Ron Wood - I've Got My Own Album to Do (Remastered)

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Ron Wood - I've Got My Own Album to Do (Remastered) (1974)
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 数々のロックバンドを聴いて、メンバーの人となりやプレイぶりが分かってくるとそのうちに誰それと誰それが一緒に演奏してたら凄いだろう、きっとウマが合った作品やプレイが聴けるだろう、誰それのバックで誰それが歌ったらカッコ良いだろうな、などと妄想の世界も広がるし、期待感も高まる。なので当時はなかなか出てこなかった情報で、誰それがどこかのバンドのオーディションに出ていった、セッションに参加していたと聞くと、妙に物珍しさ感が募り、その貴重な音源や写真を聴いたり見たりしたくなったものだ。今でもカッコ良いなと思って音は聴いた事のない写真の一枚にジミヘンとミック・ジョーンズがモンタレーかどこかで一緒に写っているものがある。やたらカッコ良いのだが、果たしてこの二人は一緒にジャムった事あるのだろうか、それとも単なるジャンキー仲間だったのか、ジミヘンとジャニスもありそうでなかなか写真も見られないが、一方でそんなセッションが実現してたのかと思うようなものもあり、ピンキリだが夢は膨らみ、もしかしたら叶っているかもしれない。

 Ron Woodの1974年リリースの最初のソロアルバム「I've Got My Own Album to Do」はまだロン・ウッドがかろうじてフェイセスに在籍している時期で、ストーンズに加入する前の話だ。それなのにミック・ジャガーやキース・リチャーズ、ミック・テイラーも参加しているし、一方のフェイセスからはロニー・レイン以外の全員が参加している。それに加えてリズム隊はアンディ・ニューマックとウィリー・ウィークスとプロ中のプロを従え、ジェフ・ベックの所で一緒にやってたミック・ウォーラーまで呼んでいるのだから面白い。よほど楽しかった面々だったと見え、キースも含めて皆でニューバーバリアンズとしてバンド活動とツアーまでしてしまう始末だから凄い。レコーディングの記録ではデヴィッド・ボウイも来ていたようだし、ジョージ・ハリソンとの共作曲を取り上げている事からするとジョージ・ハリソンもいたのかもしれない。何という面々が一つのアルバムのセッションに揃った事か、普通にストーンズやフェイセスではあり得ないし、ビートルズでもあり得ないが、ロン・ウッドのソロアルバムではこうしたセッションになっていた。他の人のソロアルバムでもなかなかここまでの面子は揃わないが、そういえばクラプトンはドラッグまみれの時期だから参加しなかったのか、と邪推してみたりも面白い。

 ユニークなのは冒頭の「I Can Feel The Fire」をロン・ウッドとミック・ジャガーで作っていたあたりで、この時にもう一曲出来上がった曲が「It's Only Rock'N Roll」で、そちらはストーンズに持っていき、こちらをロン・ウッドに残したが、ミック・ジャガーが歌ってキース・リチャーズもギター弾いているので未来系ストーンズのフロント3人+イアン・マクレガンがピアノを弾いている事になるし、曲そのものも演奏も見事なまでにストーンズそのまま。ただ、リズム隊が違うとやはりそこまでには成り切らないのはビル・ワイマンとチャーリー・ワッツのメンバーとしてのグルーブ感の違いか。そしてジョージ・ハリソンと共作している「Far East Man」はジョージ・ハリソンのアルバムにも収録されているが圧倒的にコチラの方が良い雰囲気、それらしいムードが出ていて面白い。「Mystifies Me」は今度はフェイセス組の活躍となりミック・ウォーラーとピーター・シアーズによるリズム隊とイアン・マクレガン、そしてコーラスにはロッド・スチュワートが入ってきて一気に引き締まるその歌声の迫力は圧巻。続いての「Take a Look at the Guy」ではキースとロニーのギターをバックにロッド・スチュワート歌っている全く夢のセッションで、当然ながら曲のグルーブ感も素晴らしいながらロッド・スチュワートの存在感の大きさがさすが天下のシンガー感を出している。次にはストーンズの、ジャガー、リチャーズ作詞作曲名義での提供曲「Act Together」をロン・ウッドが歌っているしキースも当然バックを担っているが、ミックは歌詞を提供したようだ。曲的にはやや弱い感じもするが、ソウルフルなバッキングコーラスの使い方がストーンズでも聴かれる具合らしいし、ボーカル変えればそうなるのだろうと想像が付く佳曲。そのミック・ジャガーがまたしてもボーカルを担う「Am I Grooving You」はモロにストーンズチックな演奏だが1967年のフレディ・スコットのヒット曲のカバーらしい。言われなければストーンズのナンバーと勘違いしそうなアレンジだ。「Shirley」では今度はミック・テイラーがベースにギターにピアノと大活躍しているが、ロン・ウッドとミック・テイラーの関係性も本作以外ではあまり取り上げられないので、実際そこまで交流が太かったのかどうかよく知らない。ただ、やはり演奏はしっかりしているし音楽的な面では一味ふた味レベルが違う人という認識なので本作もきっちりと纏まっているように聴こえる。

 そして後年の再発レコードリリース時のタイトルともなった「Cancel Everything」はややレイドバックした風味もあるこの頃受けていた作風でロン・ウッドがようやくここに来てソロ感を出してきた楽曲にも聴こえるが、これがまた良い曲に仕上がっているから本人の才能をきちんと魅せてくれる。ゲスト陣営だけでの大はしゃぎアルバムではなく、コーラス部隊と共に時代に合わせたムードの作風を聴かせてくれるのだから見事。ストーンズに入らなければこうしてミュージシャン生命を全うしていったのだろうと思うし、ボウイあたりとも一緒にやってたかもしれない。そして軽快なR&Rプレイとなる「Sure the One You Need」もやや貧弱感はあるが、ボーカルはキースが担っているからこそのそれらしさ。ニューバーバリアンズに向かうのはこういう一人舞台感をストーンズ以外でも出せていったからだろうか、キースが歌うにしてはややはっきりしすぎた曲だったようにも思うが、もちろんキース作曲作品。「If You Gotta Make a Fool of Somebody」は1961年のヒット曲らしく、やや聴かせるタイプの曲にキースのギターが心地良く鳴らされるしっとりした雰囲気のあるアレンジ。最後はウィリー・ウィークス作曲の「Crotch Music」だが、さすがにベーシストが作った曲と分かるくらいにリズム重視のインストナンバーで意外な事にここでもキースのギターがカッコ良く爪弾かれているような気がするがロン・ウッドのプレイかもしれない。

 これほどの面々のセッションアルバムなのでもっと発掘お宝音源もあると想像されるが、リマスタリングはされつつもボーナストラック付きでは再発されておらず、シンプルにアルバムだけで楽しませる一枚。もっとも翌年にも「Now Look」をこれまた豪華な面子で制作しているのでそれで楽しめと言う話だろう。それにしても改めて凄い面子でのセッションだ。それでいて皆が皆きちんと見せ場で仕事をこなして収録しているからさすがのミュージシャン達。一方で面子を気にしないでアルバムを聴いたら楽しいか、と問われると前半はかなりグイグイくる部分もあるが終盤はやや落ち着いてくるのでそこまででもないと思う。ただ、最後は凄いセッションなので終わりよければ全て良し、か。






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フレ
Posted byフレ

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