The Who - Join Together: Live

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The Who - Join Together: Live
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 70年代のロックバンドを生々しくリアルタイムで実感して見て聴いたのは多分80年代後半になってからだ。そもそも80年代になってから70年代のバンドはほぼ撃沈していて残っていたバンドがほとんど無かったから、どうしても歴史の産物的にしか見れなかったし聴けなかったからだ。ところがストーンズが復帰してきてから色々とシーンが活性化したのか、たまたまそういう風に見ていただけかもしれないが、幾つかのロックバンドの復興が目に付くようになったのは嬉しかった。当時からしても既に終わったバンドだし、再結成モノなど大して面白味も無いだろうという風潮もあったが、それでも見れれば良かったからそれなりに楽しんだ。その中に当時としては驚きの再結成ともなったThe Whoがあって、ピート・タウンジェンドの1989年のソロアルバム「Iron Man」でThe Who名義でロジャー・ダルトリーもジョン・エントウィッスルも参加した「Dig」とアーサー・ブラウンの「Fire」を収録していると話題になり、それならThe Whoも復活するのかと機運が高まった頃に、何の問題もなく、また時間的に隙間も空かずに即座に再結成ツアーを行うと発表されていた。元々ピート・タウンジェンドもツアーを行う予定だったとは思うからメンバーのスケジュールは確保してあっただろうが、会場の方は大幅に変更したに違いない。ピート・タウンジェンドのソロツアーの会場とThe Whoの再結成ツアーの会場ではまるで規模感が異なるからだ。そしてツアーが行われたが当時は噂だけが伝え漏れてきて、と言っても恐らく雑誌レベルで記事を読んだのだろうが、何と驚く事に「Tommy」丸ごとの再演ツアーと書かれていてそれは見たいし聴きたいと願っていたら、しばらくして当然の事ながらのライブアルバムとビデオ映像のリリースでさっさと見れたのは嬉しかった。

 CDでは2枚組で「Join Together: Live」として、日本盤は普通の分厚い2CDケースだったがアメリカ盤ではLPサイズの箱に中味スッカスカのままCDが2枚と簡単なインナーが入っただけの形態でリリースされていたが、何となく目立つデカい箱を買って聴いていた。映像はレーザーディスクも2枚組だった気がするが、結構なお値段でせっかく買ったからと何回も何回も一生懸命見ていたから、あまりにもの道化ぶりに多々驚いたものだ。今思えば英国人が集まってライブをイベント的に行っているのだから、オチャラケた道化ショウになるのも当然か。正直書けば、当時から今までに至るまでCDは数種類保有しつつも音源だけを聴く事もほとんど無く、このライブショウを楽しむ場合はほぼ映像を見ていたので音だけを聴いていてもしっかりと映像が蘇ってくるが、一方で音源だけを聴いているとこういう風に演奏されていたのかと改めて聴き直す箇所が多い部分もある。まずはアルバムジャケットからしてジョン・エントウィッスルの蜘蛛のペンダントにロジャー・ダルトリーの振り回すためにケーブルまでゆとりを持たせて白いテープで巻いてあるマイクロフォン、そしてどこかの会場で壊したであろうピート・タウンジェンドのリッケンバッカーの破片、これもまた見事に粉砕されているギターが写されているのも見事。映像の方のライブはゴージャスなホーン・セクションやコーラスチームまで含めた大所帯に加えて8月のアンフィシアターのゲスト陣が多数出演したイベントの日を記録しているので、ものの見事に明るく派手なベガスのライブイベントと呼ぶに相応しい出来上がりだが、CDの方はラジオシティのショウからも抜粋されているので、実はCDと映像では音源内容が異なる構成になっている。簡単に書けば映像で見られるゲスト陣との共演はCDには入っておらず、その部分はラジオシアターでのショウから抜粋されているので、こちらはきちんと当時のThe Who名義のライブアルバムとなる。それでもドラムにはサイモン・フィリップスに鍵盤はラビットを配しているなかなかのメンツで、特にサイモン・フィリップスのドラムの上手さは舌を巻くほどのレベルだから、ドラムが上手い、と言うのはこういう事かと実感した次第。ピート・タウンジェンドはこの頃難聴を患い始めていたのでほぼ全編でアコースティックギターを掻き鳴らし、そのコンポーザー的存在の大きさを出していたがその時にエレキギターをソリッドに弾いていたのが元アトミック・ルースターのスティーブ・ボルトンで、なかなかカッコ良いセンスのギターが聴けるのも本ツアーならでは。ちなみにこのツアーで「Tommy」が再演されたのは5公演程度しかなく、その他の何十公演は普通にベストヒット曲でライブを回っていたと言うのだから驚く。その成果がディスク2に収録のベスト曲集となり、より一層こなれたプレイが聴けるのはその影響だろう。一方の「Tommy」はかっちりしっかりと楽譜通りにでも弾いているくらいにしっかりとした音楽が奏でられているが、メンバーは慣れたものでその個性を遺憾なく発揮したライブで、ジョン・エントウィッスルのベースの凄まじさはここに限らないが圧倒的で、ロジャーも生き生きと歌いこなしている。とてもバンドがしばらく解散状態だったとは思えないレベルで、ともすれば解散前のThe Whoのバンド感よりもここでのオーケストラグループとしての方が音楽的にも一体感があり、素晴らしい演奏家集団として聴ける。ロックバンドの正しい姿とは思えないが、この時期ストーンズもゴージャスに奏でていた事を思えば時代の産物としてThe Whoでのバブリー感を味わっても良いだろう。

 聴いていてつくづく思ったが、まだまだメンバーが若いからか勢いもありテンションも高く、気合十二分的な演奏ばかりで当時はイベント的に思ったが、ライブ盤としてもかなり素晴らしい内容に仕上がっていた。当たり前だが、どうしても比較対象が過去のライブアルバムだから出来すぎたライブのイメージが強くて、改めて時間が経ってから聴く感想とは全然違うものだ。「Tommy」にしてもここまで聴きやすかったか、と思うし、それは多分自分が「Tommy」を何度も色々なバージョンで聴いているから染み込んでいるおかげもあるが、それだけ大衆に馴染みやすい楽曲群という事だ。そして2枚目のベスト曲集、と言ってもはじめから「Eminence Front」「Face The Face」なのでピートのソロツアー的イメージにしかならないが、続いての「Dig」が1989年にリリースされたThe Who名義の新曲で、アルバムもロジャーが歌っているからようやくそれらしく聴こえてくる。ここを転機として往年のThe Whoの名曲群へと突入も、意外な事にここで初めてライブ演奏される「I Can See For Miles」が斬新。2本のギターが居ないと出来ないなどと考える事があったのかとの方が意外だったが、これまでその理由で演奏されなかったらしい。確かにここでのピートのギターはカッコ良い。どうしてもThe Who後期作品に偏ってしまうチョイスが鼻に付き、カッチリとしたプレイスタイルもThe Whoらしからぬと思うが、キース・ムーンのようなドラミングが許されるワケもなく、どうしてもこうなるだろう。それは以降のThe Whoの再結成から見ても大いに理解できるし、その意味でキースエッセンスが許されるザック・スターキーが参加してからのThe Whoは完璧なメンバー編成となったと言える。いやはや本ライブも久しぶりに聴いたが、凄いじゃないか、とつくづく思い直し、今までどれだけ過去の歴史とロックの、The Whoのイメージに囚われていたかを思い知った次第。映像のお楽しみとは別に音源でピュアに楽しむのも面白かったナイスなライブ・アルバム。





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フレ
Posted byフレ

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