Thin Lizzy - Jailbreak (Deluxe Edition)
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Thin Lizzy - Jailbreak (Deluxe Edition) (1976)

ロックの名盤を改めて漁っているここ最近だが、名盤であればあるほど今となっては多種類のバージョンがリリースされており、何がなんだかどうなっているのか、マニアックに探求しようと思うとなかなかハードルが高くなりすぎている。オリジナルアルバムをまずは聴く、というスタンスならばどのバージョンを聴いても問題ないが、それでもオリジナルマスターから第一回リマスター、第二回リマスターなどと年によって異なるリマスターソースにまずぶつかる。この時に古ければモノステミックス違いなども考慮されるが70年代ならば概ねそれは気にしないでステレオ盤のみで取り組めるのは助かる。その後は多くの場合がボーナストラック付きか無しか、あるならば大抵はアルバムリリースと同じ頃のシングルB面が収録されている場合が多い。A面でエディットバージョンの場合もアルバムと異なるソースなので収録されている事も多々あるし、どういう訳かエクステンデッド・バージョンなる長尺版もあるならば入ってくる事もある。その後は当時の未発表ソースやデモバージョン、そしてBBCセッションからいくつか、とそんな感じなので整理していかないと混乱を生じるが、面白いのは最近はまた音質アップのオリジナルアルバム収録曲だけのバージョンでリリースされている場合が増えているし、困るのはサブスクだとどれがどこまで聴けて、何年の何バージョンを聴けるのか、とマチマチになって分かりにくい点。ライナーもないからなかなかニッチな面からすると音源の豊富さは助かるものの、コレクター的には集めにくい。今はこういうのはリストだけ管理するのだろうか。曲とバージョンとリリース年の整理で追いつくのかどうか分からないが。
Thin Lizzyの超名盤「Jailbreak」は1976年にリリースされているが、1996年にリマスタリングされ、その後2011年にデラックス・エディションが出てきた。この「Jailbreak (Deluxe Edition)」が一番曲が多くてデラックスな感じがあるので気になる所だったが、何よりもこのデラックス・エディションに収録されててクレジット見るだけで聴きたくなったのが上述のどれにも属さないリミックスバージョン。即ち楽曲の再構築バージョンなので、本気でアーティストの作品をぶち壊す、もしくは作り変える作業になるのでメンバーの了承はともかく、ロックの歴史を塗り替えるような作業にもなるので、あまり行われない。キッスの「Destroyer-Resurrected」が大々的にリミックスと言うよりも再構築盤が出された時に畏れ驚いたものだが、ビートルズもそれは然りか。個人的にはこういうリミックスや再構築盤は好きなのでもっと時代に合わせたタイミングで大幅に音質アップとともにリバーブ処理もミックスも加えて作り上げてほしいとすら思っている邪道なリスナーなので、本作の代表曲4曲だけとは言え、リミックスバージョンが聴けるのは結構楽しみだった。そして聴いてみれば案の定2011年に見合った1976年の音とは思えない迫力を出したサウンドに蘇っていたのは聴き応えあった。
ディスク2の冒頭「The Boys Are Back In Town」の一発目からドラムの音がドスンと響き、更にスネアの音までもが重みを増したサウンドに変化しているので曲の雰囲気が随分と低音に重心を置いた迫力ある音に生まれ変わっている。更にギターやコーラスのステレオ定位もきちんと確定して鳴っているので当然クリアで分離しており、なるほどバンドサウンドの迫力が今の時代に合わせた感覚で聴けるのは取り組みやすい。そもそものギターサウンドやベースサウンドはしっかりと録音されているのでさほど音色はいじられていないが、ベースはもしかしたら結構ブーストして丸めているかもしれない。いや、しかしギターサウンドが実に歯切れ良く鳴っているので気持ち良い。リミックスだからと言って他のトラックにあったような音は入れられていないようなので、その意味では純粋にバンドの音が向上した曲で、最後のフェイドアウトがやや長めになっている程度。そして「Jailbreak」では冒頭からフィル・リノットの叫び声が収録されており、そこからイントロが開始されるのでやや長めになっているのと、こちらもドラムの音が低音に寄せられた重さになっているのと、1番が終わってからアルバムだと少ししか聴こえないオブリのギターソロがリミックスバージョンだと思い切りギターソロとばかりに聴こえてくるので驚く。生々しい音で正に後年のツインギターバンドと称されたあたりを意識したか、ギターがかなりクローズアップされたミックスとも言えるか。そしてまたしても「The Boys Are Back In Town」だが、今度はバックの楽器の音は先程のリミックスバージョンと同様ながらボーカルだけは別トラックのを用いており、フィル・リノットが様々な歌い方、アプローチでこの曲のみならず挑んでいたのが分かる。こちらのテイクではかなりしゃべりトーク的な歌い方、砕けたような歌い方、話しぶり的な歌でどこか柔らかい印象を受けるバージョン。ライブ感漂うとでも言うべきか、新鮮だからかもしれないが自分的にこのテイクはかなり気に入ったミックス。更に名曲「Emerald」も冒頭のバスドラの音からして重く響き、これぞハードロックバンドの音的な迫力が心地良い。それに加えて音の分離の良さと曲の良さが現代のバンドとして蘇らせてくれているかのように素晴らしく心に染み入る。
