Hatfield & The North - The Rotters' Club +3
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Hatfield & The North - The Rotters' Club +3 (1975)

ロックと音楽のギャップはあると思っていて、そのギャップが人を感動させる事についてはさほど意味が無い事も感じている。それでも感動させるための曲作りや演奏やフレーズなどは当然研究され尽くしていて、コードや音の構成から人はこう感じる、まで研究されているから残されている余地はさほど多くもないはずだが、そんな制限などまるでなく、常に素晴らしい音楽が生み出され続けているし、記録も多数残されているから面白い。自分の理解している範囲で書けば、クラシックは譜面を見て音が聴こえるようにならないと出来ない音楽だろうし、真逆のジャズインプロヴィゼーションならばコード進行や展開のパターンを読める事、音の構成がどこでどう合ってどう聴こえるか、当然スケールも把握してなければぶつかり合えないし、その音が持つ特性も当たり前だ。それらを掌握しながらもロックのパワーに虜になったプレイヤー達が奏でるロックは実に音楽的だったり、きちんとしている音が鳴らされる。両者を上手く合わせて構築美を組み立てるのもロックならではのスタイル。ところががなり立てて叫び、人を感動させるロックもあるし、もっとシンプルなブルースもあって、そこまで音楽音楽していなくても出来うるものもある。一方のポップスはそれらを全て把握した上で作り上げていく楽しさもあるだろうし、人を見て、歌声を聴いて似合いそうな曲を作る事もあろう。情景を浮かべながら音楽を奏でる映画音楽や環境音楽もあるし、実に幅広い世界だとつくづく思う。
Hatfield & The Northの1975年リリースセカンド・アルバム「The Rotters' Club」はどこをどう斬っても名盤との謳い文句しか出てこない。Web上にも実に多くのレビューやブログや感想がばら撒かれているが、どれを見ても称賛しか見当たらない。それほどに音楽的にもロック的にもジャズ的にも普通に音楽界に於いても素晴らしい作品として、しかも何年も何百回聴いても飽きない深さを持ち得ているとも称されている程の名盤扱いだ。自分がこの「The Rotters' Club」と出会ったのはプログレを知って、アレコレ聴いてプログレってのはこういうモノかと何となく分かった気になってきてしばらくすると、カンタベリーの世界が表れてくる。その時の最初はソフト・マシーンやキャラバンだろうが、すぐにHatfield & The Northは登場するし、このアルバムもそこに入れば即座に出てくるレベルのメジャー感ある作品。その頃聴いて、すでにカンタベリー系のフワフワ感とジャズ感、ポップ感は何となく認識していたので、この作品も凄いな、聴きやすいし名盤と言われるのも分かるな、と言う感覚で聴いていた。当然音楽的な側面から分析分解したような話ではなく、と言うかそこまで知り得なかった単なるリスナーの、今でもそうだが、ピュアな聴き方をしていた時代だ。それからン十年経過して、また聴いてみると、なるほど素晴らしいアルバムだ、の感想は変わらないが、どうやって演奏してアルバムに収録されるレベルになっているのかが不思議に感じてきた。アドリブの応酬かと思えば突如フレーズがハモって来たり、当然ながらコードワークに従って展開されていく局面が揃っていたりするので、譜面で書かれた曲の演奏が中心なのかとも思うが、それだけでもないインタープレイも出てくる所が更に不思議感を募らせる。その不可思議さだけでなく、それでいて美しく軽やかでジャジーでしかもロックエッセンスを散りばめたブリティッシュのカンタベリー独特のサウンドが流れてくるから面白い。更に凄いのがバンドメンバー4人での息の合った演奏だけならともかく、同じレベルで数多くの友人周辺カンタベリーロック仲間がゲスト参加しているにも関わらずこのクォリティだ。どういう音楽家集団ならこういうプレイと楽曲が出来上がるのだろう、と首を傾げてばかりのアルバムとも聴こえてきた。自分が未熟でそういった深いバンドのアレンジや録音、作曲環境などを知らないから不思議がるだけかもしれないが、こういうのが出来てこそ始めてミュージシャンなのだな、ちょっとギター弾けるぜ、などと息巻いても到底このレベルになるはずもなく、ロックだぜ、と頑張ってもそれは同じで、つくづくミュージシャンという職業は選ばれてこその職業だとも思う。もっともそこに自然に向かう才能があっての話でもあろう。
