Free - Tons of Sobs +8
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Free - Tons of Sobs +8 (1969)

アレクシス・コーナーの1972年リリースアルバムに「Bootleg Him!」というジャケットがロジャー・ディーンによってデザインされたカッコ良い作品があり、中身はアレクシス・コーナーが機会を見ては自身の周囲に集まってくる連中と一緒にとにかくブルースを録音しまくった楽曲を集めたものだった。その中には直後のロック界を賑わせる面々が多数いたため、アレクシス・コーナーはジョン・メイオールと共に英国のブルース学校とまで言われるようになったが、その名目に嘘偽りはなく、この楽曲に参加している面々のネームバリューの高さは凄まじいものがある。それに釣られてガキの頃は到底手に入らなかったこの幻のアルバムに想いを馳せたのも懐かしい記憶。それくらいに入手不可だったし、それでいてジャケットがカッコ良いし、タイトルも「Bootleg Him!」だからカッコ良くてソソられた。CD時代になり、ジャケット違いでリリースされた事があったが、それを手に入れてとにかく中味をまず聴いていたのも良き思い出で、その後結局レコードは高いままだったので何度か見かけたが入手していない。ここでそのアルバムの話を持ち出したのも、若き日のアンディ・フレイザーとポール・ロジャーズがこのアルバムに収録されているカーティス・メイフィルドのカバー曲「Mighty-Mighty Spade And Whitey」でプレイしているからだ。二人共十代半ば頃でフリーデビュー前なので恐らくは1967年頃の録音と思われるが、そうするとアンディ・フレイザーは15才、ポール・ロジャーズは18才ととんでもない年齢の時に既に大御所アレクシス・コーナーと一緒にレコーデイングしていた事となる。ちなみにこの曲でのドラムは後のソフト・マシーンに参加するジョン・マーシャル、サックスはロル・コックスヒルにトランペットがハロルド・ベケットと知った名前が連なる面々での一員で録音している。ボーカルはアレクシス・コーナーともう一人と一緒にやっているのでポール・ロジャーズはそこまで目立たないようにも聴こえるが、アンディ・フレイザーはベースを一人でプレイしているから最初からとにかく普通とは違うベースのトーンとノリとプレイで目立ちまくり。そもそもが恐ろしい才能の持ち主と言う事がこの一曲でも分かるが、そのまま翌年頃にはフリーを結成しているから恐れ入る。
1968年の暮れにはBBCでのライブ放送に出演しているので、その時点ではメンバーも楽曲も揃っていたようだが、改めて調べて驚くなかれ、その時点でフリーはシングルもリリースしていないし、アルバムも発表していない。それでもBBCラジオに出演して演奏してて、それが何と1968年の7月と12月だから、アルバムデビューの1969年3月の随分手前でその実力を世間に示してしまっていた。果たしてこれを聴いていたリスナーが凄さを実感して何かもっとフリーを聴きたいと思っても、何も手に入れる事が出来なかった理不尽さは当時の商業主義とは大きくかけ離れただろうが、それでも先行した知名度を優先したのだろうか、翌年1969年3月にアルバム「Tons of Sobs」がリリースされたが、その同じ頃にまたしてもBBCに出演してライブ演奏している快挙を成し遂げている。そもそもが規格外のデビューの手法だったし、プレイしている音楽がこれまた規格外のサウンドで、大英帝国ブルース・ロックの主と言えばフリー、それも全員この時点ではまだ十代の若者達と、とんでもない才能の持ち主の集団として鮮烈に世間に出てきたワケだ。その一部のBBCライブ演奏は本作「Tons of Sobs +8」のボーナストラックにも収録されているしその他のボックスセットや「Live at the BBC」にも収録されているので、今はあちこちで聞けるが、まずはその歴史的快挙をマジマジと実感してからアルバムを手に取ると、どれだけ凄い連中の作品なのか改めてズシリとその重さを感じられるだろう。
