Family - Music in a Dolls House (Remastered)
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Family - Music in a Dolls House (Remastered) (1968)

60年代末期から70年初頭にかけての英国ロックは絶大な支持を得たビートルズを筆頭に他にもメジャー級でユニークな存在感を放つバンドが多々あり、それぞれ吸引性の高い個性をアピールしてリスナーを惹き付けていたが、一方では皆が皆そうなれると信じてありとあらゆるサウンドから自分たち流に融合させてシーンにリリースして何でもあり的ないわゆるごった煮的なサウンドを奏でるバンドが山のように出て来て、それらが英国ロックの幻の逸品になっていたり、愛すべきB級バンドになっていたりとニッチなリスナーも多く獲得したシーンだ。その中の筆頭格として挙げられるのが自分的にはJethro TullとFamilyだと思ってて、前者は見事にごった煮ロックをメジャーに芸術として昇華させて存在感を放ったし、後者はそこまでは出来なかったが、ごった煮そのままできちんとシーンにその存在感は植え付けていたと。その理由はイマイチよく分からないが、やはりロジャー・チャップマンの歌声の唯一無二感とジョン・ホイットニーのギターセンスだろうか。そこにレーベルの思惑も絡んだとは思うが、かなりインパクトある作品も多いし果てはジョン・ウェットンが参加するのだからしっかりメジャーだろう。
そのFamilyの1968年リリースのデビューアルバム「Music in a Dolls House」は時代的にサイケデリック色がたっぷりと振りかけられているので、ともすればダラダラな雰囲気のまま取り留めのないアルバムとして語られてしまう危険性もあったが、そこはロジャー・チャップマンの山羊の鳴き声ボーカルの凄さで、今の時代に至るまでこういうボーカルで歌を歌う人はこの人以外にはいない。全てにビブラートが掛かった不思議な歌声で熱唱していて、ソフトに歌ってもどこか揺れてるし、それでいてメロディセンスも妙に不思議で面白く、特に本作はサイケデリック風味だからかバックの音とは独立したボーカルが流れていたりもして珍妙感が楽しめる。一方楽曲はサイケデリックじゃなければ素晴らしいセンスに彩られた曲ばかりだが、サイケデリック風味のおかげで少々ダラダラ感が強くなってしまっているのが個人的には残念。ただ、歴史的には名盤として語られているし、確かにこの時代のごった煮ロックを代表するかのような作風は彼らはかなり最初の頃のそういう取り組みを見せているとも思う。ジョン・ホイットニーの方はブルース・ロックスタンスも大きく持っていたハズだが、ここではそれは出てくる事なく、楽曲ありきのプレイヤーに徹しているようで、所々で忙しく顔を出してくるギターが結構凝ってて大変そう。それはロジャー・チャップマンのボーカルにしても一本調子でなく、結構な多重録音を重ねているようで、左右から真ん中からアチコチから聴こえてくる場合もあってかなり凝りまくって作られている様子。そうして聴くと、バイオリンや鍵盤、ラッパも入って来たりするのでそもそもかなり凝った作品だと気づく。そういえばデイブ・メイソンのプロデュースに鍵盤での参加、エンジニアはエディ・クレイマーとなかなかのメンツが参加して作り上げているから期待のバンドだったとも言えるか。
