Colosseum - Live (Expanded Edition)

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Colosseum - Live (Expanded Edition) (1971)
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 70年代前後の英国ロックはありとあらゆるサウンドをごった煮にして自分達流にアレンジしてとにかく熱気ムンムンでシーンに登場してきたので聴いている側もあれもこれもと手が回らないものの楽しめた。それは王道ロックバンドもあるし、その王道ロックバンドもまだ彼ら自身が確立されると決まってなかった時期だから同じようにチャレンジを繰り返しているバンドを見ては刺激を受けたりもして、正にロック黎明期と言える時代。当然後追いでそれらの情報を年月で想像しながらあの音とこの音ではあっちの方が先だったし、同じ面々が参加しているから、誰それが参加していたからこのバンドでもこうなっているのか、プロデューサーは、エンジニアは、レーベルはなど様々な角度から眺めていくとどこかファミリトゥリー的なものが見えてきて、そのミュージシャン達の仕事ぶりや人脈、出会いが分かり、色々と紐解けてきたりもして楽しめる。マニアックな話かもしれないが、それくらいの情熱を掛けて作り上げている音楽に対しては、そういう情熱で聴いていかないと失礼じゃないかなどと思ったりもするので出来る限りそう聴いていきたい。なかなか時間やゆとりや集中力が取れないのもあるが、今のステイホーム時代はホント、色々聴き直すのも丁度良いし、更に楽しめている。

 そのごった煮ロックの象徴でありながらもプロフェッショナルなミュージシャンが熱意を持って集まったバンド、そして白熱のライブを繰り広げてくれている傑作アルバムを残しているからこそしっかりとメジャーなバンドとして君臨しているColosseumの「Colosseum Live」。1971年3月のライブ2ヶ所からベストプレイをチョイスした作品で、白熱のアドリブプレイが中心のバンドなので一曲づつがとにかく長尺になりがち。アナログ時代はA面2曲、B面1曲、C面2曲、D面1曲の計6曲しか入っていなかったが、演奏がとにかく熱い。バンド編成は言わずと知れた面々、ジョン・ハイズマンを筆頭にディック・ヘクストール=スミス、デイブ・グリーンスレイドのオリジナルメンバーにクリス・ファーロウとクレム・クレムソン、マーク・クラークの6人組、特徴的なのはハモンドオルガンにサックス奏者が参加している点と、クレム・クレムソンの超絶ハードブルースギターも同居しているあたりで、その編成を見てもとにかくうるさい音だろうとは想像が付くだろうし、そもそも全員目立ちたがり屋と言うかソロプレイで本領発揮するメンツばかりなので、そのぶつかりあいが凄い。ボーカルのクリス・ファーロウまでもがその楽器隊のバトルに加わってひたすら熱唱しているパートが目立つのも特徴的だが、その対抗馬としてかクレム・クレムソンの歌声もかなり熱唱的になっているのも熱さに輪をかけている。下手したらツインボーカルとも言えるくらいに歌っているので、とにかくどこの何を聴いていれば良いのか迷うくらいには演奏が派手。更に楽曲もひたすらアドリブしか演奏されないだろうような構成に仕上げ直しているので、ロックを聴いていると言うよりはジャズメン達の演奏を聴いている感覚に近く、その意味ではクリーム的かもしれないが、倍の人数を配しているだけあってコロシアムの方が圧倒的に派手。

 冒頭からジャック・ブルースのアルバム「Songs for a Tailor」に入っている「Rope Ladder to the Moon」のカバー曲で始まるが、これもジョン・ハイズマン他のメンバーがアルバムに参加していただけあって、普通に取り込んでいるがとにかく始めから圧巻の歌声。バンドの演奏も当然ながらクリス・ファーロウの黒く太く暑苦しい歌声にまず圧倒されるし、続いてのバンドの演奏も超絶。次の「Walking In The Park」はグラハム・ボンドの「A Solid Bond」収録曲のカバーで、オリジナルの様相からはかなり逸脱した白熱のプレイながらクレム・クレムソンとの掛け合いが見事。このアレンジ演奏具合は正にジャズ的解釈に近いだろう。更にアナログ時代B面を制していた「Skelington」ではクレム・クレムソンのブルース調がクローズアップされた、そこまで弾きまくるかというスタジオ盤未発表ナンバー、と言うか即席アドリブプレイにも近いのかも知れないが、クリス・ファーロウもノリノリで歌っているし、ジョン・ハイズマンもここぞとばかりに叩いている。反面デイブ・グリーンスレイドはそこまで目立つ事もないから、この人の場合、やや指向性が違うのもあってコロシアムのメンバーと張り合うのは少々重荷だったのかもしれないが、出てくる時は出てくるので音は目立つ。そしてジャズそのままのマイケル・ギブスのカバー曲「Tanglewood '63」ではディック・ヘクストール=スミスとグリーンスレイドの出番とばかりにスタンダードながらもコーラスワークも交えて妙なソウルフル感を出しつつ不思議な展開を見せてくれる。そのままご存知有名曲「Encore...Stormy Monday Blues」はそのままヘヴィにウネリまくるブルースで案外グリーンスレイドの出番も多いながらやはりクリス・ファーロウとクレム・クレムソンが強烈に弾きまくっているのが凄まじい。ここまで来ると、呆れてものも言えないほどのプレイぶりで、ただただ圧倒される。アルバムD面一曲を占めていた最後の「Lost Angeles」は正にコロシアム的でバンドが一体となったプレイの名曲。これまでのハイテンションな演奏ぶりに加えて楽曲の構築美も手伝ってくるので名演そのもの。ここでも後半のクレム・クレムソンのギタープレイとジョン・ハイズマンのドラムが凄まじく、一瞬だけ「幻惑されて」のあのソロプレイと同じフレーズが登場したり、クリス・ファーロウも積極的に演奏に絡んで来るし、その雄たけびの使い方はロバート・プラント的でもある時もあり、案外Zeppelinとも重なるプレイぶりにも聴こえてきた。

 1990年代になってのCDリリース時からは同じライブの中から「I Can't Live Without You」が最後に加えられ、これもまたバンド一体となった暑苦しいプレイが聴けるようになっているが、いつしか標準収録となったのか、CDでは4曲目に位置するようになっているのが近年の定番らしい。更に2016年になると2CDまで拡張した「Colosseum Live (2CD Deluxe Edition)」がリリースされ、上記内容に加えてディスク2には同じ時のライブの別テイクが山のように収録されて、「ヴァレンタイン組曲」そのままも入っている嬉しさだが、まだ自分はそこには到達していないのでいずれまたと考えているが、これも凄そうだ、と言うか凄いに決まっている。わずか数年で解体したコロシアムだが、ここまで白熱の集団ならばその寿命の短さも納得出来る凝縮具合。そのプレイぶりをじっくりたっぷり聴いてこの70年前後の英国ロックの凄さ、ロックに全てを取り込んでしまう凄さを味わってほしい。





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フレ
Posted byフレ

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