The Pretenders - Hate For Sale

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The Pretenders - Hate For Sale (2020)
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 このジャケットの人はもしかして、と思ってよくよく見れば案の定クリッシー・ハインドの年老いた姿で、何年も前に新作をリリースした時の記憶はあるが、ここに来てまた新作をリリースしていたとは意識していなかったのでまるで知らないまま、2020年7月にはリリースされていたようなので、随分と長い間自分のアンテナに入ってこなかったようだ。見つけてしまえばこれはこれはと相変わらずのロック調に期待して聴いてみるが、これだけカッコ良くてナイスなロックな作品だとついつい嬉しくなって何度も聴いてしまう。古き良き、と言うか、往年のプリテンダーズの作風そのままで、特に初期のアルバムの音色や楽曲、サウンドの色合いもそのままのR&Rが繰り広げられている。クリッシー・ハインドの歌声も全く年齢を感じさせないあのままの歌声と言い回し、歌メロも当然そのままで、つい先日ファーストアルバムをリリースしたばかりのような感覚で聴けてしまう良さは、もう何十年も前の作品と遜色なく傑作に仕上がっている。プリテンダーズ史上でもかなりの良作に入るだろうアルバムがここに来て登場する快挙。

 The Pretendersの2020年リリース作「Hate For Sale」。タイトル曲「Hate for Sale」は冒頭からいきなりハープも同時に入るロック色…と思ったら、間違いでやり直しです、とユーモアのあるスタートが面白い。そこから奏でられるビートの利いたロックは往年のプリテンダーズ路線そのまま、ギターの音色が何ともプリテンダーズらしいと言うのも不思議な感覚だが、かなり好みの音色で聞き入ってしまうシンプルな音の良さ。そしてクリッシー・ハインドの歌もホント、そのままの声色と歌が格好良い。ドラムのマーティン・チェンバーズも健在で、特筆すべきドラミングではないが、安定のプリテンダーズの屋台骨。2分半しかないオープニングだが、これくらいで丁度良い快作。そして本作で一番過去を引き摺っているかのような、正にプリテンダーズと言えばこういう曲調、誰が聴いてもこれはプリテンダーズだろうとしか思えない「The Buzz」がとにかく最高。先のギターの音色もビートもリフの入れ方も効果的なジャズコーラスサウンドも歌メロもベースの流れ具合も全てがどこを指してもプリテンダーズ。ノスタルジック的かもしれないが、最高の曲。特にギターのジェイムズ・ウォルバーンのソリッドでシンプルなプレイと音色が実に良い。良すぎるので何者かと調べてみれば、何ともユニークな経歴を誇り、有名な所ではレイ・デイヴィスのソロのバックでも弾いていたり、その絡みでのプリテンダーズ参加だろうか、The Railsでの活動が知られているらしいが、それよりも自分的に軽く驚いたのが、奥様がカミ・トンプソン、即ちリチャードとリンダ・トンプソンの娘さんとの事で、あまり関係ないだろうが、どこかリチャード・トンプソン的な音色のギターでもあるかもしれないと好ましく思ってしまった。「Lightning Man」はここに来てなかなかユニークな試みでもあろうレゲエ・ダブ的サウンドが登場。クリッシー・ハインドの歌声でこういうのを聴くのもなかなかアンバランスで頼もしいが、リズムとアレンジがそうでもやはりロック的、The Clashよりももっとロック的な色合いになるのが嬉しい。その流れのまま格好良いギターリフから始まる「Turf Accountant Daddy」はややヘヴィに迫りつつもエッジの立った切れ味鋭い、これも見事に3枚目頃のプリテンダーズらしい作風でひたすら格好良い。クリッシー・ハインドのちょっとした掛け声的な部分までもがソリッドで良い。レコード時代で書けばA面最後を飾る「You Can't Hurt a Fool」はやや落ち着きのある、どこかボウイのバラードチックな作品をイメージさせるようなメロウな作品で一辺倒にならないアルバムのアクセントとして聴かせてくれる一曲。

 B面的な始まりはご機嫌でリズミカルなリフが奏でられる「I Didn't Know When to Stop」からで、このギターの音色、ホント、リチャード・トンプソン的な音だから面白い。プリテンダーズでリチャード・トンプソンが弾く事はないだろうが、こういう感じになるのかななどと余計な妄想が広がるが、ここではクリッシー・ハインドのハープもまた再登場。続いてはややミドルテンポに戻り、「Maybe Love is in NYC」とこれもまた如何にも初期のプリテンダーズそのままの楽曲で、やおら香港のワードが耳に付くが、PV見てるとさすがにクリッシー・ハインドのルックスをまともに見るには無理があるのが歳月の経過を感じるのがやや寂しい。さて今度はノリの良い皆で合唱しましょう的なサビから始まる「Junkie Walk」も過去にはあまり聴かれなかった作風ながら聴いてみればしっかりクリッシー・ハインド流3コードR&R。そのままPVも面白いオーソドックスなR&Rスタイルを踏襲した「Didn't Want to Be This Lonely」でR&Rを奏でてくれる。こういうのがルーツにあってのプリテンダーズだろうと明らかに分かる軽快なスタイルなので単純に楽しめる曲。最後の「Crying In Public」はこの手のを書かせて歌わせても上手いバラードソングで、ここではピアノとストリングスを活かした涙ながらの美しい作品に仕上げて締めている。

 アルバム全てが素晴らしいとは言わないが、前半を占める楽曲群を筆頭にかなりカッコ良さを実感するアルバムで、当然久しぶりにクリッシー・ハインド流R&Rを聴いたが、ついつい軽くリズムを取りながら聴いていた自分がいて、そこまで想い入れが深かったワケでもないが、好きで良く聴いていたのだな、と懐かしさを思い出せた新作。ジャケットを見ればそれはもうこの歳だからと思うがスタイルはそのままで格好良い。それに加えて本アルバムのほとんどの曲がPV作成されていてYouTubeでも見られるのだから随分と仕事しているようだが、全てがぼやかした映像というのもなるほど、それもそうかと。しかし、ギターがカッコ良い。更にアルバム収録時間が短いから何度でも聴けるのも良い。





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フレ
Posted byフレ

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