Nicky Hopkins, Ry Cooder, Mick, Bill & Charlie - Jamming With Edward!

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Nicky Hopkins, Ry Cooder, Mick, Bill & Charlie - Jamming With Edward! (1972)
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 60年代はまだミュージシャンの数自体も多くなく、ましてやスタジオでレコーディングを務めるようなミュージシャンは皆が皆知り合いだったというレベルでの仲間のシーンがあったように思える。その面々にはまだその頃は無名だったジミー・ペイジやジョン・ポール・ジョーンズやニッキー・ホプキンスやアルバート・リーなどがおり、スタジオで顔を合わせればジャムもしていたような間柄だったらしく、そういった音源や人脈によって後々にセッション作やゲスト出演作など数々の作品がリリースされている。その関係から実はジミー・ペイジとストーンズやフーの面々も知り合いだったり、ジョンジーも然り、またニッキー・ホプキンスも同じくでその後の活動へも大きく影響を与えている。その中でユニークなセッションがモロにアルバムと言う体でリリースされて、期待と冗談半分と金儲けが合わさって今でも聴けるアルバムがある。

 The Rolling Stonesの1969年の傑作アルバム「レット・イット・ブリード」はギタリストがキースしかおらず、ブライアン・ジョーンズはほぼ不参加、次なるギタリストはミック・テイラーながらも幾つかの曲での参加のみで、セッションにはライ・クーダーを呼んで行った時もあり、そんな時に限ってキースが大遅刻した、またはライ・クーダーと揉めて帰ってしまった、と諸説諸々あるが、後者は多分無さそうで、前者なら大いにあり得るだろうし、その結果、待ち時間を折角の珍しい面々も揃っているのに無駄に過ごすのも勿体無いとの事からジャムセッションが延々と繰り広げられたらしく、それもきちんと曲らしきスタイルに仕上げようとした形跡もあり、やるからには何かを掴み取れれば良いとの意向もあったのか、作品としてまかり通るレベルではないが、それぞれの卓越したミュージシャンのセッションだから個性は聴けるし、何せミック・ジャガーが歌ってライ・クーダーが強烈なカントリー・ブルースを弾いているのだから魅力的だ。そんなジャムセッションが1972年になり、それらしく纏め上げてリリースされたのが「Jamming With Edward!」。ここでのEdwardはニッキー・ホプキンスの愛称の事で、モノの見事にこのジャムセッションで一番活躍しているのはそのニッキー・ホプキンスのピアノだからそのタイトルになったようにも思う。大人の事情的にはライ・クーダーのリフをパクって曲にしてしまった事への恩返しと言うか、印税渡しを本作から行うような意図もあったらしいが、それはともかくとしてやや冗長ながらも貴重なセッションによるそれぞれの面子の取り組み姿勢は割と楽しめる。

 冒頭「The Boudoir Stomp」はそれこそこの頃のストーンズらしいカントリータッチのブルースが軽快に奏でられ、キースのギターじゃなくても十分に成り立っているあの世界観で、そのままライ・クーダーがストーンズに参加したらこういう曲調が増えていたのかもしれないなどと邪推してしまう感じ。ここでもどこでもニッキー・ホプキンスがホントにセッションの幅をピアノで広げまくってて目立つが、さすがにワンコードでのセッションだから長々と聴いていると少々飽きてくるのは当然か。エルモア・ジェームズのカバーのふりしてる「It Hurt Me Too」ではライ・クーダーお得意のブルースにミック・ジャガーが絡むさすがな出来映えのセッションで、ややリハ不足的なぶつかりもあるが、それも含めて如何にも、と言った感じが好ましい。そしてニッキー・ホプキンスがこれでもかとばかりにピアノを叩きまくる「Edward's Thrump Up」が凄く、ライ・クーダーも所々でビシッとギターを絡めてくれるが、それでもニッキー・ホプキンスのこの音数には分が悪いと見たか、大人しめにセッションしており、ここでノリノリなのはチャーリー・ワッツとビル・ワイマンにも聴こえるくらいだ。そのおかげでついつい曲のセッションが伸び伸びになってしまったと言う感じ。それに負けじとばかりに今度はゲスト参加でわざわざ来ていたライ・クーダーをフューチャーしようと思ったかどうか分からないが、「Blow with Ry」ではタイトル通りにライ・クーダー全開のプレイにチャーリー・ワッツが絡み、バンド全員が追随してミック・ジャガーも参加した泥臭いブルースタッチの曲が出来上がっている。もっときちんと練れば結構な作品に仕上がってアルバムアウトテイクレベルまでには持っていけたような感じもするのが勿体無い11分半のセッション。そしてまたしてもニッキー・ホプキンスの強烈なホンキートンクピアノが繰り広げられる「Interlude A La El Hopo / Loveliest Night Of The Year」の最後は歌まで歌っているくらいにノリまくりの一曲だったようだ。そのままの勢いかのように次の「Highland Fling」もニッキー・ホプキンスのピアノが凄まじく、軽快なR&Rへと発展させてビル・ワイマンがここでブリブリとベースを弾きまくり、メンバー全員が盛り上がっていく面白さ。あと一歩ライ・クーダーが前に出て来ていないのはさすがにバンドメンバーとのセッション歴が浅いからだろうか。一方のニッキー・ホプキンスは完全にストーンズの連中と同等にストーンズのメンバーになり切っているとも言える。

 よくもまぁこんなセッションのリリースが許されたものだと素直に思う。キースはどう思ったのか、また、メンバーもストーンズの名は語っていないものの、単なるお遊び的な作品としてリリースする事のリスクはさほど感じなかったのか、レコード会社は棚ぼたで儲かるから良しとしても、なかなか勇気ある作品だと思う。ライ・クーダーも文句は無かったかどうか分からないが、ただ、本作リリース時のストーンズと来たら当然最全盛期なので何ら問題なくあしらえた事だろうし、リスナー的にはこんな貴重なセッションが聴けるのはありがたき幸せだろうし、結果的には皆良い思いをしたと言う事か。それにしてもニッキー・ホプキンスありきのセッションにしか聴こえず、タイトルが「Jamming With Edward!」となるのも分かる素晴らしきピアノプレイ。ここまでのニッキー・ホプキンスのプレイを楽しめるのはソロ作でも無い気がする。ただ、アルバムの性格上、リマスター盤や拡張セッション付きはリリースされてこないのも当然で、その意味ではそろそろ出しても良いのでは、と更なるジャムを期待するリスナーもいるだろう。





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フレ
Posted byフレ

Comments 3

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おっさん  

「Honky Tonk Women」がパクられたやつですね。
たしかにあの曲はキースのギタースタイルじゃないもんね。

2021/03/17 (Wed) 05:33 | EDIT | REPLY |   
おっさん  

前のコメントがネガティブに
とられそうなので補足ですけど、
キースは偉大なギタリストと思ってます。

2021/03/17 (Wed) 21:11 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>おっさん

いや、その通りでしょう(笑)。

2021/03/21 (Sun) 19:59 | EDIT | REPLY |   

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