Van der Graaf Generator - Still Life (2005 Remastered)
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Van der Graaf Generator - Still Life (2005 Remastered) (1976)

固定概念が無ければバンドを組む時にどういう楽器編成を考えるだろうか。考えると言うよりも作り出された音に対して必要な音色、楽器演奏者がいる事が先かもしれないが、バンドを組んでツアーをする、ライブを行う、レコードを作るなど一連の仕事に取り組む単位を考えるとある程度固定のメンバーを想定するだろう。ソロプレイヤーでカネがあって演奏家が選べるならそういう自身の野望を実現出来るだろうが、まだシーンに登場もしておらず、セールス実績もなければそこまで自身の野望を満たす事も出来ないので、仲間内と言うかある程度志を同じにするメンバーと活動するしかなくなる。そこでバンドの編成を考えると、固定概念があるとドラムにベース、ギターに歌、それに鍵盤奏者となるが、Van der Graaf Generatorはどういう訳か、ドラムに鍵盤とベースが兼任、フルートやサックスなどの管楽器系、それにボーカルと多少のギターが兼任しているメンバー構成だ。当然ながらプロプレイヤーなのでレコーディングであれば他の楽器もそれぞれが器用に使いこなすのはあるが、ライブで4人で演奏となるとなかなか出来うる範囲が決まってくるので、そもそもそういう音をイメージして組んだとも言えるし、メンバーが替わっていったらこうなった、とも言える。それでも4人とも結局は仲良く一緒に演奏しているし、今でも3名は一緒にプレイしているのだから宿命の仲間たちでもあろう。
Van der Graaf Generatorの1976年にリリースされた「Still Life」は前作「Godbluff」から半年程度でのリリース、しかもその前はバンドが解体していた時期でもあり、言い換えると再結成して1年の間で2枚、この後も早かったので2年で3枚のアルバムをリリースしている精力的な時期で、しかも作品レベルが半端なく高く、Van der Graaf Generatorの最高傑作が連発されているのもリスナー的に嬉しく、恐らくこの時期に解散前までの売れないバンドのイメージを払拭してある程度売れるバンドとして蘇ったとも思われるが、面白いのは解散前も後もカリスマレーベルからのリリースと変わらなかった事だ。アメリカでの配給はマーキュリーに変わっているので、そもそもの第一次解散の理由が売れなくてカネに困った、プロモーションもしてもらえなかったとの事だから、アメリカでの支援体制の弱さがネックだったのかもしれない。それでもプログレが一番輝いていた70年代前半全てが解散状態だったのは勿体無かったが、その分傑作名作、充実のアルバムを続々とリリースしてくれたのは良かった。自分は当然後追い世代だが、Van der Graaf Generatorの幾つかのアルバムを聴いて、一番最初に凄さや良さを実感したのが本作「Still Life」だった。冒頭の「Pilgrims」の静と動の迫力にメロディアスなボーカルラインと鬼気迫る熱気にも魅力を感じ、その実オルガンの音が主体で鳴らされているバンドの不思議な質感にも魅力を感じ、そのうちにこの珍妙なバンド編成を頼もしくも聴くようになっていったが、そのきっかけにもなった曲。続いての「Still Life」の歌メロともやや被るかのような旋律が統一感を出している面もあるが、全く明るさがなく、ただただ奈落の下へ落ちていくかのような作品はピーター・ハミルならではの訴え方、そこに硬派なスタンスがきちんと伝わってくるから芯に響く。それこそがロック。そもそもバンドが解体して、それぞれが活動を開始したもののしっくり進まず、ピーター・ハミルのソロアルバム制作に合わせてメンバーが徐々にセッションに参加しつつ、再結成の手前のアルバム「Nadir's Big Chance」ではVan der Graaf Generatorのメンバー全員が参加した作品になり、それならバンド再結成してやろう、との流れで復活した経緯があるが、無理やりに引き離された恋人たちのような邂逅劇もVan der Graaf Generatorらしく美しい。「La Rossa」の絶叫と美しさと底辺を這いつくばるオルガンの音色、ドラマティックであり詩的であり、叙情性を持ちつつも破壊性もある屈指の作品、デヴィッド・ジャクソンのサックスがロックの世界では聴き慣れない耽美性を出しており、プログレッシブ・ロックと実感する。その実、変拍子が多いワケだもなく、聴きやすさが中心にあるバンドなのでプログレッシブなのはこの発想と革新性、そうとしか言えない音楽性と哲学的な歌詞内容、知性を感じるサウンドが一番の魅力だろう。
