Joe Strummer - Joe Strummer 001
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Joe Strummer - Joe Strummer 001 (2018)

2002年12月22日Joe Strummer永眠。早いものでもうじきそれから20年の月日が経過する。例えば1970年前後にこの世を去ったロックスター達で言えば1990年頃になってその頃を振り返るようなものだが、今の世代からしたらジョー・ストラマーもそういう感覚かもしれない。自分的には全くそのスター感が異なるが、それは多分ナマで見ているから、リアルタイムで知っているジョー・ストラマーのソロ活動と気づいた時には既に伝説だったロックスター達との違いだろう。そのジョー・ストラマーの訃報はホント、びっくりした。その2ヶ月前には日本公演でアグレッシブなライブを見せてくれていたし、新作も録音中と聞いていたからまさかそんなことが起きるとも思ってなかった。The Clashの連中も同じで、確か年が明けてからロックの殿堂入りするのも決まってたから、そのイベントでThe Clash再結成して演奏しようという話にもなっていたようだ。結果的に叶わぬ夢となった事で、後にミック・ジョーンズはやれなくて良かった、と言っているようだが、なるほど。ちなみにポール・シムノンはこの話が出た当初からThe Clashがあんな高いチケット代を払うような場所で再結成ライブはないだろ、と不参加を表明していたらしい。さすがだ。それはそうと、この時に録音していた楽曲群はこの後、アルバム「Streetcore」で概ねリリースされ、ジョー・ストラマーの遺産はここで一段落したかのように見え、後にミック・ジョーンズも参加したライブアルバムがファンクラブ限定でリリースされただけで終わっていた。ところがその後に関係者がジョー・ストラマーの自宅倉庫を漁ったか音源提供があったかで、実はかなりのアーカイブが残されていた事が判明し、そのソースをきちんとした形で纏め上げてリリースしようとの話から丁寧な仕事が行われており、2018年になってようやくその姿を聴ける事になった。しかも普通の発掘アルバムと言うだけでなく、きちんとコンセプトも持ったしっかりした新作としてリリースされたのは嬉しい限り。
「Joe Strummer 001」なるタイトルで、ジャケットはジョー・ストラマーの免許証の写真の拡大だそうで、若かりし日のジョー・ストラマーの鋭い表情がそれらしくてなかなか良い。中身は一枚目のディスクがソロ活動のベスト盤とも言える選曲で、入手しにくい映画のサントラへの提供曲がほとんど詰め込まれているのは有り難い。ひとつづつ揃えているとかなり大変な作業にもなるこの手の作品が一枚に纏められるのは通常はレーベルが異なったりして出来ないものだが、ここでは見事に収められている。それに加えてThe 101ersの2曲とメスカレロスのベストチョイス、珍しい辺りでは「Minstrel Boy」の歌入りショートバージョン、映画「Black Howk Down」のサントラに収録のバージョンが聴けるところ。それとジョニー・キャッシュの2003年のボックスセットに収録されたジョーの提供曲「Redemption Song」とジミー・クリフの2004年のアルバムに提供した「Over the Border」までもが収録されているのは見事。どうやって版権クリアーしたのか、きちんと収められているので自分もここで初めて聴いた楽曲。前者は歌やメロディだけ聴いていれば完全にジョー・ストラマーそのもので、それをジョニー・キャッシュがアコギバックで歌っているのでジョー・ストラマーの曲と知ってて聴くと納得するが、普通に聴いていても結構な名曲に聴こえるので一押し。途中歌が変わるのでその二人の歌声とメロディと歌詞の発音の違いも雰囲気が出ていて実に男臭いカッコ良い曲。後者はジミー・クリフが主導となっている曲でジョーの歌声は一瞬出てくる程度だと思われるが、レゲエと言うよりもテクノレゲエパンク的な斬新なスタイルの楽曲で、これはこれで気になるジャンルのサウンドが奏でられている。それをメスカレロス全盛期のジョー・ストラマーが提供しているのも魅力的。これは聞かないとジョー・ストラマーと分かりにくい曲調にまで作り込まれているようだ。それにしても80年代からの映画のサントラ曲は確かに後期The Clash IIやミック・ジョーンズのB.A.Dで聴けるような楽曲アレンジが施されているものが多く、この時代には完全にそちらの方向にアンテナが向いていたのも分かるので、初期パンク的な楽曲は皆無で、音楽家としてのジョー・ストラマーの一面を捉えるとして聴くのが賢明。
