Genesis - Nursery Cryme (Remastered)
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Genesis - Nursery Cryme (Remastered) (1971)

21世紀になってからもプログレッシブロックバンドは続々とシーンに登場しており、英国のみならずヨーロッパ諸国から北欧、東欧あたりもそれなりには盛んなジャンルでもあるのか年に幾つかは新しいバンドやアルバムをチョイスしては聴いている。その中でも大御所となるバンドもあるし、割と愛聴しているバンドも数多くあるが、相変わらずそのネオプログレッシブ・ロックバンドのフェイヴァリットバンド、もしくは出てくる音を形容する際に使われる単語は70年代の王道プログレッシブ・ロックバンドで、クリムゾンやフロイド、EL&P、イエスやジェネシスが多い。マニアックに書けばカンタベリーのバンドも出てくるが、概ね王道バンドの名が使われるので分かりやすいと言えば分かりやすいが、その中でも一番引き合いに出されるのがジェネシス。クリムゾンは破壊力と構築美がある場合だし、フロイドは雰囲気作りが上手い時、EL&Pはギターレスで鍵盤中心の際に用いられるし、イエスは軽めの構築美にコーラスワークと複雑な曲展開が緻密に練られている場合だろうか。はて、それ以外はどうするか、となるとジェネシスの登場だ。演劇性、ファンタジック性、物語的展開、暗めな雰囲気、そこまでのテクニカルバンドでもなく、と言ったようなバンドに用いられるのだろう。聴いていると特にジェネシスらしいとも思わないバンドも多々あり、どこがそう言わせるのかと思うと、大抵はシンフォニック的な楽曲だと言うが、ジェネシスもそこまでシンフォニックなバンドという認識が自分にはないからピンと来ないだけかもしれないが、まだ脈々とその音世界は引き継がれているようだ。
1971年にリリースされたGenesisの3枚目のアルバム「Nursery Cryme」、邦題を「怪奇骨董音楽箱」と言うが、これほど見事に言い当てた邦題も珍しいし、日本に於けるプログレッシブ・ロックの進展とジェネシスの知名度アップには大いに貢献したと思われるナイスな単語。冒頭の「The Musical Box」の歌詞の内容からその邦題を編み出したと想像されるが、かなりセンスの良い、そしてかなりアタマを悩まして作り上げた邦題だろう、素晴らしい。その邦題を見るとついつい気になって欲しくなってしまうだろうし、アルバムジャケットを見れば一見下手くそな絵だと思いつつ、少々よく見れば少女がクリケットのバーを持っているのはともかく、下に転がっているのは生首、ナマかどうかは分からないが、それがアチコチに転がっているので興味を惹くし、ついつい裏ジャケットの方まで覗きたくなるだろう。昔はそれもダブルジャケットで見開いて簡単に見れたが、CD時代になり、更にDL時代になるとネット上でのアートワークとしてしか見れなくなっている昨今だが、それでもインパクトあるジャケットで、これもまた冒頭曲「The Musical Box」の歌詞の内容そのままから描かれている素晴らしさとは知られているお話。そしてその「The Musical Box」こそがジェネシスの代表曲でバンドの音楽性や演劇性、シンフォニックさをすべて物語っており、常にジェネシスと言えば「The Musical Box」が話題に挙がる。付け加えておくならジェネシスとはピーガブ時代でしかないのはここを訪れてくるロック好きな輩は当然の事だろう。何もフィル・コリンズがダメと言ってるワケでもなく、その変貌後はそれとして、ジェネシスと言えばピーガブ時代の音を指すだろうし、だからこそ今のプログレッシブ・ロックバンドを形容する際もその意味で使われているのと同じだ。
