Iggy Pop & The Stooges - Raw Power (Iggy Pop Mix)
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Iggy Pop & The Stooges - Raw Power (Iggy Pop Mix) (1973)

Iggy Pop & The Stoogesの1973年発表「Raw Power」は凄まじい程のエネルギーをアルバムに記録した一枚で、背景を紐解いてみればStoogesとイギー・ポップの力量の差が歴然としてきて、この作品からは明らかにイギー・ポップ主体の、と言うかほぼソロ活動的な作品になっており、バンドメンバーも変わっているし、Stoogesの冠はほぼ不要な気もするが今となっては既に同義に扱われている。世の中にパンクの概念が出回る前からデトロイトではこれほどに若者のエネルギーを発散するパワーを持ったロックが展開されていて、それはニューヨーク・ドールズの火付け役感もあるだろうし、その前のガレージサウンドからのヘヴィロックの流れもあるだろうが、いずれにしてもそのロック概念に独特の破壊的エネルギーを加えて熱気を常に観客に撒き散らしてカリスマにのし上がっていった姿は全く時代の寵児にも映った事だろう。その強烈なエネルギーの塊にはあのデヴィッド・ボウイも早いウチから刺激されており、この頃既にデヴィッド・ボウイはジギー時代真っ只中、人気絶頂期でもあったが既に心の中には次なる方向性の模索もあった事だろう。自分自身がこのエネルギーの塊を演じる事は無かっただろうが、とてつもなく魅力的なロックアイコンに映ったのは間違いなく、この時点からサポートに精を出している。
そのひとつにアルバムのミックスをボウイが手掛けるという前代未聞のボウイミックスクレジットが記録された数少ない、と言うか他には無いだろうと思うが、貴重なミックスが本作のオリジナルバージョンだ。1973年にリリースされた際にはそのあまりにもギターがデカく、イギー・ポップの歌声も目立ち、一方では他のバックの音は引っ込み気味でミックスされていたから、悪評高くもある。ただ、その偏ったボウイミックスバージョンはとてつもなく生々しいバンドの、そしてイギー・ポップのこの時代の野望感、吐き捨て感、やけくそ感がそのまま出ているかのようなガレージサウンドに近く、音が良いの悪いのと論じるモノでもなかろうと感じている。後に歴史的に残された今の時代頃になると当然聴きやすい方が良い、オリジナルの価値は貴重だとの意見もあったりするが、当時はこのラフラフミックスでチープにやたらとエネルギーだけが飛び出してくるミックスが最高だったはず。昔からよくライブは凄いがスタジオ盤はイマイチなどとの評判のあるバンドもあるが、こういう偏ったミックスによってライブで聴こえてくる音のバランスの悪さを出し切る事で表現したとも言える。
そして1997年になり、予てから本作の音の偏り具合には物申したがっていたイギー・ポップ自らがリマスタリング企画の際か、そもそもリミックスしたいとの事になり本人自らがミックスし直したバージョンがリリースされた。こちらは冒頭から当たり前の各楽器のバランスがそれなりによく取れた、いわゆるスタジオ・アルバムの様相を示しており、案の定スタジオ盤の落ち着いた感が出ており、ライブ感が削ぎ落とされているようにも聴こえるので、そこはやはりボウイのセンスが時代を斬っていたのだろう。このミックスで当時リリースされていたらライブに参加していたリスナーからは割と悪評だったろうし、このアルバムのパワーをいくら訴えたとしてもなかなか認められにくかったのじゃないだろうか。そんな邪推すらしてしまうが、今聴くなら断然こちらのイギー・ポップミックスバージョンです。何せ聴きやすい。そもそもオリジナルの迫力やライブ感は既に知られているし、イギー・ポップのパワーやエネルギーも知られているからその概念があって聴けるので、アルバムそのものからその鬼気迫り感を聴かなくても大丈夫というフィルターがある前提だ。それならばきちんと聴ける作品の方が良いが、それにしても聴いていて実にツライバンドのアンサンブルの無さ、ギターの唐突感と刺さってくる音色、決して上手くはないボーカルの入れ方、それでもこのアルバムはロックが詰め込まれているから名盤だ。その意味でパンク以前のパンクそのままだ。ニューヨーク・ドールズはアルバムの演奏はしっかりしていたし、ライブは無茶苦茶だがここまでではないし、ラモーンズは割とまとまっているし、アメリカでここまでの音でメジャーで伝説的になった人達は珍しい存在だろう。それだけバンドの存在、イギー・ポップの存在とカリスマ性、時代をぶった切るエネルギーを持っていた証明で、しかもボウイの後押しありだから納得させるしかない。
1973年にオリジナルミックスリリース、1997年イギー・ポップミックス登場、2010年にレガシーエディションとしてイギー・ポップミックスと1975年のジョージアピーチズでのライブをボーナスディスクとして付けた2CD盤がリリース。しばらくの間はデヴィッド・ボウイミックスのオリジナルバージョンが手に入りにくかったようだが、2016年になり、両ミックスがセットされた2CDがリリースされたので両ミックスを比べながら聴けるようになった。それにしてもボウイのミックスが気に入らないとも言えないし、だからと言ってこうしてやり直しましたと言うのもボウイに知られる話だろうし、なかなか気を使う仕事でもあったろうと思うが、多分ボウイには先に話して快諾を得ていただろう。そしてアルバムの中味については、一曲づつどうのと書ける代物でもなくそこまで聴けていないのもあるが、ただただこの無茶苦茶さ、壊れぶりに唖然とするしかない。どう反応して良いか分からないのが正直な所で、おそらく当時のリスナーも怖いもの見たさ的にそう感じたと思う。それだけの魅力を存分に放っている奇盤。