A面が大作3曲ならB面は更に大作が2曲収録されており、A面の2曲は前作「Godbluff」のセッション時のアウトテイクから作られていたようだがこちらの大作群はこの短い期間に作られている。牧歌的なフルートから始まる「My Room」はピーター・ハミルのソロアルバムのニュアンスを強く感じるが、プログレッシブバンドにあるタイプの静かめなスタイルと叙情性が絡み合った優しいスタイルのまま終焉を迎えるが、8分強にもかかわらず最後まで緊張感漂うテンションで味わえる。そして最後には「Childlike Faith in Childhood's End」と12分半の作品で締めるが、全くドラマティックさと迫力で攻め立ててくるパートもあれば静かに歌い上げてそれこそ天上の囁きのように紡がれるシーンもあり、バンドの演奏をこれでもかと繰り広げてアンサンブルを楽しませる箇所も組み込まれ、最後にはオルガンが鳴り響く中でのピーター・ハミルの歌声で終える、一度や二度聴いた程度ではなかなか理解しにくい作品かもしれない。ただ、アルバム全編を通してこれこそVan der Graaf Generatorの世界、カッコ良い、と言う世界が詰め込まれているアルバム。2005年のリマスター盤からはボーナストラックとしてピーター・ハミルの「イン・カメラ」に収録されていた「Gog」が1975年に英国のこのメンバーでのライブで披露された時の様子が収録されている。やや音に難があるが、その緊張感と迫力はピーター・ハミルのソロライブの一曲にしてはあまりにもテンション高すぎる演奏だったからか、ここでチョイスされている。正直言って怖くなるレベルにあるぶっ飛んだライブバージョンでVan der Graaf Generatorのダウナーに入る熱気と迫力の最高峰かもしれない。
久々にじっくりと数回以上聴いていたが、以前はもう少し聴きやすいと思っていたのが今は取っ付きにくさすら感じたアルバムで、それも数回聴いていると慣れてきてその音の深みとバンドのテンションの高さがじわじわと効いてきて、これを聞きやすいと思っていた自分の浅はかさも感じてしまった。ただ、やはり凄い作品だった。聴いているとどんどんとハマっていって、結局「Godbluff」も一緒に聴いていたりしてまだまだピーター・ハミルの世界まで考えると全くチャレンジ出来切れていないとまざまざと実感したので、もっともっと取り組む必要がある。幸いにして以前よりも情報量も増えているので調べながら細かい部分も見えてきたり、特に歌詞の内容については昔とは比べ物にならないくらいに和訳にしても翻訳にしてもネットを駆使すると出てくるので、そういう事で難解な、哲学的な歌詞と言われていたのかとまた納得。深いバンドだ。

固定概念が無ければバンドを組む時にどういう楽器編成を考えるだろうか。考えると言うよりも作り出された音に対して必要な音色、楽器演奏者がいる事が先かもしれないが、バンドを組んでツアーをする、ライブを行う、レコードを作るなど一連の仕事に取り組む単位を考えるとある程度固定のメンバーを想定するだろう。ソロプレイヤーでカネがあって演奏家が選べるならそういう自身の野望を実現出来るだろうが、まだシーンに登場もしておらず、セールス実績もなければそこまで自身の野望を満たす事も出来ないので、仲間内と言うかある程度志を同じにするメンバーと活動するしかなくなる。そこでバンドの編成を考えると、固定概念があるとドラムにベース、ギターに歌、それに鍵盤奏者となるが、Van der Graaf Generatorはどういう訳か、ドラムに鍵盤とベースが兼任、フルートやサックスなどの管楽器系、それにボーカルと多少のギターが兼任しているメンバー構成だ。当然ながらプロプレイヤーなのでレコーディングであれば他の楽器もそれぞれが器用に使いこなすのはあるが、ライブで4人で演奏となるとなかなか出来うる範囲が決まってくるので、そもそもそういう音をイメージして組んだとも言えるし、メンバーが替わっていったらこうなった、とも言える。それでも4人とも結局は仲良く一緒に演奏しているし、今でも3名は一緒にプレイしているのだから宿命の仲間たちでもあろう。
Van der Graaf Generatorの1976年にリリースされた「Still Life」は前作「Godbluff」から半年程度でのリリース、しかもその前はバンドが解体していた時期でもあり、言い換えると再結成して1年の間で2枚、この後も早かったので2年で3枚のアルバムをリリースしている精力的な時期で、しかも作品レベルが半端なく高く、Van der Graaf Generatorの最高傑作が連発されているのもリスナー的に嬉しく、恐らくこの時期に解散前までの売れないバンドのイメージを払拭してある程度売れるバンドとして蘇ったとも思われるが、面白いのは解散前も後もカリスマレーベルからのリリースと変わらなかった事だ。アメリカでの配給はマーキュリーに変わっているので、そもそもの第一次解散の理由が売れなくてカネに困った、プロモーションもしてもらえなかったとの事だから、アメリカでの支援体制の弱さがネックだったのかもしれない。