Babymetal - 10 Babymetal Years

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Babymetal - 10 Babymetal Years (2020)
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 2020年10月10日、恐らくはBabymetal in MSGを企画していたのじゃないかと勝手に妄想していたが、コロナ禍に於いてあっけなくその願いと希望は崩れ去り、どころか何のイベントもライブツアーも出来ないまま月日が過ぎ去り、ファンは当然演奏者側も運営側も全てアテにしていた売上や収益、そして活動による戦略や改めての世界進出策などどれもこれもがストップしてしまい、バンドやグループにしてみればそれは仕事が無くなったとの焦燥感やイライラに変わる部分が大きかっただろうが、経営側にしてみれば、またBabymetalをアテにしていた担当スタッフ側にしてみれば何億の単位の売上が吹っ飛ぶ事が明白で、どうにかしてそれを避けたい、少しでも回収しておきたいとの想いが強かっただろう。コロナ禍で売上獲得出来ませんでした、収益上がりませんでした赤字です、とは許されないだろうから、当然そのフォロー策を考えて悩みに悩んでせっかくの結成10周年記念の年を無駄にしないために議論を繰り返した事だろう。既に成人を超えているメンバーからしてもその焦燥感は恐らく認識していただろうし、それでも何も出来ない状況との折り合いが難しかったと思う。かと言って好き勝手に何か出来るレベルでもないので、これは悩ましかったと想像するだけでも大変だという気がする。

 そんな背景を勝手に想像しながら、年の瀬にリリースしてきたのは何と結成10年、アルバムは3枚しかリリースしておらず、しかも昨年2枚組大作をリリースしたばかりのBabymetalに無理やりのベスト盤「10 Babymetal Years 」だった。しかも10周年に合わせての全10曲と潔いこの割り切り感。ただし、どれもこれも売れっ子エンジニアのテッド・ジェンセン氏によるリマスタリングソースでリリースすると期待を持たせ、どこかアイドルグループ面も持っている事から何と10種類のパッケージ形態で売れるだけ売れ的なリリースも強烈。音源主義からすればその大半はどうでも良く、敢えて気になるとすれば「10 Babymetal Years 初回限定C盤 」にカップリングされているライブ映像集くらいだが、それでも過去のライブ映像を切り取ったアイテムでしかないので取り立てて騒ぐほどのブツでもない。やはり主音源となるリマスタリング効果がどこまで発揮されているかが気になるところだったが、普通にパッと聴いた限りでは当然の如く初期の作品は音圧を増し、ベース音が強調され、音も輪郭もきっちりと際立ち、埋もれていたコーラスワーク類が分離されたかのように浮いてきて、やはり素晴らしい仕事をするものだと納得。

 冒頭の「ド・キ・ド・キ☆モーニング」はシングルリリースが2012年なのでさすがにくっきり感がハンパなく、まだまだ可愛らしい歌声がはっきりと際立って聴こえてくるが、この曲で面白いのはYouTubeにアップされているのはほぼモノラルバージョンで縦方向に深みのある空間で鳴らされる音質感だが、ファーストアルバムではもちろんリマスタリングバージョンと同じ定位のステレオバージョン、そしてリマスターバージョンはその音の際立ち版と実はYouTubeのみ別ミックス。とは言え、単にファイル容量減らさないといけなかっただけの編集だろうとは思う。「ヘドバンギャー!!」はどちらも同じになり、今回のリマスターでものすごく生々しいSu-Metalの歌声がモロに聞こえてくるので、今となっては聴く事の出来ない少女独特の歌声によるヘヴィ楽曲をマザマザと味わえる。そして当然ながらの続き曲と来れば「イジメ、ダメ、ゼッタイ」と紅白でも攻めまくったBabymetal史上絶対の楽曲がここでも生々しくリマスタリングバージョンで収録されているが、本アルバムがベスト盤とするならば、このアルバムバージョンで正解だろう。しかし、マイケル・アモットがギターソロを弾いているバージョンはシングルのみの収録で幻の逸品になっていくのだろうか、今後いずれどこかでレアバージョンとして収録されていくのかがやや見もの。当然テッド・ジェンセンのリマスタリングバージョンではないだろうから、かなりの確率で幻になっていく気がする。一方ではこの素晴らしき永遠の名曲がここでまた再び脚光を浴びて蘇り、その素晴らしさを実感した次第。そしてBabymetalの知名度を決定的にした「ギミチョコ!!」の凄まじさはリマスターバージョンによって改めてその作り込まれ具合を肌で感じたが、YuiMoaの雄叫びだけが生々しい少女の舌っ足らずな物言いで、他はすべてフラット化したBGMにも取れるレベルでのコンプレッサー的収録も奇妙。何はともあれ、その楽曲の斬新さ刺激さに加えてこういった音のギミックも加えながら生々しい少女の歌声とどこから斬っても革新性を保っていたが故に世界的ヒットとなった事がよく理解できる一曲。ここまでが世界をそこまで意識していなかった時代のBabymetalの最初期時代で、まだそこまでの大いなる野望を具現化してはいなかった。

