Geordie - The Single Collection
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Geordie - The Single Collection

1970年前半はロックを探求する王道バンドやプログレッシブに展開する知的なバンドが出て来る一方で、その多様性を商業的に活かしてシーンの活性化を図るバンドも出てきた。そのひとつの極端な例がグラムロックと呼ばれるイロモノ系の手段だったが当然即座に飽きられるのは目に見えていただろう。それでもそのシーンの流れに乗ってステップアップしておきたいと売る側が考えてもおかしくないし、実際その餌食になったバンドも数多くあるだろう。日本の音楽事情でも同じだが、どういう形で出てきても結局は本人達の才能ややる気やセンスが備わっているかどうかで残れる残れない、仕事になるならないは決まってくるので、今の時代でも名前が残っているバンドはどうあれユニークな存在だったと言えるだろう。それにしてもこの頃のロックは面白い。ほんの数年の間にこれほど目まぐるしくシーンの状況が入れ替わるかと思うくらいに様々なバンドが出ては消え出ては消え、音楽的にも目の前で進化変化していく姿が聴ける面白さ、そのヘンが今でも70年代ロックが崇められる理由だろう。実際今の時代にまだ70年代ロックがそこまで崇められているかどうかは知らないが。
グラムロックのふりしてシーンに登場してきたように見せかけられているが、ケバいメイクもしていないし、どちらかと言えばムサ苦しさすら漂うオトコ臭いバンドのルックスな気がするが、面白いのはバンドが出しているサウンドがグラムロック的と祭り上げられた事だ。音楽ジャンルとは異なる角度のグラムロックにもそれらしいビートやサウンドがあって、恐らくそればスレイドやスイート、そしてT.Rexに共通するブギ感覚のR&Rスタイルの事と思われるが、そのスタイルを踏襲していたジョーディーもその名をグラムロックの端っこに刻んでいる。ご存知のようにジョーディーのボーカルは、あのブライアン・ジョンソン、即ち現AC/DCのボーカリストその人だが、ジョーディー時代も当然ながら歌い方はそのままだし、だからこそAC/DCに引き抜かれたとも言えるが、歌声的にもサウンド的にもAC/DCを期待して聴いてみても実はあまり外さない。シングル「Don't Do That / Francis Was A Rocker」のシングルで1972年にデビューして、翌年にはアルバムデビューしているが、先に書いたように時代が時代だったのでやたらシングルを要求されたからかロックバンドにしてはシングルが多く、ほとんどはアルバムにも入っていた曲だが、それでもシングルのみの曲も多く、有り難い事に2001年にそのままズバリのタイトル「The Single Collection」として1975年頃までのシングルAB面を網羅した編集盤がリリースされていた。ジョーディーのアルバムは2008年にリマスタリングされて再発されているので、この「The Single Collection」はまだリマスタリングされていないが、気になるならば2019年にもまた再発されているようなのでそのヘンを漁るとボーナストラックにこれらのシングル曲が付けられているのでリマスターサウンドが聴けるだろう。自分的には取り敢えずそこまでは良いかと折り合いを付けて、まずはシングルヒットを楽しもうと聴いていた。
とは言え、実際当時シングルでヒットを放ったのは「All Because of You」「Can You Do It」程度で、他はチャートにも登場しなかった曲も多かったので、もっと地に足着けたロックバンド的活動が中心だっただろう。後の印象でも魂を売ったバンドのようには思えず、それはブライアン・ジョンソンのルックスからしても勝手にそう思っているだけだが、それでも楽曲の方はR&R好き的には魅力的なナンバーが揃っている。シングル集だと時代の音が反映されてしまうので、曲ごとに音が変わるのも聞きにくいと感じるか、メリハリ付いて良いと思うかあるだろうが、この時代はどんどんと音が進化していく様が分かる。同時にバンドの楽曲作りもテクニカルになっていく様子も分かるのは面白い。