アルバムの冒頭曲「Over The Green Hills」は最終曲ともなっており、よく聴けば一曲が途中で分断されて最初と最後に配されている。フリー側としては恐らく半分に切られている概念はなく、その証拠にボーナストラック最後にも収録されているようにBBCライブではそのまま一曲を丸ごと演奏している。つまり売り出す側の仕掛けとしてこの美しきアコースティックのアルペジオから始められる曲をブルースロックバンドとの印象から切り離して序章としてまずはアルバムを仕掛け、間に挟まれるブルース・ロックの数々が一通り終わってからまた同じ美しきコーラス部分から戻ってきてアルバムを静かに終わらせていった。この効果は割と劇的にリスナーの心象に響いており、冒頭の美しさと最終の美しさがあまりにもアルバムの中味とかけ離れた楽曲のため、妙にブルースブルースしたアルバムだったとの印象を持たせる事なく、もっと器用なバンドとの印象すら与えている。正にそれは次作以降のフリーをそのまま受け入れられる下地作りともなっていたとも言える。ここまでの名盤だからこそ今敢えて書くならば、フリーがここまでベタベタなブルースをプレイしているのは本作だけ、とも言え、以降はポール・ロジャーズとアンディ・フレイザーのオリジナリティを発揮したブルース・ロック、しかもフリー流のブルース・ロックでしかなく、いわゆる3コードだけでのブルースは本作だけで、時代背景が大きかったとは思うが、それでもこれだけのブルースが出来るんだ、と証明し尽くしているし、それは他のバンドと比較にならないレベルまで仕上がっているのだからそれ以上にこの形式に拘る必要もなく、また天才的ソングライターが偶然にも2名存在しており、また宇宙的ギタープレイヤーが在籍していたからこそのオリジナリティ発揮に進んでいった。その意味で本作「Tons of Sobs」はフリーの中で異質且つ原点にして最高作とも言え、唯一無二の純然たるブルースアルバムとも言える。だから英国ロックは面白い。そこからフリーは独自のブルース・ロックを探求し始め、それはいつしかブルースにすら拘らなくなり、二人の才能が発揮され、ブルースにひたすら魅入られたポール・コソフだけがバンドの進化に違和感を覚えてしまいブルースに拘りたい自分とのギャップを埋められずドラッグに走ってしまったという図式。故にメンバーの仲が悪いなどの単純な言い方ではなく、もっと根深い才能の違いとプレイヤー気質の違いがコソフをあそこまで追い詰めてしまった、言い換えるならば単にブルースを弾きまくりたかったコソフにはバンドに居場所が無かったのだろうとの推測も成り立つ。
そんな歴史をまだ知らない1969年の「Tons of Sobs」はバンドが希望と野望と自信に満ち溢れており、どの曲もどの曲もポール・コソフの素晴らしいギタープレイがこれでもかとばかりに聴けるので、どこからどう聴いてもフリーはポール・コソフのバンドにしか聴こえない。もしくはほとんどの楽曲を書いているポール・ロジャーズとの双頭バンドのようにしか思えない。普通ならばそのままバンドはブルース・ロックスタイルでギターとボーカルが主体となるいわゆるロックバンドになったのだろう。その話はまたいずれとして、とにかく「Tons of Sobs」は凄い。ここまでブルース・ロックギターがひたすら聴けるのが凄い。「Worry」のフェイドインからのギターソロプレイのカッコ良さに痺れ、「Walk In My Shadow」の独特のノリによるリズムとコソフの引いてタメて炸裂するギタープレイと音色にヤラれ「Wuld Indian Woman」の至ってシンプルでブルージーなリフと実はコーラスワークの上手さが光る中、オブリガードのギタープレイがツボを得ている素晴らしさ。そして究極の一曲となったカバーながらの「Going Down Slow」は8分半に渡って超絶スローブルースをこれでもかくらいにギターを弾き倒してくれており、ここで既にフリーのブルースとしては完成されたとも言える素晴らしき演奏。そしてフリー流ブルース・ロックへと発展するに相応しい「I'm A Mover」での曲の展開に見事にマッチさせたエグいギタープレイとバンドの噛み合い方が凄いし、それは次の「The Hunter」では更に跳躍してこれ以上ないくらいのフリー流ブルース・ロックが完成されている。たとえそれはカバー曲であっても、だ。ここまで躍動したギタープレイを他のアルバムで聴ける事もないだろう、それくらいの名演奏。そしてポール・ロジャーズお得意の静かめな楽曲となる「Moonshine」もだからこそポール・コソフのプレイが必要、とばかりに泣きのメロディとフレーズが刺さりまくるし、次の「Sweet Tooth」などはもうポール・コソフなしだったら成り立たなかっただろうと言わんばかりに中盤以降ギターが弾かれまくっている素晴らしい楽曲。ボーナストラックに別バージョンが入っているが、それとは雲泥の差がありすぎるくらいの素晴らしきバージョン。