最初に聴いた頃は当然レコードだったのでそういうものかと思っていたが、あまり録音状態がよろしくなかった、と言うのか音が籠もっていたと言うのか、どうにも聴きにくい音質だったが、CD時代になってもさほど変わらず、だから故か1994年には早々にリマスタリングされてリリースされていたらしい。その後も何度かリマスター盤がリリースされているのでかなり聴きやすそうな音質にはなっているらしく、今時サブスクで聴けるこのアルバムでは霧が少しは晴れたかのような印象の音になってて冒頭から聴きやすくなっていたのは良かった。これならもっと聴けただろうと思える質感をキープしているので、冒頭の12弦ギターから始まる抒情詩を味わいながら、つくづくスティーブ・ハケットの美しく繊細なギターを聴いていた。それにしてもいつ聴いても自分的には苦手だと思うのが相変わらずのピーガブの歌声で、こればかりは何十年も変わらず、生理的に苦手なのだろう。それでも随分と聴けるようになったし、楽曲の構成の見事さと物語的展開、爆発的な演奏でそこそこハマれるようにはなっている。今回も久々に聴いているが、しっかりとフレーズも記憶しているし、結構な回数聴いて取り組んだ事も思い出したので、以前よりは相当音楽に集中して聴いていた。確かにドラマティックな展開やギターの音色やインパクトはかなり絶大なものがある。小曲「For Absent Friends」の英国牧歌的ソングは先の「The Musical Box」の終盤の緊張感を解すには十分な軽やかさを持つ。そしてどうしたらこういう歌詞が思い付くのか、マザーグースの栄光だからと言ってもB級ホラー好きででもなければなかなか思い付かないだろう「The Return of the Giant Hogweed」=「巨大ブタクサの逆襲」の物語的展開の凄さ。こういう音楽と物語とムードが一体となったバンドでここまでメジャーになっているのはジェネシスくらいだろうし、だからこそ形容されるバンドにもなっていると。更にリフの印象も強く、キメのフレーズにしても覚えやすく、幾つもの印象的なメロディが展開されているから聴きやすさもある凄い楽曲。
B面に入って冒頭は静かな印象の「Seven Stones」で美しきコーラスワークをも聴かせながらの叙情的な作品から始まるが、これもジェネシスらしい雰囲気とムードがたっぷりと出されている繊細で緻密な楽曲。アチコチで鳴らされる小技の効いた音色、楽器が曲のカラフルさを上手く出している。そのまま脳天気なポップソング、と言うか戯曲的な「Harold the Barrel」が軽快に奏でられ、随分と聴きやすい普通のバンドの印象すら抱かせる全く英国らしい曲。続いては恐ろしくもクィーンらしいコーラスワークから始まる「Harlequin」だが、実際はクィーンがジェネシスのこういったコーラスワークや楽曲のアレンジにかなり影響を受けていたようで、特にこの曲ではクィーンで聴かれる特徴を見い出せるのは面白い。それでも楽曲はしっかりとギターを中心としたプログレッシブな弦楽そのものでフワフワした秀作。一方最後の「The Fountain of Salmacis」は冒頭からしてクリムゾンに影響を受けたとしか思えないメロトロンの音色が堂々と鳴り響き、それだけで耽美的な雰囲気を出しているが、そんな期待を裏切るかのようにコミカルなピーガブの歌が流れてくるアンバランス感がセンス。アルバムの最後を飾るに相応しいモノ悲しさと終わり感が漂う曲で、こういうメロトロンの使い方はここでしか聴かれないような珍しいパターン。さすがロック黎明期のアルバム。
意外な事にリマスター盤は早くからリリースされていたが、逆にボーナストラックバージョンやデラックス・エディションでの拡張盤はリリースされておらず、作品としてはオリジナルアルバムそのままが一番と今でもそれを守られた状況で現在に至るのはある種凄い。当時のライブバージョンでも別ディスクでセットしても良さそうなものだが、その意味ではクリムゾンとは真逆の商売っ気がない面だろうか。リスナー的にはどちらが良いか分からないが、その分40分に満たないこのアルバムをじっくりと何度でも味わうのも素直な聴き方。久々に数回聴き漁って、ピーガブの声にも慣れた所でようやくジェネシスのバンドの音、曲に耳が向くようになって分かってきたその面白味。

