Monalisa Twins - Play Beatles & More

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Monalisa Twins - Play Beatles & More (2014)
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 ネットが世の中を確実に変化させたが、中でもYouTubeは様々な世界観を変化させた。出てきた時は素人が動画を上げて楽しむレベルのサービスだからそのうちに荒れまくって終わるんじゃないかと思っていたが、知名度が上がってみれば早々にGoogleが吸収してしまい、そういう方向から救った、言い方を変えればビジネスライクに特化したサービス提供と品質アップに進んだ事で一気に垢抜けたメジャーな方向に進んだ。その結果、素人投稿動画サイトから法人やビジネスで使っていくプラットフォームへと進化し、挙げ句テレビを駆逐したのみではなく、世界の壁を取っ払った。距離的制約、文化的制約、常識的制約、全てから解き放たれた一般ユーザーは同好の士を求めてひらすら彷徨い、その仲間は同国内のみならず世界中の同じ好みを持った同士と繋がり、発信され受信されていく世界になった。しかも言葉や音だけでなく姿形やファッション、思想も同時に伝えられる映像、動画での共有、コミュニケーションだから正に百聞は一見にしかずと言わんばかりに瞬時に真実が伝わっていくから面白い。特に音楽においてはアーティストやバンドの生々しい姿が即座に伝わる手段として有用だし、シーンに登場するにも以前のようにややこしく面倒なプロセスを経ることなく動画をアップすれば世界に発信できる。面白いもので、才能豊かな映像や動画はきちんと世界中に伝わるものだし、売れるものだ。そうして様々なバンドやアーティストが世界中から世界中に知られていき、こんな島国の果ての自分の所まで届いてくる。

 Monalisa Twinsなるオーストリア出身で現在はリバプールを中心に活動している双子の少女に注目。ホントに才能ある若者はこうして見て聴いているだけで明らかにその違いが分かるし、それに加えて人を感動させる手法手段も本能的に持ち得ているのだろうか、どの曲を聴いててもただのカバーやテクニックではなく、音楽の持つ真髄をきちんと伝えてくれている気がする。Monalisa Twinsはモナとリサの双子の名前から取られたチーム名で12歳頃から活動していており、既に15年程活動しているようで、ベースはビートルズやメロディのあるいわゆるロック創成期のポップソング、ヒットソングを二人のギターと歌でカバーしているが、ビデオを見ていると実にいろいろな楽器を演奏しているので多分マルチに何でもプレイできるのだろう。ただ、面白いのはライブになると意外なほどにパワフルにロック的センスを持ち得ているあたりで、ボーカルにしても繊細で美しいハーモニーを奏でるかと思えばライブでは迫力のあるドスの効いた歌声でロックを感じさせてくれる。割とやんちゃな女性達かもしれない。オリジナルアルバムも数枚リリースしているが、見事に60年代ポップ、ロックをエッセンスとしたメロディとハーモニー、曲調にアレンジと踏襲しているが、それでも彼女たち二人の個性とプレイスタイルがしっかりと主張されていて、最早クラシックロックはクラシックと同じく、音楽のモチーフとして存在するようになり、後年の世代達がそれを元に自らをアピールする素材になっていくのだろう。彼女たちのプレイを見て聴いていてそれをつくづく実感した。

 Monalisa Twinsは基本的にYouTubeで発信する事を活動の場としているようで、世界的にライブツアーがどうのとかアルバムを売ってどうのなども当然プロとしてあるだろうが、売り方活動の発想がまるで異なっていて、その意味でも興味深いし地に足付けた、今の時代の活動だと思う。だからアルバムを聴き込んでアレがこれが、と言うような制約に縛られず、常にYouTubeで曲を発信、今の自分達を発信してリリースしている。他にも今の時代のアーティストはこういう手法を取っている人も多いが、古いリスナーからするとイチイチなるほど、と思わざるを得ない表現方法に思える。そこで彼女たちのアルバムを一枚紹介したい、と思いつつもどちらかと言えば本音はYouTubeにアップされている映像をひたすら興味のある曲、知っている曲から見尽くしていってもらった方が良いと思っている。もっとも言われなくてもそういう見方をするだろうとは思うが。

 2020年になって身動き取れなくなったからかスタジオ作品とキャバーンクラブのライブをフィジカルディスクとしてリリースしているが、初期のビートルズカバー集アルバム「Monalisa Twins Play Beatles & More」をオススメしておこう。ここには収録されていないがそのセンスがビシバシと感じられる楽曲にボウイの「Starman」やフロイドの「Wish You Were Here」などもあるが、ホントにキリがない。昔の名曲群がMonalisa Twinsの若くて力強い声で曲の良い所だけが前に出てくるような印象なので、どれもこれもついつい口づさんで聴いてしまうし、これほどにショボい音なのにノッてしまえる。ビートルズの名曲群に加えてストーンズやキンクス、フーやアメリカの同時代の名曲群も普通に歌われているのでアルバム丸ごと長いながらも一曲づつは短いから楽しんでいるウチにさっさと時間は過ぎ去っていく。中でも世界中で最高に素晴らしい評価を得ているのが「While My Guitar Gently Weeps」で、彼女たちのマルチぶりとクラプトンのあのギターフレーズの完コピさ加減、しかもそれがあの音とは異なりナマの音で出てくるので、どれだけ味を持たせて弾けるかがそのまま情感に訴えてくる。ある種オリジナルを完全に超えているとも言えるし、原曲そのままでそれが出来てしまう底力も素晴らしい。ふと気づいてみれば自分も数時間以上、数日以上Monalisa Twinsを聴いているし、ハマっているが、それは往年の楽曲がひとつのプラットフォームで統一感を持って聴けるからの楽しみかもしれない。その意味でこうした手法でシーンに出てくるのは新たなニーズもあるのかと感じたが、難しい事考えずに単純に今はあまり聴かなくなってきた古き良き音楽を今の音色とフォーマットで聴き直せる楽しみを享受しよう。そしてこの才能あるMonalisa Twinsも応援していきたい。









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フレ
Posted byフレ

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