Michael Schenker - Immortal

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Michael Schenker - Immortal (2021)
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 デジタル時代になり、またネットワーク環境が高速大容量対応になるに連れてミュージシャンの録音プロセスもかなり変化していっただろうが、この環境下に於いてそれは更に促進された感もあり、アルバムにクレジットされる面々と直接会った事はないが、仕事を依頼してソースを送って録音してもらう、そして返送されてきた音も普通に取り込んで更にマスタリングを施していくらでも作り直す。その方が時間は有効に使えるし、それぞれが場所を問わず、時間も自由に、そして環境も自分が慣れた状況で録音や演奏、スタジオ作業も進められる安心感とメリットも大きい。そんな事情も手伝ってかここ最近のバンドやアーティストの作品はやたらとゲスト参加が多いアルバムも目立つが、一方で聴いているだけではそこまでそのアーティストの個性が分かり切らなかったりもして、クレジットを見て意識して聴いてようやく、ここか、と分かったりする事もあり、良いのか悪いのか、セールスポイントとして誰それのゲスト参加あり、と書かれる方が売れる、売りやすいのは分かるので特に悪くもないが、果たして何が良くて楽しめるのか、結局は元々の曲やアルバムの出来映えがしっかりしてないと意味がない。ゲスト参加によってクォリティがアップしたり刺激的な演奏に仕上がる事もあるだろうが、そこもまたスタジオ盤では聞き取れないレベルかもしれない。

 Michael Schenkerがデビューしてから50周年記念盤としてリリースされた「Immortal」にはこれでもかとばかりのゲスト陣営が加わって派手な宣伝文句で期待を膨らませてくれた。この期待が膨らむ、という事が即ちゲスト参加の効果だが、マイケル・シェンカーの場合はギタリストなので当然ゲスト陣にはボーカリストが多数名を連ね、それぞれの個性を楽しみにもするし、一方では見合った曲調がどれだけあるかももちろん気にする。他はデレク・シェリニアンの鍵盤がどれだけマイケル・シェンカーに絡んでいるだろうか、と気になるのとドラムにサイモン・フィリップスを持ってきているのも流石の人選と思わせる。生憎その他のメンツの詳しい経歴をよく知らないので、何も書けないが、それぞれマイケル・シェンカーと絡みがあり、それぞれの領域でのプロ達として名を連ねているので、気心知れた正しくプロ中のプロが集まって取り組んだ作品として聴けるだろう。ちなみに様々なフォーマットでリリースされているようで、オリジナルアルバムに加えてBlu-Rayが付けられたディスクでは2019年に地元ドイツで行われたイベントに出演して2時間半近くのステージでマイケル・シェンカー集大成楽曲をほぼ演奏したライブの様相が収録されている。ボーカリストも多数揃えて、良し悪しあれども記念のイベントとして記録されている気合の一枚として一度は見ておきたい、とは思っているがまだ未見。なかなか厳しい評判のようだが、それすらも笑って見れるようにならなければマイケル・シェンカーとは付き合っていられない。

 そして本作オリジナルアルバム部分も辛辣なレビューが見られるが、これも80年代の黄金期と比べてもしょうがなく、今のマイケル・シェンカーが出している音それだけを単純に聴いて味わう、それだけだ。正直書けばあの名曲群、黄金のギターフレーズが出てくるハズもないし、同じレベルではあり得ない。しかし、さほどの期待もしないでじっくり聴いていると自ずからどうしてもマイケル・シェンカーのギタープレイに耳が向くし、ギターソロになれば当たり前だがマイケル・シェンカーのギターそのままの音色とフレーズがビシバシ突き刺さってくるので、そこだけ切り取ってみれば黄金期から2ランクくらい下にいるだけで相変わらずの職人芸と指さばきだと分かる。これ以上を求めているファン意識も当然理解出来るが、案外悪くない。曲調が単調な面は確かにあるが、それでも割とリズムやテンション、展開面もバリエーション豊かに散りばめられているので、同じように聞こえるのはアルバム全体の音のトーンが均一だからだろう。恐らくはパソコン上での作業が中心となっての音作りだろうから、どうしてもひとつのテイストに乗っ取られてしまったような音が出て来てしまう。それがこのアルバムの特徴でもあるが、自分的にはやや眠くなるサウンドテイスト感だったのが厳しい。ややボリュームを上げてじっくりと取り組めばマイケル・シェンカーのプレイぶりはヒシヒシと伝わってくるし、出来る範囲内でのプレイしか聴けないのはやや寂しいが、かと言ってトリッキーなプレイを求めているでもないので、安定的なギタープレイが聴ける、それで十分として聴くべきだろう。いやはや、それでもやはり神です。ギターソロになった途端にどこからどう聴いてもマイケル・シェンカーそのまま。ギブソンからディーンに変えているのは分かっていてもあの音が出てくるのだから自分自身のギブソンフライングVの音色をサンプリングしているのではないだろうかと勘ぐってしまう程。

 ボーカリストも多彩で頑張っているが、自分的にはほとんど耳には入ってこないので誰でもあまり気にする事なく、そこに個性を求める事もないので酷評にならないで済んでいるかもしれない。我ながら極端な聴き方だとは思うが、多分マイケル・シェンカーもそういう風にプレイしていると思う。そういう風と言うのはボーカルメロディを意識してギターをなぞるプレイでもないし、影響されるでもないし、歌がある部分とギターソロを弾く部分と分けてプレイしているだけと言うか、バンドアレンジもバンドらしい部分よりはギターを聴かせやすく、弾きやすく、展開させると面白そう的な意味合いが強いと勝手に思って聴いている。ただ、ここ最近のアルバム群と大差もないので、何度も聴くアルバムかと問われればそれはない、と答えてしまうだろう。これくらいの大御所になればそういうモンだろうし、それでもこれだけギタープレイを聴かせてくれるのだから嬉しい限り。





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フレ
Posted byフレ

Comments 2

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おっさん  

今でも活動していることが凄い!
UFO時代から聴いていたので、
長生きができるとは思ってなかったです(笑)。

2021/02/18 (Thu) 06:03 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>おっさん

この人の場合クスリじゃないからそこまでは思わなかったですが、それでもよく世間に馴染みましたよね(笑)。

2021/02/18 (Thu) 23:39 | EDIT | REPLY |   

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