Patti Smith - Horses: 30th Anniversary Legacy Edition
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Patti Smith - Horses: 30th Anniversary Legacy Edition (1976)

「Punk is Attitude」と掲げたのはThe Clashのジョー・ストラマーだが、それ以前から既にアチコチでその実例は挙がっていたから今更、との言い方もあるかもしれないが、実際「Punk」なる定義は割と曖昧な中で固定化されたから、一つの指標として「Punk is Attitude」は分かりやすかった。後の時代からの見方となるがロンドンパンクがパンクの発祥だとするとニューヨーク・パンクはそれ以前から存在していたし、単なるR&Rをスピーディに3コードでがなり立てる音だけでもなかったので、正しく「Punk is Attitude」がその根幹となる。ニューヨーク・パンクのアートから出てきた指向性はその通りだし、古くから自分もそうだし、あちこちの書評にしてもWebにしてもこれから聴くリスナーにしても例えばパティ・スミスがニューヨーク・パンクの最初のメジャーアーティストだと言われて聴いても果たしてピンと来るかどうか、3コードのストレートなソリッドな反骨的なR&Rは無くは無いが、それよりももっと静かな曲ばかりではないか、と思う。事実その通りだし、音楽的ジャンルのパンクから見ればパティ・スミスはその類ではない。だからパティ・スミスはパンクではないのか、となればそれは違う。明らかにニューヨーク・パンクを代表する、どころか唯一無二のニューヨーク・パンクの一つの世界を創り上げている素晴らしきアーティストだ。その偉業はボブ・ディランからしても讃えられるスタイルだし、当然ロック界からしても貴重な存在。これぞパンクス、とは言えないが、ニューヨーク・パンクを語るなら外せない存在。
Patti Smithの最初のメジャーシーンでのアルバム「Horses」は1975年にリリースされ、その中性的な佇まいが印象的なロバート・メイプルソープの写真が後の時代にまでアートとして残されている。今見ても深すぎる魂を持つ写真で惹き込まれていくし、全く芸術とはこういうセンス。70年前後のニューヨークにはこういうアートシーンが溢れていたのだから面白く、また歴史的にも芸術的にも実験的にもロック的にも面白く、それはヴェルヴェッツからも引き継がれているアングラなシーンの象徴。そこでリアルに生き抜いたパティ・スミスとその仲間たちの物語はかなり知られているので涙するが、その衝撃的なファーストアルバムを2005年になり30周年記念盤「Horses: 30th Anniversary Legacy Edition」としてリマスターして再リリース。1枚目のオリジナルアルバムの最後には1976年のThe Whoのカバーとなる「My Generation」のライブを勢い良く入れて、2枚目のディスクにはこれも斬新なパターンだったが、2005年のロンドンで行われたメルトダウンフェスティバルでこのファーストアルバム「Horses」を丸ごとライブで再現し、その模様を収録している。しかもほとんどが1975年のアルバムで演奏したメンツが再結集しての復刻ライブ、ベーシストが異なるが、それでも面白い事にレッチリのフリーがベースで参加している始末。どうやらフリーはパティ・スミスのアルバムが大好きで実現したらしいが、それでも一般的にはあのフリーとパティ・スミスの接点がどこにあるのか不思議に思ったもので、あの脳天気なフリーの音楽的人生的背景にパティ・スミスの音楽があったとはこれはまた別の意味で興味深い。
「Horses: 30th Anniversary Legacy Edition」はオリジナルアルバムは元より、やはり2005年のライブ完全再現バージョンの方が気になり、と言うよりも聴いているとオリジナルファーストアルバムよりも圧倒的に人生経験音楽経験社会的経験を深く深く生きてきた重みや凄み、ロックアーティストとしての、そして正にパンク魂そのままが鬼気迫るパフォーマンスにそのまま表れているから度肝を抜く。この頃のパティ・スミスのライブはいつもその凄さを放っていたとは思うが、こうしてファーストアルバムの再現だけでそれを聴かせられても全くぶっ飛ぶ凄さで恐らく誰も到達できないパフォーマンスでエネルギーを放っている。圧巻。しかもやってる曲が曲だからやってる本人もかなり気合入っていただろうしメンバーも然り、それがモロに出て来て収録されているから怖い。そこまでパフォーマンス出来るものなのか、これだけ激しい感情の起伏を表現出来るものか、正にアーティストでなければ表現出来ないだろう凄さを音だけ聴いていても実感できるのだから実際のライブはどれだけ凄かったのだろうか。