T.Rex - Great Hits
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T.Rex - Great Hits (1973)

ロックアイコンとして世間一般に知られている人はそうそう多くないが、顔は当然ながら特定の写真によるショットが有名になってTシャツや何かのデザインにまでなっている場合もままある。今回のマーク・ボランやジミヘンは当然ながらカート・コバーンあたりもそうかもしれない。ロック界でもやはり神格化されている人達だが、本業のアルバムやシングルのセールスで言えば実はそこまででもない場合もあるし、逆にグッズの売上の方が大きいのかもしれない、などと思われる場合もあり、そもそも版権がきちんとしていなかった時代だからもしかしたらアイコンだけが出回っていて大本にはカネが流れていないとも想像するがよく分からない。マーク・ボランで言えば、あのレスポールを持って正面から最高に素敵な表情を見せてくれている写真が自分的には一番それらしくて好きだが、今回その写真をジャケットにしたアルバムを、とも思ったがそれは当然ベスト盤だったのでまたいずれ、と後回しにして、どうにも悩まされる「Great Hits」なるタイトルのアルバムを再度きちんと調べて聴いていたところ。
「Great Hits」のオリジナルリリースは1973年で、当然名義はT.Rexだが、アルバムタイトルからしてややこしい。「Great Hits」と書かれるとどうしても「Greatest Hits」と混同してしまうのでベスト盤だろうと思いがちだが、このアルバムはベスト盤ではなく、当時アルバムに未収録となっていたシングル盤の楽曲を纏めてみました、という体裁なので「セレクトされたシングルAB面集」でしかない。故にベストアルバムに入るだろう代表曲が収録されておらず、どこか地味な印象すら抱くコンピレーションアルバムに仕上がっているので、そのギャップからか人気がイマイチない作品として位置付けられる。貴重度で言えば当時大ヒットを放って今の時代までカッコ良さ、T.Rexらしいブギーチューンとして知られる「20th Century Boy」が初めてシングルではなくアルバムという単位の中に収録されたのが本作で、マーク・ボラン存命時ではこのアルバム以外ではリリースされていない。もっとも他のシングル曲も同じ様相なのでオリジナルアルバムと同じレベルで重要アイテムなのだが、なぜかそういう位置付けで認識されていないアルバム。それもこれもタイトルの紛らわしさが招いた結果ではある。しかも1972年から73年までの2年間に集中しているので、逆にこの2年間でここまで多数のシングルをリリースしていたのも驚くが、当時一躍アイドル的人気を博した事から続々とシングルを放って売りまくったのだろう。それに追随して大きく見れば似たような曲調のブギサウンドを立て続けに作ってはリリースしてきたマーク・ボランの才能も凄いし、バンドの精力的な活動も見事に商業主義に則っていた。
「Telegram Sam」「Metal Guru」「The Slider」はアルバム「ザ・スライダー」にも収録されたバージョンと当然同じで、本作をノリの良い一枚に仕上げるために敢えて持ち込まれた楽曲のように見えるが、その甲斐あって要所要所のややダレがちな所でこれらのブギチューンが入ってくるのでアルバム全体を聴いていても引き締まる気がする。こうして並べてみてもT.Rexらしさが詰め込まれたさすがな楽曲群。「Jitterbug Love」は「Children Of The Revolution」のB面で割とエグいサウンドのギタープレイから始まるハードブギとも言える曲ながらサビのコーラスワークとメロディはさすがマーク・ボラン的と唸らされるキャッチーさが心地良い軽快な作品。「Lady」は「Metal Guru」のB面曲として発表されたティラノザウルス・レックス時代のムードとT.Rexのエレクトリックサウンドを重ね合わせたようなアシッド風味の残る作風でどこか実験的。コーラスの使い方が小悪魔的なマーク・ボランを代表しているようで、これもひとつのT.Rexらしいサウンドが味わえる。「Thunderwing」も「Metal Guru」のB面で、この時の「Metal Guru」のB面には2曲収められていたようで、どうにも慣れない感覚でサービスが良いと言うのかそれだけ短い曲ばかりだからそうなったのか。楽曲自体は軽快なブルース風味を感じるブギにあのコーラスワークを組み合わせているので、少々不思議感を味わえるが、どこからどう斬っても確かにT.Rex風ブギそのままなのは見事。