Frank Zappa - The Hot Rats Sessions
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Frank Zappa - The Hot Rats Sessions

1990年代のCD全盛期時代頃から70年代のバンドのレア音源や未発表曲、スタジオセッション、サウンドボードソースによるライブ音源や各国のラジオソース、当然ながらのBBCセッションなど実は色々とある所にはあると言うような音源がアングラ界隈で流通してきて、国内でもブートレッグ音源としてマニアックな世界では売られており、その音源を巡って多々論争が勃発もしていた。多くはそれらが事実かどうか、フェイクものもまだまだあった時代なのでそういう論議も多かったし、実際その真偽の程を調べるにも資料が少なくてまことしやかに噂されたものも多く、まだまだ深い闇と謎が多くて面白かった。インターネットが一般化し始めたのも1993年から95年頃なので、まだまだ黎明期はアングラ色強く、マニアがニッチな連中と集まって妙なコミューンが形成されてたような感じで、今のように健全さは皆無だったから自分もその世界観が好きでハマりまくってた。ホント、ヤバかったなと今なら思うが、匿名性と不信感、その中にある妙に真実味を持った情報の見極め、特に音源関係では闇の中の真相をどれだけ掴めるか、そんなアングラな世界があったとは今じゃ想像も出来ないだろう。その頃の音源も今やほぼ全てがオフィシャルで続々とリリースされ、限定盤かもしれないがまっとうに入手出来て聴ける時代だから素晴らしい。おかげで過去のコレクションの大半はゴミ箱行きで単なる思い出の品でしかなくなっている今日。
Frank Zappaのアングラ音源は幾つかリリースされた事もあるが、ザッパの場合は早いウチからさっさと海賊盤との対抗策を講じていた人で、「Beat the Boots」シリーズを筆頭に、そもそも自分自身でほぼ全ての音源を録音して管理していた事から、それらのライブ音源そのものを組み合わせて時代を超越したライブアルバムをリリースしたり、12CD「You Can't Do That on Stage Anymore」ボックスをリリースして海賊盤などに目が向かないようにリスナーを満足、どころか溢れるくらいの満腹感を提供していた。それもあってあまりザッパのソースは世に出て来なかったが、噂は幾つも流れてて、そのひとつにこの「Hot Rats」アルバム時の制作過程を収めたテープが全て残されている話もあった。昔ならこの手のソースはアングラから流れてくるのを待ったものだが、当然ザッパ管理の元でしかそのソースは聴けない代物なのは素人でも想像が付くし、それが簡単には流されないだろう事も理解できるからザッパ自身、もしくは関係者が、ザッパファミリーがその気にならなければ出てこないだろう幻のセッションテープだったハズ。それが2019年になりまさかまさかの「The Hot Rats Sessions」のリリースニュースが流れた。それもCD6枚組のボリュームで、曲目を見てもセッションそのものの模様が丸ごと記録されているのだろう感じで、果たしてどこまでこのソースをきちんと聴けるのだろうか、また、どれくらいザッパの関与が見られ、メンバーの苦痛が聴けるのか、この名盤、名曲群の完成までのプロセスがどこまで垣間見れるのか、あらゆる面から興味が湧いたのは昔からの噂がある部分も大きい。それだけ幻のアイテムに対する期待感が大きく、実際聴けないにしてもそのリリース自体の特別感が強かった。