そして2枚目のディスクが珠玉の楽曲群集大成で冒頭の「Letsagetabitarockin」はDisc 1冒頭と同じ曲のアコギ一本でのジョー・ストラマーのデモバージョンで、実に生々しくプレイしている姿をくっきりと聴ける。そこから時代は一気にThe Clash後期まで飛び、「This Is England」の未発表バージョンとなる「Czechoslovak Song/Where Is England」だが既発バージョンと比べるともっとダブ的エッセンスの強いゆったりとした、ポール・シムノンのグルーブ感満載のバージョンでかなりトリップしている感漂う。「Pouring Rain (1984)」はこの後出てくる1993年の「When Pigs Fly」のサントラでも使われそうになった未発表曲の元ネタバージョンで、こちらもバンド形態の音を出しているがデモバージョンそのままで雰囲気は同じだがまだまだラフなメモ。それでも1984年だからあの安っぽいデジタルチックなドラムの音が使われている。ここまでして収録するほどの出来映えでもないようにも思えるが、それだけソースが少なかったとも伺える。珍しくも「Blues on the River」とのタイトルが付けられた楽曲もアレンジは割と斬新なインダストリアル的ですらあるような曲だが、骨格はジョー・ストラマーそのままのスタイルでシンプルに迫ってくる。やはりデモテープそのままに近いものなので、その生々しさを味わうには楽しめる楽曲。ブルースと言うなら次の「Crying on 23rd」の方がそのまま3コードパターンのブルースだが、こちらは映画「シドアンドナンシー」サントラの未発表曲のようで、雰囲気はそれらしいものの、何故にパンク映画でこんなブルースソングが作られたのか、ボツの理由も分かりすぎるくらいのブルース。そして1980年代初頭の来日公演でも同行したポール・シムノンの彼女と言うか奥方のパール・ハーバーに提供したものの未発表のままに終わっていた「2 Bullets」が御本人の歌声でそのまま聴ける。ジョー・ストラマーは単純に楽曲提供のようで、こうして聴いてみてもジョー・ストラマーらしさが出ているようないなようなとなかなか難しいが、少々雰囲気の変わったところで良いかもしれない。そして1993年の映画「When Pigs Fly」のサントラではボツりまくった3曲がスタジオ録音完全バージョンで収められているので、かなり最終段階でボツ出しを食らったのか、オフィシャルのサントラ盤にはジョー・ストラマーのクレジットは一切見当たらないので、何らかの理由に謎がありそうな不思議な録音素材。ここからの2曲はジョー・ストラマーの最期の録音素材として残されているテープからの収録でアルバム「Streetcore」からも漏れたようだ。もっともその時には知られていなかったのかもしれないが、しっかりと各種楽器もレコーディングされ、アレンジも施された完全バージョンなので、単純に収録時間の関係でオミットされたのだろうか。「The Cool Impossible」はやや物静かで切なさを持つメスカレロスらしい、そしてジョーらしいメロディの歌で、ピアノがやたらと美しく鳴り響くキレイな曲。「London Is Burning」はメスカレロスのアルバムでリリースされている「Burnin' Streets」の別バージョン、と言うが、楽曲のテンポが違い過ぎて、こちらは普通にロック調のビートでアレンジされており、かなりメスカレロスらしい。リリースバージョンはゆったりとしており、そういう雰囲気こそがメスカレロス、とばかりの作風。同じ曲でも色々と聴けるのは面白いし、こちらの楽曲タイトルがまた魅力的で気になるのもポイント高い。そして最後には1988年にミック・ジョーンズと共作で作り上げた「U.S. North」が収められているが、この曲の歴史的意義が大きいから最後に収録されているのは分かるが、楽曲的にはB.A.Dと80年代ジョーの方向性を重ね合わせた随分とデジタルテクノダブチックなアレンジで好ましい曲ではない。それなら先の「London Is Burning」が最後の方が良かったが、それはそれ、こういう世界観がThe Clashの結末にあったとしたらあそこで失くなっていたのも歴史か。
この「Joe Strummer 001」は様々な形態でリリースされており、7インチシングルが付けられた形態では、末期The Clashの「This Is England」と「Before We Go Forward」の未発表デモバージョンが収録されているが、どちらも安っぽいリズムマシーンで作られたあのままに近いデモバージョンで、アコギの弾き語りから出来てたら楽しそうだと夢を膨らましたが、そうではなかった。更にカセットテープバージョンに収録された「Full Moon」もあるらしいが未聴。これでもか、くらいに残された楽曲やなかなか聞きづらい曲を一気に纏め上げてリリースしてくれた素晴らしい編集盤で、どこか心の奥底で、お疲れ様、と言いたくなり、これでジョーのアイテムは満了した感満載のナイスなアルバム。