ブギの王様とは良く言ったものだと深く頷くほどにどれもこれもブギ風味がまぶされた独特のサウンドを完成させているのがこの時代のマーク・ボランの凄いところ。続いての「Sunken Rags」も「Children Of The Revolution」のB面で「Jitterbug Love」と共に収録されていたサービスぶり。楽曲はこれもテンポの良いビートに乗せた軽快なブギとコーラスまでもが賑やかに歌われるライブ映えする楽曲、と言うよりもテレビショウで映える楽曲に近いあまり知られていない名曲。T.Rexの曲はどれもこれもギターソロがないので短く感じるが、それもまた斬新なスタイルでだからこそポップでキャッチー、そこにグラマラスなイメージと、売るための仕掛けが色々と見えてくる。そしてご機嫌なブギそのままの「Solid Gold Easy Action」は知られた代表曲で、アルバムに収録する必要が無かった程の個性的でカッコ良い独特のシングル。
B面は多分T.Rex史上最高作と謳われる「20th Century Boy」からスタートするが、簡単にブギサウンドの代表とも言っているが、実はこのギターの音色はレスポールに歪んだサウンドで鳴らしているのか、実にヘヴィで太く重々しい音なので、割と見過ごされがちだが、独特のギターサウンド。それを覆い隠すかのように軽く聴かせるようにホーン・セクションやコーラスセクションを派手に入れてキャッチーに仕上げてメロディの良さを引き立たせている仕掛け。それらの装飾を引っ剥がすとヘヴィブギそのままが剥き出しになるだろうと思う。何にせよ弾けぶりからリフのカッコ良さ、シンプルさも含めてカッコ良い一曲。「Midnight」は「The Groover」のB面で、こちらもかなりヘヴィなサウンドに綺羅びやかなギターソロが全編にまぶされたT.Rexでは珍しいギター比重を高く聴かせる音に仕上がっており、ワウペダルの強烈なサウンドとマーク・ボランの繰り返しのリフレインがしつこいくらいに鳴り響くトリップサウンド。楽曲自体は特に凝っていないので、時間の無い中、ノリ一発でドラッグキメて作って演奏したようなジミヘン風も手伝うサイケデリックで攻撃的なエグい曲。全くシングルのB面でしか発表できなかっただろうと想像されるロック的サウンド。そしてアシッド・フォーク調の「The Slider」を挟んでマーク・ボランの代名詞ともなっている「Born To Boogie」はアルバム「タンクス」に収録されているそのままで、シングルでは「Solid Gold Easy Action」のB面として発表されたチープながらも軽快なブギサウンド。続いては王道感すら感じる風格のあるどっしりとしたリズムとリフに支えられた「Children Of The Revolution」だが、これもアルバム未収録だったのか、とやや不思議に感じた一曲。リンゴ・スターとエルトン・ジョンも参加したと言われるマーク・ボラン人気最絶頂期の名曲ロック。そしてアルバム「タンクス」に収録されたシングル曲「Shock Rock」はタイトルの単語が独り歩きしているが、ややダークな様相を示した相変わらずのブギナンバーで、短いながらもこうしたダウナーな方向でもブギは出来るのだと証明したかのように珍しいパターン。最後を飾るのは「Y,M,C,A」に影響を受けたかのようなスタートでニヤリとしてしまう「The Groover」だが、この手の作風ならいくらでも作れただろうと思われるマーク・ボラン風のブギにコーラスワークを重ねて出来上がり、的な仕事にも聴こえてしまう作品だが、シングルとして聴くとこれはこれでまたキャッチーでテレビ受けしそうに聴こえるから面白い。
この2年間でこれだけの楽曲を続々と創り上げ、更にアルバムも数枚リリースしていて、映画制作にも精を出していた人気も才能も絶頂期のマーク・ボランの人生の瞬間を切り取った時期だが、全く輝きまくっている。それに加えてのあのルックスとアイコンさ加減が、グラムロックの象徴として祭り上げられ、歴史に残るロックスターとして君臨しているし、実際ライブ映像を見ててもこの時期はダントツに輝いていてカッコ良い。音楽的にはどこかブギ一辺倒で飽きが来る面もあるが、元々がアシッドフォークだからしっかりと曲が出来ている安定感はあるし、何よりも華がある。ロックにはそういう綺羅びやかさがないと面白くない。ちなみに本作収録のシングル曲集は今ではオリジナルアルバムのデラックス・エディション盤などでのボーナストラックに収録されているので、同時代の楽曲として聴けるようになっているし、それこそベスト盤やシングル集が山のようにリリースされているので、聴くこと自体はかなり容易になっており、本作の存在意義も当時ほどではなくなっているが、マーク・ボラン存命時のリリースである事に意義があろう。