当初の「Don't Do That / Francis Was A Rocker」は実にシンプルでパワフルなR&Rサウンドで、一番のヒット曲「All Because of You」はその流れを汲みながら更にキャッチーに勢いを増したテレビ受けライブ受けする要素満載に仕上がってて、どこかMott The HoopleのR&Rに通じるようだ。そのB面の「Ain't It Just Like a Woman」は軽快なビートで突き進むスタイルだが、ボーカルラインがかなり高音域で叫んでいるかのようなのでどこかZeppelin的なムードすら漂わせていて興味深い。「Can You Do It」もロックバンド、ギターバンドらしいイントロにそれこそパワフルなビートで垢抜けたスタイルを持ち込んだ洗練された進化系サウンド。そのB面「Red Eyed Lady」は実はジョーディーお得意の民族的アコースティック的サウンドを奏でた作風で、こういう側面をリスナーに知らせるには有効な楽曲で、Zeppelinの進化を知っているリスナーには受け入れやすかっただろう。そして個人的にはオープニングのギターのカッコ良さはなかなかじゃないか、と思わせた「Electric Lady」だが、そのままカッコ良いパワフルなロックには進まず、スレイド的なスタイルにアレンジされているのが聴いていてどんどんコケていくパターン。それでも多少は売れた曲なので英国では受け入れやすかったか。B面「Geordie Stomp」はまたしても民族的要素を取り入れたリラックスした実験作で新たに発展していく可能性を魅せている。そしていつもながらカッコ良いリフを聴かせてくれる「Black Cat Woman」も売れておかしくなかったが、さすがに競争がシビアになったか、シングルが多すぎたか、曲の出来映えはかなり良く、ノリも良い自信作だったろうが残念。ただ、曲としての完成度はかなり高いので聴く価値あり。そのB面にはアルバム「ロック魂」のラストを飾っていた民族楽曲「Geordie's Lost His Liggie」を配している。ちなみに「All Because of You」からここまでのシングル4枚がすべて1973年にリリースされていた忙しさ。アルバム収録はそのうち3曲と恐らくこれほど忙しかった事は無かった年だったろう。以降のシングルも収録されているが、そこまで派手にリリースされておらず、1974年になって「She's a Teaser / We're Alright Now」「Ride on Baby / Got to Know」の2枚にフランス盤オンリーでアニマルズのカバー「House of the Rising Sun / Goin' Down」がリリースされていたらしいが、フランスでのお披露目があったのだろうか。
1974年に入ってからのシングルは当然次のアルバム「ジョーディー2」収録曲もあるが、随分とこなれて洗練された録音や楽曲の作りになっているのでさすがにこの一年で相当に鍛えられた成果が出ているように素人でも聴いていて分かる。単なるグラムロック的サウンドからもっとR&Rを上手く使い倒して個性を出しつつ、ブライアン・ジョンソンも初期のがなり立てるだけのボーカルスタイルから節度を保った歌い方にもなっているし、明らかにテクニックが向上している。「We're Alright Now」のソフトな歌い方のイメージとご機嫌な「Ride on Baby」ではまるで印象が異なるだろう。そしてこの編集盤のありがたいところは1976年にどういう理由からかブライアン・ジョンソンがソロ名義でリリースしたシングル曲「I Can't Forget You Now / Give It Up」を収録してくれているあたりで、前者は静かめな歌もの曲で、AC/DCになろうともどこでも他に聴く事の無いようなメロウなスタイルで歌い上げており、バックには女性コーラスまでも加わっている如何にもコマーシャルな曲で驚く。後者は曲調は一転するが、これもまた他では聴けない軟弱なロックっぽいサウンドで軽快に歌っている場末のキャバレーで鳴っていそうなチープな楽曲。珍しい一面を聴けると言えばそうだが、この後AC/DCに見出されて良かったとつくづく思う。自分的には珍しくアルバム単位でなく、こういうシングル集をマジマジと聴いていたが、案外色々な発見があったので面白かった。ジョーディーだとどうしても初期のアルバムに偏ってしまっていたので、割と幅広くシーンにアピールしていた事も再認識したし、曲の面白さも単発で聴いていけばより一層味が出るのもあって楽しめた。