2002年12月22日Joe Strummer永眠。早いものでもうじきそれから20年の月日が経過する。例えば1970年前後にこの世を去ったロックスター達で言えば1990年頃になってその頃を振り返るようなものだが、今の世代からしたらジョー・ストラマーもそういう感覚かもしれない。自分的には全くそのスター感が異なるが、それは多分ナマで見ているから、リアルタイムで知っているジョー・ストラマーのソロ活動と気づいた時には既に伝説だったロックスター達との違いだろう。そのジョー・ストラマーの訃報はホント、びっくりした。その2ヶ月前には日本公演でアグレッシブなライブを見せてくれていたし、新作も録音中と聞いていたからまさかそんなことが起きるとも思ってなかった。The Clashの連中も同じで、確か年が明けてからロックの殿堂入りするのも決まってたから、そのイベントでThe Clash再結成して演奏しようという話にもなっていたようだ。結果的に叶わぬ夢となった事で、後にミック・ジョーンズはやれなくて良かった、と言っているようだが、なるほど。ちなみにポール・シムノンはこの話が出た当初からThe Clashがあんな高いチケット代を払うような場所で再結成ライブはないだろ、と不参加を表明していたらしい。さすがだ。それはそうと、この時に録音していた楽曲群はこの後、アルバム「Streetcore」で概ねリリースされ、ジョー・ストラマーの遺産はここで一段落したかのように見え、後にミック・ジョーンズも参加したライブアルバムがファンクラブ限定でリリースされただけで終わっていた。ところがその後に関係者がジョー・ストラマーの自宅倉庫を漁ったか音源提供があったかで、実はかなりのアーカイブが残されていた事が判明し、そのソースをきちんとした形で纏め上げてリリースしようとの話から丁寧な仕事が行われており、2018年になってようやくその姿を聴ける事になった。しかも普通の発掘アルバムと言うだけでなく、きちんとコンセプトも持ったしっかりした新作としてリリースされたのは嬉しい限り。
「Joe Strummer 001」なるタイトルで、ジャケットはジョー・ストラマーの免許証の写真の拡大だそうで、若かりし日のジョー・ストラマーの鋭い表情がそれらしくてなかなか良い。中身は一枚目のディスクがソロ活動のベスト盤とも言える選曲で、入手しにくい映画のサントラへの提供曲がほとんど詰め込まれているのは有り難い。ひとつづつ揃えているとかなり大変な作業にもなるこの手の作品が一枚に纏められるのは通常はレーベルが異なったりして出来ないものだが、ここでは見事に収められている。それに加えてThe 101ersの2曲とメスカレロスのベストチョイス、珍しい辺りでは「Minstrel Boy」の歌入りショートバージョン、映画「Black Howk Down」のサントラに収録のバージョンが聴けるところ。それとジョニー・キャッシュの2003年のボックスセットに収録されたジョーの提供曲「Redemption Song」とジミー・クリフの2004年のアルバムに提供した「Over the Border」までもが収録されているのは見事。どうやって版権クリアーしたのか、きちんと収められているので自分もここで初めて聴いた楽曲。前者は歌やメロディだけ聴いていれば完全にジョー・ストラマーそのもので、それをジョニー・キャッシュがアコギバックで歌っているのでジョー・ストラマーの曲と知ってて聴くと納得するが、普通に聴いていても結構な名曲に聴こえるので一押し。途中歌が変わるのでその二人の歌声とメロディと歌詞の発音の違いも雰囲気が出ていて実に男臭いカッコ良い曲。後者はジミー・クリフが主導となっている曲でジョーの歌声は一瞬出てくる程度だと思われるが、レゲエと言うよりもテクノレゲエパンク的な斬新なスタイルの楽曲で、これはこれで気になるジャンルのサウンドが奏でられている。それをメスカレロス全盛期のジョー・ストラマーが提供しているのも魅力的。これは聞かないとジョー・ストラマーと分かりにくい曲調にまで作り込まれているようだ。それにしても80年代からの映画のサントラ曲は確かに後期The Clash IIやミック・ジョーンズのB.A.Dで聴けるような楽曲アレンジが施されているものが多く、この時代には完全にそちらの方向にアンテナが向いていたのも分かるので、初期パンク的な楽曲は皆無で、音楽家としてのジョー・ストラマーの一面を捉えるとして聴くのが賢明。