ここでフリーのベースが全く目立たないのはベースラインが大人しいからかもしれないが、それよりもパティ・スミスのパフォーマンスに息を呑みながら鬼気迫るスタイルに付いていく事でベーシストの存在として大きく貢献したのだろう。ベースも音やラインだけで目立つだけではなく、こういうパフォーマンスを支える、その場の空気を捉えながら紡いでいく演奏もありだと思うし、それをあのフリーがやっている事でより一層そういう凄さを感じられる。ポエトリーリーディング的な曲も多いから日本人は直接的に響いてこないとも言われるが、自分的にはさほど関係なく、ロックの歌としてパフォーマンスとして思い切り突き刺さってくる鋭さ、パンクとしか言えないこのスタイル。どこがパンクじゃないなどと言えるのか、これこそパンク、そして「Punk is Attitude」だ。どの曲もどの曲も魂削って歌って演奏してくれてリスナーを完全にその世界に連れ去っていき、そしてまた圧巻のライブを見せてくれ、曲を知ってるとか知らない、歌詞が分かる分からないなどまるで気にする事なく取り組んでみれば分かる。優しさの裏にある狂気、そして怒り、叫び、幸せに楽しみ、感情を歌にするとは正にこういう事だ。そしてロックはそれがこれほどまでにストレートに表現できる音楽だ。そんなロックを好きな自分が良かった、とすら思える素晴らしきライブ・アルバム。
オリジナルアルバムのリマスターから順番に聴いてて、昔よく聴いたからこういう風だったな、と思い出しながらやはり凄いし、これこそパティ・スミスだ、とじっくりと聴き直していたし、最後の「My Generation」はシングル「Gloria」のB面に収録されていたライブバージョンで、アルバム未収録曲ながら話題豊富な一曲だったのでここでの収録も喜んで聴いていた。案外素直にカバーしているのも元祖パンクスとも言えるThe Whoへの敬愛だろうか。そんな想いを抱きながら2枚目のディスクを聴いていて、まずは「Gloria」の迫力に慄き、「Birdland」の鬼気迫るパフォーマンスに圧倒され、「Free Money」の息吐かせぬロックさ加減、その後の癒やし的サウンドに没頭し、「Land」のメドレーでまた心がワサワサし始め、「Elegie」で心慰められて、ここでもまた迫力の「My Generation」。ライブの凄み迫力に完全にKOされた。だからこそ本ライブアルバムをこのような形で収録してリリースしたのだろう。大正解としか言えないが、全く凄いライブ、「Horses: 30th Anniversary Legacy Edition」だ。

「Punk is Attitude」と掲げたのはThe Clashのジョー・ストラマーだが、それ以前から既にアチコチでその実例は挙がっていたから今更、との言い方もあるかもしれないが、実際「Punk」なる定義は割と曖昧な中で固定化されたから、一つの指標として「Punk is Attitude」は分かりやすかった。後の時代からの見方となるがロンドンパンクがパンクの発祥だとするとニューヨーク・パンクはそれ以前から存在していたし、単なるR&Rをスピーディに3コードでがなり立てる音だけでもなかったので、正しく「Punk is Attitude」がその根幹となる。ニューヨーク・パンクのアートから出てきた指向性はその通りだし、古くから自分もそうだし、あちこちの書評にしてもWebにしてもこれから聴くリスナーにしても例えばパティ・スミスがニューヨーク・パンクの最初のメジャーアーティストだと言われて聴いても果たしてピンと来るかどうか、3コードのストレートなソリッドな反骨的なR&Rは無くは無いが、それよりももっと静かな曲ばかりではないか、と思う。事実その通りだし、音楽的ジャンルのパンクから見ればパティ・スミスはその類ではない。だからパティ・スミスはパンクではないのか、となればそれは違う。明らかにニューヨーク・パンクを代表する、どころか唯一無二のニューヨーク・パンクの一つの世界を創り上げている素晴らしきアーティストだ。その偉業はボブ・ディランからしても讃えられるスタイルだし、当然ロック界からしても貴重な存在。これぞパンクス、とは言えないが、ニューヨーク・パンクを語るなら外せない存在。
