Ramones - Ramones (40th Deluxe Edition)

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Ramones - Ramones (40th Deluxe Edition) (1976)
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 「パンク=どうしようもないヤツ」が元々のpunkという単語の意味で、runtも似たように「クズ」的な意味合いらしい。英語のPunks=日本語だと「パンくず」なのはそのままの意味になってしまうが、今ではpunkと言えば音楽やファッションのパンクを指すし、Punksと言えばパンクロッカー達を指す意味となり、元々の「どうしようもないヤツ」の意味は薄れ、カッコ良いパンク兄ちゃん、パンクファッション野郎的な意味に進化している。そもそも「rock」という単語も同じように単語の意味が全く別の方向に進化しているので、音楽の力は偉大だ、と勘違いしておこう。そのパンクの発祥は、と語られるが、ニューヨークとロンドンでは発祥の意味が違うし、理由も異なるのでパンクの発祥として歴史を紐解くと辻褄が合わなくなるので、ニューヨークパンクは、ロンドンパンクは、と定義してからでないとダメだろうと思っている。ロンドンパンクは社会的背景が大きいがニューヨークパンクはアートから出て来て、ポップとアートの融合が先にあり、それをスピーディに出来る範囲でプレイしてみるといつしか感情を発散するR&Rの進化系としてパンクと同じスタイルが出来上がった、に近い。だから反抗的精神や反体制という主張はニューヨークパンク発祥にはそこまで強く存在していない。その直後のパンクと呼ばれるカテゴリが形成される時期になるとそれは出てくるようにもなるが、少なくとも最初期はもっとピュアなスタートだったようだ。

 意外な事にニューヨークパンクはラモーンズが最初ではない。パティ・スミスの方が先にメジャーレーベルとの契約を果たしており、手法は大きく異なるがひとつのニューヨークパンクスタイルを打ち出している。Ramonesはその後1976年になり、サイアーレーベルと契約してアルバム「Ramones」をリリースしているが、ほぼ全く売れなかったようだ。今改めてその「Ramones」を聴いてみてもどこかチープで勢いや曲のスタンスは分かるが、爆発的なエネルギーの塊がそのままぶつかってくるような印象を持つアルバムでなく、もっと旧来型のR&Rに加え、ビーチボーイズ風のメロディやキャッチーでポップな歌が入った曲ばかりに聴こえる。ただ、バックのギターやベースの音はやたらと歪んでシンプルなリフを奏でているのでその分パワフルさは当然増しているから妙と言えば妙なアルバム。おそらくこのアルバムだけでラモーンズを捉えようとすると随分無理があっただろうし、当時は恐らくポップだけど聴きにくい、というような風評にすらなった気もするが、ライブを体験した事のあるニューヨークのロックリスナーはライブのための予習盤、ライブは何だかよく分からないくらいにスピーディで騒ぎ立ててるだけなので冷静に聴けるアルバムとして聴いていられただろう。つまりまだパンクの何たるかが理解されていない頃にひとり最先端、とは言わないが誰も体験した事のないロックアルバムを作り上げてしまったが故にセールスが振るわなかったとも言える。だからロンドンパンクの連中は即座にラモーンズに飛びつき、ロンドンでのライブも大爆発だし、時代が追い付いて来た時にこのアルバムが徐々に浸透していったし、その後のアルバムも同様に世間に浸透してラモーンズのネームバリューが不動のものになっていった。今じゃラモーンズと聴けば大抵のロックファンは知っているし、誰もがあのギターリフや「Hey yo, Let's go!」も思い当たるだろう。そこまでには様々な歴史があったのは当然だが、簡単にパンクの始祖と言えるモノでもない。

 2016年になり「Ramones (40th Deluxe Edition)」として40周年記念盤がCD3枚にLP1枚でリリースされ、2001年のリマスターの増強盤にもなっているので、せっかくならばと聴いてみたが、一番驚いたのはモノラルミックスバージョンがセットされていた事で、そもそもデビュー・アルバムが1976年ならモノラル盤など存在していなかったハズなので、改めて調べてしまったが、当然今回の2016年向けに改めてモノラルミックスを作ったらしい。それもまた面白い事すると聴いているとディー・ディー・ラモーンのあの掛け声「1,2,3,4!」が幾つかの曲のアタマに付け加えられ、モノラルで爆音が始まるから、オリジナル盤での音のチープさが全て帳消しにされ、立派なパンクアルバムの迫力と音圧を持って迫ってくる。確かにこのモノラル盤のリリースは価値あるし意味あるもので、制作側も自信があったと見え、CDにも入れながらおまけのLPもモノラルバージョンそのままだ。今更ながらここまでうるさく歪んだギターにこれだけキャッチーなメロディが乗っていたのか、それでこの迫力なのかとつくづくラモーンズの独自性を実感しながらそのメロディの良さとうるささを味わっていた。ラモーンズ自身も「パンク」が定義される前に、既に「Judy is a Punk」と題された曲を収録している事から正にパンクスピリッツそのものが宿っているアルバム。このアルバムがリリースされた頃にロンドンでライブを行い、ロンドンパンクスの連中はほぼ全員そのライブに絡んでいる。ストラングラーズは共演しているし、他の連中はライブ会場で暴れ回っていたようで、その直後にはクラッシュもピストルズもダムドもデビューを果たしている。発祥の意味合いは違うが、同時代的に若者の怒りを発散するかのように3コードと8ビート、そして適度に楽器が弾ければエネルギーを噴出させる事が出来る事を証明したパンクシーンが出来上がりつつあるこの頃、随分とロンドンもニューヨークも熱くなった時代、ロック的夢が見られた時代だ。





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フレ
Posted byフレ

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あいうえお  

クレジットを見たらディー・ディーの曲が半数以上もあるんですね。物凄いセンスの持ち主だと思います。

2021/02/27 (Sat) 17:43 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>あいうえおさん

うん、そうなんですよね。そこまで以前は気にしなかったんですが。

2021/02/28 (Sun) 14:52 | EDIT | REPLY |   

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