Paul Kossoff - Leaves In The Wind

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Paul Kossoff - Leaves In The Wind (1982)
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 ロックの世界では若くして命を落とす人が割と目立つ。現代は昔ほどではないが、それでもまだ若いのに、と嘆かれる場合も多いが、近年はさすがにドラッグでの死は減っているようにも思うが実際にはそういう書かれ方をしないだけかもしれない。プリンスやマイケル・ジャクソンにしても結局はドラッグだったとの話だろうし、エイミー・ワインハウスはモロにそうだろうし、年老いたミュージシャンならまだ病死なども多いから分かるが、昔はドラッグ騒ぎが多かったように思う。そしてロックスターの悲劇にはドラッグだけではなく、ツアーを行っているからこその交通事故、飛行機事故の話も聞くが、一方では好きでそこに突き進んでいったようにも思うバイク事故や暴走車での事故も多い、とここまで書いてみると、世間一般の普通の亡くなり方とさほど変わらないかもと思った。ドラッグだけは比率が高いかもしれない。

 1976年3月19日に飛行機の中で死亡が確認された英国の魂のギタリスト、Paul Kossoff。フリーでその名を轟かせたものの、あまりにも若すぎるメンバーで構成されたバンドらしく、勢いも凄かったがパワーも凄かったために早々にバンドは崩壊し、若気の至りと直ちに再結成するもまたしてもメンバー離脱により空中分解状態となり、そのあたりからバンドで最もピュアな魂を持っていたポール・コソフはドラッグに手を染め、心身ともボロボロになりながらレスポールを弾いていた。それでも限界はあるのでバンドは崩壊し、ボロボロになった後にソロアルバム「Back Street Crawler」を制作。その後にはBack Street Crawler名義のバンドを結成して1975年にアルバム「The Band Plays on」でデビュー、翌1976年にセカンド・アルバム「2nd Street」を録音し、その発売を待たずして天命を全うした。バンドはアメリカツアーを敢行中で、直前の3月3日にはバッド・カンパニーがBack Street Crawlerのステージに登場してポール・ロジャースとの交友関係の良さもアピールしていた。

 そのBack Street Crawlerの音源はアルバム2枚に加えて1975年クロイドンのライブが知られている程度で、他にもいくつかのライブソースが存在するものの一般発売に耐えうるソースはその程度しかなく、そのクロイドンのライブは1983年に初めてリリースされているので、今回紹介するPaul Kossoff名義でリリースされたBack Street Crawlerアルバムからの編集盤「Leaves In The Wind」に収録された4曲はその前出しで1982年にリリースされた点で貴重。ユニークなのは当然と言えば当然だが、収録曲のウチ、セカンドアルバムからの楽曲はスタジオ盤でポール・コソフが弾いている音を聴けるが、ファーストアルバムからの曲は全て1975年6月15日のクロイドンからのライブソースで埋め尽くされている構成で、言い換えるとファーストアルバムのスタジオバージョンからのチョイスは一曲も見当たらない。そんな妙なセンスに彩られたポール・コソフ名義の編集盤ながら、Back Street Crawlerにポール・コソフが提供した「Who Do Women」は収録されていない不思議で、そこまで考えられてもいない編集盤だとは思うが、ポール・コソフのプレイヤー面に絞って集められた楽曲と、クロイドンのライブからのナイスプレイチョイスだろうと勝手に解釈している。音源だけの話なら既にどれもこれも他の作品、普通にCD買ってれば聴けるし2020年にはBack Street Crawler名で全てのソースを収録したボックスセット「Atlantic Years 1975-1976」もリリースされているので、貴重さは皆無ながら、アルバムの面白いのはそこではなくやはりジャケットのシュールな印象だろう。没後6年のリリースアルバムでまだ先日逝去したとばかりのような印象すら与える秀逸なジャケットがどこか心をくすぐるので目に付くアルバムだった。レコード屋漁りをしている時にも何回も見ていたが、既に編集盤と知っていたし内容も持っていたので飛び付いて買うこともなく、そのまま見逃してしまったのは少々勿体無い事をした。

 アルバムの構成はA面もB面も最後から2曲がクロイドンのライブバージョンを収録しているので、各面ともスタジオ盤を聴いてしっとりとコソフのプレイの流暢さを味わい、ライブ2曲でやや荒っぽいバンドの演奏とコソフのギターを聴くような感触だが、やはりライブでのギタープレイの白熱ぶりは聞き所満載。強烈なフレーズがあるワケでもないし、ロックのビートに乗せてのプレイなのであの哀しみのフレーズとは異なるが、「Rock And Roll Junkie」や「All The Girls Are Crazy」では随所でかなり色艶が漂った音色のギターが聴けるので盛り上がってくる。また、最後の「Stealing My Way」の終盤の長いギターソロではかなりフリー時代の演奏に近い白熱のプレイぶりを聴けるのでついつい惹き込まれていくし、ポール・コソフ作の一曲だからか、存分にコソフのやりたいように弾けている満足感は高そうだ。こういう所で初めてBack Street Crawlerのライブソースを聴いたリスナーはもっとライブを聞かせろと思っただろうし、今このアルバムを聴いてても思うのだから長尺バージョンのリリースは待ち遠しかった事だろう。意外な事に聴き応えのある編集盤だった「Leaves In The Wind」。






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フレ
Posted byフレ

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