Amazing Blondel - Blondel
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Amazing Blondel - Blondel (1973)

自分のアイランド・レコードのイメージはまずはボブ・マーリーのレゲエが挙げられる。70年代のロックを追求するようになってからはフリーやフェアポート・コンヴェンション、キング・クリムゾンのピンクラベル、などなどと多数出てくるようになるが、当然ながらそれらも氷山の一角で実に様々なジャンルのアーティストをリリースしている。それでも初期の頃はクリス・ブラックウェルがスペンサー・デイヴィス・グループのスティーブ・ウィンウッド発掘からロックに突き進み、同時にレゲエにも着手したらしい。ただ、一方での英国レーベルとしての伝統的なフォーク路線も押さえたかったのか、いくつかのその路線のバンドも手がけており、その中のひとつに今回のAmazing Blondelも入ってくるが、面白いのは他のレーベルではあまり見当たらないレーベルメイト同士でのジャンルを跨いだアルバムセッションのゲスト参加なる手法で、メジャーバンドに誰かが参加することは多くもないが、マイナーなバンドにはメジャーな面子が参加するようなことは多々あったのか、割と名前を見かけるので、アイランド・レコードの作品を聴く時にはクレジットに目を通してみると意外な名前を発見する場合もある。
Amazing Blondelの1973年リリース作5枚目のアルバム「Blondel」では自分も聴くまで知らなかったが、ドラムにサイモン・カーク、ゲストボーカルで一曲だけポール・ロジャースがフロントで歌い、ベースにはスティーブ・ウィンウッドを配している何とも豪華な作品になっている。ちなみに次の「マルグレイヴ・ストリート」ではアイランド・レコードから離れたDJMレーベル(Pye傘下)となったにも関わらず、ポール・コソフやミック・ラルフス、サイモン・カークやラビット、エディ・ジョブソンまでもが参加しているので、単なるレーベルメイトから友人にもなっていたのかもしれない。そんな英国ロックの辺境を漁っていると妙な所に妙な面子が参加している作品に出会い、それがために入手しないと、となるが、これがまた当然ながらなかなか手に入らなくて幻の一品になっていったところにCD化の波がやってきて、後はリリースを待つのみとの状況となって、ようやく1995年にエドゼルレーベルから再発されたのを喜んでいたが、どうにも軽快なフォーク作品だったので、そこまでロック的なゲストの面々を楽しめる事もなく、またスティーブ・ウィンウッドのベースと言えども基本的にフォークなのでベース自体の登場も少なく音も大きくはないので、そこまで聴き込まず、サイモン・カークのドラムはさすがに鳴っているのは当然だが、ユニークな事にフリーのあのドラミングとはまるで異なる、普通のドラムを叩いているので言われてもサイモン・カークとは分からない。バドカンの時のドラミングに近いだろうか。ただ、ポール・ロジャースの歌声が響く一曲は、明らかに、そして圧倒的にポール・ロジャースの歌だが、これも不思議な事にあのポール・ロジャースらしい歌声にはあまり聞こえず、やや苦しいかのような歌い方、歌声で聴こえるので、あまりにも曲調とポール・ロジャースの歌が似合わなかったのか、ネームバリューと釣り合わない楽曲な気がした。そして不思議な事にSue&Sunnyの女性コーラスデュオが参加しているが、彼女たちはCBSからの参加なので、レーベルメイトだけでの付き合いでもない組み合わせで制作されているようだ。スタジオミュージシャン的に知られた二人のメンバーの作品だったのかもしれない。