Iggy Pop & The Stoogesの1973年発表「Raw Power」は凄まじい程のエネルギーをアルバムに記録した一枚で、背景を紐解いてみればStoogesとイギー・ポップの力量の差が歴然としてきて、この作品からは明らかにイギー・ポップ主体の、と言うかほぼソロ活動的な作品になっており、バンドメンバーも変わっているし、Stoogesの冠はほぼ不要な気もするが今となっては既に同義に扱われている。世の中にパンクの概念が出回る前からデトロイトではこれほどに若者のエネルギーを発散するパワーを持ったロックが展開されていて、それはニューヨーク・ドールズの火付け役感もあるだろうし、その前のガレージサウンドからのヘヴィロックの流れもあるだろうが、いずれにしてもそのロック概念に独特の破壊的エネルギーを加えて熱気を常に観客に撒き散らしてカリスマにのし上がっていった姿は全く時代の寵児にも映った事だろう。その強烈なエネルギーの塊にはあのデヴィッド・ボウイも早いウチから刺激されており、この頃既にデヴィッド・ボウイはジギー時代真っ只中、人気絶頂期でもあったが既に心の中には次なる方向性の模索もあった事だろう。自分自身がこのエネルギーの塊を演じる事は無かっただろうが、とてつもなく魅力的なロックアイコンに映ったのは間違いなく、この時点からサポートに精を出している。
そのひとつにアルバムのミックスをボウイが手掛けるという前代未聞のボウイミックスクレジットが記録された数少ない、と言うか他には無いだろうと思うが、貴重なミックスが本作のオリジナルバージョンだ。1973年にリリースされた際にはそのあまりにもギターがデカく、イギー・ポップの歌声も目立ち、一方では他のバックの音は引っ込み気味でミックスされていたから、悪評高くもある。ただ、その偏ったボウイミックスバージョンはとてつもなく生々しいバンドの、そしてイギー・ポップのこの時代の野望感、吐き捨て感、やけくそ感がそのまま出ているかのようなガレージサウンドに近く、音が良いの悪いのと論じるモノでもなかろうと感じている。後に歴史的に残された今の時代頃になると当然聴きやすい方が良い、オリジナルの価値は貴重だとの意見もあったりするが、当時はこのラフラフミックスでチープにやたらとエネルギーだけが飛び出してくるミックスが最高だったはず。昔からよくライブは凄いがスタジオ盤はイマイチなどとの評判のあるバンドもあるが、こういう偏ったミックスによってライブで聴こえてくる音のバランスの悪さを出し切る事で表現したとも言える。
そして1997年になり、予てから本作の音の偏り具合には物申したがっていたイギー・ポップ自らがリマスタリング企画の際か、そもそもリミックスしたいとの事になり本人自らがミックスし直したバージョンがリリースされた。こちらは冒頭から当たり前の各楽器のバランスがそれなりによく取れた、いわゆるスタジオ・アルバムの様相を示しており、案の定スタジオ盤の落ち着いた感が出ており、ライブ感が削ぎ落とされているようにも聴こえるので、そこはやはりボウイのセンスが時代を斬っていたのだろう。このミックスで当時リリースされていたらライブに参加していたリスナーからは割と悪評だったろうし、このアルバムのパワーをいくら訴えたとしてもなかなか認められにくかったのじゃないだろうか。そんな邪推すらしてしまうが、今聴くなら断然こちらのイギー・ポップミックスバージョンです。何せ聴きやすい。そもそもオリジナルの迫力やライブ感は既に知られているし、イギー・ポップのパワーやエネルギーも知られているからその概念があって聴けるので、アルバムそのものからその鬼気迫り感を聴かなくても大丈夫というフィルターがある前提だ。それならばきちんと聴ける作品の方が良いが、それにしても聴いていて実にツライバンドのアンサンブルの無さ、ギターの唐突感と刺さってくる音色、決して上手くはないボーカルの入れ方、それでもこのアルバムはロックが詰め込まれているから名盤だ。その意味でパンク以前のパンクそのままだ。ニューヨーク・ドールズはアルバムの演奏はしっかりしていたし、ライブは無茶苦茶だがここまでではないし、ラモーンズは割とまとまっているし、アメリカでここまでの音でメジャーで伝説的になった人達は珍しい存在だろう。それだけバンドの存在、イギー・ポップの存在とカリスマ性、時代をぶった切るエネルギーを持っていた証明で、しかもボウイの後押しありだから納得させるしかない。
1973年にオリジナルミックスリリース、1997年イギー・ポップミックス登場、2010年にレガシーエディションとしてイギー・ポップミックスと1975年のジョージアピーチズでのライブをボーナスディスクとして付けた2CD盤がリリース。しばらくの間はデヴィッド・ボウイミックスのオリジナルバージョンが手に入りにくかったようだが、2016年になり、両ミックスがセットされた2CDがリリースされたので両ミックスを比べながら聴けるようになった。それにしてもボウイのミックスが気に入らないとも言えないし、だからと言ってこうしてやり直しましたと言うのもボウイに知られる話だろうし、なかなか気を使う仕事でもあったろうと思うが、多分ボウイには先に話して快諾を得ていただろう。そしてアルバムの中味については、一曲づつどうのと書ける代物でもなくそこまで聴けていないのもあるが、ただただこの無茶苦茶さ、壊れぶりに唖然とするしかない。どう反応して良いか分からないのが正直な所で、おそらく当時のリスナーも怖いもの見たさ的にそう感じたと思う。それだけの魅力を存分に放っている奇盤。
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