Affinity - Affinity (2016 Bonus Tracks Remastered)

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Affinity - Affinity (2016 Bonus Tracks Remastered) (1970)
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 風景の写真ならアングルの取り方でアルバムジャケットの正方形でも良い画角が得られるだろうし、そういう狙いで撮っている写真、アルバムジャケットも数多い。一方人物画や被写体そのものが明確になっている場合は、なかなか難しかろうとも思う。ど真ん中に被写体がある方が良いのか正方形ながらもどこかに寄った方が絵的にはバランスが取れているようにも映るので、その辺りのセンスが割と問われる。ダブルジャケットで開けば右に寄る被写体の使い方もあるだろうからどういう見られ方をしたいかも計算しての撮影と画角の使い方になるだろうか。今回キーフ撮影のアートワークで実に有名になっているAffinityの1970年リリース当時の唯一作「Affinity」のジャケットを見ててつくづく美しいと思いつつも、ど真ん中に被写体が鎮座している事で、逃げ場のない視線に些か窮屈さを感じたので、冷静に写真的に見るとそういう事かと。それこそダブルジャケットを広げれば左側には白鳥が2羽いるので、バランスが取れているどころか絵として完璧な姿となるが、表ジャケットだけ見るとそんな印象をも持ってしまう。ただ、それでも逆にど真ん中に鎮座する女性があまりにも物静かな雰囲気なのでうるささは無く、それよりも色合いと質感でクールな印象を受けるので、これはこれでやはりアートとしても完璧な作品で、ど真ん中が正解の絵だろう。素人がちょっと思った印象程度で50年も幻の名盤と言われてきたこのアルバムのジャケットの価値が下がるはずもない。

 今となってはありとあらゆる音源やメンバーの出自、果ては再結成劇までもが描かれた元幻のバンドAffinityの「Affinity」はジャケットのおかげで立派に歴史に残っている、とは言い過ぎだが、収録されているバンドの音楽性だけではここまで歴史には残らなかったと思う。ハモンドオルガンハードロック路線にギターも加わり、シャウト系のお転婆的ボーカリストのリンダ・ホイルが加わったからこそメジャーでリリースされた唯一のアルバム。今ではあれこれ発掘されているが、60年代半ば頃のメンバーのジャズアルバムから60年代末期のデモ音源的作品も発掘され、更にリンダ・ホイルが脱退してからの音源までもリリースされているので、ぶっ飛んだのはAffinityで5CDボックスセットのリリースだった。そこまで音源があるのか、果たして何がそこまで詰め込まれているのか、と訝しんだ気がするが、蓋を開けてみれば我々がイメージするAffinityの姿を記録しているのはこのオリジナルバージョンと精々シングルやスタジオアウトテイクを集めた1CDだけだ。それでもディープなリスナーにはそのバンドの成り立ちも、その後の音も聴けるのはありがたき幸せとばかりに付き合った事だろう。決して悪いソースではなかったが聞きたかった音とは異なったのも事実。

 ただ、近年リリースされている本作は7曲目までがこれまでのオリジナルアルバムのリマスター盤、その後に1969年にリリースされた先行シングルのローラ・ニーロのカバー曲「Eli's Coming」と「United States Of Mind」で、よくぞこれをシングル曲としてリリースしたと思うような気もするが、オリジナルが人気あったからだろうか。元々他人の曲のアレンジは得意なバンドなので、ここでのストリングとコーラスを使いまくった突拍子もない加工は凄い。B面曲はかなりイケてない作品で、どこか民族的なアプローチに物静かなアコギを重ねての歌もの的楽曲。「Yes Man」は本作をリリースした後の録音らしく、シングル向けだったか次作向けだったか、あと一歩二歩アレンジするハズでもあったようなごった煮ロックが展開されているが、ジャズギター的ブルースが炸裂し、更にオルガンソロもうるさく鳴っていてインパクトはかなりあるのでなかなかにロック的でプログレッシブな作品。そして「If You Live」と題された「Greensleeves」のような3拍子曲は1968年の録音で既にリンダ・ホイルが歌っているジャズとブルースの間の子のようなサウンドが個性的。リンダ・ホイルの歌もジャズボーカルに近い気がするし、ギターは完全にジャズ。元々がジャズバンドだったので当然だが、こういう風に聴いていくと確かにバンドの初期時代も面白そうだとハマっていくのでよろしくない。そして当然ビートルズの「I Am The Walrus」のカッコ良さはかなり痺れる。ハモンドが鳴り響きリンダ・ホイルが歌うビートの利いたハード調での「I Am The Walrus」、魅力的に映るのは当然か。これも1968年の録音らしいのでリンダ・ホイルが加わって初期の頃のセッションだろうと勝手に想像している。続いての「You Met Your Match」も同じセッションからか時代を反映してのサイケデリック風味に忙しいリズムに合わせた迫力の歌が特徴的なサウンドで、R&Bからの影響も強いし当時の歌メロポップ系も反映しているかのようだ。まだバンドの音楽性の確たる方向性が定まっていない時期のためか、色々聴けるのは興味深くて面白い。「Long Voyage」は一転してスロー系なサウンドでリンダ・ホイルが歌い上げており、メロウな60'sポップ風味たっぷりだが、この人何歌っても上手い。そして1970年の録音から「Little Lonely Man」も収められているが、こちらは楽曲の質感が本作収録曲と合い通じる面が多いからアウトテイクだろうか、それにしては少々リラックスした歌い方でもあるので仮セッション段階とも思えるが、もしかしたら今どきのCDならライナーに全部書いてあるのかもしれない。そして2016年にリリースされているバージョンではこれに加えて「All Along The Watchtower」のデモバージョンと「I Am The Walrus」のテレビ出演時ソースが収録されているが、前者は本作に入っている白熱のバージョンからすると半分以下の演奏時間しかないので少々熱気に欠けるキライがあるが、やりたいことは分かる、というようなハモンド大活躍のコンパクトなセッションでなかなか楽しめる。

 本編の白熱のハモンドとギター、ホーンセクションなど音楽的にはかなり満載された中、リンダ・ホイルの変幻自在のボーカルながらも声に迫力のある、そして艶のある歌声が大いに武器となり、唯一作で知られていたが、当時はさほど売れなかったのだろうし、それ以降も売れてはいなかっただろう。ただ、音楽業界人からするとかなりユニークな才能を持ち合わせた存在だったのかもしれない。そこにリンダ・ホイルの魅力が響いたのかあの名作ソロアルバムでの人脈やセッションに繋がったのだろう。ただ、今の時代に普通に聴いているとやはり70年代のあの空気感がパッケージされていてついつい何度も何度も聴いてしまい、改めてマイク・ジョップなるギタリストの器用さを聴き、リントン・ナイフのセンスに納得した作品で、やはり素晴らしい。






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フレ
Posted byフレ

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photofloyd  

いっやーー、懐かしいジャケ、これを知らずしてプログレ・アルバムを語るな・・・と言ってもいい代物ですね。とにかく当時抜群のジャケ。ところが所謂ジャズ・プログレ・ロックといったところでしょうかね、私は中身までは手を付けてありませんでした。今では記憶が無いのですが恐らく当時、聴きかじってとっつくことが出来なかったんだろうと思います。LPも高かったですから。
それでもこのジャケには参りました。今でも・・・しっかり頭にあります。^^

2021/02/09 (Tue) 18:38 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>photofloydさん

そう、リアルタイムじゃないですが、コレクター的に懐かしいアルバム、の類ですね、ここ最近のは。この頃の作品は風格があってその雰囲気が好きですね。

2021/02/11 (Thu) 19:17 | EDIT | REPLY |   

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