ロックアイコンとして世間一般に知られている人はそうそう多くないが、顔は当然ながら特定の写真によるショットが有名になってTシャツや何かのデザインにまでなっている場合もままある。今回のマーク・ボランやジミヘンは当然ながらカート・コバーンあたりもそうかもしれない。ロック界でもやはり神格化されている人達だが、本業のアルバムやシングルのセールスで言えば実はそこまででもない場合もあるし、逆にグッズの売上の方が大きいのかもしれない、などと思われる場合もあり、そもそも版権がきちんとしていなかった時代だからもしかしたらアイコンだけが出回っていて大本にはカネが流れていないとも想像するがよく分からない。マーク・ボランで言えば、あのレスポールを持って正面から最高に素敵な表情を見せてくれている写真が自分的には一番それらしくて好きだが、今回その写真をジャケットにしたアルバムを、とも思ったがそれは当然ベスト盤だったのでまたいずれ、と後回しにして、どうにも悩まされる「Great Hits」なるタイトルのアルバムを再度きちんと調べて聴いていたところ。
「Great Hits」のオリジナルリリースは1973年で、当然名義はT.Rexだが、アルバムタイトルからしてややこしい。「Great Hits」と書かれるとどうしても「Greatest Hits」と混同してしまうのでベスト盤だろうと思いがちだが、このアルバムはベスト盤ではなく、当時アルバムに未収録となっていたシングル盤の楽曲を纏めてみました、という体裁なので「セレクトされたシングルAB面集」でしかない。故にベストアルバムに入るだろう代表曲が収録されておらず、どこか地味な印象すら抱くコンピレーションアルバムに仕上がっているので、そのギャップからか人気がイマイチない作品として位置付けられる。貴重度で言えば当時大ヒットを放って今の時代までカッコ良さ、T.Rexらしいブギーチューンとして知られる「20th Century Boy」が初めてシングルではなくアルバムという単位の中に収録されたのが本作で、マーク・ボラン存命時ではこのアルバム以外ではリリースされていない。もっとも他のシングル曲も同じ様相なのでオリジナルアルバムと同じレベルで重要アイテムなのだが、なぜかそういう位置付けで認識されていないアルバム。それもこれもタイトルの紛らわしさが招いた結果ではある。しかも1972年から73年までの2年間に集中しているので、逆にこの2年間でここまで多数のシングルをリリースしていたのも驚くが、当時一躍アイドル的人気を博した事から続々とシングルを放って売りまくったのだろう。それに追随して大きく見れば似たような曲調のブギサウンドを立て続けに作ってはリリースしてきたマーク・ボランの才能も凄いし、バンドの精力的な活動も見事に商業主義に則っていた。
「Telegram Sam」「Metal Guru」「The Slider」はアルバム「ザ・スライダー」にも収録されたバージョンと当然同じで、本作をノリの良い一枚に仕上げるために敢えて持ち込まれた楽曲のように見えるが、その甲斐あって要所要所のややダレがちな所でこれらのブギチューンが入ってくるのでアルバム全体を聴いていても引き締まる気がする。こうして並べてみてもT.Rexらしさが詰め込まれたさすがな楽曲群。「Jitterbug Love」は「Children Of The Revolution」のB面で割とエグいサウンドのギタープレイから始まるハードブギとも言える曲ながらサビのコーラスワークとメロディはさすがマーク・ボラン的と唸らされるキャッチーさが心地良い軽快な作品。「Lady」は「Metal Guru」のB面曲として発表されたティラノザウルス・レックス時代のムードとT.Rexのエレクトリックサウンドを重ね合わせたようなアシッド風味の残る作風でどこか実験的。コーラスの使い方が小悪魔的なマーク・ボランを代表しているようで、これもひとつのT.Rexらしいサウンドが味わえる。「Thunderwing」も「Metal Guru」のB面で、この時の「Metal Guru」のB面には2曲収められていたようで、どうにも慣れない感覚でサービスが良いと言うのかそれだけ短い曲ばかりだからそうなったのか。楽曲自体は軽快なブルース風味を感じるブギにあのコーラスワークを組み合わせているので、少々不思議感を味わえるが、どこからどう斬っても確かにT.Rex風ブギそのままなのは見事。ブギの王様とは良く言ったものだと深く頷くほどにどれもこれもブギ風味がまぶされた独特のサウンドを完成させているのがこの時代のマーク・ボランの凄いところ。