そんなHatfield & The Northの「The Rotters' Club」は、冒頭の「Share It」によるリチャード・シンクレアの単なるおっさん的な歌声、しかし何とも人を食ったような与太話的な歌詞からスタートするが、その時点で不思議感満載。バックの音は当然ジャズエッセンスに彩られ、ソロパートなどは聴いたことも無いような鍵盤の音から紡ぎ出されてベースにしてもウネウネしてるし、ギターも宙を舞っている始末。カンタベリー世界の独特さを代表するかのようなピプ・パイルのドラミングは実に軽快で要所要所でのジャジーなタッチが心地良く、しかもミックスが低いから全体の流れを邪魔する事なく、ともすればドラム鳴ってるのかと思うくらいの馴染んだ音量で演奏されている、のか、そういうミックスが意識されているからなのか、見事に電子オルガンとギターが中心に練られたサウンドになっているようにも思う。A面はほぼ全て組曲的に聴けて、冒頭の歌ものからどんどんとジャジーで軽やかなっフュージョンチックでもあり、環境音楽的でもある変幻自在のフィル・ミラーのギターが素晴らしく、時にまた歌が紡がれてと超小曲から7分レベルの大曲まで展開され、一気に聴けてしまう素晴らしき展開。極めつけはB面を丸々使った20分超えの「Mumps」で最高潮を迎える。これほどまでに見事なアンサンブルでギターも鍵盤も音色をどんどんと変えつつ、しかも両者がせめぎ合ったり共に鳴らしたり、どっちがどっちの音か混乱するくらいに似たサウンドを出してきたり、それを作り上げていると言うよりはその演奏の中で刺激しあったから出来てくるようなバンドらしい演奏ならではのスリリングさもあるので、譜面だけでは無かろうと思ってしまう部分。その合間を縫ってのリチャード・シンクレアのベースラインがこれもまた普通に弾いている箇所は無いのかと言うばかりにひたすらにラインを駆け巡り楽曲を構成しているし、当然ながらピプ・パイルのドラムもそこにピタリと合わせてキメにしてもロールにしても入ってくるのだから素晴らしい。こう聴いていると決してアドリブなどでないのは分かるが、それでもこの熱気と緊張感、それでいて妙にクールに鳴らされる楽器類ととにかく不思議ながら素晴らしさを実感。それこそバーバラ・ガスキンも含めたコーラスガールズ達も入ってくるのだから、割とお遊び要素たっぷりのレコーディングだったようにも聴こえるが、こういうバンドでも本作を最後に空中分解してしまうのだから、これもまた不思議。聴いている限りはクールだが、バンド内の実情ではかなり神経をすり減らす演奏が続いたのかもしれないが、本作が稀代の名作と言われるのはおそらく万人が納得する所だろう。ここまでジャジーで浮遊していながらロックバンドだ、と思える曲の出し方が何とも魅力的。狙ってはいないだろうし、実際は普通のジャズ、フュージョンじゃ面白くないだろうというヒネた感性の産物でもあろうとは思うが、それでも凄い。
「The Rotters' Club +3」は2004年にボーナストラックが3曲追加されてリマスターされたバージョンでCDが再発されており、実はそれなりにライブ活動をしていたので幾つかのライブ音源が録音されていた事から、「Halfway Between Heaven And Earth (Full Version) 」「Oh, Len's Nature」「Lything And Gracing」のライブバージョンが加えられている。それぞれ場所も演奏年も異なるが、バンドのスタンスやプレイにさほど変化があるものでもないので、普通にライブはこういうものだったのかとの聞き方程度。これが30分くらいの演奏ならまた異なっただろうが、どれもそこまで長い演奏曲でもないのでリラックスして聴ける、ハズだったが「Halfway Between Heaven And Earth (Full Version)」は同年にリリースされたオムニバスアルバム「Over The Rainbow (The Last Concert, Live!) 」に収録されていた貴重なライブバージョンが陽の目を見ているが、これがまた素晴らしい演奏でついつい耳を惹き付けられる演奏なのでオススメ。