それでもプログレが一番輝いていた70年代前半全てが解散状態だったのは勿体無かったが、その分傑作名作、充実のアルバムを続々とリリースしてくれたのは良かった。自分は当然後追い世代だが、Van der Graaf Generatorの幾つかのアルバムを聴いて、一番最初に凄さや良さを実感したのが本作「Still Life」だった。冒頭の「Pilgrims」の静と動の迫力にメロディアスなボーカルラインと鬼気迫る熱気にも魅力を感じ、その実オルガンの音が主体で鳴らされているバンドの不思議な質感にも魅力を感じ、そのうちにこの珍妙なバンド編成を頼もしくも聴くようになっていったが、そのきっかけにもなった曲。続いての「Still Life」の歌メロともやや被るかのような旋律が統一感を出している面もあるが、全く明るさがなく、ただただ奈落の下へ落ちていくかのような作品はピーター・ハミルならではの訴え方、そこに硬派なスタンスがきちんと伝わってくるから芯に響く。それこそがロック。そもそもバンドが解体して、それぞれが活動を開始したもののしっくり進まず、ピーター・ハミルのソロアルバム制作に合わせてメンバーが徐々にセッションに参加しつつ、再結成の手前のアルバム「Nadir's Big Chance」ではVan der Graaf Generatorのメンバー全員が参加した作品になり、それならバンド再結成してやろう、との流れで復活した経緯があるが、無理やりに引き離された恋人たちのような邂逅劇もVan der Graaf Generatorらしく美しい。「La Rossa」の絶叫と美しさと底辺を這いつくばるオルガンの音色、ドラマティックであり詩的であり、叙情性を持ちつつも破壊性もある屈指の作品、デヴィッド・ジャクソンのサックスがロックの世界では聴き慣れない耽美性を出しており、プログレッシブ・ロックと実感する。その実、変拍子が多いワケだもなく、聴きやすさが中心にあるバンドなのでプログレッシブなのはこの発想と革新性、そうとしか言えない音楽性と哲学的な歌詞内容、知性を感じるサウンドが一番の魅力だろう。
A面が大作3曲ならB面は更に大作が2曲収録されており、A面の2曲は前作「Godbluff」のセッション時のアウトテイクから作られていたようだがこちらの大作群はこの短い期間に作られている。牧歌的なフルートから始まる「My Room」はピーター・ハミルのソロアルバムのニュアンスを強く感じるが、プログレッシブバンドにあるタイプの静かめなスタイルと叙情性が絡み合った優しいスタイルのまま終焉を迎えるが、8分強にもかかわらず最後まで緊張感漂うテンションで味わえる。そして最後には「Childlike Faith in Childhood's End」と12分半の作品で締めるが、全くドラマティックさと迫力で攻め立ててくるパートもあれば静かに歌い上げてそれこそ天上の囁きのように紡がれるシーンもあり、バンドの演奏をこれでもかと繰り広げてアンサンブルを楽しませる箇所も組み込まれ、最後にはオルガンが鳴り響く中でのピーター・ハミルの歌声で終える、一度や二度聴いた程度ではなかなか理解しにくい作品かもしれない。ただ、アルバム全編を通してこれこそVan der Graaf Generatorの世界、カッコ良い、と言う世界が詰め込まれているアルバム。2005年のリマスター盤からはボーナストラックとしてピーター・ハミルの「イン・カメラ」に収録されていた「Gog」が1975年に英国のこのメンバーでのライブで披露された時の様子が収録されている。やや音に難があるが、その緊張感と迫力はピーター・ハミルのソロライブの一曲にしてはあまりにもテンション高すぎる演奏だったからか、ここでチョイスされている。正直言って怖くなるレベルにあるぶっ飛んだライブバージョンでVan der Graaf Generatorのダウナーに入る熱気と迫力の最高峰かもしれない。
久々にじっくりと数回以上聴いていたが、以前はもう少し聴きやすいと思っていたのが今は取っ付きにくさすら感じたアルバムで、それも数回聴いていると慣れてきてその音の深みとバンドのテンションの高さがじわじわと効いてきて、これを聞きやすいと思っていた自分の浅はかさも感じてしまった。ただ、やはり凄い作品だった。聴いているとどんどんとハマっていって、結局「Godbluff」も一緒に聴いていたりしてまだまだピーター・ハミルの世界まで考えると全くチャレンジ出来切れていないとまざまざと実感したので、もっともっと取り組む必要がある。幸いにして以前よりも情報量も増えているので調べながら細かい部分も見えてきたり、特に歌詞の内容については昔とは比べ物にならないくらいに和訳にしても翻訳にしてもネットを駆使すると出てくるので、そういう事で難解な、哲学的な歌詞と言われていたのかとまた納得。深いバンドだ。
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