1970年前半はロックを探求する王道バンドやプログレッシブに展開する知的なバンドが出て来る一方で、その多様性を商業的に活かしてシーンの活性化を図るバンドも出てきた。そのひとつの極端な例がグラムロックと呼ばれるイロモノ系の手段だったが当然即座に飽きられるのは目に見えていただろう。それでもそのシーンの流れに乗ってステップアップしておきたいと売る側が考えてもおかしくないし、実際その餌食になったバンドも数多くあるだろう。日本の音楽事情でも同じだが、どういう形で出てきても結局は本人達の才能ややる気やセンスが備わっているかどうかで残れる残れない、仕事になるならないは決まってくるので、今の時代でも名前が残っているバンドはどうあれユニークな存在だったと言えるだろう。それにしてもこの頃のロックは面白い。ほんの数年の間にこれほど目まぐるしくシーンの状況が入れ替わるかと思うくらいに様々なバンドが出ては消え出ては消え、音楽的にも目の前で進化変化していく姿が聴ける面白さ、そのヘンが今でも70年代ロックが崇められる理由だろう。実際今の時代にまだ70年代ロックがそこまで崇められているかどうかは知らないが。
グラムロックのふりしてシーンに登場してきたように見せかけられているが、ケバいメイクもしていないし、どちらかと言えばムサ苦しさすら漂うオトコ臭いバンドのルックスな気がするが、面白いのはバンドが出しているサウンドがグラムロック的と祭り上げられた事だ。音楽ジャンルとは異なる角度のグラムロックにもそれらしいビートやサウンドがあって、恐らくそればスレイドやスイート、そしてT.Rexに共通するブギ感覚のR&Rスタイルの事と思われるが、そのスタイルを踏襲していたジョーディーもその名をグラムロックの端っこに刻んでいる。ご存知のようにジョーディーのボーカルは、あのブライアン・ジョンソン、即ち現AC/DCのボーカリストその人だが、ジョーディー時代も当然ながら歌い方はそのままだし、だからこそAC/DCに引き抜かれたとも言えるが、歌声的にもサウンド的にもAC/DCを期待して聴いてみても実はあまり外さない。シングル「Don't Do That / Francis Was A Rocker」のシングルで1972年にデビューして、翌年にはアルバムデビューしているが、先に書いたように時代が時代だったのでやたらシングルを要求されたからかロックバンドにしてはシングルが多く、ほとんどはアルバムにも入っていた曲だが、それでもシングルのみの曲も多く、有り難い事に2001年にそのままズバリのタイトル「The Single Collection」として1975年頃までのシングルAB面を網羅した編集盤がリリースされていた。ジョーディーのアルバムは2008年にリマスタリングされて再発されているので、この「The Single Collection」はまだリマスタリングされていないが、気になるならば2019年にもまた再発されているようなのでそのヘンを漁るとボーナストラックにこれらのシングル曲が付けられているのでリマスターサウンドが聴けるだろう。自分的には取り敢えずそこまでは良いかと折り合いを付けて、まずはシングルヒットを楽しもうと聴いていた。
とは言え、実際当時シングルでヒットを放ったのは「All Because of You」「Can You Do It」程度で、他はチャートにも登場しなかった曲も多かったので、もっと地に足着けたロックバンド的活動が中心だっただろう。後の印象でも魂を売ったバンドのようには思えず、それはブライアン・ジョンソンのルックスからしても勝手にそう思っているだけだが、それでも楽曲の方はR&R好き的には魅力的なナンバーが揃っている。シングル集だと時代の音が反映されてしまうので、曲ごとに音が変わるのも聞きにくいと感じるか、メリハリ付いて良いと思うかあるだろうが、この時代はどんどんと音が進化していく様が分かる。同時にバンドの楽曲作りもテクニカルになっていく様子も分かるのは面白い。当初の「Don't Do That / Francis Was A Rocker」は実にシンプルでパワフルなR&Rサウンドで、一番のヒット曲「All Because of You」はその流れを汲みながら更にキャッチーに勢いを増したテレビ受けライブ受けする要素満載に仕上がってて、どこかMott The HoopleのR&Rに通じるようだ。