



構想からリリースまで15年という月日が要された
ロジャー・ウォーターズ
の意外な代物「Ca Ira」がようやくにして市場に流通する段階となったので早速聴いてみた。
SACD盤
盤と
通常盤
がリリースされているがもうじき
日本盤
も発売するようだ。前評判通り、全編クラシックとオペラと云う作品でそこにはいわゆるロックというものは存在していないけど、メロディーラインが流れるとやはりロジャーだな、と云う旋律が場面場面で聴けるのでついついにやりとしてしまうシーンはいくつかある。
ピンク・フロイド
時代から培ってきた効果音の使い方も恐らくクラシック音楽からは出てこない発想で使われているので、その筋の人が聴いたとしても結構新鮮。ロック系列の音楽で育ってきた人にはあまりオペラを堪能するという高尚な趣味を持つ人も多くないと思うけど、それでも映画などではそれなりに見聞きしたことはあるはずで、今回何となく違和感があったのは英語によるオペラってとこ。オペラだとなんとなくイタリア語ってイメージなのでへぇ~っていう感じはあるね。ま、それでも普通にロックを聴いている人にはかなりキツいクラシック音楽なのでCD2枚を通して聴くには結構根性が必要。
作品そのものは1989年にまで遡り、1992年に大々的に開催されたフランス建国200年記念イベント向けに企画されたものが発端だ。フランス革命をテーマにしたストーリーで「Ca Ira」というのは古くから語られてきた物語らしいが、音楽担当としてロジャーに仕事が舞い込んできたらしい。こういった壮大なものは確かにロジャーのお得意なのだが、ロジャーはこの企画に賛同してから9ヶ月程度で2時間以上ものデモテープを完成させており、その前に取り掛かっていた自身のソロアルバム
「死滅遊戯」
をも中断させてプロジェクトに取り組んだことからもロジャーの真剣さが伺えるというものだ。しかし、フランスの歴史的イベントに対し、イギリス人の音楽を採用するなどという行為をプライドの高いフランス人が納得しなかったのかどうか真偽は定かではないが、結局他の企画に持っていかれたようだ。要するに秤にかけられていただけという結果になったらしい。それでロジャーもやる気を失くしてしまい、自身のソロアルバム
「死滅遊戯」
に再度取り掛かり、奇しくも1992年9月、正にフランス建国200年記念のイベント開催時期に市場にリリースしたのだ。さすがにひねくれ者のロジャーらしいやり方にはニヤッとしてしまう。
そんな経緯があった関係上なかなかこの作品を世に出すタイミングがなかったようだが、何年か前からファンの間ではそろそろリリースされるらしいと噂されており、2004年5月1日のマルタのEU加盟祝賀式典時に
「Ca Ira」
から3曲だけ演奏されて世に姿を見せたあたりから一気に信憑性を持ち始めて今日CDを聴けるようになったのだ。ロジャーってのは苦労する運命な人なんですね。でもここのところ「
ライブ8
」によるピンク・フロイドの再結成も叶い、幻の作品となりそうだった
「Ca Ira」
も完成し、年を取ってからのロジャーには運が向いてきたんじゃないかなって感じです。そんな作品の思いを聞き届けてじっくり聞いているとよく眠れます…じゃなくって、ロジャーらしさが随所に出てくるのを楽しめます(笑)。
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