John Mayall & The Bluesbrekers - Bare Wires (2007 Remastered Edition)

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John Mayall & The Bluesbrekers - Bare Wires (2007 Remastered Edition) (1968)
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 アルバムを入手する際、または買おうと思う時の動機は大きく2種類あり、ひとつはそのアーティストなりバンドが好きだから問答無用に入手する。もうひとつは例えばその興味ある人が参加しているから聴いてみたい、と言うもので、前者はミーハー的な話ながら後者は少々野心的な試みかもしれない。ロックの来歴を漁っていくとどうしてもこういうチャレンジは行わざるを得ないし、それで後追いでファミリートゥリーなりその人達の仕事ぶりや人脈の関係性などが見えてくるのもある。普通に聴いているだけならそこまで知る必要もないし、音楽そのものとはちょいとズレた話になるので音楽を聴くという目線からは不要だろう。そういえばもうひとつ純粋にどこかで聴いた音楽そのものが気に入ったからシングルなりアルバムなりを買うという普通の手段が最初だった。そこで、ミュージシャン本人がクリエイターな人であれば自分が気に入った音楽性からそこまでズレる事もないのでそこそこ付いていけるのが普通だが、プレイヤーだと色々な人とのセッションも多く、それこそ音楽ジャンルは幅広くなるのでそれが好きな音楽かどうかは聴いてみないと分からない。

 1968年にリリースされたJohn Mayall & The Bluesbreakersの「Bare Wires」はギタリストに後にストーンズに参加するミック・テイラーが全面参加したアルバムとして知られており、その名前だけで自分も若かりし頃にそれならばどこかで見たら入手して聴かなければと思っていた作品だった。当時はそういうレコードが多すぎて全てが全て手に入れられなかったので優先順位的にはさほど高くはなかったが、それでもギタリストというのもあって聴きたいな、どういうブルース弾いてたのかな、と気になっていた一作。しばらくして入手して初めて聴いた時の印象は正直言ってさっぱり好まなかったし、二度も三度も聴かないアルバムだったかと悟ってしまったのもある。単に時代的にサイケデリックの波の最中だったし、このアルバムではバンドの面子がこれまでとは変わり、後にコロシアムを結成する面子が多く参加した時期でもあるからか、今思えばサイケデリックブルースジャズ・ロックをもっとも最初期にシーンに出してきたアルバムとも言えるので革新的ですらあったアルバムにもなるだろう。ただ、その音が自分的に好みではなかったと言うだけの話だ。事実英国のアルバムチャートではそこそこ上位に留まっていたらしいので、ジョン・メイオールの知名度や市場での価値はかなり高かったが故、ジョン・メイオール学校とまで呼ばれるようにブルースに興味を持つ若者が憧れの羨望を持ってマーキーに通ってジョン・メイオールの元を通って行くようになったのだろう。それを頼もしく見ていたジョン・メイオールも実に懐の広いミュージシャンだったと思う。自身はギターもピアノもボーカルも兼ねるので、どのパートの若者が来ても自分がどこかに移って彼らを優先させた演奏場所を空けてくれるし、しかもかなりクォリティの高いオリジナル楽曲を用意して彼らに見合ったアレンジを施して録音するのだから面白い。それが若かりしミュージシャンへの刺激にもなる一方、自身の時代に合わせた進化していく作風、アルバムの方向性を示唆して進めていけるメリットもあり、なるほど、そうしてジョン・メイオールは一言では語れないミュージシャンとしてバリエーション豊かなアルバムを多数世に残す事になったのかと納得。

 この「Bare Wires」では簡単に書けば基本的には単なるブルース色の強い曲ばかりだが、バックの面々がまず、ドラムにジョン・ハイズマン、ベースにトニー・リーブス、サックスにディック・ヘクストール・スミスの後のコロシアム組が在籍している事から明らかにテクニカルでジャジーな路線を進んでいる。ジョン・メイオールも元々はジャズからブルースに来ているので、何ら問題なくそのアレンジは対応できただろう。それに加えてもう一人のサックス奏者にクリス・ミーサーと、これもまたマニアックな英国ロック史には登場する人で、古くはZoot Money、70年代ではJuicy Kucyの活動が知られているかもしれない。そしてもうひとりの管楽器奏者にヘンリー・ロウザーとあり、これもまたどこかで、と思ったら英国ジャズ・ロック絡みを聴いていると大抵出てくる人で、トランペットからクラリネット、バイオリンあたりまでも出来てしまう玄人好みのミュージシャン。そこにミック・テイラーだ。そして時代はサイケデリックの波を被っているからアルバム冒頭の「Bare Wire Suite」では23分の組曲形式で目一杯サイケ風味とジャジーなプレイがひたすら垂れ流され、その中で随所でミック・テイラーのギタープレイがブルースベースながらも曲に合わせたプレイが聴ける程度になっており、ブルースメンというほどの持ち上げられ方ではないのが少々残念で、自分が最初に聴いた時もこの曲のこのプレイから始まったので、全然好まなかった次第。対してB面ではサイケ色やジャジー色が取り除かれた本来のジョン・メイオールらしいブルース楽曲満載となり、シンプルにミック・テイラーのギタープレイも楽しめるし、ジョン・メイオールのピアノすらも楽しめる作風とアレンジなので馴染みやすい。ただ、時代的に、ジョン・メイオール的にそれが刺激的だったかとなれば、そこまででもなく、これまでの焼き直しに近い感覚はあったかもしれない。珍しい所では当然バンドのメンバーがジャジーな連中なので、ブルースベースながらも管楽器系のソロが奏でられたり、ギターと絡んだりもするので、その意味では後のコロシアムに至ったベースメントな楽曲形式の原案をプレイしているとも言える。

 2007年にリマスタリングされており、「Bare Wires (2007 Remastered Edition)」としてリリースされているが、その際はステレオバージョンとボーナストラックが6曲付けられているが、1968年にリリースされた際にはモノラルバージョンもあったのは周知の事実ながらミックスに変化は無かったのだろうか、モノラル盤は再発されていないようなのでアナログ英国初回盤のみでしか聴けないのかもしれない。ただ、ステレオバージョンをモノラルにして聴けば同じです、なのかもしれないが、実際そういう事もまずないだろうし、どこまで拘るかによって変わってくるだろう。そしてボーナストラックは1967年のシングル曲AB面「Jenny」「Picture on the Wall」から始まるが、ここではまだギターがピーター・グリーン在籍時のもので、後者のドラマーはキーフ・ハートレーなのもなるほどメイオール学校ならではと唸らされる。以降は同じ時期の未発表曲だったが、後の編集盤「Thru the Years」「Primal Solos」で既にリリースされた事のある楽曲群がここで時代を合わせて収録されたようだ。改めて聴いていると、A面はサイケデリック趣味、ミック・テイラーや他のメンバーがどういう風にそれに挑戦しているのかを聴きたければ聴く感じで、肝はB面の多様なブルースジャズスタイルでのメンバーの取り組み姿勢やメイオールのアプローチと捉えた方が良いだろう。アルバムとして傑作かと問われればそこまではないが、ただ、歴史的に貴重な記録と言うのとその中でもがきながら出来ている作品かもしれないとちょっと思った。いずれにしてもこの面子で仕上げたアルバム、サウンドの方向性はしっかりと羽ばたいていくのだからロックは面白い。




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フレ
Posted byフレ

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