アルバム全体的に通して聴きやすい質感だが、ハードロックでもブルース・ロックでもサイケ一本でもないのでカテゴリ分けには困るし、他人に説明する時にもどう説明して良いか困るサウンド、即ち宙ぶらりんなごった煮ロックでしかないが、それにしては随分とレベルの高い、クォリティの高いサウンドで構成されているところが才能か。概ねロジャー・チャップマンとジョン・ホィットニー主導で作られており、デイブ・メイソンがまとめ上げている感じなのでトラフィックのファースト的雰囲気もある。ただ、個人的にはトラフィックよりもこちらのファミリーの方が自分の好みに合っていて助かる。それでもパンチは無いしこれと言った特徴も言い表せないし、ロジャー・チャップマンの歌声がそこでも生きる。ただ、一曲目の「The Chase」でその歌声と楽曲アレンジや凝り具合にやや驚きながらファミリーに馴染みながら妙にメロディアスな「Mellowing Grey」でもしかしたら名盤の言われが読めてくるかもしれない。そこからはしばらく妙なサウンドが流れ続けるので、フワフワしながら聴いていく事になるが、それでも駄作はなく、聴き応えがあるのが不思議。それがB面後半の「Peace Of Mind」前まで続き、なぜかこの曲でズボッと突き抜ける。何が突き抜けるのかと言えば、そこまでの浮遊感からここでロック感に抜けているのだと思う。そんな妙な感触を抱きながらアルバム最後まで聴いてしまうが、消化不良なのは否めないし、それでいて悪かったとも思わないのでもう一度聴いてみようとすら思うだろう。するとロジャー・チャップマンの歌声の魅力が気になり、曲の妙な質感も馴染んで来るので英国B級ロックへの入り口を開けていく事になる。なので、名盤と言うつもりはないが、ただ、聴くと引っ掛かる部分が多く、聴いていくと妙に気になるバンド、アルバム。ジャケットにしても英国ロックらしさを先駆けて見せてくれているし、よく言われるように裏ジャケの濡れた道路で三輪車に乗るお人形さんのシュールさが実に素敵。
1998年にSee For MilesからようやくCDで再発されたのでそこで耳にした人も多かったと思うが、中古レコード屋でもなかなか見かけなかった気がする。その後は2003年にやっとリマスタリングされたものの他のバンドのようなボーナストラックなどは一切付けられる事もなく、そのまま音質アップ盤としてリリースされたようだ。ある種ここまで完成度の高い作品にボーナストラックは不要とも言えるのでそのスタンスかもしれないが、単純にソースが残されていない可能性も高い。また、そこまで注目されるバンドでもないからとも考えられるが、ひとまずこの妙な中毒性のあるアルバムを味わってほしい。

60年代末期から70年初頭にかけての英国ロックは絶大な支持を得たビートルズを筆頭に他にもメジャー級でユニークな存在感を放つバンドが多々あり、それぞれ吸引性の高い個性をアピールしてリスナーを惹き付けていたが、一方では皆が皆そうなれると信じてありとあらゆるサウンドから自分たち流に融合させてシーンにリリースして何でもあり的ないわゆるごった煮的なサウンドを奏でるバンドが山のように出て来て、それらが英国ロックの幻の逸品になっていたり、愛すべきB級バンドになっていたりとニッチなリスナーも多く獲得したシーンだ。その中の筆頭格として挙げられるのが自分的にはJethro TullとFamilyだと思ってて、前者は見事にごった煮ロックをメジャーに芸術として昇華させて存在感を放ったし、後者はそこまでは出来なかったが、ごった煮そのままできちんとシーンにその存在感は植え付けていたと。その理由はイマイチよく分からないが、やはりロジャー・チャップマンの歌声の唯一無二感とジョン・ホイットニーのギターセンスだろうか。そこにレーベルの思惑も絡んだとは思うが、かなりインパクトある作品も多いし果てはジョン・ウェットンが参加するのだからしっかりメジャーだろう。
そのFamilyの1968年リリースのデビューアルバム「Music in a Dolls House」は時代的にサイケデリック色がたっぷりと振りかけられているので、ともすればダラダラな雰囲気のまま取り留めのないアルバムとして語られてしまう危険性もあったが、そこはロジャー・チャップマンの山羊の鳴き声ボーカルの凄さで、今の時代に至るまでこういうボーカルで歌を歌う人はこの人以外にはいない。全てにビブラートが掛かった不思議な歌声で熱唱していて、ソフトに歌ってもどこか揺れてるし、それでいてメロディセンスも妙に不思議で面白く、特に本作はサイケデリック風味だからかバックの音とは独立したボーカルが流れていたりもして珍妙感が楽しめる。