続いての「Sunken Rags」も「Children Of The Revolution」のB面で「Jitterbug Love」と共に収録されていたサービスぶり。楽曲はこれもテンポの良いビートに乗せた軽快なブギとコーラスまでもが賑やかに歌われるライブ映えする楽曲、と言うよりもテレビショウで映える楽曲に近いあまり知られていない名曲。T.Rexの曲はどれもこれもギターソロがないので短く感じるが、それもまた斬新なスタイルでだからこそポップでキャッチー、そこにグラマラスなイメージと、売るための仕掛けが色々と見えてくる。そしてご機嫌なブギそのままの「Solid Gold Easy Action」は知られた代表曲で、アルバムに収録する必要が無かった程の個性的でカッコ良い独特のシングル。
B面は多分T.Rex史上最高作と謳われる「20th Century Boy」からスタートするが、簡単にブギサウンドの代表とも言っているが、実はこのギターの音色はレスポールに歪んだサウンドで鳴らしているのか、実にヘヴィで太く重々しい音なので、割と見過ごされがちだが、独特のギターサウンド。それを覆い隠すかのように軽く聴かせるようにホーン・セクションやコーラスセクションを派手に入れてキャッチーに仕上げてメロディの良さを引き立たせている仕掛け。それらの装飾を引っ剥がすとヘヴィブギそのままが剥き出しになるだろうと思う。何にせよ弾けぶりからリフのカッコ良さ、シンプルさも含めてカッコ良い一曲。「Midnight」は「The Groover」のB面で、こちらもかなりヘヴィなサウンドに綺羅びやかなギターソロが全編にまぶされたT.Rexでは珍しいギター比重を高く聴かせる音に仕上がっており、ワウペダルの強烈なサウンドとマーク・ボランの繰り返しのリフレインがしつこいくらいに鳴り響くトリップサウンド。楽曲自体は特に凝っていないので、時間の無い中、ノリ一発でドラッグキメて作って演奏したようなジミヘン風も手伝うサイケデリックで攻撃的なエグい曲。全くシングルのB面でしか発表できなかっただろうと想像されるロック的サウンド。そしてアシッド・フォーク調の「The Slider」を挟んでマーク・ボランの代名詞ともなっている「Born To Boogie」はアルバム「タンクス」に収録されているそのままで、シングルでは「Solid Gold Easy Action」のB面として発表されたチープながらも軽快なブギサウンド。続いては王道感すら感じる風格のあるどっしりとしたリズムとリフに支えられた「Children Of The Revolution」だが、これもアルバム未収録だったのか、とやや不思議に感じた一曲。リンゴ・スターとエルトン・ジョンも参加したと言われるマーク・ボラン人気最絶頂期の名曲ロック。そしてアルバム「タンクス」に収録されたシングル曲「Shock Rock」はタイトルの単語が独り歩きしているが、ややダークな様相を示した相変わらずのブギナンバーで、短いながらもこうしたダウナーな方向でもブギは出来るのだと証明したかのように珍しいパターン。最後を飾るのは「Y,M,C,A」に影響を受けたかのようなスタートでニヤリとしてしまう「The Groover」だが、この手の作風ならいくらでも作れただろうと思われるマーク・ボラン風のブギにコーラスワークを重ねて出来上がり、的な仕事にも聴こえてしまう作品だが、シングルとして聴くとこれはこれでまたキャッチーでテレビ受けしそうに聴こえるから面白い。
この2年間でこれだけの楽曲を続々と創り上げ、更にアルバムも数枚リリースしていて、映画制作にも精を出していた人気も才能も絶頂期のマーク・ボランの人生の瞬間を切り取った時期だが、全く輝きまくっている。それに加えてのあのルックスとアイコンさ加減が、グラムロックの象徴として祭り上げられ、歴史に残るロックスターとして君臨しているし、実際ライブ映像を見ててもこの時期はダントツに輝いていてカッコ良い。音楽的にはどこかブギ一辺倒で飽きが来る面もあるが、元々がアシッドフォークだからしっかりと曲が出来ている安定感はあるし、何よりも華がある。ロックにはそういう綺羅びやかさがないと面白くない。ちなみに本作収録のシングル曲集は今ではオリジナルアルバムのデラックス・エディション盤などでのボーナストラックに収録されているので、同時代の楽曲として聴けるようになっているし、それこそベスト盤やシングル集が山のようにリリースされているので、聴くこと自体はかなり容易になっており、本作の存在意義も当時ほどではなくなっているが、マーク・ボラン存命時のリリースである事に意義があろう。