスーパー・デラックス・エディション盤ではこのインスト中心のディスクが割愛され、モントレーとパリのライブが丸ごとそれぞれのディスクに収められた4枚組としてリリースされているので、安直にデラックス・エディション盤を手放すワケにもいかなそうだ。

 悩ましいのはそのデラックス・エディション盤に収録されたインストバージョンの貴重と言えば貴重な音源集だが、インストだらけなので興味深そうだと思った反面、実際聴いているとブラック・サバスの個性であるミドルなリズムテンポで延々と繰り返されるリフ主体の旋律ばかりだから歌がないとかなり辛い、と言うか飽きてくる。本来はオリジナルバージョンのミックスやプレイとの違いやフレーズを探求すると面白みが増すとは思いつつも、そこまでには至らなかったのはブラック・サバスに対する愛情の薄さだろう。バンドの演奏力の高さは知られている所なので問題ないが、それよりもオジーのボーカルの存在感が圧倒的にブラック・サバスを象徴しているのは当然ながら、こうしたインストナンバーではモロにそれを実感してしまった。一方の歌詞違い曲はものすごく斬新に聴こえるので、逆に何度か聴いてしまい、その違和感を楽しんでいた。きちんと比較はしていないが、何となく別歌詞バージョンの方が一般的な単語が並んでいるようで耳慣れた歌詞が耳に付くのがブラック・サバス的雰囲気を違うものにしているようだ。やはり通常バージョンの方が単語や音節的なところで馴染んでいるのは当然だが、自分的にはそんな所で違いや印象を受けるのもそうそうないので面白かった。

 アルバム曲は語る事なかれ、とばかりの名盤由来だが「Planet Caravan」のジャジーなプレイを聴いているとトニー・アイオミの器用さは実感するし、「Electric Funeral」のハッとする展開、「Fairies Wear Boots」の二面性などブラック・サバスの深みと言うか、まだこれが完成形でもなく、ファーストの反省点を改善して新たな取り組みも持ち込んで実験している姿も聴かれるので、バンド側としてはまだ細かい部分での方向性や特性を模索していた所だろうと思っている。それにしても演奏技術の高さが半端なく巧い。それでいてコンセプトもしっかり整えバンドイメージもきちんと作り上げ、音楽性のニッチさ新鮮さも見据えて活動しているのだからどれだけシーンを見て自分たちの存在を売りに出していたか、また期待されている通りにシーンに存在していったか、ものすごく練られて考え抜かれて運営されていたバンドとしても素晴らしく見える。初期のヴァーティゴレーベル目線で見ればかなりプロに徹したバンドになるし、だからこそその他バンドとは一線を画した存在になったのも当然。その意味で本作はメタル始祖のアルバムとして捉えるよりもそこに至る過程での実験作の一枚としても捉えられる。





関連記事
フレ
Posted byフレ

Comments 2

There are no comments yet.
akakad  

間接的に近年のバンドにも多大な影響力を持ってると思うんです
ギター中心ならどのジャンルにも大体サバスかその影響下のバンド好きがいる印象です
自分が感じた具体例ではサバス→Nirvana→Vinesのリフ中心の暗い曲みたいに

2021/04/04 (Sun) 19:36 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>akakadさん

チャック・ベリー並みにスタンダード感あるかも、ですね。

2021/04/11 (Sun) 22:05 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply