Hanoi Rocks - Two Steps from the Move (Deluxe Edition)
2 Comments
Hanoi Rocks - Two Steps from the Move (Deluxe Edition) (1984)

1980年代にはまだアメリカ、英国以外の国のバンドや曲がガキの頃の自分の耳に入る事も多くなく、古いものを漁れば多少あったかもしれないが、精々アバやショッキング・ブルー、ネーナがドイツ語でなんてのは相当に新鮮だったし、オリビア・ニュートンジョンのオーストラリアもそこまで多くなかった。今紐解いていけばもっと多数あったのは分かるが、昔はそんなモンでしかなかった。そこに来て自分の中でロックの波が到来し、一気に情報が溢れてきた中でハノイ・ロックスのド派手な奇抜さは当時のシーンでも目立ったし、カッコ良かったし、8ビートギャグのおかげで身近感もあったしと何かと話題に取り上げられていたからか斬新に映った。その時にハノイ・ロックスはフィンランドのバンドで、と聞いてはいたがフィンランドってどこかもきちんと分からなかったし、妙な所からこんな格好のロックバンドが出てくるのか、それも日本に知られるまでのバンドだからよほど凄いんだろう、きっとフィンランドではスーパースターだろう、などと思ってた。実際そうかもしれないが、夢があった。それとフィンランドと言う国をきちんと意識して知った時だ。
1984年にHanoi Rocksはフィンランドから英国、そしてアメリカを制覇するためにエピックからメジャー配給で「Two Steps from the Move」をリリースし、世界を制する勢いで飛び込んできた。プロデューサーにはボブ・エズリンを迎え、オープニングにはわざわざアメリカ市場を睨んでのCCRの「Up Around The Bend」のカッコ良いロックバージョンを入れて、進出準備万端だった。そのままアメリカツアーを開始してモトリー・クルーの連中と仲良くなってのバカ騒ぎと、すっかりとフィンランドの若いやんちゃ坊主たちはアメリカに呑まれてR&Rライフに浸っていたが、そこで起きた悲劇がバンドを終焉に向かわせて終了。その歴史を意識しないで、このアルバムをリリースした時点まで遡れば苦労は多々あれども素晴らしいアルバムを作り上げ、これから意気揚々とアメリカ制覇しようとしたバンドの野望が詰め込まれている、
冒頭の「Up Around The Bend」はご機嫌のノレる誰でも知っているカバー曲で今では彼らの代表曲にすらなっているし、続く「High School」は衝撃的にカッコ良いギターリフで始まるスピードチューンで、勘違いしてはいけないのはそれでもR&Rのスピードチューンで、メタル要素は皆無なところ。ハノイ・ロックスはそもそもメタルの要素はルックス以外はまるで無いが、売る側はそこを一緒くたにして出してきたので多数誤解されたままのバンドにすらなっている。もっともそう思われる程の破天荒さは持っていたが、音楽はアンディ・マッコイの類まれなる才能のおかげで無茶苦茶良質でしかもフィンランド節入っているからひと味もふた味も個性的。その「Hight School」は元々「Quit School」としてライブで演奏されていた曲で、それに比べれば落ち着いた演奏にはなっているが、更に円熟さを増している演奏とも言え、絶頂期にこういった録音が残せて大正解な曲。アンディ・マッコイのギターがとにかくカッコ良いし、掛け声にしてもそんなのアリか、と思うようなシンプルさも見事。「I Can't Get It」はシンプルながらも静と動がはっきりした深みのあるR&Rサウンドで、ギターの音色が多彩で美しく、やはりメロディラインの綺麗さも光っている。マイケル・モンローの男臭さや太さが感じられる曲になっているのも素晴らしく、案外ハノイ・ロックスの良さが詰め込まれている名曲。すかさず展開される「Underwater World」は歪んだアルペジオから始まるミドルテンポでノレるロックサウンドで、ここでもナスティとアンディのギターの心地良い音色が絡み合って深みを味わえる作りだ。まったくこの頃のハノイ・ロックスはどれだけゆとりを持ってこれほどの楽曲をプレイしていたのだろうか。美しいメロディもさすがの一言、歌詞中の「Welcome to the jungle」はどこかのバンドに大いなる影響を与えたようだ。そしてハノイ・ロックス流バラードの代表曲「Don't Ever Leave Me」も元々は「Don't Never Leave Me」だったがアメリカでまともな英語に変えるとこちらの方になったらしい。中間部のセリフはまだ酔いどれでもないだろう頃のアンディ・マッコイだが、既にシャガレ声で渋い味を出しているので、その後に入るマイケル・モンローの歌声が妙に可愛らしく聴こえてくる。
B面に入ると、これ何の音だろうか、オルゴールのような音色で可愛らしく始まりつつナスティとアンディ・マッコイの美しくメロウなギターソロプレイが奏でられ、そのまま超哀愁バラードのように楽曲が展開され、その美しさに惚れ惚れしながら聴き入っていると、マイケル・モンローのサックスソロまでもが鳴り響く素晴らしさ。全く充実したアルバムだ。更に転調して、リズムチェンジまで施されてからの展開がこれまたカッコ良くて痺れる。このギターソロのカッコ良い事この上なく、最後のサビに繋がっていく様は全くロックの王道パターンと言えども素晴らしい一曲。その余韻を切り離しながらこれも見事なアルペジオ的ギターから始まる「Boulevard Of Broken Dreams」とミドルテンポなハノイ・ロックス流R&Rでコーラス含めた畳み掛けもサマになったカッコ良い作品。「Boiler (Me Boiler 'N' Me)」はどこかAC/DC的な始まりとスタンスのような曲で、あまりハノイ・ロックス流作品とも言えないが、こういう曲も面白そうだ、と言わんばかりに作り上げている。打って変わってのハードチューン「Futurama」は冒頭からこれでもかと言わんばかりのリフと歌で始まり意表を突かれる。ライブでヤラれたら客席大爆発なウネリのあるドライブしたR&R。オリジナルアルバムリリース時は最後の曲となった「Cutting Corners」は少々可愛いハッピーな感じすらする軽快な曲でナイスな最後を迎える。こういう大合唱が出来て終えるなら最高だろうよ。とここまでがオリジナルアルバム収録時の楽曲。
2015年に本作のデラックス・エディション「Two Steps from the Move (Deluxe Edition)」がリリースされており、ディスク1には上記オリジナルナンバーに加えて最後に1984年の秋頃にシングルでリリースする予定だったアルバムタイトル曲「Two Steps From The Move」が収録されている。これほどご機嫌でキャッチーでR&Rで派手で騒げそうなナンバーが当時未発表のままに終わってしまったのは残念だったが、ここで本編最後に収録された。ちなみにラズル亡き後の無理やりハノイ・ロックスは傷心にも元クラッシュのテリー・チャイムズを入れてアメリカツアーを行っていたが、その時のオープニングナンバーがこの曲で、それはそれで随分と盛り上がったように思える。自分的にも大好きな曲で、もっともっとこういう曲をハノイ・ロックスで聴きたいと思っていたものだ。21世紀になっての再結成劇でそれらもかなり夢が叶ったので文句は言えまい。そしてボーナスディスクともなった2枚目では12インチバージョンの「Don't Ever Leave Me」で、各楽器の定位場所が異なるのと、真ん中のアンディの呟きがスペイン語になって「ミ・アモーレ」がやたらと出てくる、演奏は同じながらも細部が異なる別バージョン。「Back To Mystery City」「Until I Get You」「Mental Beat」はマーキーのライブを収録した「All Those Wasted Years」からの抜粋バージョンで、そもそも「Up Around The Bend」の12インチシングルや日本だと「Underwater World」の12インチシングルバージョンにカップリングで入っていた事からここで再収録されているようだ。「Oil & Gasoline」と「Magic Carpet Ride」、「Shakes」もその頃の「Don't Ever Leave Me」や「Underwater World」の7インチシングルB面曲として収められていたアルバム未収録曲なのでありがたい収録。もっともこれまでにリリースされた数多くのハノイ・ロックスの編集盤ベスト盤関係には何かしら収録されているので貴重度はない。案外嬉しかったのはこの頃の7月BBCセッションに出演した時の「 I Can't Get It」「Underwater World」「Don't You Ever Leave Me」「Boulevard Of Broken Dreams」だ。1990年頃にリリースされた編集盤「Tracks From A Broken Dream」でお目見えしたのが最初の記憶があるが、何故にこれほどまでに地味な曲ばかりをBBCセッションでライブ収録したのか、もっと派手なハノイ・ロックスらしい曲も演奏されていたのか、調べ切れていないが演奏も堅実でスタジオバージョンに忠実なので随分としっかりとしている。
オリジナルアルバムはハノイ・ロックス史上最も高評価で、オーバープロデュースとの意見もあるが、これまでのハノイ・ロックスの楽器演奏レベルで録音されたアルバムとは一線を画した売るための作品は間違いなく代表作だし、名盤に相応しいアルバムに仕上がっている。メンバーはこの細かな作り込みは嫌ったようだが、制作を任されたボブ・エズリンはやはりアメリカで売れるバンドを多数輩出しただけあって大正解のプロデュースと思う。これだけの作品が作り上げられて、見た目もカッコ良くグラマラスでド派手でライブパフォーマンスも素晴らしいバンドがここで断ち切られてしまったのは歴史とは言え実に残念だったが、伝説はまた語り継がれて再生誕されていくのだった。

1980年代にはまだアメリカ、英国以外の国のバンドや曲がガキの頃の自分の耳に入る事も多くなく、古いものを漁れば多少あったかもしれないが、精々アバやショッキング・ブルー、ネーナがドイツ語でなんてのは相当に新鮮だったし、オリビア・ニュートンジョンのオーストラリアもそこまで多くなかった。今紐解いていけばもっと多数あったのは分かるが、昔はそんなモンでしかなかった。そこに来て自分の中でロックの波が到来し、一気に情報が溢れてきた中でハノイ・ロックスのド派手な奇抜さは当時のシーンでも目立ったし、カッコ良かったし、8ビートギャグのおかげで身近感もあったしと何かと話題に取り上げられていたからか斬新に映った。その時にハノイ・ロックスはフィンランドのバンドで、と聞いてはいたがフィンランドってどこかもきちんと分からなかったし、妙な所からこんな格好のロックバンドが出てくるのか、それも日本に知られるまでのバンドだからよほど凄いんだろう、きっとフィンランドではスーパースターだろう、などと思ってた。実際そうかもしれないが、夢があった。それとフィンランドと言う国をきちんと意識して知った時だ。
1984年にHanoi Rocksはフィンランドから英国、そしてアメリカを制覇するためにエピックからメジャー配給で「Two Steps from the Move」をリリースし、世界を制する勢いで飛び込んできた。プロデューサーにはボブ・エズリンを迎え、オープニングにはわざわざアメリカ市場を睨んでのCCRの「Up Around The Bend」のカッコ良いロックバージョンを入れて、進出準備万端だった。そのままアメリカツアーを開始してモトリー・クルーの連中と仲良くなってのバカ騒ぎと、すっかりとフィンランドの若いやんちゃ坊主たちはアメリカに呑まれてR&Rライフに浸っていたが、そこで起きた悲劇がバンドを終焉に向かわせて終了。その歴史を意識しないで、このアルバムをリリースした時点まで遡れば苦労は多々あれども素晴らしいアルバムを作り上げ、これから意気揚々とアメリカ制覇しようとしたバンドの野望が詰め込まれている、
冒頭の「Up Around The Bend」はご機嫌のノレる誰でも知っているカバー曲で今では彼らの代表曲にすらなっているし、続く「High School」は衝撃的にカッコ良いギターリフで始まるスピードチューンで、勘違いしてはいけないのはそれでもR&Rのスピードチューンで、メタル要素は皆無なところ。ハノイ・ロックスはそもそもメタルの要素はルックス以外はまるで無いが、売る側はそこを一緒くたにして出してきたので多数誤解されたままのバンドにすらなっている。もっともそう思われる程の破天荒さは持っていたが、音楽はアンディ・マッコイの類まれなる才能のおかげで無茶苦茶良質でしかもフィンランド節入っているからひと味もふた味も個性的。その「Hight School」は元々「Quit School」としてライブで演奏されていた曲で、それに比べれば落ち着いた演奏にはなっているが、更に円熟さを増している演奏とも言え、絶頂期にこういった録音が残せて大正解な曲。アンディ・マッコイのギターがとにかくカッコ良いし、掛け声にしてもそんなのアリか、と思うようなシンプルさも見事。「I Can't Get It」はシンプルながらも静と動がはっきりした深みのあるR&Rサウンドで、ギターの音色が多彩で美しく、やはりメロディラインの綺麗さも光っている。マイケル・モンローの男臭さや太さが感じられる曲になっているのも素晴らしく、案外ハノイ・ロックスの良さが詰め込まれている名曲。すかさず展開される「Underwater World」は歪んだアルペジオから始まるミドルテンポでノレるロックサウンドで、ここでもナスティとアンディのギターの心地良い音色が絡み合って深みを味わえる作りだ。まったくこの頃のハノイ・ロックスはどれだけゆとりを持ってこれほどの楽曲をプレイしていたのだろうか。美しいメロディもさすがの一言、歌詞中の「Welcome to the jungle」はどこかのバンドに大いなる影響を与えたようだ。そしてハノイ・ロックス流バラードの代表曲「Don't Ever Leave Me」も元々は「Don't Never Leave Me」だったがアメリカでまともな英語に変えるとこちらの方になったらしい。中間部のセリフはまだ酔いどれでもないだろう頃のアンディ・マッコイだが、既にシャガレ声で渋い味を出しているので、その後に入るマイケル・モンローの歌声が妙に可愛らしく聴こえてくる。