21世紀になってからもプログレッシブロックバンドは続々とシーンに登場しており、英国のみならずヨーロッパ諸国から北欧、東欧あたりもそれなりには盛んなジャンルでもあるのか年に幾つかは新しいバンドやアルバムをチョイスしては聴いている。その中でも大御所となるバンドもあるし、割と愛聴しているバンドも数多くあるが、相変わらずそのネオプログレッシブ・ロックバンドのフェイヴァリットバンド、もしくは出てくる音を形容する際に使われる単語は70年代の王道プログレッシブ・ロックバンドで、クリムゾンやフロイド、EL&P、イエスやジェネシスが多い。マニアックに書けばカンタベリーのバンドも出てくるが、概ね王道バンドの名が使われるので分かりやすいと言えば分かりやすいが、その中でも一番引き合いに出されるのがジェネシス。クリムゾンは破壊力と構築美がある場合だし、フロイドは雰囲気作りが上手い時、EL&Pはギターレスで鍵盤中心の際に用いられるし、イエスは軽めの構築美にコーラスワークと複雑な曲展開が緻密に練られている場合だろうか。はて、それ以外はどうするか、となるとジェネシスの登場だ。演劇性、ファンタジック性、物語的展開、暗めな雰囲気、そこまでのテクニカルバンドでもなく、と言ったようなバンドに用いられるのだろう。聴いていると特にジェネシスらしいとも思わないバンドも多々あり、どこがそう言わせるのかと思うと、大抵はシンフォニック的な楽曲だと言うが、ジェネシスもそこまでシンフォニックなバンドという認識が自分にはないからピンと来ないだけかもしれないが、まだ脈々とその音世界は引き継がれているようだ。
1971年にリリースされたGenesisの3枚目のアルバム「Nursery Cryme」、邦題を「怪奇骨董音楽箱」と言うが、これほど見事に言い当てた邦題も珍しいし、日本に於けるプログレッシブ・ロックの進展とジェネシスの知名度アップには大いに貢献したと思われるナイスな単語。冒頭の「The Musical Box」の歌詞の内容からその邦題を編み出したと想像されるが、かなりセンスの良い、そしてかなりアタマを悩まして作り上げた邦題だろう、素晴らしい。その邦題を見るとついつい気になって欲しくなってしまうだろうし、アルバムジャケットを見れば一見下手くそな絵だと思いつつ、少々よく見れば少女がクリケットのバーを持っているのはともかく、下に転がっているのは生首、ナマかどうかは分からないが、それがアチコチに転がっているので興味を惹くし、ついつい裏ジャケットの方まで覗きたくなるだろう。昔はそれもダブルジャケットで見開いて簡単に見れたが、CD時代になり、更にDL時代になるとネット上でのアートワークとしてしか見れなくなっている昨今だが、それでもインパクトあるジャケットで、これもまた冒頭曲「The Musical Box」の歌詞の内容そのままから描かれている素晴らしさとは知られているお話。そしてその「The Musical Box」こそがジェネシスの代表曲でバンドの音楽性や演劇性、シンフォニックさをすべて物語っており、常にジェネシスと言えば「The Musical Box」が話題に挙がる。付け加えておくならジェネシスとはピーガブ時代でしかないのはここを訪れてくるロック好きな輩は当然の事だろう。何もフィル・コリンズがダメと言ってるワケでもなく、その変貌後はそれとして、ジェネシスと言えばピーガブ時代の音を指すだろうし、だからこそ今のプログレッシブ・ロックバンドを形容する際もその意味で使われているのと同じだ。