ロックと音楽のギャップはあると思っていて、そのギャップが人を感動させる事についてはさほど意味が無い事も感じている。それでも感動させるための曲作りや演奏やフレーズなどは当然研究され尽くしていて、コードや音の構成から人はこう感じる、まで研究されているから残されている余地はさほど多くもないはずだが、そんな制限などまるでなく、常に素晴らしい音楽が生み出され続けているし、記録も多数残されているから面白い。自分の理解している範囲で書けば、クラシックは譜面を見て音が聴こえるようにならないと出来ない音楽だろうし、真逆のジャズインプロヴィゼーションならばコード進行や展開のパターンを読める事、音の構成がどこでどう合ってどう聴こえるか、当然スケールも把握してなければぶつかり合えないし、その音が持つ特性も当たり前だ。それらを掌握しながらもロックのパワーに虜になったプレイヤー達が奏でるロックは実に音楽的だったり、きちんとしている音が鳴らされる。両者を上手く合わせて構築美を組み立てるのもロックならではのスタイル。ところががなり立てて叫び、人を感動させるロックもあるし、もっとシンプルなブルースもあって、そこまで音楽音楽していなくても出来うるものもある。一方のポップスはそれらを全て把握した上で作り上げていく楽しさもあるだろうし、人を見て、歌声を聴いて似合いそうな曲を作る事もあろう。情景を浮かべながら音楽を奏でる映画音楽や環境音楽もあるし、実に幅広い世界だとつくづく思う。
Hatfield & The Northの1975年リリースセカンド・アルバム「The Rotters' Club」はどこをどう斬っても名盤との謳い文句しか出てこない。Web上にも実に多くのレビューやブログや感想がばら撒かれているが、どれを見ても称賛しか見当たらない。それほどに音楽的にもロック的にもジャズ的にも普通に音楽界に於いても素晴らしい作品として、しかも何年も何百回聴いても飽きない深さを持ち得ているとも称されている程の名盤扱いだ。自分がこの「The Rotters' Club」と出会ったのはプログレを知って、アレコレ聴いてプログレってのはこういうモノかと何となく分かった気になってきてしばらくすると、カンタベリーの世界が表れてくる。その時の最初はソフト・マシーンやキャラバンだろうが、すぐにHatfield & The Northは登場するし、このアルバムもそこに入れば即座に出てくるレベルのメジャー感ある作品。その頃聴いて、すでにカンタベリー系のフワフワ感とジャズ感、ポップ感は何となく認識していたので、この作品も凄いな、聴きやすいし名盤と言われるのも分かるな、と言う感覚で聴いていた。当然音楽的な側面から分析分解したような話ではなく、と言うかそこまで知り得なかった単なるリスナーの、今でもそうだが、ピュアな聴き方をしていた時代だ。それからン十年経過して、また聴いてみると、なるほど素晴らしいアルバムだ、の感想は変わらないが、どうやって演奏してアルバムに収録されるレベルになっているのかが不思議に感じてきた。アドリブの応酬かと思えば突如フレーズがハモって来たり、当然ながらコードワークに従って展開されていく局面が揃っていたりするので、譜面で書かれた曲の演奏が中心なのかとも思うが、それだけでもないインタープレイも出てくる所が更に不思議感を募らせる。その不可思議さだけでなく、それでいて美しく軽やかでジャジーでしかもロックエッセンスを散りばめたブリティッシュのカンタベリー独特のサウンドが流れてくるから面白い。更に凄いのがバンドメンバー4人での息の合った演奏だけならともかく、同じレベルで数多くの友人周辺カンタベリーロック仲間がゲスト参加しているにも関わらずこのクォリティだ。どういう音楽家集団ならこういうプレイと楽曲が出来上がるのだろう、と首を傾げてばかりのアルバムとも聴こえてきた。自分が未熟でそういった深いバンドのアレンジや録音、作曲環境などを知らないから不思議がるだけかもしれないが、こういうのが出来てこそ始めてミュージシャンなのだな、ちょっとギター弾けるぜ、などと息巻いても到底このレベルになるはずもなく、ロックだぜ、と頑張ってもそれは同じで、つくづくミュージシャンという職業は選ばれてこその職業だとも思う。もっともそこに自然に向かう才能があっての話でもあろう。