B面に入ると、これ何の音だろうか、オルゴールのような音色で可愛らしく始まりつつナスティとアンディ・マッコイの美しくメロウなギターソロプレイが奏でられ、そのまま超哀愁バラードのように楽曲が展開され、その美しさに惚れ惚れしながら聴き入っていると、マイケル・モンローのサックスソロまでもが鳴り響く素晴らしさ。全く充実したアルバムだ。更に転調して、リズムチェンジまで施されてからの展開がこれまたカッコ良くて痺れる。このギターソロのカッコ良い事この上なく、最後のサビに繋がっていく様は全くロックの王道パターンと言えども素晴らしい一曲。その余韻を切り離しながらこれも見事なアルペジオ的ギターから始まる「Boulevard Of Broken Dreams」とミドルテンポなハノイ・ロックス流R&Rでコーラス含めた畳み掛けもサマになったカッコ良い作品。「Boiler (Me Boiler 'N' Me)」はどこかAC/DC的な始まりとスタンスのような曲で、あまりハノイ・ロックス流作品とも言えないが、こういう曲も面白そうだ、と言わんばかりに作り上げている。打って変わってのハードチューン「Futurama」は冒頭からこれでもかと言わんばかりのリフと歌で始まり意表を突かれる。ライブでヤラれたら客席大爆発なウネリのあるドライブしたR&R。オリジナルアルバムリリース時は最後の曲となった「Cutting Corners」は少々可愛いハッピーな感じすらする軽快な曲でナイスな最後を迎える。こういう大合唱が出来て終えるなら最高だろうよ。とここまでがオリジナルアルバム収録時の楽曲。
2015年に本作のデラックス・エディション「Two Steps from the Move (Deluxe Edition)」がリリースされており、ディスク1には上記オリジナルナンバーに加えて最後に1984年の秋頃にシングルでリリースする予定だったアルバムタイトル曲「Two Steps From The Move」が収録されている。これほどご機嫌でキャッチーでR&Rで派手で騒げそうなナンバーが当時未発表のままに終わってしまったのは残念だったが、ここで本編最後に収録された。ちなみにラズル亡き後の無理やりハノイ・ロックスは傷心にも元クラッシュのテリー・チャイムズを入れてアメリカツアーを行っていたが、その時のオープニングナンバーがこの曲で、それはそれで随分と盛り上がったように思える。自分的にも大好きな曲で、もっともっとこういう曲をハノイ・ロックスで聴きたいと思っていたものだ。21世紀になっての再結成劇でそれらもかなり夢が叶ったので文句は言えまい。そしてボーナスディスクともなった2枚目では12インチバージョンの「Don't Ever Leave Me」で、各楽器の定位場所が異なるのと、真ん中のアンディの呟きがスペイン語になって「ミ・アモーレ」がやたらと出てくる、演奏は同じながらも細部が異なる別バージョン。「Back To Mystery City」「Until I Get You」「Mental Beat」はマーキーのライブを収録した「All Those Wasted Years」からの抜粋バージョンで、そもそも「Up Around The Bend」の12インチシングルや日本だと「Underwater World」の12インチシングルバージョンにカップリングで入っていた事からここで再収録されているようだ。「Oil & Gasoline」と「Magic Carpet Ride」、「Shakes」もその頃の「Don't Ever Leave Me」や「Underwater World」の7インチシングルB面曲として収められていたアルバム未収録曲なのでありがたい収録。もっともこれまでにリリースされた数多くのハノイ・ロックスの編集盤ベスト盤関係には何かしら収録されているので貴重度はない。案外嬉しかったのはこの頃の7月BBCセッションに出演した時の「 I Can't Get It」「Underwater World」「Don't You Ever Leave Me」「Boulevard Of Broken Dreams」だ。1990年頃にリリースされた編集盤「Tracks From A Broken Dream」でお目見えしたのが最初の記憶があるが、何故にこれほどまでに地味な曲ばかりをBBCセッションでライブ収録したのか、もっと派手なハノイ・ロックスらしい曲も演奏されていたのか、調べ切れていないが演奏も堅実でスタジオバージョンに忠実なので随分としっかりとしている。
オリジナルアルバムはハノイ・ロックス史上最も高評価で、オーバープロデュースとの意見もあるが、これまでのハノイ・ロックスの楽器演奏レベルで録音されたアルバムとは一線を画した売るための作品は間違いなく代表作だし、名盤に相応しいアルバムに仕上がっている。メンバーはこの細かな作り込みは嫌ったようだが、制作を任されたボブ・エズリンはやはりアメリカで売れるバンドを多数輩出しただけあって大正解のプロデュースと思う。これだけの作品が作り上げられて、見た目もカッコ良くグラマラスでド派手でライブパフォーマンスも素晴らしいバンドがここで断ち切られてしまったのは歴史とは言え実に残念だったが、伝説はまた語り継がれて再生誕されていくのだった。
- 関連記事
-
- Andy McCoy - Building On Tradition (1995):
- Hanoi Rocks - Two Steps from the Move (Deluxe Edition)
- Andy McCoy - 21st Century Rocks