Ten Years After - Live At The Fillmore East 1970

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Ten Years After - Live At The Fillmore East 1970
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 クラシックを専攻したギタリストやジャズから始めたギタリストとロックのギタリストは明らかに違うし、同じギターとは思えない程にプレイの違いがある。それはスパニッシュやアコースティックでも同じ事が言えるので、自分はギターが好きです、多少弾きますと言っても相手によってまるで話が異なる場合もあるのでなかなか難しい。一般の方々に何か弾いてくださいと言われても何も弾けない自分がいたりして、到底ギタリストとは言えないのを実感するが、ホントのミュージシャンならそういう場合も何が良いですか、的に多少知っていればコードを頭の中で追いかけて弾けてしまうのだろうし、ちょっと取り組めばジャズアレンジやクラシック風味、またはスパニッシュなどのアレンジもコードから出来上がってしまうだろう。ギターって面白い楽器なのでピアノ程の広がりは無いが、かなり自由に音を選んで弾けてしまうので何々風と言うのが簡単に出来る、らしい。そういうのは自分には無理なので一般的に何か弾いて、と言われても何も出来ません、になってしまうが。本日のお題となったテン・イヤーズ・アフターのギタリストで有名なアルヴィン・リーは60年代にシーンに登場してきた人で、元々ジャズギターをメインとしたミュージシャンだったが、この世代の若者らしくR&Rとブルースにヤラれてしまって、自身のギタースタイルを大幅に変更、もしくは改変してロックの世界に入ってきたからテクニックの成り立ちも音へのアプローチも違うし、そのおかげでこの時代から速弾きギタリストとして重宝された。ジャズ界からしたらごく普通、もしくはそこまででも無いプレイだったものがロックに持ち込んだ事で一躍スターダムへとのし上がった人。大好きです。

 そのTen Years Afterもこの時代のこの手のバンドの例に漏れず、ライブはひたすら凄いがスタジオ盤がイマイチ、という状況で、ファーストアルバムは1967年にリリースされ、そこそこの評判だったようだ。そこで既にバンドもマネージメント側も本来のテン・イヤーズ・アフターの良さが発揮出来ていないと感じたので、次の作品は未発表曲ばかりの、言い換えると普段からライブでやっていた曲ばかりをライブ録音盤「イン・コンサート」としてリリースしてきた。二枚目のアルバムからしてライブアルバムとはこれもまた珍しいが、この時代ならではの発想とバンドの実力をそういう形で見せてきた秀作ライブ。その後ウッドストックで強烈なバンドのイメージをリスナーに植え付けて、テン・イヤーズ・アフターはライブが凄いとして知られていった。その後のライブアルバムは後の1973年リリース「Recorded Live」まで待つ事となるが、その時点でのライブはどうにも初期衝動からかけ離れたバンドの低迷期前後のライブアルバムなので覇気もイマイチのまま、そうしてバンドは終焉を迎えてしまったが、幾度かの再結成もあり、2001年には待望の全盛期時代のライブアルバムが、しかもあのフィルモア・イーストでのライブ実況編集盤「Live At The Fillmore East 1970」が2CDでリリースされ、テン・イヤーズ・アフターのライブ最強伝説が再び蘇った。1970年2月27、28日の両日とも一日2セットづつのライブが行われて、当然フィルモア・イーストなのでビル・グラハムは全てを録音していた事から実現したこのライブアルバムリリース。全4セットから超絶演奏楽曲ばかりを集めて編集したバンド史上最高のライブアルバムが出来上がった。特に2枚目のディスクの「Help Me」から「Roll Over Beethoven」までは2月28日の1セット目から一気に収録されているので、ライブの流れもそのまま迫力のある演奏を楽しめるし、本ライブアルバムのハイライトポイント。

 1枚目のディスク、すなわち前半はこの時点ではまだアルバムがリリースされていなかった「CRICKLEWOOD GREEN」からのお披露目曲が中心で、2曲目の「Good Morning Little Schoolgirl」はオーディエンスも勝手知ったる「Ssssh」に収録のナンバーなので場を熱くさせているが、見慣れぬ「The Hobbit」はリック・リーのドラムソロがひたすら繰り広げられる後付ライブ曲だが、やはりジャズに根差したドラムスタイルがこういう所では顕著に聴けるのもユニーク。そして前半の目玉ともなるメドレー曲「Skoobly-Oobley-Doobob / I Can't Keep From Crying Sometimes / Extension On One Chord」がとにかく最強。セカンド・スタジオ・アルバムの「Stonedhenge」から抜き出された「Skoobly-Oobley-Doobob」から始まり、お得意のボーカルとギターフレーズの連発から繰り出されるこれぞテン・イヤーズ・アフターと言いたくなる、どこかドアーズ的なリフからして素晴らしく、ついついアタマ振ってリズムを取りたくなる、そう、ベースのレオ・ライオンズや鍵盤のチック・チャーチルのあのプレイスタイルのようにひたすらに自分の世界に籠もったノリで熱く熱くなりたくなる、そういうメドレー。その雰囲気から今度はサイケ色の強いファーストアルバム「Ten Years After」からの抜粋が信じられない「I Can't Keep From Crying Sometimes」へと続き、もうアドリブ大会の超絶ジャズブルースハードロックそのままでありとあらゆるギター奏法もここで聴けるし、ペグを緩めつつ音を下げていくこれまでこの人しか見たことないプレイも聴ける。バンドの息の合い具合もしっかりと堪能できる、ホント大好きでノリまくれる最高にカッコ良いテン・イヤーズ・アフターそのまま。ちなみにこのメドレー形式は1968年のライブ頃からも同じように演奏されており、「イン・コンサート+4」のボーナストラックバージョンのライブでも似た演奏が聴けるので十八番となっているからこそ、ここでの演奏も磨きがかかっている。最後はタイトル通りにワンコードでのひたすらアグレッシブなバンドのぶつかり合いがクリームのそれとは異なり、ひたすらにテンション高くメンバーがせめぎ合う姿を聴けるので、とにかく気の休まるヒマのない程に熱中してしまう20分間。これぞテン・イヤーズ・アフターの醍醐味。

 そして2枚目のディスクに入ると、自分たちの曲でもほぼ3コード形式でアドリブプレイ満開作ばかり、それに加えて半数以上は往年のR&Rやブルース曲のカバーなので、もうお手の物とばかりに先程のメドレーと同じようなテンションでの演奏が繰り広げられる。演奏していながらここに収録されていない「Crossroad」もいつか陽の目を浴びせてくれるとありがたいが、既にここに収録されている楽曲ばかりでも十二分だろうか。ウッドストックで世界を震撼させた「I'm Going Home」もまだまだ健在であのままのギタープレイが炸裂してくれるし、軽めに始まるR&R曲も全く軽くなくそのままジャズロックンロールスタイルが鳴らされるし、とにかくこの時代のフィルモアのライブの凄さ凄まじさ、ロック創成期のカッコ良さをそのまま体現しているバンドとも言える。これ以上のR&Rはもう無いだろうと言わんばかりにプレイされており、聴いている側も完全燃焼する凄まじい2時間のライブディスク。60年代から70年前後のブルース・ロックの迫力やスタイル、熱気を知りたければまずオススメする最高に素晴らしいテン・イヤーズ・アフターの名盤。これがまだあまり世に知られていないとするならかなり勿体無いライブアルバムなので、テン・イヤーズ・アフターに手を出す際には必ず聴いておきたい。









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フレ
Posted byフレ

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