Greenslade - Greenslade (Expanded & Remastered 2CD Edition)

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Greenslade - Greenslade (Expanded & Remastered 2CD Edition) (1973)
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 英国ロックのアートワークを飾る巨匠の一端として知られているロジャー・ディーン作品の中で自分が昔から、そして多分今でも一番好きなのがこのグリーンスレイドのファーストアルバム「Greenslade」を飾っているジャケットだ。バンド名がグリーンスレイドだから緑色に彩られたジャケットはともかくながら、ここに登場する6本腕のキャラクターは随分と印象的でバンドのシンボルにまでなってしまった象徴的なアルバムジャケット。その背景に描かれているのはこの頃のロジャー・ディーン作品でもよく見られるような岩造りのような造形美だが、圧倒的にこの魔神の姿が目を引く。そしてこの色合のセンスの良さも含めてとにかくそれだけで魅了されるが、アルバムの中味の音を聴いてそれは更に一層深まった。これもまたジャケットと中味の音のイメージがマッチした素晴らしいクォリティの作品で、当時そこまで売れなかったとは聞くが、王道プログレッシブ・ロックの派手さからしたら随分と地味と言うかこじんまりと美しく繊細にまとめられた音色でもあり、また二人の鍵盤奏者とリズム隊のみという珍しいバンド形態、即ちロックさ加減がやや低めに見られていた面もあったかもしれない。それでも後の時代になればなるほどに評判は高まり、今では割と安定的に高めの評価を得ていると思っている。

 1973年にファースト・アルバム「Greenslade」をリリースしているので、その意味では第一次プログレッシブ・ロックバンド連中からはやや遅れてのデビューだが、それもそのはず、主役のデイブ・グリーンスレイドはColloseumに在籍しており、バンド解散後に同じくコロシアムのベーシストだったトニー・リーブスを誘って新たな活動へと進んでいるからだ。そこに加わったのは当時クリムゾンのドラマーだったもののどうにも雰囲気がよろしくないクリムゾンを離脱したアンディ・マッカロックとSamuraiなるB級バンドで活躍していたデイブ・ローソンだった。その時点でギタリストの入る余地もなく、Rare Birdと同じくツインキーボードとリズム隊の4人による珍しいバンド形態でシーンに登場してきた。二人の鍵盤奏者=二人のギタリストがいるバンド、と同じように考えると特におかしくもなく、Wishbone Ashのギターが鍵盤に置き換わったかのようなイメージでも良いのかもしれない。扱っている鍵盤はハモンドとメロトロンが中心で所々でピアノも入ってくるのでかなり重厚感もあるし躍動感もあるし、叙情性にも長けていながらたまにピアノで冷酷感も出してかなり幅広い音世界を操れるのはバンドの特徴。それに加えてあまり言われるのを聞かないが、トニー・リーブスのベースがかなり自由にメロディライン的ベースを弾いているので、どちらかと言うとリズム楽器と言うよりもリードベース的でもあり、曲をドライブさせる役割としてのベースも担っているので重要なポジションを占めている。さすがにあのコロシアムでベースを張っていただけの人なので、ここでの役割も相当なモノ。「Mélange」ではトニー・リーブスをフューチャーしたかのようなドライブしたベースをブリブリと鳴っているので聞き所も多い。ボーカルはデイブ・ローソンが兼ねているが、やや軟弱的な歌声で、バンドに似合っていると言えば似合っているし、専任ボーカルを入れて強化しておいたらもっと違っただろうとも思う面もある。ただ、情感溢れる歌い方はグリーンスレイドの特徴にもなっているので今となっては正解だったか。

 とにかく冒頭の「Feathered Friends」がインパクト絶大で、グリーンスレイドなるバンドの姿を見事に物語っている。オルガンと軽快なリズム隊にベースラインのドライブ、歌が始まればメロトロンで叙情性を奏でながら、ドラマティックに起伏があるでもなく、そのままジワリと自然に緩やかに展開されていく楽曲の構成は鍵盤を知り尽くした二人ならではのスタイルなのか、いわゆるハードロック的な展開には一切進まず、プログレッシブ・ロックそのままのイメージで進んでいく美しさ。かと言って美しすぎるほどには至らず、円やかにその場に浸りたくなるような心地の良い世界を味わせてくれる素晴らしさ。全7曲中4曲が歌入り、3曲はインストもので適度に交互に奏でられるが、短めなインスト系では軽快さとちょっとした展開も組み込みながら楽器の音色をフューチャーしてて、どれもこれも弾いている本人達が楽しそうな編曲に聴こえるのも良い。最初のアルバムなので当然ながらメンバーの熱量がたっぷりと注ぎ込まれており、ひとつの方向に皆進んでいる、そういう楽曲ばかりが詰め込まれているからかバランスも良く、そしてアンサンブルの見事さが圧倒的に飛び抜けてて誰かの何かが目立つでもなく、バンドそのものの音がレベル高くムードを奏でているから、アルバム全体のまとまりがとてつもない。ひとつの組曲かのように聴けてしまう作品で「An English Western」ではタイトル通りにブルース調ながらクラシカルなスタイルを巻き込んだ不思議な曲が奏でられるし、「Drowning Man」は変拍子も交えながらこれぞプログレッシブ・ロックと言わんばかりの展開を示しつつも軽やかにドライブするユニークさを持つ。「Temple Song」はともすればカンタベリーサウンドにも近いようなフワフワ感を奏でてくれるのも幅広いグリーンスレイドの音楽性を聞かせてくれ、一方の「What Are You Doin' to Me」ではオルガンロック的な熱気を詰め込んでくる。最後の「Sundance」ではピアノの静かな音色からメロトロンにオルガンが重なり、更にハード路線への展開までも広げられる格好良い長尺ナンバーながらもハードに進み切らないバランスが良い。

 どの曲もどの曲もカッコ良く、これぞプログレッシブ・ロックのカッコ良さ、それでいて聴きやすさも持ち合わせているので構えなくても良い手軽さを持っていると自分では思っている。そんなグリーンスレイドも2018年にようやく全作品がリマスタリングされ、ボーナスディスクも付けられてリリースされているが、このファーストアルバム「Greenslade: Expanded & Remastered 2CD Edition」ではボーナスに1973年のBBCセッションが加わっている。アルバムは2月にリリースされているが、最初のBBCセッションは1月のものから3曲、その後4月のライブからどれもアルバム収録曲となる4曲が演奏されているのでどれもこれも楽しめるセッション。何しろメンバーの意欲が凄いから演奏の躍動感や熱気も聴いてて分かるほどの内容、それにこれもまたプログレッシブ・ロックバンドらしい展開ばかりで嬉しくなる。アルバムジャケット、音の内容、それにライブシーンまで含めてどれも素晴らしい作品の「Greenslade (Expanded & Remastered 2CD Edition)」はこれからも何度も聴いていく名盤。





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フレ
Posted byフレ

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