Patti Smithの最初のメジャーシーンでのアルバム「Horses」は1975年にリリースされ、その中性的な佇まいが印象的なロバート・メイプルソープの写真が後の時代にまでアートとして残されている。今見ても深すぎる魂を持つ写真で惹き込まれていくし、全く芸術とはこういうセンス。70年前後のニューヨークにはこういうアートシーンが溢れていたのだから面白く、また歴史的にも芸術的にも実験的にもロック的にも面白く、それはヴェルヴェッツからも引き継がれているアングラなシーンの象徴。そこでリアルに生き抜いたパティ・スミスとその仲間たちの物語はかなり知られているので涙するが、その衝撃的なファーストアルバムを2005年になり30周年記念盤「Horses: 30th Anniversary Legacy Edition」としてリマスターして再リリース。1枚目のオリジナルアルバムの最後には1976年のThe Whoのカバーとなる「My Generation」のライブを勢い良く入れて、2枚目のディスクにはこれも斬新なパターンだったが、2005年のロンドンで行われたメルトダウンフェスティバルでこのファーストアルバム「Horses」を丸ごとライブで再現し、その模様を収録している。しかもほとんどが1975年のアルバムで演奏したメンツが再結集しての復刻ライブ、ベーシストが異なるが、それでも面白い事にレッチリのフリーがベースで参加している始末。どうやらフリーはパティ・スミスのアルバムが大好きで実現したらしいが、それでも一般的にはあのフリーとパティ・スミスの接点がどこにあるのか不思議に思ったもので、あの脳天気なフリーの音楽的人生的背景にパティ・スミスの音楽があったとはこれはまた別の意味で興味深い。
「Horses: 30th Anniversary Legacy Edition」はオリジナルアルバムは元より、やはり2005年のライブ完全再現バージョンの方が気になり、と言うよりも聴いているとオリジナルファーストアルバムよりも圧倒的に人生経験音楽経験社会的経験を深く深く生きてきた重みや凄み、ロックアーティストとしての、そして正にパンク魂そのままが鬼気迫るパフォーマンスにそのまま表れているから度肝を抜く。この頃のパティ・スミスのライブはいつもその凄さを放っていたとは思うが、こうしてファーストアルバムの再現だけでそれを聴かせられても全くぶっ飛ぶ凄さで恐らく誰も到達できないパフォーマンスでエネルギーを放っている。圧巻。しかもやってる曲が曲だからやってる本人もかなり気合入っていただろうしメンバーも然り、それがモロに出て来て収録されているから怖い。そこまでパフォーマンス出来るものなのか、これだけ激しい感情の起伏を表現出来るものか、正にアーティストでなければ表現出来ないだろう凄さを音だけ聴いていても実感できるのだから実際のライブはどれだけ凄かったのだろうか。ここでフリーのベースが全く目立たないのはベースラインが大人しいからかもしれないが、それよりもパティ・スミスのパフォーマンスに息を呑みながら鬼気迫るスタイルに付いていく事でベーシストの存在として大きく貢献したのだろう。ベースも音やラインだけで目立つだけではなく、こういうパフォーマンスを支える、その場の空気を捉えながら紡いでいく演奏もありだと思うし、それをあのフリーがやっている事でより一層そういう凄さを感じられる。ポエトリーリーディング的な曲も多いから日本人は直接的に響いてこないとも言われるが、自分的にはさほど関係なく、ロックの歌としてパフォーマンスとして思い切り突き刺さってくる鋭さ、パンクとしか言えないこのスタイル。どこがパンクじゃないなどと言えるのか、これこそパンク、そして「Punk is Attitude」だ。どの曲もどの曲も魂削って歌って演奏してくれてリスナーを完全にその世界に連れ去っていき、そしてまた圧巻のライブを見せてくれ、曲を知ってるとか知らない、歌詞が分かる分からないなどまるで気にする事なく取り組んでみれば分かる。優しさの裏にある狂気、そして怒り、叫び、幸せに楽しみ、感情を歌にするとは正にこういう事だ。そしてロックはそれがこれほどまでにストレートに表現できる音楽だ。そんなロックを好きな自分が良かった、とすら思える素晴らしきライブ・アルバム。
オリジナルアルバムのリマスターから順番に聴いてて、昔よく聴いたからこういう風だったな、と思い出しながらやはり凄いし、これこそパティ・スミスだ、とじっくりと聴き直していたし、最後の「My Generation」はシングル「Gloria」のB面に収録されていたライブバージョンで、アルバム未収録曲ながら話題豊富な一曲だったのでここでの収録も喜んで聴いていた。案外素直にカバーしているのも元祖パンクスとも言えるThe Whoへの敬愛だろうか。そんな想いを抱きながら2枚目のディスクを聴いていて、まずは「Gloria」の迫力に慄き、「Birdland」の鬼気迫るパフォーマンスに圧倒され、「Free Money」の息吐かせぬロックさ加減、その後の癒やし的サウンドに没頭し、「Land」のメドレーでまた心がワサワサし始め、「Elegie」で心慰められて、ここでもまた迫力の「My Generation」。ライブの凄み迫力に完全にKOされた。だからこそ本ライブアルバムをこのような形で収録してリリースしたのだろう。大正解としか言えないが、全く凄いライブ、「Horses: 30th Anniversary Legacy Edition」だ。
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