Amazing Blondelはそもそもが二人のメンバーで始まり、一時期三人になって活動した後、そもそも在籍していたメンバーが辞めてしまって、残った二人が続けていた状況で、本アルバムはそのエディ・ベアードとテリー・ウィンコットの作品。これもまた不思議なのは初期の作品からフォーク路線、しかも古楽器を使った路線だったが、徐々に洗練されていき、メンバーが加わり、そしてこの面子に替わったが、それでも基本路線は変わらずの牧歌的フォークのまま。なるほどそれでは最初から在籍しているテリー・ウィンコットが主役なのだろうと思いきや、過去作品では相方だったジョン・グラッドウィンが曲を作っており、その後はエディ・ベアードが作っているのだからどういう吹き回しでこういう路線の音が続けられたのだろうか、それともトラッドフォークと同じくの共通路線が敷かれていたのだろうか、謎は深まるが、単純に英国フォークをそれなりの人たちが演奏するとこうなる、とも思える。聴いているとふと最初期のデヴィッド・ボウイを感じる時もあるし、それこそフェアポート・コンヴェンション的にも聞こえてくるし、皆こういうルーツは持ち合わせているのが英国人なのかもしれないとすら思える。名盤かどうかという話になるとよく分からないが、聴いててかなり心地良いのは確かだし、強烈なインパクトを放つ曲、即ちポール・ロジャースのボーカルは終盤に出てくる「Weavers Market」なので、そこまでは実に牧歌的に聴ける楽しみがある。ところがポール・ロジャースのこの曲だけはかなり浮きまくってて、ポール・ロジャースが如何にロックブルースのシンガーかが顕著に出てしまった感すらある。途中から同じメロディでAmazing Blondelの面子が歌い、その後にSue&Sunnyが歌うが、一番うまくてハマっているのはもちろんAmazing Blondelの片割れの方。どうにも不思議な組み合わせで歌われている楽曲で、ドラムを叩いているサイモン・カークとボコボコベースを弾いているスティーブ・ウィンウッドはどう思っていたのだろうか。それでもそのアンバランスなムードからどこかお祭り気分的に呪術的に盛り上がる模様はひとつの醍醐味、クライマックスとも言えるのは面白い。
なかなか手にする事のないバンドだろうしアルバムだが、そんなゲスト陣営のおかげで耳にする機会を得て、またユニークな音世界にも出会え、そもそも英国の牧歌的古楽器を用いたフォークバンドとして知られた作品もいくつかあるので興味はあったが、こういうきっかけで好きになる、気になる、聴きやすくなるのはありがたきセッション。こういうニッチな所を漁っていくようになると益々英国ロックの深みを味わっていけるものだ。リマスター盤は今のところリリースされていないようなので、もしかしたら今後出てくるかもしれないがなかなか可能性は薄いだろう、そしてその意味もあまりないのかもしれない。

自分のアイランド・レコードのイメージはまずはボブ・マーリーのレゲエが挙げられる。70年代のロックを追求するようになってからはフリーやフェアポート・コンヴェンション、キング・クリムゾンのピンクラベル、などなどと多数出てくるようになるが、当然ながらそれらも氷山の一角で実に様々なジャンルのアーティストをリリースしている。それでも初期の頃はクリス・ブラックウェルがスペンサー・デイヴィス・グループのスティーブ・ウィンウッド発掘からロックに突き進み、同時にレゲエにも着手したらしい。ただ、一方での英国レーベルとしての伝統的なフォーク路線も押さえたかったのか、いくつかのその路線のバンドも手がけており、その中のひとつに今回のAmazing Blondelも入ってくるが、面白いのは他のレーベルではあまり見当たらないレーベルメイト同士でのジャンルを跨いだアルバムセッションのゲスト参加なる手法で、メジャーバンドに誰かが参加することは多くもないが、マイナーなバンドにはメジャーな面子が参加するようなことは多々あったのか、割と名前を見かけるので、アイランド・レコードの作品を聴く時にはクレジットに目を通してみると意外な名前を発見する場合もある。
Amazing Blondelの1973年リリース作5枚目のアルバム「Blondel」では自分も聴くまで知らなかったが、ドラムにサイモン・カーク、ゲストボーカルで一曲だけポール・ロジャースがフロントで歌い、ベースにはスティーブ・ウィンウッドを配している何とも豪華な作品になっている。ちなみに次の「マルグレイヴ・ストリート」ではアイランド・レコードから離れたDJMレーベル(Pye傘下)となったにも関わらず、ポール・コソフやミック・ラルフス、サイモン・カークやラビット、エディ・ジョブソンまでもが参加しているので、単なるレーベルメイトから友人にもなっていたのかもしれない。