 ところが「Road of Resistance」からは違う。明らかに世界目線で叩きつけてきた最初の楽曲で、ギターソロにはドラゴンフォースの二人が参加している今でも強烈なキラーチューン。一方ではBabymetalのアンセムにもなっているが故にイメージが固定されている側面も持つが、それでも代表的な一曲で、このリマスターバージョンを聴いていてもよくこの音で歌えているものだとつくづく思う。ちなみにこの曲もシングルバージョンとアルバム収録バージョンではボーカルだけ別テイクを録り直している、とSu-Metalが何かで話していたが、どこからどう聴いてもその2つのバージョンの違いは聞き取れないので、本人のやった感と実はそこまでやり直してはいないかもしれない現実感のどちらが正しいのだろう。もし本当に録り直しているバージョンならばこの完璧な歌入れは人間業ではない。もし他に別ボーカルテイクがあるならば、それこそこういうベスト盤に収録してもらいたいものだが、先の「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のマイケル・アモットギターソロバージョンなどと共にレアテイク集をどこかでリリースしてもらいたいとさえ願う。以降の「Karate」からは音圧アップやくっきり感は感じるが、そこまでリマスタリング感を味わえるものでもなく、その意味ではベスト盤的に聴いているが、「The One」は日本語バージョンでの収録なので、「From Dusk Till Dawn」や英語バージョンの「The One」は共にレアテイク集行きになるのだろう。それは次の「Distortion」も同じで、アリッサ・ホワイトグラズがデスボイス部分を歌っているのはアルバム収録バージョンで、それ以前のシングルではアリッサは参加していない。そのアリッサ非参加のシングルバージョンはもしかしたら今後レアテイクになっていく可能性が高そうだ。最後の「PA PA YA!!」はシンプルに楽しもう。

 単なるベスト盤ながらもさすがにキャリアが長いだけあって様々なバージョンやリリースが行われているので何気に音源だけでもマニアックに見ていくとコレクションの対象になっていくが、それもこれもBabymetalのユニークさが故に多数バージョンが出来上がってしまうと好意的に見ている。映像の方はライブやればリリースするような状況なのでいくらでも楽しめ、常に最新のBabymetalが最高のBabymetalなのでスタジオ盤を聴き直す機会が少なかったから、この状況下で久しぶりにスタジオ盤をここまでじっくり聴き直したらやはり凄かった。初期分はややチープな音色で作られている部分はあるものの、世界クォリティになってからの躍進感が半端なく、楽曲レベルもスタンスもスタイルもどれもこれもが桁違い。それが世界レベルのバンドと比較しても遜色ない、どころかそれを超えているようなプロ意識の高さで作られているあたりはさすが。これからもどんどんと躍進してあり得ない世界を作り続けていって道なき道を歩んでほしいと願っている。





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フレ
Posted byフレ

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