一方楽曲はサイケデリックじゃなければ素晴らしいセンスに彩られた曲ばかりだが、サイケデリック風味のおかげで少々ダラダラ感が強くなってしまっているのが個人的には残念。ただ、歴史的には名盤として語られているし、確かにこの時代のごった煮ロックを代表するかのような作風は彼らはかなり最初の頃のそういう取り組みを見せているとも思う。ジョン・ホイットニーの方はブルース・ロックスタンスも大きく持っていたハズだが、ここではそれは出てくる事なく、楽曲ありきのプレイヤーに徹しているようで、所々で忙しく顔を出してくるギターが結構凝ってて大変そう。それはロジャー・チャップマンのボーカルにしても一本調子でなく、結構な多重録音を重ねているようで、左右から真ん中からアチコチから聴こえてくる場合もあってかなり凝りまくって作られている様子。そうして聴くと、バイオリンや鍵盤、ラッパも入って来たりするのでそもそもかなり凝った作品だと気づく。そういえばデイブ・メイソンのプロデュースに鍵盤での参加、エンジニアはエディ・クレイマーとなかなかのメンツが参加して作り上げているから期待のバンドだったとも言えるか。
アルバム全体的に通して聴きやすい質感だが、ハードロックでもブルース・ロックでもサイケ一本でもないのでカテゴリ分けには困るし、他人に説明する時にもどう説明して良いか困るサウンド、即ち宙ぶらりんなごった煮ロックでしかないが、それにしては随分とレベルの高い、クォリティの高いサウンドで構成されているところが才能か。概ねロジャー・チャップマンとジョン・ホィットニー主導で作られており、デイブ・メイソンがまとめ上げている感じなのでトラフィックのファースト的雰囲気もある。ただ、個人的にはトラフィックよりもこちらのファミリーの方が自分の好みに合っていて助かる。それでもパンチは無いしこれと言った特徴も言い表せないし、ロジャー・チャップマンの歌声がそこでも生きる。ただ、一曲目の「The Chase」でその歌声と楽曲アレンジや凝り具合にやや驚きながらファミリーに馴染みながら妙にメロディアスな「Mellowing Grey」でもしかしたら名盤の言われが読めてくるかもしれない。そこからはしばらく妙なサウンドが流れ続けるので、フワフワしながら聴いていく事になるが、それでも駄作はなく、聴き応えがあるのが不思議。それがB面後半の「Peace Of Mind」前まで続き、なぜかこの曲でズボッと突き抜ける。何が突き抜けるのかと言えば、そこまでの浮遊感からここでロック感に抜けているのだと思う。そんな妙な感触を抱きながらアルバム最後まで聴いてしまうが、消化不良なのは否めないし、それでいて悪かったとも思わないのでもう一度聴いてみようとすら思うだろう。するとロジャー・チャップマンの歌声の魅力が気になり、曲の妙な質感も馴染んで来るので英国B級ロックへの入り口を開けていく事になる。なので、名盤と言うつもりはないが、ただ、聴くと引っ掛かる部分が多く、聴いていくと妙に気になるバンド、アルバム。ジャケットにしても英国ロックらしさを先駆けて見せてくれているし、よく言われるように裏ジャケの濡れた道路で三輪車に乗るお人形さんのシュールさが実に素敵。
1998年にSee For MilesからようやくCDで再発されたのでそこで耳にした人も多かったと思うが、中古レコード屋でもなかなか見かけなかった気がする。その後は2003年にやっとリマスタリングされたものの他のバンドのようなボーナストラックなどは一切付けられる事もなく、そのまま音質アップ盤としてリリースされたようだ。ある種ここまで完成度の高い作品にボーナストラックは不要とも言えるのでそのスタンスかもしれないが、単純にソースが残されていない可能性も高い。また、そこまで注目されるバンドでもないからとも考えられるが、ひとまずこの妙な中毒性のあるアルバムを味わってほしい。
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