そんなHatfield & The Northの「The Rotters' Club」は、冒頭の「Share It」によるリチャード・シンクレアの単なるおっさん的な歌声、しかし何とも人を食ったような与太話的な歌詞からスタートするが、その時点で不思議感満載。バックの音は当然ジャズエッセンスに彩られ、ソロパートなどは聴いたことも無いような鍵盤の音から紡ぎ出されてベースにしてもウネウネしてるし、ギターも宙を舞っている始末。カンタベリー世界の独特さを代表するかのようなピプ・パイルのドラミングは実に軽快で要所要所でのジャジーなタッチが心地良く、しかもミックスが低いから全体の流れを邪魔する事なく、ともすればドラム鳴ってるのかと思うくらいの馴染んだ音量で演奏されている、のか、そういうミックスが意識されているからなのか、見事に電子オルガンとギターが中心に練られたサウンドになっているようにも思う。A面はほぼ全て組曲的に聴けて、冒頭の歌ものからどんどんとジャジーで軽やかなっフュージョンチックでもあり、環境音楽的でもある変幻自在のフィル・ミラーのギターが素晴らしく、時にまた歌が紡がれてと超小曲から7分レベルの大曲まで展開され、一気に聴けてしまう素晴らしき展開。極めつけはB面を丸々使った20分超えの「Mumps」で最高潮を迎える。これほどまでに見事なアンサンブルでギターも鍵盤も音色をどんどんと変えつつ、しかも両者がせめぎ合ったり共に鳴らしたり、どっちがどっちの音か混乱するくらいに似たサウンドを出してきたり、それを作り上げていると言うよりはその演奏の中で刺激しあったから出来てくるようなバンドらしい演奏ならではのスリリングさもあるので、譜面だけでは無かろうと思ってしまう部分。その合間を縫ってのリチャード・シンクレアのベースラインがこれもまた普通に弾いている箇所は無いのかと言うばかりにひたすらにラインを駆け巡り楽曲を構成しているし、当然ながらピプ・パイルのドラムもそこにピタリと合わせてキメにしてもロールにしても入ってくるのだから素晴らしい。こう聴いていると決してアドリブなどでないのは分かるが、それでもこの熱気と緊張感、それでいて妙にクールに鳴らされる楽器類ととにかく不思議ながら素晴らしさを実感。それこそバーバラ・ガスキンも含めたコーラスガールズ達も入ってくるのだから、割とお遊び要素たっぷりのレコーディングだったようにも聴こえるが、こういうバンドでも本作を最後に空中分解してしまうのだから、これもまた不思議。聴いている限りはクールだが、バンド内の実情ではかなり神経をすり減らす演奏が続いたのかもしれないが、本作が稀代の名作と言われるのはおそらく万人が納得する所だろう。ここまでジャジーで浮遊していながらロックバンドだ、と思える曲の出し方が何とも魅力的。狙ってはいないだろうし、実際は普通のジャズ、フュージョンじゃ面白くないだろうというヒネた感性の産物でもあろうとは思うが、それでも凄い。
「The Rotters' Club +3」は2004年にボーナストラックが3曲追加されてリマスターされたバージョンでCDが再発されており、実はそれなりにライブ活動をしていたので幾つかのライブ音源が録音されていた事から、「Halfway Between Heaven And Earth (Full Version) 」「Oh, Len's Nature」「Lything And Gracing」のライブバージョンが加えられている。それぞれ場所も演奏年も異なるが、バンドのスタンスやプレイにさほど変化があるものでもないので、普通にライブはこういうものだったのかとの聞き方程度。これが30分くらいの演奏ならまた異なっただろうが、どれもそこまで長い演奏曲でもないのでリラックスして聴ける、ハズだったが「Halfway Between Heaven And Earth (Full Version)」は同年にリリースされたオムニバスアルバム「Over The Rainbow (The Last Concert, Live!) 」に収録されていた貴重なライブバージョンが陽の目を見ているが、これがまた素晴らしい演奏でついつい耳を惹き付けられる演奏なのでオススメ。
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