最初に聴いた頃は当然レコードだったのでそういうものかと思っていたが、あまり録音状態がよろしくなかった、と言うのか音が籠もっていたと言うのか、どうにも聴きにくい音質だったが、CD時代になってもさほど変わらず、だから故か1994年には早々にリマスタリングされてリリースされていたらしい。その後も何度かリマスター盤がリリースされているのでかなり聴きやすそうな音質にはなっているらしく、今時サブスクで聴けるこのアルバムでは霧が少しは晴れたかのような印象の音になってて冒頭から聴きやすくなっていたのは良かった。これならもっと聴けただろうと思える質感をキープしているので、冒頭の12弦ギターから始まる抒情詩を味わいながら、つくづくスティーブ・ハケットの美しく繊細なギターを聴いていた。それにしてもいつ聴いても自分的には苦手だと思うのが相変わらずのピーガブの歌声で、こればかりは何十年も変わらず、生理的に苦手なのだろう。それでも随分と聴けるようになったし、楽曲の構成の見事さと物語的展開、爆発的な演奏でそこそこハマれるようにはなっている。今回も久々に聴いているが、しっかりとフレーズも記憶しているし、結構な回数聴いて取り組んだ事も思い出したので、以前よりは相当音楽に集中して聴いていた。確かにドラマティックな展開やギターの音色やインパクトはかなり絶大なものがある。小曲「For Absent Friends」の英国牧歌的ソングは先の「The Musical Box」の終盤の緊張感を解すには十分な軽やかさを持つ。そしてどうしたらこういう歌詞が思い付くのか、マザーグースの栄光だからと言ってもB級ホラー好きででもなければなかなか思い付かないだろう「The Return of the Giant Hogweed」=「巨大ブタクサの逆襲」の物語的展開の凄さ。こういう音楽と物語とムードが一体となったバンドでここまでメジャーになっているのはジェネシスくらいだろうし、だからこそ形容されるバンドにもなっていると。更にリフの印象も強く、キメのフレーズにしても覚えやすく、幾つもの印象的なメロディが展開されているから聴きやすさもある凄い楽曲。
B面に入って冒頭は静かな印象の「Seven Stones」で美しきコーラスワークをも聴かせながらの叙情的な作品から始まるが、これもジェネシスらしい雰囲気とムードがたっぷりと出されている繊細で緻密な楽曲。アチコチで鳴らされる小技の効いた音色、楽器が曲のカラフルさを上手く出している。そのまま脳天気なポップソング、と言うか戯曲的な「Harold the Barrel」が軽快に奏でられ、随分と聴きやすい普通のバンドの印象すら抱かせる全く英国らしい曲。続いては恐ろしくもクィーンらしいコーラスワークから始まる「Harlequin」だが、実際はクィーンがジェネシスのこういったコーラスワークや楽曲のアレンジにかなり影響を受けていたようで、特にこの曲ではクィーンで聴かれる特徴を見い出せるのは面白い。それでも楽曲はしっかりとギターを中心としたプログレッシブな弦楽そのものでフワフワした秀作。一方最後の「The Fountain of Salmacis」は冒頭からしてクリムゾンに影響を受けたとしか思えないメロトロンの音色が堂々と鳴り響き、それだけで耽美的な雰囲気を出しているが、そんな期待を裏切るかのようにコミカルなピーガブの歌が流れてくるアンバランス感がセンス。アルバムの最後を飾るに相応しいモノ悲しさと終わり感が漂う曲で、こういうメロトロンの使い方はここでしか聴かれないような珍しいパターン。さすがロック黎明期のアルバム。
意外な事にリマスター盤は早くからリリースされていたが、逆にボーナストラックバージョンやデラックス・エディションでの拡張盤はリリースされておらず、作品としてはオリジナルアルバムそのままが一番と今でもそれを守られた状況で現在に至るのはある種凄い。当時のライブバージョンでも別ディスクでセットしても良さそうなものだが、その意味ではクリムゾンとは真逆の商売っ気がない面だろうか。リスナー的にはどちらが良いか分からないが、その分40分に満たないこのアルバムをじっくりと何度でも味わうのも素直な聴き方。久々に数回聴き漁って、ピーガブの声にも慣れた所でようやくジェネシスのバンドの音、曲に耳が向くようになって分かってきたその面白味。
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