そのボーナストラックは概ねBBCからの収録で先の1968年に出演した際にはこれまたきちんとしたスタジオバージョンがあったらどうなっていたのだろうと思わずにはいられないB.B.Kingのカバー曲「Waiting On You」が最高に素晴らしい。これでデビュー前の十代の若者達のプレイだから恐れ入る。未発表曲であればポール・ロジャーズ作の「Visions of Hell」もあるが、アルバムリリース時にあたり、この曲か「The Hunter」かの収録に迷ったらしい。今となれば当然「The Hunter」で良かったのは明白だが、そこまでのクォリティで未発表のまま残されていた作品がこうして陽の目を浴びたのは有り難い。次の「Woman By The Sea」は後のアルバム「FIRE & WATER」に収録された「Rememer」のプロトタイプ作品として聴くが賢明だろう。このアルバムを聴いていると案外ピアノやオルガンが目立つので、アンディ・フレイザーの活躍も大きかったと思われるが、スティーブ・ミラーというこれもまたアレクシス・コーナー学校からの仲間が鍵盤で参加している事にも気づくが、このスティーブ・ミラーはあのスティーブ・ミラーではないのでご留意を。
そんな素晴らしき楽曲の数々が「Over The Green Hills」にサンドイッチされ、またダブルジャケットではこの深い青に彩られた意味不明のアートワークに包まれてリリースされた「Tons of Sobs」。いつ聴いても素晴らしいし、何度聴いてもポール・コソフのギタープレイの熱量には痺れまくる。その実、ポール・ロジャーズもアンディ・フレイザーもサイモン・カークも素晴らしきプレイなのは言うまでもないが、これほどの作品を聴いてしまったら誰でもフリーの虜になるだろう。

アレクシス・コーナーの1972年リリースアルバムに「Bootleg Him!」というジャケットがロジャー・ディーンによってデザインされたカッコ良い作品があり、中身はアレクシス・コーナーが機会を見ては自身の周囲に集まってくる連中と一緒にとにかくブルースを録音しまくった楽曲を集めたものだった。その中には直後のロック界を賑わせる面々が多数いたため、アレクシス・コーナーはジョン・メイオールと共に英国のブルース学校とまで言われるようになったが、その名目に嘘偽りはなく、この楽曲に参加している面々のネームバリューの高さは凄まじいものがある。それに釣られてガキの頃は到底手に入らなかったこの幻のアルバムに想いを馳せたのも懐かしい記憶。それくらいに入手不可だったし、それでいてジャケットがカッコ良いし、タイトルも「Bootleg Him!」だからカッコ良くてソソられた。CD時代になり、ジャケット違いでリリースされた事があったが、それを手に入れてとにかく中味をまず聴いていたのも良き思い出で、その後結局レコードは高いままだったので何度か見かけたが入手していない。ここでそのアルバムの話を持ち出したのも、若き日のアンディ・フレイザーとポール・ロジャーズがこのアルバムに収録されているカーティス・メイフィルドのカバー曲「Mighty-Mighty Spade And Whitey」でプレイしているからだ。二人共十代半ば頃でフリーデビュー前なので恐らくは1967年頃の録音と思われるが、そうするとアンディ・フレイザーは15才、ポール・ロジャーズは18才ととんでもない年齢の時に既に大御所アレクシス・コーナーと一緒にレコーデイングしていた事となる。ちなみにこの曲でのドラムは後のソフト・マシーンに参加するジョン・マーシャル、サックスはロル・コックスヒルにトランペットがハロルド・ベケットと知った名前が連なる面々での一員で録音している。ボーカルはアレクシス・コーナーともう一人と一緒にやっているのでポール・ロジャーズはそこまで目立たないようにも聴こえるが、アンディ・フレイザーはベースを一人でプレイしているから最初からとにかく普通とは違うベースのトーンとノリとプレイで目立ちまくり。そもそもが恐ろしい才能の持ち主と言う事がこの一曲でも分かるが、そのまま翌年頃にはフリーを結成しているから恐れ入る。