聴くにも気合が必要だし、聴いてても一回では大した事は分からないし、音楽として聴いて楽しむレベルのアイテムでもない。オリジナルアルバムを散々聴いてその曲の構成や骨格、メロディや楽器の鳴り具合や旋律も相当に把握していて初めてこのソースの面白さが味わえる話だ。自分でもそこまで聞き込みまくっている自信はないので、まずは流して聴いてから取り組もうとして、冒頭のたった3分半の名曲「Peaches en Regalia」だけでも制覇してみようとじっくりと聴いた。そしてこのアルバムの一枚目のディスクから取り組むが、最初からメゲる事間違いない。イアン・アンダーウッドのピアノ試し弾きから開始されるので、まだ全く曲の流れは見えてこないが所々なるほど、これが骨格かと思える部分もあって、ニヤニヤする事は出来る。そこからバンドを入れてドラムとベースが加わり、そういえばここでのベースはあのシャギー・オーティスなのか。そこに鍵盤が加わった正しくプロトタイプ的なセクションが始められるが、それでも頭の中にザッパのギターフレーズが残っていないと聴いててよく分からなくなるので、まだ音楽として楽しめるレベルではない。そのセッションが続いたあと、マスターテイクとあるが、それでも最初のセクションのマスターテイクだから楽曲になっていない。そしてまたジャムが入っているが、ザッパはコンソールからの指示ばかりでギターはまるで入って来ないのでバンドの3人を鍛えイジメひたすら自分のバックミュージシャンとしてどこまで出来るかを試してレベルアップさせているような印象すら受ける。同じようにセクション3も繰り返されてマスターテイクが完成したようにあるが、これで完成形なのか、と疑うばかり。ただ、そこにザッパのあのギターが乗っかるとそうなのかもしれない、と錯覚してしまうのは多分完全に曲が頭の中に残っていなくて漠然としているからだろう。
同様のセッションが各曲で続々と繰り広げられたよ、聴いてくれよ、この苦労を、とばかりに怒涛の収録かと思うとなかなか全曲を同様の趣旨で制覇仕切れないのが現状。そこでおいおいこの辺りは時間を掛けていくしかないと判断しているが、同じ「Peaches en Regalia」でもモノラルマスターが入っていたりもして、これはこれで随分珍しい聴き方が出来ると初めての質感を味わった。当然ステレオマスターの方が初の16トラック録音ソースとして良いに決まっているし、この時代とは言えザッパの中ではステレオ感はしっかりと理解していただろう。更に「Peaches en Regalia」だけで言えば6枚目のディスクには1969リズムトラックミックスなるミックスも入ってて、何かと思えば今度はドラム中心にミックスされたバージョンらしいがここでもザッパのギターは聴かれないので、単に演奏のバックがそのまま収められているだけ、自分でギターを重ねてみろよ的なカラオケなのかもしれない。「Peaches en Regalia」だけでこんなしかけが多数あるので、人生長いと言えどもどれだけ深く入り込んでこのタイトルを楽しめるのか、なかなか悩ましいと思いつつも、そういえば12CDライブリリースの時も同じように思いながら何度も何度もクレジットと分厚い日本語解説読みながら聴いていた記憶を思い出した。
一方で5枚目のディスクには「Hot Rats」の1987年デジタルリマスター時の音源がそのまま収録されているので、CD時代になってザッパ本人がデジタル盤としてリミックスしたバージョンは改めて聴き直せる。この1987リマスターはこの後の1993年のザッパ承認盤とマスターは同じなのでCD時代になってミックスが変わった、と言われるバージョンそのままだ。今の時代では2012年にユニバーサルからオリジナルLPマスターからのバージョンもリリースされているので、現在は両バージョンとも普通に聴ける状況。長尺バージョンになった「Son Of Mr. Green Genes」もあればピッチが早まった?「Willie The Pimp」もあったりと細かい分析分解はWebでも幾つか記載があって確認ができるので先人の知見に感謝。本タイトルはマニアックにセッションを楽しませるのが主目的とは言え、きちんとアルバムそのものも最新の音らしく聴けるのもポイントが高く、その意味では5枚目と6枚目のディスクは2枚のデラックス・エディション的に聴いてみる事も出来る。それにしてもどの曲も当然ながら数々のセッションで細部の展開やアレンジ、音色やフレーズが進化し、基本的にはザッパの譜面がありきだろうが、演奏陣営もそれを作り上げて仕上げていくプロセスの苦労が聴いて取れて、普通に聴いているアルバムでも同じような苦労があっての作品だと思うと適当には聴けなくなる。特に作り込まれた名盤のプロセスを知ってしまうともっと惚れ直す部分も大きいか。まだまだたっぷりとじっくりとどっぷりと聴いていかないといけないとんでもないブツ。