そして2枚目のディスクが珠玉の楽曲群集大成で冒頭の「Letsagetabitarockin」はDisc 1冒頭と同じ曲のアコギ一本でのジョー・ストラマーのデモバージョンで、実に生々しくプレイしている姿をくっきりと聴ける。そこから時代は一気にThe Clash後期まで飛び、「This Is England」の未発表バージョンとなる「Czechoslovak Song/Where Is England」だが既発バージョンと比べるともっとダブ的エッセンスの強いゆったりとした、ポール・シムノンのグルーブ感満載のバージョンでかなりトリップしている感漂う。「Pouring Rain (1984)」はこの後出てくる1993年の「When Pigs Fly」のサントラでも使われそうになった未発表曲の元ネタバージョンで、こちらもバンド形態の音を出しているがデモバージョンそのままで雰囲気は同じだがまだまだラフなメモ。それでも1984年だからあの安っぽいデジタルチックなドラムの音が使われている。ここまでして収録するほどの出来映えでもないようにも思えるが、それだけソースが少なかったとも伺える。珍しくも「Blues on the River」とのタイトルが付けられた楽曲もアレンジは割と斬新なインダストリアル的ですらあるような曲だが、骨格はジョー・ストラマーそのままのスタイルでシンプルに迫ってくる。やはりデモテープそのままに近いものなので、その生々しさを味わうには楽しめる楽曲。ブルースと言うなら次の「Crying on 23rd」の方がそのまま3コードパターンのブルースだが、こちらは映画「シドアンドナンシー」サントラの未発表曲のようで、雰囲気はそれらしいものの、何故にパンク映画でこんなブルースソングが作られたのか、ボツの理由も分かりすぎるくらいのブルース。そして1980年代初頭の来日公演でも同行したポール・シムノンの彼女と言うか奥方のパール・ハーバーに提供したものの未発表のままに終わっていた「2 Bullets」が御本人の歌声でそのまま聴ける。ジョー・ストラマーは単純に楽曲提供のようで、こうして聴いてみてもジョー・ストラマーらしさが出ているようないなようなとなかなか難しいが、少々雰囲気の変わったところで良いかもしれない。そして1993年の映画「When Pigs Fly」のサントラではボツりまくった3曲がスタジオ録音完全バージョンで収められているので、かなり最終段階でボツ出しを食らったのか、オフィシャルのサントラ盤にはジョー・ストラマーのクレジットは一切見当たらないので、何らかの理由に謎がありそうな不思議な録音素材。ここからの2曲はジョー・ストラマーの最期の録音素材として残されているテープからの収録でアルバム「Streetcore」からも漏れたようだ。もっともその時には知られていなかったのかもしれないが、しっかりと各種楽器もレコーディングされ、アレンジも施された完全バージョンなので、単純に収録時間の関係でオミットされたのだろうか。「The Cool Impossible」はやや物静かで切なさを持つメスカレロスらしい、そしてジョーらしいメロディの歌で、ピアノがやたらと美しく鳴り響くキレイな曲。「London Is Burning」はメスカレロスのアルバムでリリースされている「Burnin' Streets」の別バージョン、と言うが、楽曲のテンポが違い過ぎて、こちらは普通にロック調のビートでアレンジされており、かなりメスカレロスらしい。リリースバージョンはゆったりとしており、そういう雰囲気こそがメスカレロス、とばかりの作風。同じ曲でも色々と聴けるのは面白いし、こちらの楽曲タイトルがまた魅力的で気になるのもポイント高い。そして最後には1988年にミック・ジョーンズと共作で作り上げた「U.S. North」が収められているが、この曲の歴史的意義が大きいから最後に収録されているのは分かるが、楽曲的にはB.A.Dと80年代ジョーの方向性を重ね合わせた随分とデジタルテクノダブチックなアレンジで好ましい曲ではない。それなら先の「London Is Burning」が最後の方が良かったが、それはそれ、こういう世界観がThe Clashの結末にあったとしたらあそこで失くなっていたのも歴史か。
この「Joe Strummer 001」は様々な形態でリリースされており、7インチシングルが付けられた形態では、末期The Clashの「This Is England」と「Before We Go Forward」の未発表デモバージョンが収録されているが、どちらも安っぽいリズムマシーンで作られたあのままに近いデモバージョンで、アコギの弾き語りから出来てたら楽しそうだと夢を膨らましたが、そうではなかった。更にカセットテープバージョンに収録された「Full Moon」もあるらしいが未聴。これでもか、くらいに残された楽曲やなかなか聞きづらい曲を一気に纏め上げてリリースしてくれた素晴らしい編集盤で、どこか心の奥底で、お疲れ様、と言いたくなり、これでジョーのアイテムは満了した感満載のナイスなアルバム。
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