Sharks - First Water (Remastered)

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Sharks - First Water (Remastered) (1973)
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 ロックのアルバムを聴いて最初に感動するのは普通は冒頭の曲のリフだったりボーカルだったり音の重さだったりする。曲の良さや面白さももちろん出てくるが、その前に多分音を聴いた時のインパクトが先にある方が衝撃は強いと思う。だから一発目の曲はバンドの代表となる曲が並べられる事が当然だろうし、アルバム単位でもそのアルバムを代表する、もしくはバンドがやりたい姿を聴かせる曲が最初に来るはずだ。コンセプトアルバムの場合はそうでもないが、それでもオープニングはコンセプトアルバムを期待させる曲がトップに来るはずだし、そういうセオリーにこだわらないバンドやアルバムもあるだろうが、成功してからなら出来るが普通はこのセオリーに従ってアルバムを聴くだろう。今のDL時代やシングルがひたすらに強いバンドの場合は異なるかもしれないが、70年代の音をひたすらに聴く事の多い自分はほぼそのセオリーを信じているし、従って聴いている部分は大きい。その意味でギターの音色やボーカルの歌声のインパクトが担う面は大きく、ましてや最初のアルバムの最初の曲ではほぼそこだけでアルバムが聴かれるかどうかが決まると言っても過言ではない。故にデビューアルバム一曲目こそがそのバンドの方向性と示した代表作となるのだ。

 1973年にデビューしたSharksはロック史の文脈だとどうしても元Freeのアンディ・フレイザーがフリー脱退後に結成したバンドとして語られるし、その方がリスナーに聴かれやすいだろうから正しいし、そこにセッションギタリストで有名なクリス・スペディングも参加しての双頭バンドと言われればなるほど、そうなのか、という前提で聴くだろう。ところがSharksの実態はそうでもなく、もちろんアンディ・フレイザーが主役なのは変わらないが、クリス・スペディングは後から参加しているのか、アルバム「First Water」に収録されている楽曲のクレジットを見る限りはボーカルを担っているスニップス=スティーブ・パーソンズが半分程度の曲を書いている。しかもアンディ・フレイザーとの共作ではないので、恐らくは元々あった曲をそれぞれ持ち寄ってアルバムの体を整えたというところだろうか。共作なのは冒頭曲の「World Park Junkies」をスニップスとクリス・スペディングで、コレは歌詞と曲の分担だろうし、最後の「Broke A Feeling」はアンディ・フレイザーとスニップス、ドラムのマーティン・サイモンの名も連なっているが、これもおそらくは歌詞と曲の分担でいずれかでマーティン・サイモンが手伝ったと勝手に解釈しているが、よって、アルバム内の曲ではアンディ・フレイザーとスニップスの曲のセンスの違いが著しく出てくるだろう事は想像に難くない。案の定、2曲目以降は交互に各々の楽曲が収録されているのでそれぞれの個性も見えてきそうだが、案外この二人の曲作りのセンスは似ているかもしれない。いずれもメロウでセンチな部分を持ちつつ派手に鳴らす時は鳴らすようなロックさ加減もあるし、この二人が出会って意気投合してバンドを結成したのも分かる気がする。元々スニップスもアイランド・レコードに所属していたので、フリーの面々は知っていただろうし、知らなくてもクリス・ブラックウェルが紹介でもしたのだろうか、その流れで組まれたバンドのような感じ。そこにカナダ人のドラマー、マーティン・サイモンが加わり、ギタリストとしてこの頃アイランド周辺で仕事をしていたマルチギタリストのクリス・スペディングを引き入れたのだろう。クリス・スペディングもこの誘いは渡りに船だったと思われるが、それにしてはアルバム全編でそこまで個性は出し切れていないので、じっくりと練り上げるまでの時間が取れなかったのだろうか。それともアンディ・フレイザーのセンスからして不要だったのか、よく分からない。

 アルバム「First Water」には正直、良い曲やカッコ良い曲、痺れるナンバーなどは一切入っておらず、ただただ出来上がった曲をこのバンドの面々でプレイしてみたらこういう泥臭くもありミドルテンポ的な普通のロックサウンドに仕上がったと言う感じ。自分的にはどうあれスニップスのやや歪んだような歌声でバンドの顔として歌い上げるスタンスは英国ロック史でもしっかりとした爪痕を残していると思うし、なかなか男臭くてカッコ良いと思うが、如何せんバンドのスタンスと曲の揃わなさがこれだけ良質なメンツのバンドを潰してしまっている。クリス・スペディングのプレイはもちろん言うこともなく要所要所で職人芸を披露してて、スライド・ギターでのマイルドなトーンや粒の粗い歪んだギターサウンドと着実なプレイもしっかりと聴かせてくれるので特に悪いものじゃないし、むしろさすが職人と思うプレイ。アンディ・フレイザーのベースプレイにしても冒頭曲で分かるようにブリブリに音を鳴らして単なるベースプレイヤーではない存在感を放っているからプレイヤー的な面でのSharksは全く問題なかったはず。しかし、やはり曲の垢抜けた感の無さ、もうちょっと熟考してのアレンジや方向性の明確化などシーンに出るために必要な要素に欠けていたと思うが、後の祭り。

 さすがにここまで来ると元フリーと言えども発掘価値がさほど高くなかったか1973年のオリジナルリリース以来、2007年になるまでCD再発もなかったようで、この時にリマスタリングされてリリースされているが、これもまたボーナストラックなど無しでアルバムそのままの姿での再発。その前は確か2in1でセカンド・アルバムと一緒になったCDもリリースされていたのでなかなかお得感に欠けるアイテムだったと思われる。いっその事ライブバージョンでもセットにして今またSharks的に売る術もあっただろうが、その音源も見当たらなかったかもしれない。YouTubeに残されている1973年のレインボウのライブ音源を聴いているとアルバムのもっさり感よりは白熱したライブらしいサウンドが聴けるので、そちらを売りにした方が良かったような気もする。いずれにしてもスーパーバンドと言われるバンドの組み方でもなかったし、スニップスの才能をここで打ち出していくためのバンドに近かったワケだし、だからこそこの後アンディ・フレイザーは簡単に離脱しちゃったワケだし、と捉え方を変えて聴くべきバンド。



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フレ
Posted byフレ

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