1990年代のCD全盛期時代頃から70年代のバンドのレア音源や未発表曲、スタジオセッション、サウンドボードソースによるライブ音源や各国のラジオソース、当然ながらのBBCセッションなど実は色々とある所にはあると言うような音源がアングラ界隈で流通してきて、国内でもブートレッグ音源としてマニアックな世界では売られており、その音源を巡って多々論争が勃発もしていた。多くはそれらが事実かどうか、フェイクものもまだまだあった時代なのでそういう論議も多かったし、実際その真偽の程を調べるにも資料が少なくてまことしやかに噂されたものも多く、まだまだ深い闇と謎が多くて面白かった。インターネットが一般化し始めたのも1993年から95年頃なので、まだまだ黎明期はアングラ色強く、マニアがニッチな連中と集まって妙なコミューンが形成されてたような感じで、今のように健全さは皆無だったから自分もその世界観が好きでハマりまくってた。ホント、ヤバかったなと今なら思うが、匿名性と不信感、その中にある妙に真実味を持った情報の見極め、特に音源関係では闇の中の真相をどれだけ掴めるか、そんなアングラな世界があったとは今じゃ想像も出来ないだろう。その頃の音源も今やほぼ全てがオフィシャルで続々とリリースされ、限定盤かもしれないがまっとうに入手出来て聴ける時代だから素晴らしい。おかげで過去のコレクションの大半はゴミ箱行きで単なる思い出の品でしかなくなっている今日。
Frank Zappaのアングラ音源は幾つかリリースされた事もあるが、ザッパの場合は早いウチからさっさと海賊盤との対抗策を講じていた人で、「Beat the Boots」シリーズを筆頭に、そもそも自分自身でほぼ全ての音源を録音して管理していた事から、それらのライブ音源そのものを組み合わせて時代を超越したライブアルバムをリリースしたり、12CD「You Can't Do That on Stage Anymore」ボックスをリリースして海賊盤などに目が向かないようにリスナーを満足、どころか溢れるくらいの満腹感を提供していた。それもあってあまりザッパのソースは世に出て来なかったが、噂は幾つも流れてて、そのひとつにこの「Hot Rats」アルバム時の制作過程を収めたテープが全て残されている話もあった。昔ならこの手のソースはアングラから流れてくるのを待ったものだが、当然ザッパ管理の元でしかそのソースは聴けない代物なのは素人でも想像が付くし、それが簡単には流されないだろう事も理解できるからザッパ自身、もしくは関係者が、ザッパファミリーがその気にならなければ出てこないだろう幻のセッションテープだったハズ。それが2019年になりまさかまさかの「The Hot Rats Sessions」のリリースニュースが流れた。それもCD6枚組のボリュームで、曲目を見てもセッションそのものの模様が丸ごと記録されているのだろう感じで、果たしてどこまでこのソースをきちんと聴けるのだろうか、また、どれくらいザッパの関与が見られ、メンバーの苦痛が聴けるのか、この名盤、名曲群の完成までのプロセスがどこまで垣間見れるのか、あらゆる面から興味が湧いたのは昔からの噂がある部分も大きい。それだけ幻のアイテムに対する期待感が大きく、実際聴けないにしてもそのリリース自体の特別感が強かった。
聴くにも気合が必要だし、聴いてても一回では大した事は分からないし、音楽として聴いて楽しむレベルのアイテムでもない。オリジナルアルバムを散々聴いてその曲の構成や骨格、メロディや楽器の鳴り具合や旋律も相当に把握していて初めてこのソースの面白さが味わえる話だ。自分でもそこまで聞き込みまくっている自信はないので、まずは流して聴いてから取り組もうとして、冒頭のたった3分半の名曲「Peaches en Regalia」だけでも制覇してみようとじっくりと聴いた。そしてこのアルバムの一枚目のディスクから取り組むが、最初からメゲる事間違いない。イアン・アンダーウッドのピアノ試し弾きから開始されるので、まだ全く曲の流れは見えてこないが所々なるほど、これが骨格かと思える部分もあって、ニヤニヤする事は出来る。