1968年の暮れにはBBCでのライブ放送に出演しているので、その時点ではメンバーも楽曲も揃っていたようだが、改めて調べて驚くなかれ、その時点でフリーはシングルもリリースしていないし、アルバムも発表していない。それでもBBCラジオに出演して演奏してて、それが何と1968年の7月と12月だから、アルバムデビューの1969年3月の随分手前でその実力を世間に示してしまっていた。果たしてこれを聴いていたリスナーが凄さを実感して何かもっとフリーを聴きたいと思っても、何も手に入れる事が出来なかった理不尽さは当時の商業主義とは大きくかけ離れただろうが、それでも先行した知名度を優先したのだろうか、翌年1969年3月にアルバム「Tons of Sobs」がリリースされたが、その同じ頃にまたしてもBBCに出演してライブ演奏している快挙を成し遂げている。そもそもが規格外のデビューの手法だったし、プレイしている音楽がこれまた規格外のサウンドで、大英帝国ブルース・ロックの主と言えばフリー、それも全員この時点ではまだ十代の若者達と、とんでもない才能の持ち主の集団として鮮烈に世間に出てきたワケだ。その一部のBBCライブ演奏は本作「Tons of Sobs +8」のボーナストラックにも収録されているしその他のボックスセットや「Live at the BBC」にも収録されているので、今はあちこちで聞けるが、まずはその歴史的快挙をマジマジと実感してからアルバムを手に取ると、どれだけ凄い連中の作品なのか改めてズシリとその重さを感じられるだろう。
アルバムの冒頭曲「Over The Green Hills」は最終曲ともなっており、よく聴けば一曲が途中で分断されて最初と最後に配されている。フリー側としては恐らく半分に切られている概念はなく、その証拠にボーナストラック最後にも収録されているようにBBCライブではそのまま一曲を丸ごと演奏している。つまり売り出す側の仕掛けとしてこの美しきアコースティックのアルペジオから始められる曲をブルースロックバンドとの印象から切り離して序章としてまずはアルバムを仕掛け、間に挟まれるブルース・ロックの数々が一通り終わってからまた同じ美しきコーラス部分から戻ってきてアルバムを静かに終わらせていった。この効果は割と劇的にリスナーの心象に響いており、冒頭の美しさと最終の美しさがあまりにもアルバムの中味とかけ離れた楽曲のため、妙にブルースブルースしたアルバムだったとの印象を持たせる事なく、もっと器用なバンドとの印象すら与えている。正にそれは次作以降のフリーをそのまま受け入れられる下地作りともなっていたとも言える。ここまでの名盤だからこそ今敢えて書くならば、フリーがここまでベタベタなブルースをプレイしているのは本作だけ、とも言え、以降はポール・ロジャーズとアンディ・フレイザーのオリジナリティを発揮したブルース・ロック、しかもフリー流のブルース・ロックでしかなく、いわゆる3コードだけでのブルースは本作だけで、時代背景が大きかったとは思うが、それでもこれだけのブルースが出来るんだ、と証明し尽くしているし、それは他のバンドと比較にならないレベルまで仕上がっているのだからそれ以上にこの形式に拘る必要もなく、また天才的ソングライターが偶然にも2名存在しており、また宇宙的ギタープレイヤーが在籍していたからこそのオリジナリティ発揮に進んでいった。その意味で本作「Tons of Sobs」はフリーの中で異質且つ原点にして最高作とも言え、唯一無二の純然たるブルースアルバムとも言える。だから英国ロックは面白い。そこからフリーは独自のブルース・ロックを探求し始め、それはいつしかブルースにすら拘らなくなり、二人の才能が発揮され、ブルースにひたすら魅入られたポール・コソフだけがバンドの進化に違和感を覚えてしまいブルースに拘りたい自分とのギャップを埋められずドラッグに走ってしまったという図式。故にメンバーの仲が悪いなどの単純な言い方ではなく、もっと根深い才能の違いとプレイヤー気質の違いがコソフをあそこまで追い詰めてしまった、言い換えるならば単にブルースを弾きまくりたかったコソフにはバンドに居場所が無かったのだろうとの推測も成り立つ。
