The Who - Quadrophenia (Original Motion Picture Soundtrack)
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The Who - Quadrophenia (Original Motion Picture Soundtrack) (1979)

「さらば青春の光」。何ともカッコ良いタイトルを作り上げたものだ。The Whoの「Quadrophenia」は「四重人格」だったから、映画のタイトルとなった「さらば青春の光」はその時の邦題として付けられたものだろうが、ナイスなセンスだと思う。じっくりと見れば何を指しているのかよく分からないが、パッと見た日本語の語感としてカッコ良いと思えるのだから面白い。そういう邦題のセンスが昔から巷では感嘆されていたが、どこかに纏めてそういうのを書いている所もありそうな気がするし、本だってあってもおかしくないが調べた事はない。言うまでもないがそもそもが昔のモッズvsロッカーズ的な時代のモッズ映画を制作するにあたり、主演には何処からどうしてここでキャスティングされたのか知らないが、あのスティングが何故か俳優として配置されているし、音楽はほぼThe Whoの「四重人格」から持ち込まれているニッチな作品の「Quadrophenia (Original Motion Picture Soundtrack)」サウンドトラック。ただ、恐らく大半の人がThe Whoの「四重人格」を映画化したもので、そのサウンドトラックとして知っているように思うし、多分そうだろうとも思う。それでも映画という体裁からすると当時のモッズの間で流行していた曲が何曲か入れられているのはありがたくも面白いし、このサントラ盤でThe Whoのモッズ概念を知る事にもなるし、更に「四重人格」の優れた楽曲群からのベストチョイス盤までもが聴ける美味しい話しかないアルバム。
曲目を見て分かるように前半、アナログ時代のアルバム一枚分は丸々The Whoの「四重人格」からのベストチョイスだが、驚く事にベースのジョン・エントウィッスルがこのサントラのためにマスターテープからリミックスを指示したプロデューサーとして名を連ねているから「四重人格」のミックスとは異なるバージョンで聴けるところが貴重。リマスター盤を聴いているからかもしれないが、明らかにジョン・エントウィッスルのミックスセンスの方が普通に良いのでリミックスバージョンがリリースされるまでは本作の方がカラフルで聴きやすい音質の「ミニ四重人格」アルバムだった。それ自体は知られていたように思うがさほど話題に挙がる事もなかったので、自分的には少々不思議感もあったが、それはやはりThe Who名義、ピート・タウンジェンド絡みではなかったから真剣に捉えられなかったのかもしれない。ただ、ジョン・エントウィッスルも編集盤では割とプロデュース的な役割を担っている事も多く、「Odds & Sods」は顕著な例だが、この頃だとピート・タウンジェンドは恐らく映画「The Kids Are Alright」の方にかかりきりだった事もあって、ジョン・エントウィッスルが仕切ったのだろう。大抵ピート・タウンジェンドが忙しいとジョン・エントウィッスルが出てくる程度には信頼関係が深い間柄で、そこにロジャー・ダルトリーが出てこないのは音楽的センスと見地からした時はやはりジョン・エントウィッスルが信頼できるパートナーだったようだ。そのおかげでどの曲もどの曲も一言で言えば明るく派手なミックスが施されている。各楽器の定位ははっきりしたポジションに配置されているし、くっきりした質感そのままが聴けるのもありがたく、ピート・タウンジェンドのギターなどはホントに鋭く素晴らしくザクザクと切り込んでくれる気持ち良さが伝わってくるし、ベースも当然はっきりと重くデカく目立つように鳴っているし、キースのドラムはこれでもかと言うくらいにしっかりと出されている。それに加えてホーンセクションの綺羅びやかな音が大きくなり、派手さを強調するようにスコーンと抜けて出てくる。「I'm One」のようなピアノが中心の曲は目一杯ピアノ曲のようにミックスされて普通に賑やかに仕上がっているのも面白い。ロジャー・ダルトリーの歌声も本作ではきちんと埋もれないで前面に出て来ているし、普通こういう風に音を作るだろう、というそのままのバランスで聴けるのが有り難い。それでいてこの名曲群の数々がオンパレードで流れてくるのだから文句の一つも出ないどころか拍手喝采の素晴らしさ。そう言えば冒頭の「The Real Me」からして派手なミックスも驚きながら最後の最後はここでしか聴けないエンディングなのも驚く。こういう終わり方がテープには入っていたのかと納得してしまった瞬間。そして「I've Had Enough」のストリングスのキレの良さも美しく、全くオーケストラ使うならこういう音を出してほしいと思うばかりの出し方も嬉しい。
本作のために書き下ろした曲としてはケニー・ジョーンズの叩く「Get Out And Stay Out」と「Joker James」で、前者はピートの歌で収録されたどこかモッズ的なリズムが刻まれる微妙にファンキーなサウンド、後者は古いサウンドそのままをモチーフにしたかのようで、コーラス歌ものらしくキャッチーに仕上げた、如何にもそれらしい作品。また、キース・ムーンの叩く「Four Faces」はどこかピート・タウンジェンドのソロっぽい印象を受けるが、まだまだイケるぜ的な曲調でピートの歌で収録されている。更にHigh Numbers時代の実にかっちょ良いモッズビートそのままの「Zoot Suits」と2000年のリマスター時からボーナストラックに収録された「I'm The Face」はまんまモッズソングとしてThe Who関連では知られている楽曲。その他は当時のモッズの愛した楽曲が収録されているが、「He's So Fine」を聴くとジョージ・ハリソンの「My Sweet Load」を思い出すだろうし、ジェームズ・ブラウンを聴けば正しくピチピチのスーツでクールに踊る姿がイメージ出来る。The Kingsmenの「Louie Louie」やBooker T & MG'sの「Green Onions」はThe Whoに限らず、この頃のロックバンドの大半がモチーフにしてカバーしていたので良く知られているだろう。その意味ではThe Cascades「Rhythm of the Rain 」=「悲しき雨音」と書けば知られているだろうか、これもまた同じく大半のリスナーが知っているだろう曲、と思っているが今どきでは通じないかもしれない。そしてThe Ronettesの「Be My Baby」と来たらこのサントラをThe Whoのミックス違いを知らなくてもお得なアイテムとして入手を考えるだろうとすら思う。自分的にもこの辺の曲を全ては知らなかったが、ふと気づくとアルバムを流して聴いているから馴染んでしまって、その後にどこかで聴いても知ってたし、それがまた聴く機会も多くなったので、如何にスタンダードな曲だったと思い知らされた曲ばかり。The Crystalsの「Da Doo Ron Ron」はさすがにそこまでメジャーでもないが、いつしか聴いて覚えてしまったフィル・スペクターサウンド。
The Whoの楽曲が散りばめられた「さらば青春の光」なる映画、そしてサウンドトラック、と聴くとアルバムのみならず映画も当然見たくなるだろうし、見ればカルトながらも当時のモッズがどういうものだったかも分かるし、BGMとなった音楽の馴染み具合も分かるので絶対に見てほしいし、そこで流れるThe Whoのサウンドと言うか、楽曲のマッチ具合も素晴らしいと実感できると思う。英国映画なので絵が綺麗だし、スティングの尖りぶりも群を抜く目立ちぶりで、結局はどうしようもないモッズのジミーの居場所を失くしてしまったやるせなさだけが残る「Love Reign O'er Me」の印象深さも衝撃的。そういえば思い出してきたし、しばらく見てないから近々また見よう。

「さらば青春の光」。何ともカッコ良いタイトルを作り上げたものだ。The Whoの「Quadrophenia」は「四重人格」だったから、映画のタイトルとなった「さらば青春の光」はその時の邦題として付けられたものだろうが、ナイスなセンスだと思う。じっくりと見れば何を指しているのかよく分からないが、パッと見た日本語の語感としてカッコ良いと思えるのだから面白い。そういう邦題のセンスが昔から巷では感嘆されていたが、どこかに纏めてそういうのを書いている所もありそうな気がするし、本だってあってもおかしくないが調べた事はない。言うまでもないがそもそもが昔のモッズvsロッカーズ的な時代のモッズ映画を制作するにあたり、主演には何処からどうしてここでキャスティングされたのか知らないが、あのスティングが何故か俳優として配置されているし、音楽はほぼThe Whoの「四重人格」から持ち込まれているニッチな作品の「Quadrophenia (Original Motion Picture Soundtrack)」サウンドトラック。ただ、恐らく大半の人がThe Whoの「四重人格」を映画化したもので、そのサウンドトラックとして知っているように思うし、多分そうだろうとも思う。それでも映画という体裁からすると当時のモッズの間で流行していた曲が何曲か入れられているのはありがたくも面白いし、このサントラ盤でThe Whoのモッズ概念を知る事にもなるし、更に「四重人格」の優れた楽曲群からのベストチョイス盤までもが聴ける美味しい話しかないアルバム。
曲目を見て分かるように前半、アナログ時代のアルバム一枚分は丸々The Whoの「四重人格」からのベストチョイスだが、驚く事にベースのジョン・エントウィッスルがこのサントラのためにマスターテープからリミックスを指示したプロデューサーとして名を連ねているから「四重人格」のミックスとは異なるバージョンで聴けるところが貴重。リマスター盤を聴いているからかもしれないが、明らかにジョン・エントウィッスルのミックスセンスの方が普通に良いのでリミックスバージョンがリリースされるまでは本作の方がカラフルで聴きやすい音質の「ミニ四重人格」アルバムだった。それ自体は知られていたように思うがさほど話題に挙がる事もなかったので、自分的には少々不思議感もあったが、それはやはりThe Who名義、ピート・タウンジェンド絡みではなかったから真剣に捉えられなかったのかもしれない。ただ、ジョン・エントウィッスルも編集盤では割とプロデュース的な役割を担っている事も多く、「Odds & Sods」は顕著な例だが、この頃だとピート・タウンジェンドは恐らく映画「The Kids Are Alright」の方にかかりきりだった事もあって、ジョン・エントウィッスルが仕切ったのだろう。大抵ピート・タウンジェンドが忙しいとジョン・エントウィッスルが出てくる程度には信頼関係が深い間柄で、そこにロジャー・ダルトリーが出てこないのは音楽的センスと見地からした時はやはりジョン・エントウィッスルが信頼できるパートナーだったようだ。そのおかげでどの曲もどの曲も一言で言えば明るく派手なミックスが施されている。各楽器の定位ははっきりしたポジションに配置されているし、くっきりした質感そのままが聴けるのもありがたく、ピート・タウンジェンドのギターなどはホントに鋭く素晴らしくザクザクと切り込んでくれる気持ち良さが伝わってくるし、ベースも当然はっきりと重くデカく目立つように鳴っているし、キースのドラムはこれでもかと言うくらいにしっかりと出されている。それに加えてホーンセクションの綺羅びやかな音が大きくなり、派手さを強調するようにスコーンと抜けて出てくる。「I'm One」のようなピアノが中心の曲は目一杯ピアノ曲のようにミックスされて普通に賑やかに仕上がっているのも面白い。ロジャー・ダルトリーの歌声も本作ではきちんと埋もれないで前面に出て来ているし、普通こういう風に音を作るだろう、というそのままのバランスで聴けるのが有り難い。それでいてこの名曲群の数々がオンパレードで流れてくるのだから文句の一つも出ないどころか拍手喝采の素晴らしさ。そう言えば冒頭の「The Real Me」からして派手なミックスも驚きながら最後の最後はここでしか聴けないエンディングなのも驚く。こういう終わり方がテープには入っていたのかと納得してしまった瞬間。そして「I've Had Enough」のストリングスのキレの良さも美しく、全くオーケストラ使うならこういう音を出してほしいと思うばかりの出し方も嬉しい。
本作のために書き下ろした曲としてはケニー・ジョーンズの叩く「Get Out And Stay Out」と「Joker James」で、前者はピートの歌で収録されたどこかモッズ的なリズムが刻まれる微妙にファンキーなサウンド、後者は古いサウンドそのままをモチーフにしたかのようで、コーラス歌ものらしくキャッチーに仕上げた、如何にもそれらしい作品。また、キース・ムーンの叩く「Four Faces」はどこかピート・タウンジェンドのソロっぽい印象を受けるが、まだまだイケるぜ的な曲調でピートの歌で収録されている。更にHigh Numbers時代の実にかっちょ良いモッズビートそのままの「Zoot Suits」と2000年のリマスター時からボーナストラックに収録された「I'm The Face」はまんまモッズソングとしてThe Who関連では知られている楽曲。その他は当時のモッズの愛した楽曲が収録されているが、「He's So Fine」を聴くとジョージ・ハリソンの「My Sweet Load」を思い出すだろうし、ジェームズ・ブラウンを聴けば正しくピチピチのスーツでクールに踊る姿がイメージ出来る。The Kingsmenの「Louie Louie」やBooker T & MG'sの「Green Onions」はThe Whoに限らず、この頃のロックバンドの大半がモチーフにしてカバーしていたので良く知られているだろう。その意味ではThe Cascades「Rhythm of the Rain 」=「悲しき雨音」と書けば知られているだろうか、これもまた同じく大半のリスナーが知っているだろう曲、と思っているが今どきでは通じないかもしれない。そしてThe Ronettesの「Be My Baby」と来たらこのサントラをThe Whoのミックス違いを知らなくてもお得なアイテムとして入手を考えるだろうとすら思う。自分的にもこの辺の曲を全ては知らなかったが、ふと気づくとアルバムを流して聴いているから馴染んでしまって、その後にどこかで聴いても知ってたし、それがまた聴く機会も多くなったので、如何にスタンダードな曲だったと思い知らされた曲ばかり。The Crystalsの「Da Doo Ron Ron」はさすがにそこまでメジャーでもないが、いつしか聴いて覚えてしまったフィル・スペクターサウンド。
The Whoの楽曲が散りばめられた「さらば青春の光」なる映画、そしてサウンドトラック、と聴くとアルバムのみならず映画も当然見たくなるだろうし、見ればカルトながらも当時のモッズがどういうものだったかも分かるし、BGMとなった音楽の馴染み具合も分かるので絶対に見てほしいし、そこで流れるThe Whoのサウンドと言うか、楽曲のマッチ具合も素晴らしいと実感できると思う。英国映画なので絵が綺麗だし、スティングの尖りぶりも群を抜く目立ちぶりで、結局はどうしようもないモッズのジミーの居場所を失くしてしまったやるせなさだけが残る「Love Reign O'er Me」の印象深さも衝撃的。そういえば思い出してきたし、しばらく見てないから近々また見よう。
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