そしてBBCセッションから4曲が続くが、これもまた絶頂期のThin Lizzyのライブそのままなので曲の良さに加えてライブの勢いとバンドの躍動感が素晴らしい。その後は「Fight or Fall」のラフミックスの長尺バージョンと貴重なテイクが収録されているが、アルバムバージョンに比べてかなりバンドデモテープ的側面の強い、アコギが目立つ最初期のThin Lizzy的印象の強いテイクでアルバムではこういう原曲を如何にアレンジしていったかが垣間見れる一曲。その意味ではThin Lizzyは何ら変わっていない原曲と分かる。そして「Blues Boy」はこの頃の完全未発表曲のタイトル通りブルースソングだが、ここまでモロのブルースはThin Lizzy的には珍しいとも言える。ただ、あまりにもモロなのでさほど面白みも特筆点も見られず、ボツにしたのも当然だろう。もっともスタジオでの単なるセッションから作り上げたような作品のようにも聴こえるので、こうして発表されて聴けるだけでThin Lizzyの懐の深さを味わおう。最後の「Derby Song」は古くから知られている1975年11月21日のダービー大学でのライブがFMラジオで放送のため録音されていた素材からの抜粋で、まだ楽曲タイトルも決まっていない中、フィル・リノットが「Derby Song」として歌い始めたためにこのタイトルが付けられているが、その意味では「Cowboy Song」のかなり最初期のライブバージョンとも位置づけられる。曲そのものはほぼ出来上がっていて普通にライブバージョンで聴けるが先のBBCの方がやはり完成度は高い。
色々調べながら聴いているが、ふと2020年にリリースされていた「Rock Legends」を見つけた。確かその時はまたベスト盤が出るのか、と思った程度でスルーしていたが、今改めて見ているととんでもない蔵出しソースの超豪華リリースだと言う事に気づき、どこかでこれもじっくりと聴き倒さなければと情報収集した次第。ほとんどがデモソースで、それも楽しみだが、ライブソースもかなり入ってて魅力的なセット。

ロックの名盤を改めて漁っているここ最近だが、名盤であればあるほど今となっては多種類のバージョンがリリースされており、何がなんだかどうなっているのか、マニアックに探求しようと思うとなかなかハードルが高くなりすぎている。オリジナルアルバムをまずは聴く、というスタンスならばどのバージョンを聴いても問題ないが、それでもオリジナルマスターから第一回リマスター、第二回リマスターなどと年によって異なるリマスターソースにまずぶつかる。この時に古ければモノステミックス違いなども考慮されるが70年代ならば概ねそれは気にしないでステレオ盤のみで取り組めるのは助かる。その後は多くの場合がボーナストラック付きか無しか、あるならば大抵はアルバムリリースと同じ頃のシングルB面が収録されている場合が多い。A面でエディットバージョンの場合もアルバムと異なるソースなので収録されている事も多々あるし、どういう訳かエクステンデッド・バージョンなる長尺版もあるならば入ってくる事もある。その後は当時の未発表ソースやデモバージョン、そしてBBCセッションからいくつか、とそんな感じなので整理していかないと混乱を生じるが、面白いのは最近はまた音質アップのオリジナルアルバム収録曲だけのバージョンでリリースされている場合が増えているし、困るのはサブスクだとどれがどこまで聴けて、何年の何バージョンを聴けるのか、とマチマチになって分かりにくい点。ライナーもないからなかなかニッチな面からすると音源の豊富さは助かるものの、コレクター的には集めにくい。今はこういうのはリストだけ管理するのだろうか。曲とバージョンとリリース年の整理で追いつくのかどうか分からないが。
Thin Lizzyの超名盤「Jailbreak」は1976年にリリースされているが、1996年にリマスタリングされ、その後2011年にデラックス・エディションが出てきた。この「Jailbreak (Deluxe Edition)」が一番曲が多くてデラックスな感じがあるので気になる所だったが、何よりもこのデラックス・エディションに収録されててクレジット見るだけで聴きたくなったのが上述のどれにも属さないリミックスバージョン。即ち楽曲の再構築バージョンなので、本気でアーティストの作品をぶち壊す、もしくは作り変える作業になるのでメンバーの了承はともかく、ロックの歴史を塗り替えるような作業にもなるので、あまり行われない。キッスの「Destroyer-Resurrected」が大々的にリミックスと言うよりも再構築盤が出された時に畏れ驚いたものだが、ビートルズもそれは然りか。個人的にはこういうリミックスや再構築盤は好きなのでもっと時代に合わせたタイミングで大幅に音質アップとともにリバーブ処理もミックスも加えて作り上げてほしいとすら思っている邪道なリスナーなので、本作の代表曲4曲だけとは言え、リミックスバージョンが聴けるのは結構楽しみだった。そして聴いてみれば案の定2011年に見合った1976年の音とは思えない迫力を出したサウンドに蘇っていたのは聴き応えあった。