そんな英国ロックの辺境を漁っていると妙な所に妙な面子が参加している作品に出会い、それがために入手しないと、となるが、これがまた当然ながらなかなか手に入らなくて幻の一品になっていったところにCD化の波がやってきて、後はリリースを待つのみとの状況となって、ようやく1995年にエドゼルレーベルから再発されたのを喜んでいたが、どうにも軽快なフォーク作品だったので、そこまでロック的なゲストの面々を楽しめる事もなく、またスティーブ・ウィンウッドのベースと言えども基本的にフォークなのでベース自体の登場も少なく音も大きくはないので、そこまで聴き込まず、サイモン・カークのドラムはさすがに鳴っているのは当然だが、ユニークな事にフリーのあのドラミングとはまるで異なる、普通のドラムを叩いているので言われてもサイモン・カークとは分からない。バドカンの時のドラミングに近いだろうか。ただ、ポール・ロジャースの歌声が響く一曲は、明らかに、そして圧倒的にポール・ロジャースの歌だが、これも不思議な事にあのポール・ロジャースらしい歌声にはあまり聞こえず、やや苦しいかのような歌い方、歌声で聴こえるので、あまりにも曲調とポール・ロジャースの歌が似合わなかったのか、ネームバリューと釣り合わない楽曲な気がした。そして不思議な事にSue&Sunnyの女性コーラスデュオが参加しているが、彼女たちはCBSからの参加なので、レーベルメイトだけでの付き合いでもない組み合わせで制作されているようだ。スタジオミュージシャン的に知られた二人のメンバーの作品だったのかもしれない。
Amazing Blondelはそもそもが二人のメンバーで始まり、一時期三人になって活動した後、そもそも在籍していたメンバーが辞めてしまって、残った二人が続けていた状況で、本アルバムはそのエディ・ベアードとテリー・ウィンコットの作品。これもまた不思議なのは初期の作品からフォーク路線、しかも古楽器を使った路線だったが、徐々に洗練されていき、メンバーが加わり、そしてこの面子に替わったが、それでも基本路線は変わらずの牧歌的フォークのまま。なるほどそれでは最初から在籍しているテリー・ウィンコットが主役なのだろうと思いきや、過去作品では相方だったジョン・グラッドウィンが曲を作っており、その後はエディ・ベアードが作っているのだからどういう吹き回しでこういう路線の音が続けられたのだろうか、それともトラッドフォークと同じくの共通路線が敷かれていたのだろうか、謎は深まるが、単純に英国フォークをそれなりの人たちが演奏するとこうなる、とも思える。聴いているとふと最初期のデヴィッド・ボウイを感じる時もあるし、それこそフェアポート・コンヴェンション的にも聞こえてくるし、皆こういうルーツは持ち合わせているのが英国人なのかもしれないとすら思える。名盤かどうかという話になるとよく分からないが、聴いててかなり心地良いのは確かだし、強烈なインパクトを放つ曲、即ちポール・ロジャースのボーカルは終盤に出てくる「Weavers Market」なので、そこまでは実に牧歌的に聴ける楽しみがある。ところがポール・ロジャースのこの曲だけはかなり浮きまくってて、ポール・ロジャースが如何にロックブルースのシンガーかが顕著に出てしまった感すらある。途中から同じメロディでAmazing Blondelの面子が歌い、その後にSue&Sunnyが歌うが、一番うまくてハマっているのはもちろんAmazing Blondelの片割れの方。どうにも不思議な組み合わせで歌われている楽曲で、ドラムを叩いているサイモン・カークとボコボコベースを弾いているスティーブ・ウィンウッドはどう思っていたのだろうか。それでもそのアンバランスなムードからどこかお祭り気分的に呪術的に盛り上がる模様はひとつの醍醐味、クライマックスとも言えるのは面白い。
なかなか手にする事のないバンドだろうしアルバムだが、そんなゲスト陣営のおかげで耳にする機会を得て、またユニークな音世界にも出会え、そもそも英国の牧歌的古楽器を用いたフォークバンドとして知られた作品もいくつかあるので興味はあったが、こういうきっかけで好きになる、気になる、聴きやすくなるのはありがたきセッション。こういうニッチな所を漁っていくようになると益々英国ロックの深みを味わっていけるものだ。リマスター盤は今のところリリースされていないようなので、もしかしたら今後出てくるかもしれないがなかなか可能性は薄いだろう、そしてその意味もあまりないのかもしれない。
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