Wishbone Ash - Argus (Deluxe Edition)

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Wishbone Ash - Argus (Deluxe Edition) (1972)
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 本ブログを書き始めてからかなりの時間が経過するが、その中で最もアクセス件数が多い記事のひとつがこのウィシュボーン・アッシュの「Argus」だ。理由は分からないが、検索すると大抵上位に位置してくるのが続いているせいもあるだろうし、そのおかげでまたアクセス件数が増えるのでどうも突出しているようだが、かと言って中身の記事自体にそこまでスペシャルな事が書かれているワケでもなく、普通にいつもの曲を聴いての勝手な感想と思い込みが記されているだけなので、googleの検索結果上位は分からない。SEO対策と称してある程度狙って上位に持ち込む手段はあるのだろうが、そういう画策を一切していない単なるブログの記事が上位に位置し続けるのも不思議だし、ネットの世界では何がバズる、爆発するかがホントに読めない。多くは意外なものが取り上げられて驚く、と言うものだがもちろん狙ってそれなりな成果を挙げているものも多いのだろうし、それが普通なのかもしれない。そんな記事を後になって自分で読んでいると、すでに他人事のような記事で見ているのだから面白く、久々に取り組むにあたって今度は自分はどう感じるのだろう、などとも思って楽しみになる。

 Wishbone Ashの1972年名作名盤の誉れ高い英国ロック史に於ける代表作とも言われる「Argus」も2007年にはデラックス・エディションと称してリマスタリングは当然ながらボーナストラックが付けられ、更に拡張盤としてBBCライブの模様を別ディスクに収めて再発している。どのバンドでも同じだが、デラックス・エディション盤は大抵一度限りの発売で、その後は通常のリマスター本編だけが再発され続け、ボーナストラックが一切カットされたバージョンになる傾向が強い。即ちそれまで何曲か付けられていたシングル盤などは残される場合もあるが、大々的なデラックス・エディションのディスクは幻のオフィシャルアイテムと化するようだ。既にそのライブは入手不可能だったりサブスクでも見当たらなかったりする場合も多く、その意味では確かにデラックス・エディションだった、とも言える。このアルバムの場合はあまりにも名盤過ぎるので、割と常に再発され続けていたが、1991年頃の再発時から当時のシングルカット曲「Blowin' Free」のB面曲だった「No Easy Road」が最後にボーナストラックとして付けられ、正直な所がアルバム全編の完成度をぶち壊してくれていた。この曲はウィッシュボーン・アッシュには珍しいオールドタイムなR&Rスタイルの楽曲で、さすがに当時のシングルB面曲にしただけの事はあり、アルバムのコンセプトとはかけ離れたお遊び的要素すら強いと感じる作風。悪い出来はなく、他のアルバムに収録されているなら軽快でウィッシュボーン・アッシュの別の側面を見られる作品とでも書けたが、ボーナストラックとして収録するアルバムには相応しくなかった。だからこそボーナストラックとも言えるが。その後2002年頃には今度は自分も知らなかったが1972年8月21日のメンフィスでのライブ3曲を「Live From Memphis」としたプロモ盤が存在したようで、その音源をボーナストラックの「+3」曲として収録したディスクがリリースされている。その中の「Jail Balt」だけが本デラックス・エディション盤には収録されていないのはなかなかの手落ちとも思えるがアルバムの時代からズレているから外したのだろうか、逆に2002年盤のCDは捨てられない状況になっている。ところが、収録されている「The Pilgrim」にしても「Phoenix」にしても「Argus」作品ではないので、果たして収録有無の基準はどこにあったのかイマイチ真意が汲み取れないが、確かにこの2曲のライブバージョンは全盛期のウィッシュボーン・アッシュの面子が奏でるライブソースとしてはアドリブ感や演奏そのものも含めて素晴らしく、アメリカでこんなライブをやって本当に盛り上がったのだろうかと心配になるくらいに線の細いギターを2本配置しての美しきアドリブ的演奏、正しくプログレッシブなプレイを聴かせてくれる白熱の聴き応え満載のライブが聴ける。何せ前者が10分強、後者が17分の長尺ライブソースだから凄い。しかも展開が目まぐるしく変わるわけでもなく淡々と演奏が繰り広げられるだけに近いのにこの惹き込まれ具合。

 そして2枚目のディスクがこのデラックス・エディションでしか聴かれないBBCセッション集だが、とは言え古くから有りがちなライブアルバム「BBC Radio One Live in Concert」に1972年5月25日のセッション全貌が記録されてリリースされてはいたので、そこからの「Argus」曲を抜粋した形になっているので、良いのか悪いのか、コンセプト通りにリリースとなったようだ。すると何がデラックス・エディションの最もキモになったのかと言えば、その後の同年5月31日の「Blowin' Free」と5月10日の「Throw Down The Sword」の演奏と言う事になるが、このセッション時も当然他の曲もプレイされているので、まずは聴ける事を喜ぶべきとして捉えよう。かと言って、先の5月25日のセッションでも聴ける楽曲とかなり近い日の演奏のため、記録的価値は大きいが演奏的側面からはそこまで大きく異なる要素もなく、味わう程度として捉えている。事実いずれのBBCセッションでも聴いていて思うのはやはりこれだけの繊細で美しさと雰囲気を出しているアルバムはあまりにもその完成度が高すぎるために、ライブバージョンがどうしてもラフに聞こえてしまい、またメンバーも要所要所はスタジオバージョンそのままながらかなりアドリブプレイによる旋律も出てくるので完成度がやや変わってくる。良い悪いよりもライブとアルバムの大きな違いがスタジオバージョンの素晴らしさの方が勝っているという感覚を持った次第。生でライブ見てたらものすごく嬉しいだろうし、凄さを実感するだろうし、目の前であのスタジオ作品が繰り広げられる感動に包まれるのは間違いない。それを見れなかったリスナーにこうして音だけでも届けてくれているので、それを良い悪いと言っても始まらないし、聴けるだけでそういうライブだったのかと感じられるのだから感謝。自分だけの事で言えばBBCセッションライブは特にCDを入手して聴いてはいなかったので、ここで初めて聴いたのは有難かったし、こういうライブの様相だったのかと知った次第。もう少しギターの音を歪ませて艷やかな音色にしても良かったようにも思うが、ウィッシュボーン・アッシュの不思議なところはツインギターでフライングVも見られるからハードロックバンドのように見られがちなものの、その実鍵盤ではないギター2本によるプログレッシブスタイルの美しさを探求している方が強く、線の細さもピアノを鳴らしているかのような替わりとしてギターを当てている感じが強いのでリスナー側のイメージがまだ固定されているのか。それでもどうしてもギターを聴いているともうちょっと、という音色に期待してしまう自分の矛盾。

 本編の美しさについては以前の自分でも結構書いているので素直な感想としてはそのままだった。今回聴いていても繊細な美しさと作り込み具合はマザマザと感じるし、リマスター盤だからかかなり際立った音色でも聴けているので、改めて凄いアルバムだと実感。ちなみに「Argus」からは外れるがここでも2つのライブバージョンが収録されている「Phoenix」の長尺ライブバージョンはバンドを代表する素晴らしき演奏でついつい惹き込まれてしまい、また「Argus」収録曲と路線が同じなので違和感もなく楽しめる。






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フレ
Posted byフレ

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