ディスク2の冒頭「The Boys Are Back In Town」の一発目からドラムの音がドスンと響き、更にスネアの音までもが重みを増したサウンドに変化しているので曲の雰囲気が随分と低音に重心を置いた迫力ある音に生まれ変わっている。更にギターやコーラスのステレオ定位もきちんと確定して鳴っているので当然クリアで分離しており、なるほどバンドサウンドの迫力が今の時代に合わせた感覚で聴けるのは取り組みやすい。そもそものギターサウンドやベースサウンドはしっかりと録音されているのでさほど音色はいじられていないが、ベースはもしかしたら結構ブーストして丸めているかもしれない。いや、しかしギターサウンドが実に歯切れ良く鳴っているので気持ち良い。リミックスだからと言って他のトラックにあったような音は入れられていないようなので、その意味では純粋にバンドの音が向上した曲で、最後のフェイドアウトがやや長めになっている程度。そして「Jailbreak」では冒頭からフィル・リノットの叫び声が収録されており、そこからイントロが開始されるのでやや長めになっているのと、こちらもドラムの音が低音に寄せられた重さになっているのと、1番が終わってからアルバムだと少ししか聴こえないオブリのギターソロがリミックスバージョンだと思い切りギターソロとばかりに聴こえてくるので驚く。生々しい音で正に後年のツインギターバンドと称されたあたりを意識したか、ギターがかなりクローズアップされたミックスとも言えるか。そしてまたしても「The Boys Are Back In Town」だが、今度はバックの楽器の音は先程のリミックスバージョンと同様ながらボーカルだけは別トラックのを用いており、フィル・リノットが様々な歌い方、アプローチでこの曲のみならず挑んでいたのが分かる。こちらのテイクではかなりしゃべりトーク的な歌い方、砕けたような歌い方、話しぶり的な歌でどこか柔らかい印象を受けるバージョン。ライブ感漂うとでも言うべきか、新鮮だからかもしれないが自分的にこのテイクはかなり気に入ったミックス。更に名曲「Emerald」も冒頭のバスドラの音からして重く響き、これぞハードロックバンドの音的な迫力が心地良い。それに加えて音の分離の良さと曲の良さが現代のバンドとして蘇らせてくれているかのように素晴らしく心に染み入る。
そしてBBCセッションから4曲が続くが、これもまた絶頂期のThin Lizzyのライブそのままなので曲の良さに加えてライブの勢いとバンドの躍動感が素晴らしい。その後は「Fight or Fall」のラフミックスの長尺バージョンと貴重なテイクが収録されているが、アルバムバージョンに比べてかなりバンドデモテープ的側面の強い、アコギが目立つ最初期のThin Lizzy的印象の強いテイクでアルバムではこういう原曲を如何にアレンジしていったかが垣間見れる一曲。その意味ではThin Lizzyは何ら変わっていない原曲と分かる。そして「Blues Boy」はこの頃の完全未発表曲のタイトル通りブルースソングだが、ここまでモロのブルースはThin Lizzy的には珍しいとも言える。ただ、あまりにもモロなのでさほど面白みも特筆点も見られず、ボツにしたのも当然だろう。もっともスタジオでの単なるセッションから作り上げたような作品のようにも聴こえるので、こうして発表されて聴けるだけでThin Lizzyの懐の深さを味わおう。最後の「Derby Song」は古くから知られている1975年11月21日のダービー大学でのライブがFMラジオで放送のため録音されていた素材からの抜粋で、まだ楽曲タイトルも決まっていない中、フィル・リノットが「Derby Song」として歌い始めたためにこのタイトルが付けられているが、その意味では「Cowboy Song」のかなり最初期のライブバージョンとも位置づけられる。曲そのものはほぼ出来上がっていて普通にライブバージョンで聴けるが先のBBCの方がやはり完成度は高い。
色々調べながら聴いているが、ふと2020年にリリースされていた「Rock Legends」を見つけた。確かその時はまたベスト盤が出るのか、と思った程度でスルーしていたが、今改めて見ているととんでもない蔵出しソースの超豪華リリースだと言う事に気づき、どこかでこれもじっくりと聴き倒さなければと情報収集した次第。ほとんどがデモソースで、それも楽しみだが、ライブソースもかなり入ってて魅力的なセット。
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