Barclay James Harvest - Once Again (40th Anniversary Edition)

0 Comments
Barclay James Harvest - Once Again (40th Anniversary Edition) (1971)
B004ETLJVM

 プログレッシブ・ロックを意識して聴き始めた時は当然ながらよく知られたバンド群、クリムゾンやフロイドを筆頭としたバンドから始まるので、その類の作風が多いのだろうと思っていたし、多少複雑で鍵盤が主役でもあろうし、との解釈を勝手にしていたのもある。ところがルネッサンス辺りに手を出し始めると、随分と趣の異なるクラシックとの融合が聴かれるし、他のバンドではジャズとの融合も見られたりしてその幅の広さに興味をそそられてあちこちのバンドの情報をそれなりの本で収集してレコード屋を走り回り駆け巡りアタマの中にインプットしたデータベースを駆使して探し回っては買っていた。そうすると当然ながら様々なミュージシャンが色々な取り組みを行って出している音楽、ロックが聴けてどんどんと楽しんだのと同時にロックとはそういうものかとの解釈も生まれ、自分でもバンド活動している際にあるものを演奏する、作るのではなく、あるものを融合させる感覚になり、するとまた融合させるべき新たな音楽を仕入れてこないといけないので、更に幅広く色々な音楽を聴き漁らないといけないと言うハマり具合。そもそものセンスが無かったからそういう探り方しか出来なかったのだろう。

 Barclay James Harvestの1971年リリースのセカンド・アルバム「Once Again」はプログレッシブ・ロックを意識して割と始めの頃に入手出来たのもあってまだ知識がそこまで整う前に聴いたから、ものすごい衝撃を受けたバンド、アルバムのひとつだ。何が衝撃的だったかと言えば、オーケストラやメロトロンをバックに叙情的な楽曲ばかりでプログレッシブな雰囲気バリバリの中、ハードロック以上のギターソロがバシバシと泣きのメロディばかり入ってくるので、自分の好きなギターに耳が向けられる、という変わり種だったから。叙情性と言えばジェネシス的な所も言われるが、それとはまるで異なるオーケストラ感覚での世界なので、ムーディ・ブルースに近い感触ではあるが、それでもBarclay James Harvestのギターのハードロック感は恐らくその歪み具合もあるだろうか、ガシガシと刺さってくるのが自分好みで、本作のみならずバンドとしてその方向性だったから、楽曲の秀逸さもアルバムのムードも含めて大好きなバンドになった。それをまた久々に引っ張り出して、と言いたいが、2002年にはボーナストラック5曲追加してのリマスター盤「Once Again」がリリースされ、その後2011年にデラックス・エディション「Once Again (40th Anniversary Edition)」でボーナストラック6曲とDVDオーディオが追加されてリリースされているので、今回はデラックス・エディションの普通のディスクの方を聴いていたが、リマスターによる音の分離効果はもうちょっと高ければと思ってしまった。もともとがしっとりと湿った雰囲気と音もオーケストラサウンドが全体を包んでいるからジメっとした感触のままの印象は変わらず、ただ、やはりギターの音色が気になる耳障りは相変わらずで素晴らしい。

 そのオーケストラアレンジは恒例のロバート・ジョン・ゴドフリーが手がけているからあの重厚感そのままがアルバムを包み込み、どこから聴いても明るさのひとつも見いだせない叙情性の高さ。バンドの音を聴くよりもオーケストラやメロトロンを聴いている方が多い感じで、そこに突如として歪んだギターソロが印象的なフレーズを持って出てくるからインパクトが強い。名曲「She Said」や「Mocking Bird」は当然ながら「Song For Dying」でもその世界観は炸裂してくれるし、一方の異色作と思える「Ball And Chain」は風味としては叙情的ハードロックの様相が強いようなギターサウンドと熱唱が中心となった珍しいパターンも聴ける。これだけのロックバンド色が出せるとは思いもしなかった曲で、1曲目に入っていたら大きくバンドのスタンスも異なって捉えられた事だろうと思う。それでも叙情性のあるギターが展開されるのはさすがの展開で、隠れた神妙な作品。

 2002年のリマスター盤では5曲のボーナストラック曲が付いてきたが、その内の3曲「Happy Old World」「Vanessa Simmons」「Ball And Chain」はQuadrophonic Mix=4チャンネルミックスが施された曲のようだが、環境が揃わないとあまり聴いても分からないような気がするが未体験。2011年にリリースされたDVDオーディオもそれは同じだが、こちらは普通に1枚目のディスクのボーナストラックとしてまずは「Mocking Bird (May 1970 Version)」から収録。もともとこの曲は60年代末頃には出来上がっており、何度かレコーディングに挑戦したりアレンジし直したりと大事に作り上げていたようで、このバージョンも1970年に録音された貴重なテイクからだが、オーケストラが被さらず、メロトロンレベルまでで、独特のあのハードなダブルチョーキングで泣きの入るギターソロも入っていない、実にシンプルに聴かせる一曲としてのアレンジが光る感触でハッとする仕上がり。「Introduction - White Sails (A Seascape)」はロバート・ジョン・ゴドフリーアレンジのイントロ用オーケストラ曲だが、これくらいならアルバム冒頭に配置してあっても良かったようにも思うが、そこまで仰々しく始めたくなかったのかもしれない。「Too Much On Your Plate」は未発表曲で2002年盤にも2011年盤にも収録されているが、冒頭からギターロックバンドだと言わんばかりに歪んだギターがフューチャーされたメロウな曲で聴き応えがある。自分的には好みの一曲なので本編の何処かに配されていてもおかしくない出来映えの楽曲に思えるが、「Happy Old World」と被るような作風だから見送られたのかもしれない。ここからはアルバム収録曲の別バージョンで、「Galadriel (Non-Orchestral Version) 」はそのままにオーケストラの入らないバンドだけの演奏によるバージョンだが、メロトロンは鳴っているので、雰囲気的にはややこじんまりとしている印象を受けるが、素朴で良い感触。「Happy Old World (Take One) 」は恐らくそのままテイクワンだろうが、エンディング部分がかなり長めになっており、また演奏そのものもやけに生々しい感触を受けるテイク。美しき秀逸作「Song For Dying (Full Un-edited Version)」もエンディングが切られていない長尺バージョンが登場し、余韻に浸れるメロトロンとピアノの憂いが最後まで聴ける仕上がりで、そこにあの歪んだギターも重ねられているので拍手喝采の感動的な終焉までが聴ける。最後の「Mocking Bird (Extended Non-orchestral Version)」はタイトル通りに今度はギターソロは入っているもののオーケストラが入っておらず、最後がやたらと長くなって主としてこちらもメロトロンとピアノでその余韻を長引かせているエンディング。

 オーケストラなしのバージョンを聴いているとかなりすっきりとしたバンドのサウンドで、重厚感がなくなる印象だったのでいっその事全楽曲をオーケストラなしで出してみても良かったのじゃないかとすら思った。恐らくやや軽やかに、曲によっては普通にすら感じるレベルのロック作品になってしまうかもしれないので、バンドの名誉を守るためにはこのオーケストラ感は必須だったろうが、こうしてアウトテイクスを聴いているとそんな別バージョンにも期待できた気がする。それにしても良いギタープレイが存分に聴けてかなり満足度の高い一枚だった。素晴らしい。





関連記事
フレ
Posted byフレ

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply