The Secret Policeman's Other Ball - The Secret Policeman's Other Ball (The Music)

0 Comments
The Secret Policeman's Other Ball - The Secret Policeman's Other Ball (The Music) (1981)
B0000032V3

 古くから様々なチャリティイベントやアムネスティコンサートが開催され、もちろんどれもきちんとした目的があってアーティスト側も協賛して参加する、他の狙いがあるにしても表面上はそういう形で出演する方が多いだろう。その結果、単なるリスナー的には普段目にする事のないミュージシャン同士の組み合わせで演奏が聴けるかもしれない、または普段と別バージョンでの演奏が期待できるなどの邪心を持って見る方が多いし、実際そのおかげで貴重な組み合わせの歴史的記録が記されたイベントも数多い。ウッドストックやワイト島フェスはライブイベントだったが、その後のバングラデッシュでは既にジョージ・ハリソン周辺のミュージシャンが連なってセッションをしているし、知られていないセッションも数多くあるだろう。モンタレーの地下ではジミヘンを筆頭にとんでもないジャムセッションが行われていたのも有名だ。ただ、それらが凄く良いライブになっているかと言えばそうでもないのはやはりプレイヤー的な物珍しさだけで、音楽レベル的にはあくまでもセッションでしかないとなる方が多いのはやむを得ないか。当然プロなので見られれば見どころも多く、ワクワクするシーンも多いからそれだけで楽しめるので満足は満足。

 1981年にThe Secret Policeman's Other Ballと題されたイベントが開催され、その模様がアルバム「The Secret Policeman's Other Ball (The Music)」としてリリースされているし、その前の1979年にもThe Secret Policeman's Ballとして同じ様に開催されていたので、その2公演の模様を映像化した作品もリリースされていたので、実にありがたくも貴重な事に、エリック・クラプトンとジェフ・ベックの共演シーンがアルバムでは3曲、映像では2曲が見られ、それだけでこのコンサートは広く知られていったし、1983年のA.R.M.Sコンサートでの3大ギタリストのセッションと共に21世紀に入るまでこの二人の共演シーンはここでしかまともに確認出来なかったのも貴重だった。自分がこのコンサートでの共演情報を知ったのはベックやクラプトンを聴いてしばらくした頃の随分若かりし時期だったので、かなり早い時期にレコードを入手して聴いていた。映像はなかなか見る機会がなかったが、どこかで見てた記憶がある。今調べるとジュリアン・テンプル撮影の映像らしく、どうにも暗くて覇気のないようにしか見られず、一度くらいしか見てなかったのでYouTubeでじっくりと久々に見てしまったが、皆とにかく若いとしか言えない。

 冒頭からスティングの「Roxanne」と「Message in a Bottle」のアコギならぬエレキ一本での弾き語りスタイルで堂々と出てくるが、恐るべしハイトーンで歌い上げる姿は圧倒的なカリスマ感を出していて、この頃ポリスは丁度空いていた時期だったのか、相方のアンディ・サマーズもケヴィン・エアーズのライブに同行していたりもしてて、早い時期からプレイヤー個別の活動が盛んだったバンドのようだ。もっとも自分的にはポリス大ヒット以降に後追いで聴いたので、スティングがここでソロで歌い上げている事の珍しさを実感しにくかったが、この頃のソロ活動も珍しかったと思う。その意味では1979年のイベント開催時にピート・タウンゼントがソロで出演したのも珍しい一面だったし、後に出てくるフィル・コリンズにしてもソロで大ヒットを放つ前、ファーストアルバムを出すか出さないか、これからソロ活動するか、という時期だったのもあるだろうが、ソロで出てきたのは割と衝撃があったように思う。ジェネシスは知っててもフィル・コリンズの名前はさほど知られてなかっただろうし。レコードではB面に入っているが、ジェネシスのドラマーが、ボーカルだけでなく、ピアノを弾き語りながら歌い上げる「In the Air Tonight」、「The Roof is Leaking」は普通に素晴らしいミュージシャンによる演奏と歌唱なのでに驚く。ミュージシャン側も自身のプレイだけが全てで参加できたのはやりやすかった面も大きかったと思う。また、自身ではピアノを演奏はしていないが、こちらもブームタウン・ラッツ全盛期なのにソロで参加しているボブ・ゲルドフもピアノ一本と歌のみの参加で、あの独特の個性的な歌唱を聴かせてくれる。皆が皆説得力のあるパフォーマンスを魅せてくれるのもやはり実力が伴っているからこその魅力で、これを機に聴いてみたいと思わせるパフォーマンスばかりだ。60年代からのフォークシンガースターのドノヴァンはいつもながらの参加と言えばそのままながら知名度はかなり高かったし、ステージ構成もお手の物のようにプレイして歌っているので、安定のスタイルを楽しめる。

 そしてやはり自分的にはこの二人のセッションに釘付けになる、ベックとクラプトン。実際のショウでは他の曲も演奏されたのかどうか分からないが、まずはジェフ・ベックの「悲しみの恋人達」のバックでエリック・クラプトンが普通にバックをこなし、次はエリック・クラプトンの得意曲「Farther Up the Road」をクラプトン始まりでベックが追随する形でのギターソロプレイが見られるが、圧倒的にジェフ・ベックの個性が際立つようにも見えるし、エリック・クラプトンの余裕のブルースプレイとも見れる。二人の個性の違いがものすごく顕著にこの頃から出ているので見ていてワクワクする楽しみ。明らかにこのショウのハイライトパフォーマンス。レコードではこの後に「Crossroad」も収録されているが、さすがに聴いているだけでどっちがどっちのギターかは完全に分かるし、アプローチの違いも音の取り方もまるで違うのも面白く、グイグイくるギタープレイは二人とも同じなのでスリリングに楽しめる話題通りのセッションが聴ける。最後は参加ミュージシャン全員による「I Shall Be Released」で若きスティングが圧巻のボーカルを務めての素晴らしきプレイで締められるが、バックはドラムにサイモン・フィリップスとモ・フォスターもいる壮大なセッションだったと気づく。

 こういったセッションがあったからか、この後クラプトンとフィル・コリンズは共にプレイするようになるし、ボブ・ゲルドフはライブエイド構想にも繋がっただろうし、スティングにしてもソロ構想に繋がったりもしたのかもしれない。自分的にはベックとクラプトンの共演に惹かれて興味を持って聴いて見たが、スティングの凄さも聴けたし、フィル・コリンズの音楽的才能の幅広さを知る事も出来たのでありがたいアルバムだった。



関連記事
フレ
Posted byフレ

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply