The Police - Live! (Remastered)
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The Police - Live! (Remastered) (1995)

ライブアルバムとスタジオ・アルバム、どちらも甲乙つけ難い楽しみがある。ライブアルバムは文字通りバンドのライブ感そのままが伝わってくるのでスタジオ盤とは違って、バンドの本質がモロに聴けるし、どういうスタンスでプレイしているかも分かってくるが、一方のスタジオ盤は緻密に作り込む場合もあるし、綺麗に作り上げたり効果音や鍵盤やホーンを入れたりもして音楽的に後に残すための作品として制作される醍醐味が聴ける。これもバンドのスタンスを垣間見れるが、シンプルなR&Rと言いつつも数枚もアルバムを出す頃にはさすがに幅が広がっていくのが普通で、そうじゃなければ飽きてしまうし消えていくバンドも多い。ライブだけで成長しつつもそこからミュージシャン、バンドとしての発展が必要になるのがプロの音楽家集団なので、当然レコーディング機材や録音方法も新しい技術や手法を試したりと発展していくが、リスナー的にはそのヘンはさほど拘らず、出てきた作品を聴いて好きか嫌いかだけ、と素っ気ない対応になるので難しい。だからライブ盤でバンドそのままを出した方が好まれるケースが多いが、難しいのは今度はライブそのままがレコードやCDで伝えきれない、収録仕切れない、あの熱気をパッケージ出来ないなどの問題も多かったらしく、ライブの名盤と呼ばれる作品の大半はオーバーダビングしまくりが多いのも相反した風潮。デジタル時代となった今の時代では技術の向上から、生ライブそのままがリリースされる事も多くなり、昔のライブもその恩恵に肖ってのリリースも増えていて実に喜ばしい。
The Policeが1995年にリリースした「Live!」はCD2枚組で、1979年と1983年のライブをそれぞれのディスクに収録したアイテム。面白いのは前者がボストンのFMラジオで放送するために収録されたソースから、後者は全盛期なのでビデオ収録の音源から収録されており、発掘ライブと言っても良さそうな感じ。ただ、1979年11月のボストン公演の音質はさすがにその頃のFMソースらしくバランスも良くなく、モコモコとした感のある音質なのでやや聴き辛さを感じるし、演奏もまたこの頃の生々しさがアルバムとして聴くには少々辛さのある収録だ。これはポリスに限った事でもなく、なぜかFMラジオで放送されるライブは大抵がこの聴き辛さを感じるもので、あまりにもナマナマし過ぎるライブだからと思うが、簡単に書けばバンドがその場のノリで演奏しているライブだからこその長尺感やフリーっぽいセッション感がそのまま記録されているから、後で音だけ聴いていると何かよく分からないダラダラ感を聴いている状況になる。その辺りをオフィシャルでリリースする際にはカットしたり編集したりと聴きやすいテンションの高い演奏に仕上げたり、くっきりとした音質に仕上げ直したりするのだろうが、本作はそういった手間暇を掛けておらず、生ライブそのままをディスクに収めている。その分バンドの勢いが伝わってくる面もあるが、一方でバンドの演奏がここまでラフだったのかと音だけを聴く身になるとやや聴き辛さも出てくる。期待の1979年の有名ラジオ音源だったので、どれだけ綺麗な音に均して出してくれるかとの期待もあったが、その面ではまるでいじられていないので素直にライブを聴こう。初期アルバム2枚からの選曲なので、シングルB面曲で当時はアルバム未収録だった「Fall Out」や「Landlord」も演奏されている貴重なショウとも言え、丁度「Message In A Bottle」のヒットを放った後なのでバンドの調子も人気も上り調子の時期、英国のバンドから全米を相手にするバンドへと駒を進めている姿が聴ける。スティングの歌声はいつ聴いても無理のありそうな高い音を出しているように聴こえる詰んだ声質だが、それが味でもありここでも勢いよく聴こえるが、ライブの特徴的にはバンド全員でコーラスを割と奏でている辺り。トリオなので当然だが、幅広くメンバーだけでプレイしようとするとこうなるが、一方でアンディ・サマーズのギタープレイが相当ラフでハードロック調にも聴こえる演奏も初期ポリスらしい。「The Bed's Too Big Without You」ではプログレバンドばりにインプロビゼーションと空間エフェクトお遊びプレイが入っているので長尺曲となり、その間がなかなか聴いているだけではキツい一曲で、集中力が削がれるが、そこからの「Peanuts」「Roxanne」「Can't Stand Losing You」と立て続けにナイスな曲をプレイしてくれたから何とか聴いていられる感じもある。ただ、当時のライブはそういうものだったろうし、ライブ会場に居たらそれはそれで楽しめただろうから今になっての辛さだろう。
そしてディスク2は1983年11月のアトランタのライブショウから収録されているので、正しくThe Police全米制覇中の全盛期のライブでコーラス3名が追加されているものの演奏は3人のみは変わらずと見事なスタンス。そしてコーラス3名を入れるだけで先の1979年のライブで聴けたバンドメンバーによる不安定なコーラスから一気に安定したコーラスとなり、メンバーも演奏に集中できるせいか、ライブそのものも実にクォリティ高くプレイされている。この4年間でここまで変わるかと言うくらいに垢抜けて超メジャー級のパフォーマーとなったバンドの姿を映像でも見られるし、音でもダレる所なく聴けるのはさすが。冒頭の「Synchronicity I」「Synchronicity II」の畳み掛けからして会場をいきなりマックス状態に持ち込んでいるし、音を聴いているだけでもテンション上がってくるのはやはりこなれた演奏技術とバンドのプレイそのものの凄さだろう。もっとも自分的にもリアルタイムでこのライブビデオにはかなりハマったので、その想い入れの強さも大きいとは思うが、それでもここまでこなれたライブ感を出せているのはこの時期のポリスの余裕からと思う。アルバム「Synchronicity」の曲が数多く演奏され、その他シングルヒット曲が網羅されているのもあるから当然ベストポリスライブに近い様相を示しているのも大きいのは承知の上、とにかく素晴らしいライブアルバムとしてこちらのディスクばかりを聴いてしまいがち。スティングのベースのドライブ感、歌の激しさ、それに加えてスチュワート・コープランドの以前からは大きく変化したソリッドでタイトで音数の少ないパーカッション的ですらあるドラミングは研究し尽くした後の個性だろうし、アンディ・サマーズのギタープレイはここでは既に独自スタイルを拡張させているバリエーションを見せているプレイ。まるで異なる世界ながらバンドと楽曲の深みを感じさせる「Walking in Your Footsteps」はポリスでしか成し得ないサウンドだろうし、「King of Pain」から「Don't Stand So Close to Me」「Every Breath You Take」と怒涛のヒット曲の連発はこの大会場を熱気の渦に巻き込むには十二分なパフォーマンス。ラストは初期作品で締めていくのも彼らのプライドと言うか、媚びない姿勢とも見られるし、全く映像と共に存分に迫力を楽しめるライブ。
こういうCD2枚組でライブをリリースするのもバンドの歴史を見れて面白いし、ポリスの場合でもここまで成長が聴けるのもユニーク。元々が狙って出て来ているバンドだし、スティングの才能が尖っているのでそこまでの変化とは思われなかったが、こうしてライブを聴き比べてみると時代の進化以上にバンドの変化が大きく、音楽的と言うよりもシーンに合わせたバンドのあり方、進め方、時代との迎合の仕方から自らが時代の寵児になり、また時代を作り上げた自信も溢れているようにすら聴こえる当時のバンドの裏側は無視して表では素晴らしきプレイを広げている凄さ。スタジオ・アルバムを聴いていても垢抜けていく様相は分かるが、ライブだとモロにここまで変化するのかとつくづく思った次第。楽曲の作り方もライブの構成も演奏も見事なまでにひとつの完成形を作っているが、その集大成が聴けるライブアルバム。2003年にリマスタリングされて再度リリースされており、音質は多少改善したとは思うがそもそものモコモコ感は変わらずの印象。

ライブアルバムとスタジオ・アルバム、どちらも甲乙つけ難い楽しみがある。ライブアルバムは文字通りバンドのライブ感そのままが伝わってくるのでスタジオ盤とは違って、バンドの本質がモロに聴けるし、どういうスタンスでプレイしているかも分かってくるが、一方のスタジオ盤は緻密に作り込む場合もあるし、綺麗に作り上げたり効果音や鍵盤やホーンを入れたりもして音楽的に後に残すための作品として制作される醍醐味が聴ける。これもバンドのスタンスを垣間見れるが、シンプルなR&Rと言いつつも数枚もアルバムを出す頃にはさすがに幅が広がっていくのが普通で、そうじゃなければ飽きてしまうし消えていくバンドも多い。ライブだけで成長しつつもそこからミュージシャン、バンドとしての発展が必要になるのがプロの音楽家集団なので、当然レコーディング機材や録音方法も新しい技術や手法を試したりと発展していくが、リスナー的にはそのヘンはさほど拘らず、出てきた作品を聴いて好きか嫌いかだけ、と素っ気ない対応になるので難しい。だからライブ盤でバンドそのままを出した方が好まれるケースが多いが、難しいのは今度はライブそのままがレコードやCDで伝えきれない、収録仕切れない、あの熱気をパッケージ出来ないなどの問題も多かったらしく、ライブの名盤と呼ばれる作品の大半はオーバーダビングしまくりが多いのも相反した風潮。デジタル時代となった今の時代では技術の向上から、生ライブそのままがリリースされる事も多くなり、昔のライブもその恩恵に肖ってのリリースも増えていて実に喜ばしい。
The Policeが1995年にリリースした「Live!」はCD2枚組で、1979年と1983年のライブをそれぞれのディスクに収録したアイテム。面白いのは前者がボストンのFMラジオで放送するために収録されたソースから、後者は全盛期なのでビデオ収録の音源から収録されており、発掘ライブと言っても良さそうな感じ。ただ、1979年11月のボストン公演の音質はさすがにその頃のFMソースらしくバランスも良くなく、モコモコとした感のある音質なのでやや聴き辛さを感じるし、演奏もまたこの頃の生々しさがアルバムとして聴くには少々辛さのある収録だ。これはポリスに限った事でもなく、なぜかFMラジオで放送されるライブは大抵がこの聴き辛さを感じるもので、あまりにもナマナマし過ぎるライブだからと思うが、簡単に書けばバンドがその場のノリで演奏しているライブだからこその長尺感やフリーっぽいセッション感がそのまま記録されているから、後で音だけ聴いていると何かよく分からないダラダラ感を聴いている状況になる。その辺りをオフィシャルでリリースする際にはカットしたり編集したりと聴きやすいテンションの高い演奏に仕上げたり、くっきりとした音質に仕上げ直したりするのだろうが、本作はそういった手間暇を掛けておらず、生ライブそのままをディスクに収めている。その分バンドの勢いが伝わってくる面もあるが、一方でバンドの演奏がここまでラフだったのかと音だけを聴く身になるとやや聴き辛さも出てくる。期待の1979年の有名ラジオ音源だったので、どれだけ綺麗な音に均して出してくれるかとの期待もあったが、その面ではまるでいじられていないので素直にライブを聴こう。初期アルバム2枚からの選曲なので、シングルB面曲で当時はアルバム未収録だった「Fall Out」や「Landlord」も演奏されている貴重なショウとも言え、丁度「Message In A Bottle」のヒットを放った後なのでバンドの調子も人気も上り調子の時期、英国のバンドから全米を相手にするバンドへと駒を進めている姿が聴ける。スティングの歌声はいつ聴いても無理のありそうな高い音を出しているように聴こえる詰んだ声質だが、それが味でもありここでも勢いよく聴こえるが、ライブの特徴的にはバンド全員でコーラスを割と奏でている辺り。トリオなので当然だが、幅広くメンバーだけでプレイしようとするとこうなるが、一方でアンディ・サマーズのギタープレイが相当ラフでハードロック調にも聴こえる演奏も初期ポリスらしい。「The Bed's Too Big Without You」ではプログレバンドばりにインプロビゼーションと空間エフェクトお遊びプレイが入っているので長尺曲となり、その間がなかなか聴いているだけではキツい一曲で、集中力が削がれるが、そこからの「Peanuts」「Roxanne」「Can't Stand Losing You」と立て続けにナイスな曲をプレイしてくれたから何とか聴いていられる感じもある。ただ、当時のライブはそういうものだったろうし、ライブ会場に居たらそれはそれで楽しめただろうから今になっての辛さだろう。
そしてディスク2は1983年11月のアトランタのライブショウから収録されているので、正しくThe Police全米制覇中の全盛期のライブでコーラス3名が追加されているものの演奏は3人のみは変わらずと見事なスタンス。そしてコーラス3名を入れるだけで先の1979年のライブで聴けたバンドメンバーによる不安定なコーラスから一気に安定したコーラスとなり、メンバーも演奏に集中できるせいか、ライブそのものも実にクォリティ高くプレイされている。この4年間でここまで変わるかと言うくらいに垢抜けて超メジャー級のパフォーマーとなったバンドの姿を映像でも見られるし、音でもダレる所なく聴けるのはさすが。冒頭の「Synchronicity I」「Synchronicity II」の畳み掛けからして会場をいきなりマックス状態に持ち込んでいるし、音を聴いているだけでもテンション上がってくるのはやはりこなれた演奏技術とバンドのプレイそのものの凄さだろう。もっとも自分的にもリアルタイムでこのライブビデオにはかなりハマったので、その想い入れの強さも大きいとは思うが、それでもここまでこなれたライブ感を出せているのはこの時期のポリスの余裕からと思う。アルバム「Synchronicity」の曲が数多く演奏され、その他シングルヒット曲が網羅されているのもあるから当然ベストポリスライブに近い様相を示しているのも大きいのは承知の上、とにかく素晴らしいライブアルバムとしてこちらのディスクばかりを聴いてしまいがち。スティングのベースのドライブ感、歌の激しさ、それに加えてスチュワート・コープランドの以前からは大きく変化したソリッドでタイトで音数の少ないパーカッション的ですらあるドラミングは研究し尽くした後の個性だろうし、アンディ・サマーズのギタープレイはここでは既に独自スタイルを拡張させているバリエーションを見せているプレイ。まるで異なる世界ながらバンドと楽曲の深みを感じさせる「Walking in Your Footsteps」はポリスでしか成し得ないサウンドだろうし、「King of Pain」から「Don't Stand So Close to Me」「Every Breath You Take」と怒涛のヒット曲の連発はこの大会場を熱気の渦に巻き込むには十二分なパフォーマンス。ラストは初期作品で締めていくのも彼らのプライドと言うか、媚びない姿勢とも見られるし、全く映像と共に存分に迫力を楽しめるライブ。
こういうCD2枚組でライブをリリースするのもバンドの歴史を見れて面白いし、ポリスの場合でもここまで成長が聴けるのもユニーク。元々が狙って出て来ているバンドだし、スティングの才能が尖っているのでそこまでの変化とは思われなかったが、こうしてライブを聴き比べてみると時代の進化以上にバンドの変化が大きく、音楽的と言うよりもシーンに合わせたバンドのあり方、進め方、時代との迎合の仕方から自らが時代の寵児になり、また時代を作り上げた自信も溢れているようにすら聴こえる当時のバンドの裏側は無視して表では素晴らしきプレイを広げている凄さ。スタジオ・アルバムを聴いていても垢抜けていく様相は分かるが、ライブだとモロにここまで変化するのかとつくづく思った次第。楽曲の作り方もライブの構成も演奏も見事なまでにひとつの完成形を作っているが、その集大成が聴けるライブアルバム。2003年にリマスタリングされて再度リリースされており、音質は多少改善したとは思うがそもそものモコモコ感は変わらずの印象。
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