そこからバンドを入れてドラムとベースが加わり、そういえばここでのベースはあのシャギー・オーティスなのか。そこに鍵盤が加わった正しくプロトタイプ的なセクションが始められるが、それでも頭の中にザッパのギターフレーズが残っていないと聴いててよく分からなくなるので、まだ音楽として楽しめるレベルではない。そのセッションが続いたあと、マスターテイクとあるが、それでも最初のセクションのマスターテイクだから楽曲になっていない。そしてまたジャムが入っているが、ザッパはコンソールからの指示ばかりでギターはまるで入って来ないのでバンドの3人を鍛えイジメひたすら自分のバックミュージシャンとしてどこまで出来るかを試してレベルアップさせているような印象すら受ける。同じようにセクション3も繰り返されてマスターテイクが完成したようにあるが、これで完成形なのか、と疑うばかり。ただ、そこにザッパのあのギターが乗っかるとそうなのかもしれない、と錯覚してしまうのは多分完全に曲が頭の中に残っていなくて漠然としているからだろう。
同様のセッションが各曲で続々と繰り広げられたよ、聴いてくれよ、この苦労を、とばかりに怒涛の収録かと思うとなかなか全曲を同様の趣旨で制覇仕切れないのが現状。そこでおいおいこの辺りは時間を掛けていくしかないと判断しているが、同じ「Peaches en Regalia」でもモノラルマスターが入っていたりもして、これはこれで随分珍しい聴き方が出来ると初めての質感を味わった。当然ステレオマスターの方が初の16トラック録音ソースとして良いに決まっているし、この時代とは言えザッパの中ではステレオ感はしっかりと理解していただろう。更に「Peaches en Regalia」だけで言えば6枚目のディスクには1969リズムトラックミックスなるミックスも入ってて、何かと思えば今度はドラム中心にミックスされたバージョンらしいがここでもザッパのギターは聴かれないので、単に演奏のバックがそのまま収められているだけ、自分でギターを重ねてみろよ的なカラオケなのかもしれない。「Peaches en Regalia」だけでこんなしかけが多数あるので、人生長いと言えどもどれだけ深く入り込んでこのタイトルを楽しめるのか、なかなか悩ましいと思いつつも、そういえば12CDライブリリースの時も同じように思いながら何度も何度もクレジットと分厚い日本語解説読みながら聴いていた記憶を思い出した。
一方で5枚目のディスクには「Hot Rats」の1987年デジタルリマスター時の音源がそのまま収録されているので、CD時代になってザッパ本人がデジタル盤としてリミックスしたバージョンは改めて聴き直せる。この1987リマスターはこの後の1993年のザッパ承認盤とマスターは同じなのでCD時代になってミックスが変わった、と言われるバージョンそのままだ。今の時代では2012年にユニバーサルからオリジナルLPマスターからのバージョンもリリースされているので、現在は両バージョンとも普通に聴ける状況。長尺バージョンになった「Son Of Mr. Green Genes」もあればピッチが早まった?「Willie The Pimp」もあったりと細かい分析分解はWebでも幾つか記載があって確認ができるので先人の知見に感謝。本タイトルはマニアックにセッションを楽しませるのが主目的とは言え、きちんとアルバムそのものも最新の音らしく聴けるのもポイントが高く、その意味では5枚目と6枚目のディスクは2枚のデラックス・エディション的に聴いてみる事も出来る。それにしてもどの曲も当然ながら数々のセッションで細部の展開やアレンジ、音色やフレーズが進化し、基本的にはザッパの譜面がありきだろうが、演奏陣営もそれを作り上げて仕上げていくプロセスの苦労が聴いて取れて、普通に聴いているアルバムでも同じような苦労があっての作品だと思うと適当には聴けなくなる。特に作り込まれた名盤のプロセスを知ってしまうともっと惚れ直す部分も大きいか。まだまだたっぷりとじっくりとどっぷりと聴いていかないといけないとんでもないブツ。
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