そのB面の「Ain't It Just Like a Woman」は軽快なビートで突き進むスタイルだが、ボーカルラインがかなり高音域で叫んでいるかのようなのでどこかZeppelin的なムードすら漂わせていて興味深い。「Can You Do It」もロックバンド、ギターバンドらしいイントロにそれこそパワフルなビートで垢抜けたスタイルを持ち込んだ洗練された進化系サウンド。そのB面「Red Eyed Lady」は実はジョーディーお得意の民族的アコースティック的サウンドを奏でた作風で、こういう側面をリスナーに知らせるには有効な楽曲で、Zeppelinの進化を知っているリスナーには受け入れやすかっただろう。そして個人的にはオープニングのギターのカッコ良さはなかなかじゃないか、と思わせた「Electric Lady」だが、そのままカッコ良いパワフルなロックには進まず、スレイド的なスタイルにアレンジされているのが聴いていてどんどんコケていくパターン。それでも多少は売れた曲なので英国では受け入れやすかったか。B面「Geordie Stomp」はまたしても民族的要素を取り入れたリラックスした実験作で新たに発展していく可能性を魅せている。そしていつもながらカッコ良いリフを聴かせてくれる「Black Cat Woman」も売れておかしくなかったが、さすがに競争がシビアになったか、シングルが多すぎたか、曲の出来映えはかなり良く、ノリも良い自信作だったろうが残念。ただ、曲としての完成度はかなり高いので聴く価値あり。そのB面にはアルバム「ロック魂」のラストを飾っていた民族楽曲「Geordie's Lost His Liggie」を配している。ちなみに「All Because of You」からここまでのシングル4枚がすべて1973年にリリースされていた忙しさ。アルバム収録はそのうち3曲と恐らくこれほど忙しかった事は無かった年だったろう。以降のシングルも収録されているが、そこまで派手にリリースされておらず、1974年になって「She's a Teaser / We're Alright Now」「Ride on Baby / Got to Know」の2枚にフランス盤オンリーでアニマルズのカバー「House of the Rising Sun / Goin' Down」がリリースされていたらしいが、フランスでのお披露目があったのだろうか。
1974年に入ってからのシングルは当然次のアルバム「ジョーディー2」収録曲もあるが、随分とこなれて洗練された録音や楽曲の作りになっているのでさすがにこの一年で相当に鍛えられた成果が出ているように素人でも聴いていて分かる。単なるグラムロック的サウンドからもっとR&Rを上手く使い倒して個性を出しつつ、ブライアン・ジョンソンも初期のがなり立てるだけのボーカルスタイルから節度を保った歌い方にもなっているし、明らかにテクニックが向上している。「We're Alright Now」のソフトな歌い方のイメージとご機嫌な「Ride on Baby」ではまるで印象が異なるだろう。そしてこの編集盤のありがたいところは1976年にどういう理由からかブライアン・ジョンソンがソロ名義でリリースしたシングル曲「I Can't Forget You Now / Give It Up」を収録してくれているあたりで、前者は静かめな歌もの曲で、AC/DCになろうともどこでも他に聴く事の無いようなメロウなスタイルで歌い上げており、バックには女性コーラスまでも加わっている如何にもコマーシャルな曲で驚く。後者は曲調は一転するが、これもまた他では聴けない軟弱なロックっぽいサウンドで軽快に歌っている場末のキャバレーで鳴っていそうなチープな楽曲。珍しい一面を聴けると言えばそうだが、この後AC/DCに見出されて良かったとつくづく思う。自分的には珍しくアルバム単位でなく、こういうシングル集をマジマジと聴いていたが、案外色々な発見があったので面白かった。ジョーディーだとどうしても初期のアルバムに偏ってしまっていたので、割と幅広くシーンにアピールしていた事も再認識したし、曲の面白さも単発で聴いていけばより一層味が出るのもあって楽しめた。
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