そんな歴史をまだ知らない1969年の「Tons of Sobs」はバンドが希望と野望と自信に満ち溢れており、どの曲もどの曲もポール・コソフの素晴らしいギタープレイがこれでもかとばかりに聴けるので、どこからどう聴いてもフリーはポール・コソフのバンドにしか聴こえない。もしくはほとんどの楽曲を書いているポール・ロジャーズとの双頭バンドのようにしか思えない。普通ならばそのままバンドはブルース・ロックスタイルでギターとボーカルが主体となるいわゆるロックバンドになったのだろう。その話はまたいずれとして、とにかく「Tons of Sobs」は凄い。ここまでブルース・ロックギターがひたすら聴けるのが凄い。「Worry」のフェイドインからのギターソロプレイのカッコ良さに痺れ、「Walk In My Shadow」の独特のノリによるリズムとコソフの引いてタメて炸裂するギタープレイと音色にヤラれ「Wuld Indian Woman」の至ってシンプルでブルージーなリフと実はコーラスワークの上手さが光る中、オブリガードのギタープレイがツボを得ている素晴らしさ。そして究極の一曲となったカバーながらの「Going Down Slow」は8分半に渡って超絶スローブルースをこれでもかくらいにギターを弾き倒してくれており、ここで既にフリーのブルースとしては完成されたとも言える素晴らしき演奏。そしてフリー流ブルース・ロックへと発展するに相応しい「I'm A Mover」での曲の展開に見事にマッチさせたエグいギタープレイとバンドの噛み合い方が凄いし、それは次の「The Hunter」では更に跳躍してこれ以上ないくらいのフリー流ブルース・ロックが完成されている。たとえそれはカバー曲であっても、だ。ここまで躍動したギタープレイを他のアルバムで聴ける事もないだろう、それくらいの名演奏。そしてポール・ロジャーズお得意の静かめな楽曲となる「Moonshine」もだからこそポール・コソフのプレイが必要、とばかりに泣きのメロディとフレーズが刺さりまくるし、次の「Sweet Tooth」などはもうポール・コソフなしだったら成り立たなかっただろうと言わんばかりに中盤以降ギターが弾かれまくっている素晴らしい楽曲。ボーナストラックに別バージョンが入っているが、それとは雲泥の差がありすぎるくらいの素晴らしきバージョン。
そのボーナストラックは概ねBBCからの収録で先の1968年に出演した際にはこれまたきちんとしたスタジオバージョンがあったらどうなっていたのだろうと思わずにはいられないB.B.Kingのカバー曲「Waiting On You」が最高に素晴らしい。これでデビュー前の十代の若者達のプレイだから恐れ入る。未発表曲であればポール・ロジャーズ作の「Visions of Hell」もあるが、アルバムリリース時にあたり、この曲か「The Hunter」かの収録に迷ったらしい。今となれば当然「The Hunter」で良かったのは明白だが、そこまでのクォリティで未発表のまま残されていた作品がこうして陽の目を浴びたのは有り難い。次の「Woman By The Sea」は後のアルバム「FIRE & WATER」に収録された「Rememer」のプロトタイプ作品として聴くが賢明だろう。このアルバムを聴いていると案外ピアノやオルガンが目立つので、アンディ・フレイザーの活躍も大きかったと思われるが、スティーブ・ミラーというこれもまたアレクシス・コーナー学校からの仲間が鍵盤で参加している事にも気づくが、このスティーブ・ミラーはあのスティーブ・ミラーではないのでご留意を。
そんな素晴らしき楽曲の数々が「Over The Green Hills」にサンドイッチされ、またダブルジャケットではこの深い青に彩られた意味不明のアートワークに包まれてリリースされた「Tons of Sobs」。いつ聴いても素晴らしいし、何度聴いてもポール・コソフのギタープレイの熱量には痺れまくる。その実、ポール・ロジャーズもアンディ・フレイザーもサイモン・カークも素晴らしきプレイなのは言うまでもないが、これほどの作品を聴いてしまったら誰でもフリーの虜になるだろう。
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